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健康まめ知識

備えあれば憂い無し、 過呼吸症候群の対策を知ろう。(2007年10月)

 

     
 
10月のテーマ:
備えあれば憂い無し、

過呼吸症候群の対策を知ろう。

 スポーツの秋。学校や職場、地域などで開催される運動会や各種スポーツ大会などに参加する機会も多い季節です。運動の後に呼吸が乱れるのは当たり前のことですが、特にマラソンや長距離走のあとには過呼吸症候群になってしまうこともあります。また、運動に関わらず、日常生活をしている上で突然発作的に起こることもある病気。いざというとき迅速に対応できるよう、過呼吸の仕組みと対応策について知っておきましょう。
 
     

 

 
過呼吸症候群とは
 
  過呼吸症候群は、突然息苦しさを感じ、動悸や頻脈、両手の指先や口の周りのしびれなどの発作が起こるものです。若い女性に多い病気ですが、子供や男性、高齢者にも起こることがあります。夜間に救急車で搬送される人の約30%が、この発作によるものだと言われていることからも、ある意味身近な病気のひとつと言えるでしょう。
過呼吸の起こる原因
 

過呼吸を引き起こす誘引は、主にストレスや不安と言われ、元々何事に対しても不安を感じやすい性格の人に生じやすいようです。しかし性格や心理状況などに関係なく、運動などで過剰換気(息があらくなる)の状態になったことが誘因となる場合もあります。いずれの場合も、この過剰換気の状態のために血中の二酸化炭素が減り(排出され)すぎてしまうことが原因です。過呼吸状態になると、実際には血中酸素濃度は普段以上に高くなりますが、本人は息をしても空気が吸えないような感覚に陥ってしまい、さらに不安がつのって息が乱れ、息苦しさやしびれなどの症状が現れます。

過呼吸の症状
 

何らかのきっかけで突然息苦しさを感じ、動悸、頻脈、しびれ、胸や頭の痛み、めまいなどの発作を引き起こします。ひどいときには意識が朦朧としたり、全身が痙攣して意識を失うこともありますが、過呼吸が原因で死亡したり、後遺症を残した例はありません。過呼吸の状態で放置すると発作は数10分続きますが、通常は30分ほどで自然に軽快していきます。

過呼吸症候群の診断
 

先に述べたように、発作は30分ほどで自然に軽快するケースが多いので、病院に着く頃には発作が治まっていることも多くあります。過呼吸症候群かどうかの診断は、上記のような特徴的な症状の現れに加え、発作時の動脈血の酸素濃度と二酸化炭素濃度を検査することで容易につきます。少量の採血ですぐに診断でき、血液のPH値がアルカリ側に偏移している呼吸性アルカローシスであるかどうかを診断します。また、通常時でも意図的に速い呼吸を3分間続けさせて症状を誘発させる「過呼吸誘発テスト」を行う補助的な診断方法もあります。

 

 
過呼吸症候群になったときは
   
 
一般的な治療法
 

過呼吸の起こる原因は過剰な二酸化炭素の排出なので、紙袋などを口に当て、吐いた呼気を再度吸い込む「ペーパーバック法」と呼ばれる治療法が一般的です。この場合、袋を口にぴったり当てすぎると酸素不足になるため、口の部分に少し隙間を作っておくようにしましょう。

ペーパーバック法だけで治まらない場合
 

過呼吸のためパニック状態に陥ったり、不安が強いとペーパーバック法だけでは治まらない場合もあります。その場合は、医師の診断により抗不安薬など精神安定剤の処方を受けると効果的です。精神の安定が大切なので、周囲が過剰に心配して本人が余計に心を乱すことのないよう、冷静な対処を心がけましょう。

   
日常生活での注意点
 

過呼吸の発作は持続的な不安や不満、強い怒り、心理的緊張など気持ちが高揚した場合に生じやすく、寝不足や発熱などで症状が助長されることもあります。パニック障害の一症状としてみられる場合もあり、簡単に原因を特定できない場合も多いのですが、頻発するような場合は腹式呼吸や自律訓練法などのリラックス法を習得したり、発作の原因と考えられるストレスや不安を解決するための心理療法を行います。いずれの場合も、医師から詳しい説明を受け、病気に対する正しい知識を身につけることで不安は軽減され、発作も軽いものへと変化していくでしょう。

頭では理解していても、突然息苦しくなり呼吸が自由にできなくなると、特に初めての場合はやはりパニックを起こしてしまいがちです。そんな時は周囲の人の冷静な対処が一番なので、焦らず騒がず、本人の気持ちを落ち着かせるよう努めましょう。呼吸ができず窒息するわけではないということを理解しておくことで、落ち着いた対処ができるはずです。

 

 

 

2007年10月28日