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健康まめ知識

ぎっくり腰にはご用心(2013年7月)

 

     
 
7月のテーマ:
ぎっくり腰にはご用心

 「ぎっくり腰」を西洋では「魔女の一撃」とも言います。なるほどとうなずかれた方も多いのではないでしょうか。それほど突然、激痛に襲われるのが「ぎっくり腰」です。経験者は、重い物を持ち上げる際には気をつけているはずなのに、腰の入らない姿勢で何かを持ち上げてしまい、また「ぎっくり腰」を経験してしまう……そうした人も多いことでしょう。

今回は、このなんとも理不尽な症状について、その原因と対策法、治療法などをご紹介しましょう。

 
     

 

ぎっくり腰の原因
 

 ぎっくり腰は、「魔女の一撃」と言われるように、急激に起こる腰痛の総称ということになります。一番多いのは腰椎のねん挫で、筋肉や筋膜の一部が切れて背骨の両脇に強烈な痛みが出ます。詳しく言うと、骨盤にある筋肉や筋膜、靭帯や軟骨が損傷して起こるもので、特に多いのが骨盤の仙骨と腸骨からなる仙腸関節に付着している軟部組織の損傷ということになります。

この軟部組織の損傷は、骨盤を支えている筋肉が弱くなり、仙腸関節の身体を支持する能力が低下したことによって生じると考えられています。骨盤を支えている筋肉が弱くなる原因は、腹直筋などの上から支えている筋肉と大腿四頭筋など下から支えている筋肉、そして前後左右から支えている筋肉が、疲労の蓄積やストレスなどで徐々に弱っているところに、急激な動きなどでダメージを受け軟部組織が傷つくのです。

また、栄養分の不足も原因の一つとなります。関節の中のビタミンCが不足すると関節の支持能力が落ちて関節がズレ、ぎっくり腰になると考えられます。特に寒い時期には、身体が寒さに対抗するために副腎からホルモンが分泌されます。このホルモンの生成にビタミンCが必要となり、食生活などでビタミンの摂取が少ない人は、身体の中の組織や細胞中にあるビタミンCが使われ、関節の中のビタミンCが不足してしまうのです。

   
ぎっくり腰の対処法
 

 ぎっくり腰になる人というと、引っ越しや力仕事を日常的に行っている人というイメージですが、意外なことにデスクワーカ-や車好きに多いというデータがあります。悪い姿勢で長時間椅子に座り続けるというのは、腰に悪影響を及ぼしますので、定期的に血液の循環を促すような軽い運動をお勧めします。

また、最近急に体重が増えたという人は、増えた分の体重の負担が腰にも来ているということを認識しなければなりません。体重が増加した後にぎっくり腰を起こしたという人は、また同じ症状を起こす前に体重を減らすことが、一番の予防になります。

一人暮らしでぎっくり腰になると、事は重大です。重傷の場合、全く動けなくなることもあるので、まずメールや電話などの通信手段を確保しましょう。同居している家族などがいない場合は、友人などに症状を話しておくと良いでしょう。

また、次のようなケースでは、内臓疾患も疑われますので、緊急性があると感じた場合は、救急車を手配します。それ以外は、動けるようになったら一度病院の診察を受けてください。

  1. どんどん痛みが強くなってきており、絶え間なく痛む
  2. 熱が出て、冷や汗がでる
  3. 排尿や排便に異常がある
  4. 足にしびれがある
  5. 横になっても、痛みの和らぐポジションが見つからない
  6. 動きと痛みが無関係である
  7. お腹を強く打つなどの大きなケガを最近した

 ぎっくり腰になって最初にすべきことは、アイシングと痛みの少ない姿勢で横になって安静を保つことです。痛みの少ない姿勢は、横向きで膝を抱えるようにします。

ぎっくり腰も手や足のねん挫と同じように障害が起きた当初は、幹部が炎症を起こし症状が悪化していきますので、アイシングが有効です。アイシングは、ビニールの袋に氷を入れて一度水を入れてから、水を捨てます。これで少し温度が上がり凍傷を起こしにくくなります。それでも凍傷予防のためには、一度に20分以上連続で幹部にのアイシングをしないでください。

痛みの起きた直後から、幹部が熱を持っていると感じる2?3日は、断続的にアイシングをします。また、安静にしなくてはなりませんが、食事やトイレなどは、動ける範囲でなるべく動くようにしましょう。完全な安静状態よりも回復が速くなります。お風呂も数日の間はシャワーだけにし、湯船で身体をあたためることは避けましょう。

   
どうしても数日の安静ができない人は
 

 ぎっくり腰は、数日の安静が何より大切ですが、どうしても仕事などで休むことができない場合、神経ブロック注射という治療手段があります。

これはペインクリニック科や麻酔科の外来通院で行われます。消毒後に皮膚の痛み止めの注射をした後、やや太めの針でブロック注射を行います。効果としては、痛む場所の近くの神経をブロックすることで痛みの悪循環を断ち切り、ぎっくり腰の痛みを早期に取り去ることが可能になります。痛みの悪循環とは、患部が痛みにより血流が悪化し、筋肉を固くしさらに痛みを増幅するという状況で、この循環を麻酔でブロックするのです。

その結果、血管の拡張を促し血流を改善し患部に溜まった乳酸、インターロイキンを排出し、痛みを取るとともに酸素や患部を修復するタンパク質を運び込み治癒力を高めてくれます。以前、オリンピック本番直前に腰を痛めた選手が、この神経ブロック注射をしたという報道がありました。安静にしていられない、象徴的な例ですね。この注射自体の痛みが怖いかもしれませんが、ぎっくり腰の痛みそのものが、注射の痛みを和らげてしまうと言います。

熟練の麻酔科医師が行う場合、副作用もそれほど心配ありません。まず、医療機関に相談してください。

   
ぎっくり腰の予防はストレッチで
 

 腰の筋肉に疲れがたまったまま眠ってしまうと、起床時やその直後にぎっくり腰を起こすリスクが高まります。1日の筋肉疲労を緩和させるためにも、寝る前のストレッチが有効です。入浴後や就寝前のストレッチ(ひざストレッチ・両ひざストレッチなど)を習慣にしておくと、予防に効果的です。

ぎっくり腰は経験者でないと、そのつらさはわかりにくいものです。ねん挫や脱臼などは同情されるのに、なぜかぎっくり腰になったというと笑いを誘うことが多いように感じます。なってからでは遅いので、普段からストレッチやビタミンCの補給など、予防にも努めておきましょう。

   
   

 

2013年07月28日