気象が短時間のうちに変動するのにともなって起こる病気や、一定の気象条件下で症状が悪化したり、発作が誘発されたりする一連の病気を「気象病」といいます。このような、気象の諸条件から影響をうける病気には、気管支ぜん息(ぜん息発作)やリウマチ・神経痛などがあります。これらの病気の出現は、例えば「急激な冷え込みで膝が痛む」など、ある気象条件下で起こりやすいことはご存知の通り。ことに、気象条件に急激な変化をおこしやすい前線(寒冷前線など)の通過という条件が大きな影響を及ぼすと言われており、これらの病気の発作は、いずれも前線通過の前後に比べて”通過時”に起こりやすいと発表されています。
また、病気の発作が起こらなくても、「身体がだるい」「頭が痛い」などの不調が起こるケースが多く、これらの症状も「気象病」のひとつと言えます。
<原因>
どのような気象変化が人体に影響を与えているのかという、気象病を引き起こすメカニズムの解明については諸説ありますが、代表的な説は次のとおりです。
減圧によって体内にヒスタミンまたはヒスタミン様物質が動員され、体内の水分が貯留し、平滑筋の収縮、血管の透過性、炎症反応が増強するため、気象病が誘発されるとする説。
気象変化が自律神経に影響を与えるため、最初は副交感神経の感受性が亢進(こうしん)、ついで交感神経の感受性が亢進するとする説。
気象の変化をストレスとして考え、下垂体前葉、副腎(ふくじん)皮質系が作動するため起こるとの説。
基本的に身体に最も強い影響力を及ぼすのは「気温」ですが、「湿度」も比較的影響力が大きいとされ、たとえば不快指数の算出においては、気温と湿度の寄与率は10対2の割合と推測されています。また、気温・湿度環境が同じでも、風と日射量の有無・多少でも影響度が異なり、「雨が降ると古傷が痛む」というケースが実際にあるように、降雨やこれをもたらす気圧配置も影響要素であると言えます。
それでは、気象環境の変化という刺激に対して、私たちの身体はどのように対応しているのでしょうか。エアコンや防寒着などの物理的な対応策以前に、私たちには生命活動を維持するために最も適合した体制を自らの内部に形成していくメカニズムが備わっています。この、気象環境の変化に生理的に対応する過程は「適応」や「順応」と呼ばれています。
寒冷馴化や暑熱馴化など単一の気象要素の変化に対する適応
季節順応や高高度(山地など低圧・低酸素・寒冷な環境)順応のように自然の気候変化に対する適応
このように、本来私たちの身体は気象の変化に対して自然と「適応」する能力が備わっているものですが、気象の変化が急激なあまり対応できない場合に「気象病」が起こると考えられています。
このように、本来私たちの身体は気象の変化に対して自然と「適応」する能力が備わっているものですが、気象の変化が急激なあまり対応できない場合に「気象病」が起こると考えられています。しかし、残念ながら気象環境の変化を緩やかにする、ということは私たちには不可能です。そこで、気象病を予防・軽減させるには、自分自身の「適応力」をしっかりと働かせることが大切になってきます。 もともと私たちの身体の機能は、1年を通しての気候の変化はもちろん、毎日の昼夜サイクル(地球の自転)と歩調が合うようにできており、光の中での「活動」と、闇の中での「休息」のために、すべての機能を調整し、発揮しています。これを「体内時計」と呼び、ほぼ昼夜サイクルの時間(25時間)を刻みながら、身体の多くの機能に、活動と休息のリズムを与えています。 昼夜サイクルと一致した生活をしている限り、体内時計も太陽の光によって毎日きちんと調整され、リズムも乱れることはありませんが、昼夜サイクルを無視した生活(徹夜や夜更かし朝寝坊など)をすると、体内時計の調子が狂い始め、一日ごとの生活リズムも崩れていきます。すると、からだの機能もバラバラとなり、結局、体調(健康)を損ねてしまうのです。そうならないためには、ともかく毎朝、窓のカーテンを開け、太陽の光をしっかり浴びて、体内時計をリセットすることが大切です。