検査では見つからない「仮面高血圧」に注意しましょう(2018年3月)
健康診断では正常という結果が出ても、時間帯によっては高血圧になってしまう「仮面高血圧」という症状があります。仮面高血圧は検査で見つからないため、深刻な病気を引き起こすまで気づけないケースが多いなど、危険があります。万が一、仮面高血圧になってしまってもすみやかに気づけるように、ご自宅でも血圧をチェックしておきましょう。
◆仮面高血圧とは
仮面高血圧とは、健康診断や検査で血圧を測ると正常値なのにもかかわらず、ご自宅などで別の機会に測ると、高血圧になっていることを指します。正常血圧の仮面をつけているという意味で、このような名称で呼ばれるようになりました。仮面高血圧になる原因は、以下のようなものが考えられます。
- 普段の喫煙量が多い(病院で検査を待つ時間はタバコが吸えないため血圧が下がる)
- 日頃強いストレスがある(病院では医師に診てもらう安心感によりストレスが和らぐ)
- 加齢による動脈硬化が起きている
- 心臓や内臓に障害がある
- 服用している降圧薬の効き目が早朝には薄れている
- 糖尿病が悪化している
生活習慣の影響で検査を受けるときに血圧が下がりやすい方や、体調によって血圧の変動が大きい方は、仮面高血圧になりやすくなっています。
この仮面高血圧と似たものに、「白衣高血圧」や「ストレス高血圧」があります。「白衣高血圧」とは、仮面高血圧とは反対に、検査のときに血圧が高くなってしまう症状です。医師や看護師の白衣を見ると、緊張して血圧が高くなってしまうことが原因だと考えられています。白衣高血圧であっても、普段は正常血圧で高血圧による合併症がない場合は、特に治療の必要はありません。
「ストレス高血圧」とは、ストレスに反応することで血圧が上がる症状を指します。ストレスの多い職場で働いている方や、長年ストレスを抱えている方が発症しやすい症状です。災害時にも、強い心理的負担からストレス高血圧になる方が多くいらっしゃいます。
◆仮面高血圧は一般的な高血圧よりも健康リスクが高い
健康と診断されがちな仮面高血圧ですが、実は一般的な高血圧よりも病気になるリスクが高いと言われています。アメリカ・コロンビア大学のトーマス・ピッカリング教授の研究報告によれば、脳心血管疾患のリスクで正常血圧の方が1だとすると、持続性高血圧の方が2.94倍、仮面高血圧の方が3.86倍になるとわかりました。仮面高血圧の方は検査では正常と診断されるため、動脈硬化が進んでいても気づかずに放置してしまい、心筋梗塞や脳卒中といった命に関わる病気を引き起こしてしまうケースが多いのです。
また、すでに高血圧と診断されている方の中にも、時間帯による血圧上昇に気づいていない方がいらっしゃいます。たとえば、降圧剤を使用しているものの、24時間にわたり降圧できていないため、早朝には高血圧になるといったケースです。このような場合は、服用している薬を長時間作用型のものに変える必要があります。高血圧になっていることに気づかない状態は大変危険であるため、よく確認しておくようにしましょう。
◆仮面高血圧の対処法
仮面高血圧に気づくためには、ご自宅で血圧を測るのが効果的です。健康診断では異常がなかった方も、一度はご自宅で測定しておきましょう。なお、家庭で血圧を測る際は、以下の点に注意してください。
- 1日2回、決まった時間に測る
- 食後1時間以上経ってから測る
- 直前にタバコを吸ったり、コーヒーを飲んだり、薬を服用したりといったことは避ける
- 常に同じ腕を、同じ姿勢で測る
- 腕を締め付けない状態で測る
- 寒い場所で測らない
測定した結果、ご自宅で高血圧になっているようなら、病院で診てもらうことをおすすめします。
また、仮面高血圧になりにくい生活も心がけましょう。仮面高血圧になりやすい方には、このような特徴があります。
- 睡眠時間が短い
- 喫煙をする、または受動喫煙を受けている
- お酒をたくさん飲む
- 職場や家庭でのストレスが大きい
- 塩分をたくさん摂る
- メタボリックシンドロームである
仮面高血圧にならないためには、これらの状態をできるだけ避けることが必要になります。血圧を正常に保つためにも、普段から健康的な生活を心がけましょう。