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健康まめ知識

姿勢年齢を若く保つ(2014年12月)

 

図 先日なにげなくテレビをつけたところ、とても姿勢の良い初老の男性がでてきました。別に芸能人でもなければ、体操の先生でもないようです。しかし、その姿勢の良さが生み出す雰囲気がとても若々しく、歌声もなかなか素敵で、実際の年齢を聞いてたいへん驚きました。「姿勢年齢」という言い方があるとすれば、その若さを保つということは大切なことでしょう。今月は、その方法についてご紹介しましょう。

 

良い姿勢はなぜ大切か

 地球上に生息する我々は、常に重力によって地面に向かって押さえつけられています。普段は意識しないことですが、長いこと風邪等で寝込んだ後に起き上がると重力に逆らって立ち上がることがとても辛く感じられたりします。この重力に逆らって身体を支えている筋肉を抗重力筋と呼ぶこともあります。この抗重力筋は、日常生活を送る上で常に活躍を強いられているのですが、姿勢が悪いとさらに負担が増え疲労やコリの原因にもなってしまいます。そのため慢性的な腰痛や肩こり、頭痛などの症状が、悪い姿勢と相関関係にあると言われます。
図 肩こりを例にあげれば、約5kgもある頭部を首と肩甲骨周辺の筋肉が抗重力筋として支えているということがそもそもの出発点です。通常は、脊柱の自然なS字カーブで頭部の重みを上手に分散して支えていますが、姿勢が悪いと頭部の重さは、脊柱の上に上手く乗らずに首と肩の筋肉で主に支えることになります。5kgの重さというと2ℓ入りのペットボトルを2.5本分。片手で持ったら5分もしないうちに下に置きたくなる重さです。
 さらに首と肩の筋肉は腕の重さも支えているというのをご存知ですか? 腕は肩の関節で身体に繋がっているというイメージを持つのが当然ですが、実は肩の筋肉が身体に繋ぎ止めているのです。その証拠に腕を大きく動かすと肩も一緒に動くはずです。この腕が一本で約3.5kg。2本で7kg。頭部と合わせると10kg以上の重さが常に首と肩周りにかかっているということになります。
 つまり人類は、二本足で歩き始めたときから良い姿勢で立つということが宿命づけられているということになります。

 

自然体の作り方

 自然体は、最近大ブームのスポーツでも取り入れられています。ランニングがそうです。今や1000万人とも言われるランニングブームも、最終的に良い姿勢で走るということに行き着きます。なぜなら、42kmを走るマラソンでは何より脚や腰、膝などの一部の筋肉や関節に過度の負担をかけないことが大切だからです。このマラソンのフォーム作りでも取り入れられている方法を紹介します。
 1.真っすぐだと思われる姿勢で立ちます。
 2.そのままの姿勢で軽く膝を曲げ、真っすぐ上に軽くジャンプします。
 3.それを2~3回繰り返し、真っすぐに着地するようにイメージします。
 このジャンプで、頭部が脊柱に真っすぐに乗ります。ランニングでは、この姿勢のまま走り出すことで、自然体でのランニングフォームを作って行きます。
 全身の映る鏡の前で、身体の側面を鏡に映してジャンプしてみてください。着地して自然に立った時、耳、腰の骨、くるぶしの3点が一つの軸上にあればこれが「自然体」です。
 もう一つの確認の仕方が、壁を利用する方法です。あごを引いた状態、つまり首の後ろを十分に伸ばして後頭部と背中とお尻、ふくらはぎ、踵を壁に付けて立ちます。自然体で立てれば無理なく全てが壁につきます。

 

椅子に座って良い姿勢を保つには

図 デスクワークの長い人は、1時間に一度ぐらいは立ち上がって自然体で少しでも歩くようにしましょう。また、良い姿勢で座るということも大切です。椅子に座った良い姿勢というのは、背もたれとの間に隙間を作らないように深く腰掛け、骨盤の下にある座骨で椅子に座りこの座骨の上に骨盤から脊柱を真っすぐに乗せます。腰を引かずにやや骨盤を前傾させるようなイメージで椅子に深く座ればこの姿勢になります。

 

正しい歩き方は、正しい姿勢から

図 健康のためにウォーキングを始めても長続きしないという人は、姿勢と歩き方に問題があるかもしれません。特に、歩くための筋力をアップしようと、足腰の筋肉を意識して早歩きしようとすると、すぐに疲れてしまいます。最悪の場合、筋肉がコリ固まりケガをしてしまうこともあります。
 まず、先に紹介したように自然体で立ちそこから歩き始めます。歩くときは、筋肉の力ではなく、重心を前に倒し、重心が移動する力で歩くようにします。

 具体的には、以下のようにします。
 1.まず自然体を上の「自然体の作り方」の方法で作ります。
 2.身体を一本の棒としてイメージします。
 3.この棒が前に倒れるイメージで身体を前に倒すと、身体の真下に一歩前に足がでます。
 4.この自然に前に出た足に重心を乗せる動きの繰り返しで歩きます。
 こうすると、筋肉の力に頼らずにある程度の距離をラクに歩くことができます。心拍数も上がりすぎない運動強度で歩くことができるので、身体の様々な機能が改善され、健康の維持にもつながります。

 

 良い姿勢は、若々しく見えるだけでなく身体を本質的に若々しくしてくれるのです。自然体を身につけ、いつまでも若さを保ち、生き生きと充実した日々を過ごしましょう。

 

 

2014年12月05日