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健康まめ知識

食料自給率とフード・マイレージ(2008年1月)

 

食料自給率とフード・マイレージ
茨城県栄養士会
管理栄養士  大津 美紀
 
 
  みなさん、「食料自給率」ってご存知ですか?

食料自給率とは、国民一人一人が食べている食料を国内産でどれくらい賄っているかを示す割合のことです。ニュースや新聞などで使用されている食料自給率は、一般的に、カロリー(熱量)で計算した数字です。

食料自給率は下記のように算出することができます。

2007(H19)年8月10日、農林水産省によると、2006年度の日本の食料自給率は39%に下がったと発表されました。これは、1993(H5)年に冷夏でお米が不作であった年以来の低い水準になってしまいました。では、以前のわが国の食料自給率はいったいどのくらいだったのでしょうか。図に2005(H17)年までの食料自給率の推移を示しました。どうしてこのように低い水準になってしまったのでしょうか。実は、私たちの食生活の変化と関わりがあるのです。

 
 
  図のように、私たちの食生活は主食のお米と野菜などの多様な副食から成り立った食生活というものから、お米などの主食が減り、主菜と脂質が増加するということが起こり、栄養の偏りが生じてしまったのです。またライフスタイルの変化、食品に関する技術の進歩やグルメ化なども影響を与えたものの1つです。これらの栄養の偏りなどの変化は、昨今言われている、メタボリックシンドロームなどの病気の発症だけでなく、食料自給率とも関連があるのです。
 
 
  次に、日本以外の国の自給率はどうなっているでしょうか?

日本は先進国の中で低い水準になっています(図を参照)。他国に比べて低い水準になっているのは、先ほどあげた食生活の変化や農業従業者の減少の影響だけでなく、国土面積や農地面積、人口などが関連しています。 国連の推計によると、今後、途上国の人口が大幅に増加することにより2050年には世界人口が92億人に達すると見込まれております。また、途上国の経済成長による食料消費の拡大が予想されます。さらに、地球温暖化防止対策の1つとして、穀物から燃料用のエタノールを作る取り組みが行われております。そのことにより、私たちの食料や家畜などの飼料になるとうもろこしが減ってしまうのです。

 
 
 現在の状況で、今後、世界の食料は足りるのでしょうか。

わが国は食料自給率が低いことからもわかるように、輸入に依存している現状です。2006(H18)年度の内閣府が行った「食料の供給に関する特別世論調査」でもわが国の将来の食料供給に「不安がある」とする回答が約8割あり、その理由として「国際情勢の変化による輸入の減少」という回答が約6割でした。また、私たちの食料はどのように海外から運ばれているのでしょうか。飛行機や船で食料を運んできます。つまり、食料を運ぶためのエネルギーが必要とされていることがわかります。

このことから、「フード・マイレージ」という考え方があります。これは「相手国別の食料輸入量」に「輸送距離」をかけたもののことです。

 
 
 できるだけ、食料の運搬にかかるエネルギーを抑えることは、環境への影響を軽減することにもつながるのです。

一方、政府は、食料自給率を2015(H27)年度までに45%に引き上げることを目標にしております。目標を達するべくさまざま取り組みを行っております。2005(H17)年に制定された食育基本法の背景にも自給率の低下があり、食育の推進とともに食料自給率をあげる取り組みがされております。地産池消、地域で生産されたものを地域で消費しようとする取り組みもその1つです。また、先ほどあげたフード・マイレージによる環境への影響などを考える時、地産池消を取り組む1つの理由となるのです。

私たちにもすぐにできそうなものとは思いませんか?他に、重要なものとして、日々の「食生活の見直し」ができないでしょうか。食生活の見直しは、みなさんの一人一人の健康や病気の予防だけでなく、食料、さらには、環境にもつながっていくのです。健康的な生活を営むために、望ましい食生活を送り、また、地域でとれた食材を取り入れてみましょう。

食卓の上に並ぶ食材がどこのものか?どこからやってきたのか?考えてみてはいかがでしょうか。

 
参考文献

農林水産省  「我が国の食料自給率 平成17年度食料自給率レポート」

農林水産省HP  http://www.maff.go.jp

図については農林水産省HPより抜粋

内閣府  「食料の供給に関する特別世論調査」

 

 

 

2008年01月28日