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健康まめ知識

「食中毒」に気をつけよう!~食中毒の主な原因と症状~(2011年5月)

 

     
 
5月のテーマ:
「食中毒」に気をつけよう!

~食中毒の主な原因と症状~

天気の良い日は半袖一枚でも過ごせるほど暖かい日も増え、初夏を感じる季節になりました。今年は冬から春にかけて寒さが長引いたため、気温の上昇が余計に急激に感じられるようです。気温や湿度が上がるにつれて、心配になるのが「食中毒」です。焼肉店で起こった食中毒事件も記憶に新しいですが、外食時はもちろん、普段の食事にも潜む「食中毒」の危険についてお話します。

 
     

 

食中毒とは
 

 食中毒とは、食中毒の原因となる細菌やウイルスが付着した食品や、有害・有毒な物質が含まれた食品を食べることによって起こる健康被害のことです。

主な症状は嘔吐や腹痛・下痢などの胃腸障害ですが、なかにはO-157やフグ毒のように死に至る食中毒もあります。特に、体の抵抗力の弱い子どもや高齢者が食中毒にかかると重症化する傾向があります。また、食中毒は通常、人から人へ感染することはありませんが、腸管出血性大腸菌(O-157など)、ノロウイルス、赤痢菌などは感染力が強く、人から人へ感染することがあります。

   
食中毒のおもな原因物質と症状
    食中毒には様々な原因物質がありますが、微生物(細菌、ウイルスなど)によるもの、化学物質によるもの、自然毒によるもの及びその他に大別されます。

■細菌によるもの
<感染型>
・サルモネラ菌

生肉、生レバー、食肉加工品、生野菜、生ケーキ、うなぎ、スッポンなどに含まれます。 潜伏時間は約5時間から72時間(平均12時間)で、主な症状は、下痢・腹痛・発熱(38℃~40℃) の他、嘔吐・頭痛・脱力感・倦怠感を起こすこともあります。
・腸炎ビブリオ

近海の魚介類(赤貝、アオヤギなど)、魚介類調理後の包丁、まな板などに含まれます。

潜伏時間は約10時間~24時間(短い場合で2~3時間)で、主な症状は、激しい腹痛、下痢などの他、発熱・はき気・おう吐を起こす場合もあります。
・カンビロバクター

生肉(鳥肉など)、サラダ(二次汚染)などに含まれます。

潜伏期間は1~7日(平均2~3日)と長いことが特徴で、主な症状は、下痢、腹痛及び発熱の他、倦怠感、頭痛、めまい、筋肉痛等が起こることがあります。

初期症状は、風邪と間違われることもあります。
・エルシニア菌

牛乳、乳製品、食肉などの冷蔵品に含まれます。

潜伏期間は2~5日と長く、摂取した菌の量や感染者の年齢によって、症状は異なりますが、発熱、下痢、おう吐などの症状の他、虫垂炎のような猛烈な腹痛におそわれることもあります。
<毒素型>
・黄色ブドウ球菌

おにぎり、弁当、菓子、煮豆などに含まれます。

潜伏時間は1~5時間(平均3時間)と他の食中毒菌に比べて短いのが特徴で、激しい嘔吐・腹痛の他、下痢を伴うこともあります。発熱は少ないようです。
・ボツリヌス菌

缶詰・びん詰め食品、いずし(魚肉発酵食品)などに含まれます。

潜伏時間は8時間~36時間で、主な症状は吐き気、嘔吐など。症状が進むと視力障害、言語障害、えん下困難(食品を飲み込みづらくなる)などの神経症状が現れ、重症例では呼吸困難により死亡することもあります。
<その他>
・病原性大腸菌(O-157、O-111など)

生レバー、生肉、生サラダ、水などに含まれます

潜伏期間は3~5日で、激しい腹痛と大量の新鮮血を伴う下痢が特徴ですが、健康な成人では軽症または無症状に終わる場合もあります。また、まれに下痢が始まってから数日から2週間以内に貧血や急性腎不全などの症状を呈する溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症することがあります。

ベロ毒素という毒素をつくるので若年齢層の子供などは重症化しやすい傾向があります。

■ウイルスによるもの
<感染型>
・ノロウイルス

生かきなどの食品、水などに含まれます。

潜伏時間は24~48時間で、吐き気やおう吐・腹痛・下痢・発熱(38℃以下)があります。通常はこれらの症状が1~2日続いた後に治癒し、後遺症もありませんが、体力の弱い乳幼児、高齢者で脱水症状がひどい場合には、水分と栄養補給を行い、体力が消耗しないように注意が必要です。

また、感染しても発症しない場合や軽い風邪のような症状で済む場合もあります。
・A型肝炎ウイルス

水、野菜、魚介類などに含まれる。

感染力が強く集団発生することがある食中毒で、急性肝炎、全身倦怠感、発熱、筋肉痛、黄疸、肝腫大、食欲不振などが起こります。

■自然毒によるもの
<植物性自然毒>
・毒キノコ

ツキヨタケ、カキシメジ、クサウラベニタケ、ニガクリタケなど。 摂取後30分~3時間程度で徴候があらわれ、嘔吐、下痢、腹痛などの症状が起こります。 ドクツルタケ・シロタマゴテングタケは猛毒で、徴候は6時間以上(通常10時間程度)であらわれ、嘔吐、腹痛、下痢、肝臓腎臓の機能障害を起こして死亡する例もあるので特に注意が必要です。
・ジャガイモの芽

ジャガイモはソラニンやチャコニン(カコニン)などの有毒なアルカロイド配糖体を含みます。特に皮層や芽に多く含まれ、嘔吐、下痢、呼吸困難などの症状が起こることがあります。
・青梅、アンズなどの種子

体内呼吸を止め、死に至らせる猛毒・青酸(シアン)配糖体を含んでいます。
<動物性自然毒>
・フグ毒

フグの種類や季節によってテトロドトキシンを含む部位や毒の強さは異なりますが、フグ毒はテトロドトキシンと呼ばれ、青酸カリの1,000倍の毒力を持っています。 潜伏期間は1時間以内と短く、くちびるや手の感覚麻痺、運動神経麻痺、呼吸麻痺などが起こり、発症後死に至るまでは8時間以内と言われています。

■化学毒によるもの
・農薬など

洗剤や農薬等が混入した食品を摂取したことによって起こる食中毒です。 嘔吐や腹痛、下痢が起き、ときにはめまいやショック症状を伴うこともあり、死亡する危険性もあります。
・ヒ素・銅・鉛・錫など

金属の器具や容器から溶出したスズや銅を摂取したことによって起こる食中毒や、ヒスタミンを多く蓄積した食品を摂取したことによるアレルギー様の食中毒があります。 嘔吐や腹痛、下痢が起こる他、めまいやショック症状を伴うことがあり、死亡する危険性もあります。

このように、食中毒は場合によっては死に至ることもあるため、軽視は絶対に禁物です。食中毒かな?と思ったら、すぐに医療機関で受診をしてください。その際、原因と思われる食品やおう吐物、便などをビニール袋などに入れて持参すると、診断の際の重要な手がかりになります。(※二次感染を防ぐため、取り扱いには注意してください)

食中毒を防ぐには、細菌(原因物質)を体内に入れないことが大原則です。次回は食中毒の予防と対策についてお話します。

 

 

2011年05月28日