健康寿命をのばす生涯スポーツについて(2013年11月)
|
||||||||
年齢相応にスポーツ競技を楽しむ | |
高齢者になれば、誰もが運動機能の低下を実感することになります。しかし、低下のレベルは年齢に応じて一律というわけではありません。壮年のベテラン登山者でも難しいエベレスト登頂を、独自のウォーキングで肥満と糖尿病を克服し80歳で成し遂げた三浦雄一郎氏。60歳で剣道を始めて80歳で六段を取得したという人もいます。 過酷さで知られるトライアスロンに、60歳で初挑戦するという人も少なくありません。様々なスポーツのマスターズ大会には、毎年多くの高齢者が参加し、年齢区分ごとの記録も更新されるなど活躍の様子を耳にします。 例えば、4年毎に開催される最も大きな国際総合スポーツ大会であるワールドマスターズゲームズは、1985年のカナダ・トロント大会では22の競技が行われ、8,305人が参加。24年後の2009年のオーストラリア・シドニー大会では、28競技に28,676人が参加しています。 国内で毎年開催される日本スポーツマスターズは、原則35歳以上と規定された言わば国体の中高年版。今年も9月13日から17日にかけて行われた北九州大会に、水泳、サッカー、テニス、自転車競技、空手道、ゴルフ等13競技が行われました。 11月30日、12月1日に行われる水泳のジャパンマスターズには、今年も99歳まである5歳刻みの年齢区分に3000人の参加が予定されています。 マスターズ大会とはいえ、競技スポーツには、身体の柔軟性、筋力、心肺能力などが、日常生活レベルを超えて競技レベルであることが要求されます。こうしたスポーツに意欲的に取り組む人たちは、特別に頑健な身体をしているのでしょうか。 確かに、どんなに過酷なトレーニングをしても身体を壊さないという人も中にはいます。しかし、殆どの人は、どのぐらい練習するとケガをしやすくなるか、どのような疲労をためると免疫力が低くなって、風邪を引きやすくなるかという自分なりの経験知をもって、長い競技生活を楽しんでいるのです。つまり賢く自分の身体と対話しながら、日々の練習をコツコツと積み上げ、体調を管理しているのです。 アンチエイジングという視点で見た場合、こうしたマスターズ競技から得られるノウハウは少なくありません。最も大切なことの一つは、自分の身体と対話する能力を身に付けることができるということでしょう。 世の中には、驚く程たくさんの「身体に良い」とされる健康法、トレーニングメソッド、食事法、養生法などがあります。こうしたものは、どれも身体に良さそうで次々に試したくなるものばかりです。しかし、中には、提案されている理論が真っ向からぶつかり合い、正反対のことを主張している場合もあります。 アンチエイジングを目指す食事法でも、「健康のために肉を食べなさい」というものと「長生きしたいなら肉は食べるな」という本が、書店に並べてあったりします。「40代からの節制は寿命を縮める」と「粗食のすすめ」というタイトルの本もあります。また、バナナや納豆やトマトジュースやサバの缶詰が話題になり、食料品店の棚から消えてしまうということもありました。ブームに乗って試した人も多いことでしょう。しかし、こうしたことを試してみるということも、あながち無駄だったということばかりではないのです。そのときに自分の身体にどんな変化が起きたかということを観察することで、自分の体質や適応状況を知ることができるのです。 身体が軽くなったり、重くなったり、胃が重くなったりスッキリしたり。寝起きが良くなったり、寝付きが悪くなったり。熟睡できたり、頭が痛くなったり、筋肉痛になったり、痩せたり体重が増えたりといった自分の身体に起きた変化を注意深く確認しておくこと、自分に向くものと向かないものを見極めて生活に取り入れて行くことが、アンチエイジングに繋がると考えられます。そういった意味で、常に身体を意識することになるスポーツを一つ趣味にしておくことをお勧めします。 |
|
健康寿命をのばすために | |
先に挙げた三浦雄一郎氏の父親である三浦敬三氏は、100歳を超えても現役スキーヤーでしたが、健康寿命をのばす長寿遺伝子が活性化している例として加齢制御医学の見地からも注目されました。99歳でモンブラン山系最長であるバレーブランシュ氷河の滑走を成功させた三浦敬三氏は、オフシーズンも毎朝4キロのウォーキングをし、次のスキーシーズンに備えていたそうです。永くつき合えるスポーツを一つ身につけておくことが、健康寿命をのばすということを証明している好例ですね。 |
|