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健康まめ知識

胃が痛いのはストレスのせい?(2006年6月)

 

     
 
6月のテーマ:
胃が痛いのはストレスのせい?
 すっかり暖かくなり、半そで一枚で過ごせる陽気になりましたね。でも夜には肌寒い日もしばしば。風邪などに気をつけて過ごしましょう。さて、今回も前回に引き続きストレスが引き起こす心身の不調についてのお話です。今回は大切な消化器官・胃に注目し、胃潰瘍をはじめとするストレス潰瘍についてお話します。
 
     

 

ストレス潰瘍とは?
 

 ストレス潰瘍とは、胃潰瘍(十二指腸潰瘍も含む)の中でも、ストレスの影響が強いもののことで、多発性な上、再発しやすいという特徴をもっています。潰瘍の大きさや深さは様々で、同時にいくつもの潰瘍ができるケースも珍しくありません。

簡単に言うと胃壁や十二指腸がただれて潰瘍ができるという病気ですが、症状で特徴的なのは空腹時におこる腹痛がです。このほか、胸やけやげっぷ、悪心、嘔吐、便秘などがあります。吐血や下血を伴う場合は潰瘍がひどくなっている可能性が高く、早急な治療が必要です。

 
ストレスと潰瘍の関係
 
 近年、潰瘍の原因にヘリコバクター・ピロリという細菌(ピロリ菌)の存在が注目されていますが、ストレスもやはり潰瘍の大きな誘因であると考えられています。

胃潰瘍の原因は、消化器官である胃で分泌される胃液と、その胃液から胃の粘膜を守るはたらきとのバランスがくずれることによると考えられています。精神的なストレスは胃液の分泌を異常に高める一方で、胃壁の防御機能を弱めるため、自分の胃液で胃壁をいじめる結果になり、潰瘍をおこしてしまうのです。

また、慢性的な過労による不眠、倦怠感、肩こり、頭痛など体の不調と同時に、焦燥感、抑うつ感、過敏など精神的な不調を伴うこともあり、胃潰瘍はやはり生活上のストレスと深く関わっていると考えられます。

 
こんな人は、うつの可能性がピロリ菌について
 
 一方、潰瘍はストレスが直接の因子ではなく、ピロリ菌こそが最大の原因であるとの説もあります。これまで、胃には強い酸があるため細菌は存在しないと考えられていましたが、1983年に胃の中から細菌が分離・培養され、その存在が確認されました。ピロリ菌は自らが作り出すアンモニアで胃酸を中和し、胃の中にすむことができる細菌で、様々な毒素を出すため、胃炎や潰瘍を引き起こします。

ピロリ菌の感染源についてはまだ解明中ですが、水や糞便を介して、口から感染するという説が今のところ有力なようです。これは衛生設備の整った先進国では感染の割合が低いことに比べ、発展途上国では多くの人がピロリ菌に感染していることから推測されています。日本では40代以降の人の約半数が保菌者であると言われ、発展途上国と同じくらいの感染率となっています。しかし、30代までの人では、他の先進国と同様低い感染率にとどまっているようです。

ピロリ菌こそが潰瘍の最大の原因であると考える説では、ストレスは潰瘍の誘因にはなりうるものの、ピロリ菌に感染していない人は例え大きなストレスがかかったとしても、潰瘍にはならないと言われます。これまで、潰瘍が再発を繰り返すのは、潰瘍自体は抗潰瘍薬で治すことができるものの、「潰瘍症」という体質までは治せないためだと考えられていました。しかし、ピロリ菌を除菌すれば抗潰瘍薬を服用しなくても、潰瘍は再発しないという研究結果が多く発表され、「潰瘍症」という体質に対して疑問の声もあがっています。

ピロリ菌の感染については血液検査、または内視鏡検査で簡単に分かり、尿や便から調べることもできます。除菌治療で一般的なのは抗生物質と胃酸分泌抑制薬を1週間服用する方法が一般的で、8割以上の人が除菌に成功すると言われています。除菌に成功すれば、以後胃炎や潰瘍の薬を飲み続ける必要がなくなると、その効果が注目されています。

 
一般的な治療
 

●何科に行けばいいか

胃潰瘍が心配な場合、まずは内科、消化器科、胃腸科へ行き、診断を受けましょう。胃X線検査で異常が発見されると、内視鏡検査で確認という手順が一般的で、これらで外科的治療が必要と判断されると、消化器外科へ転送されます。

●内科的治療

内科的治療では、攻撃因子である胃酸をおさえる胃酸分泌抑制剤と、防御因子を強める粘膜保護剤の服用が行われます。医師の指示を守り、処方された薬をきちんと服用すれば、ほとんどの症状が2~3週間で軽快します。ピロリ菌に感染している場合は、先にも述べたように抗生物質を併用して除菌をすると、再発はしないと言われています。しかし、ストレスの影響で潰瘍が治りにくい場合や、再発を繰り返す場合は、心療内科的治療を薦められることがあります。この場合、カウンセリングや自律訓練法を行ってストレスを軽減したり、抗不安剤や抗うつ剤などの薬物療法を行います。

 
 ストレス潰瘍になりやすい人の性格傾向として、几帳面、内向的、こり性、過剰適応(周囲に気を使いすぎる)、感情を表に出さない(自分の中に溜め込む)などが挙げられます。予防のためにも、お酒の飲みすぎや食べすぎ、タバコの吸いすぎに注意し、日頃の体調管理に気を配ることも大切ですが、自分なりのストレス解消法や悩みを話せる相談相手を見つけるなど、ストレスをためないような気配りも必要です。また、消化を助けるために食べ物はよく噛む、胃の調子が悪いときは刺激物(香辛料、アルコール、コーヒーなど)の摂取を控える、喫煙を控えるなど、胃の負担を減らしてあげることも大切。

胃の調子が悪いと、食欲がわかず、体も心も元気がなくなってしまいます。胃腸を大切にし、おいしく食べて、健康に暮らしましょう。

 

 

2006年06月28日