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健康まめ知識

成長期の子供が、スポーツでケガをしないための予防と対策(2013年5月)

 

     
 
5月のテーマ:
成長期の子供が、スポーツでケガをしないための予防と対策

 平成24年度から中学校で武道教育が必修となりました。学校が柔道、剣道、相撲の中からどれかを選択するというものですが、比較的用具の費用負担が少ない柔道を選択する学校が多かったようです。しかし、読売新聞社の調べによると昨年度は北海道だけで、12名の生徒が柔道の受け身などの練習中に骨折しています。

正しい受け身を身に付けておくことはたいへん役に立ちますが、成長期の子供の身体の特性を理解した指導でなければ、逆効果になってしまいます。とくに中学生ぐらいの年頃は、背丈が急激に伸びるため、骨折等の障害を起こしやすい時期でもあります。今回はこうしたスポーツ時のケガや障害について、その予防と対策についてご紹介します。

 
     

 

成長期の子供には特に注意を!
 

 強い外力によって突然起こる骨折などのケガと、繰り返される小さな損傷が積み重なって慢性的に発症する障害があります。この障害には、疲労骨折なども含まれます。運動による刺激が生理的な許容範囲であれば、筋肉や神経、血管などの器官は、発達しその運動への適応力が強化されていきます。しかし、この刺激の強度が生理的許容範囲を超えてしまうと、ケガや障害を起こすリスクが高まります。成長期はこの許容範囲が狭い時期にあたるため、よりケガや障害が発生しやすくなると考えられます。

個人差もありますが、平均的に女子が10歳前後、男子は12歳前後が年間における身長の伸びが最も大きな年齢です。身長の伸びが著しいということは、骨が折れやすいもろい時期でもあり、骨の成長に関係する骨端軟骨に起こる障害も多いのです。大きすぎる負荷や生理的許容範囲を超えた激しいトレーニングを続けると、この骨端軟骨がつぶれてしまう可能性があり、骨が十分に成長できなくなってしまうことも考えられます。骨端軟骨は成長軟骨とも言われ、手足の関節に近い所にあって骨の成長をつかさどっています。寝ている間に分泌される成長ホルモンやビタミンなどが影響して成長を促すという「寝る子は育つ」ということわざ通りの働きをする大切な器官なのです。

重い器具を利用したウェイトトレーニングも、この時期に行ってはいけない運動です。筋肉トレーニングは、第2次性徴期に入る16歳から17歳以降に行うなど、子供の運動には、保護者や指導者は十分に注意し、将来に障害を残さないように留意しなければなりません。

熱中症も含まれますが全国の学校における負傷のデータによると、平成22年度の負傷件数は約105万件で、児童・生徒数からみると約8%の発生率ということになります。負傷している箇所は、小学生では顔や頭、腕などに多く、中学生になると顔や頭よりも足腰の負傷が増え、高校生ではさらに足腰の負傷が増えていきます。これらの負傷が繰り返されると、スポーツ障害という故障を引き起こしてしまいます。

   
主なスポーツ障害
 
野球肩
 

 肩の傷害で多い肩関節の脱臼や亜脱臼は、高校生以上に見られるもので、中学生以下ではリトルリーグショルダーと呼ばれるピッチャーによく起こる肩痛があります。リトルリーグで使用する硬式ボールは重く、子供の柔らかい骨には負担が大き過ぎると考えられます。上腕部の肩関節に近い部位の骨端軟骨に障害が起こり、ひどい場合は骨端線難開を生じます。レントゲン写真で骨端部の開大が見られる場合は、数ヶ月の完全な安静が必要になる場合もあります。

水泳肩
 

 ストローク動作の繰り返しで、靭帯が骨をこするために痛みが出ます。早めの治療を行なえば、手術せずに問題なく治す事ができます。

野球肘
 

 投球により生じる肘の痛み全般をさします。ピッチャーに圧倒的に多いもので、全力で投げる事で肘に負担がかかり、骨、軟骨、靭帯に損傷が起こります。指導者は、肘関節の動きの悪い子供にはすぐに投球を禁止し、整形外科の診察を受けさせないと症状は悪化し選手生命を奪う事になるということを肝に銘じなければなりません。

オスグッド・シュラッテル病
 

 成長期に最も多い痛みで、飛び跳ねる動作を伴う激しい運動で膝の下の少し出っ張ったところに痛みを感じます。骨としてはとても弱い箇所なので、少し休んでも痛みが引かない場合は治療が必要になります。

   
予防に大切なのは
 

 スポーツ障害を予防するには、一人ひとりの発育状況を見極めた指導が行われることが大切です。筋力が不足していたり、柔軟性が低下している子供にとっては、運動そのものが負担になり疲労が蓄積して障害を起こす原因の一つとなってしまいます。

指導者は、子供の動きをよく観察し、痛みを訴えてくる前に問題に気づくようにするのが理想です。もちろん適切な治療と安静、ケガ直後のアイシングなども大切ですが、ケガの発生要因を前もって知っておくことが、特に成長期においてはスポーツでケガや障害を予防することにつながります。

   
   

 

2013年05月28日