オーラルフレイルとは?お口の機能を維持するための予防と対策(2022年4月)
最近、うまく噛めない食べものが増えたり、滑舌が悪くなったように感じたりすることはございませんか? このような症状は、もしかすると「オーラルフレイル」の前兆かもしれません。高齢になり、心身の活力が低下した状態を「フレイル」と呼びますが、オーラルフレイルは、全体的なフレイル進行の前兆になると考えられています。今回は、オーラルフレイルについての基礎知識や、口腔機能を維持するための予防・対策法をご紹介します。
◆オーラルフレイルとは?
オーラルは「口」、フレイルは「虚弱」という意味を持つ言葉です。オーラルフレイルとは、噛む・飲み込む・話すなどの口腔機能が衰えることを指します。
オーラルフレイルは、早期の老化現象を示唆する重要なサインであるといわれています。また、噛む力が衰えることで食の偏りが起きたり、滑舌が悪くなることで他者との関わりの減少を招いたりするため、フレイルとの深い関係性が指摘されています。オーラルフレイルの進行が、身体的・精神的・社会的な健康に悪影響を及ぼすと考えられているのです。
オーラルフレイルは早期発見および適切な対応を行うことで、元の健康な状態に戻すことができるという大きな特徴があります。ただし、オーラルフレイルの始まりは、食べこぼしや少しのむせ、滑舌の低下、口の乾燥など、些細で見逃しやすいため注意が必要です。
◆オーラルフレイルの予防法
オーラルフレイルが進行すると、筋力や認知機能など、心身の活力が低下したフレイル状態に陥りやすくなるといえます。要介護のリスクを減らすためにも、オーラルフレイルの予防に努めましょう。
・口腔内を清潔に保つ
オーラルフレイルは段階的に進行し、虫歯や歯周病がその第一段階といわれています。虫歯や歯周病が進行すると、口腔機能が低下し、食べることや話すことに支障が出てきてしまいます。虫歯や歯周病のリスクを減らすために、口腔内の清潔を保ちましょう。毎日の歯磨きやフロス、歯間ブラシに加え、かかりつけの歯科で定期的に検診を受けることをおすすめします。
・口腔機能維持のためのトレーニング
口腔機能とは、食べる機能や会話をしてコミュニケーションをとる機能など、日常生活に欠かせない大切な機能といえます。食べるためには、歯で食べものを口に取り込み(捕食)、飲み込む(嚥下)という一連の動作(咀嚼)を行う必要があります。また、人との会話を楽しむためにも、発音したり表情を作ったりなど、喉や唇、舌、口周りの筋肉を多く使用していることがわかります。口腔機能の衰えを予防するために、以下にご紹介するトレーニングを、ぜひ試してみてください。
◆オーラルフレイルの対策トレーニング
オーラルフレイルは進行してしまっても、適切な対策をとることで改善する可能性があります。ここでは、オーラルフレイルの予防・改善に役立つ、トレーニング法をいくつかご紹介します。
・口周りや舌の筋力をアップさせるトレーニング
唇をすぼめて「う」の発音、唇を横に開いて「い」の発音を繰り返すことで、唇や口の動きがスムーズになります。また、うがいするように頬を膨らませたりすぼめたりする動きを繰り返せば、頬の体操になります。どちらも、気がついたときにいつでも行えるトレーニングです。
・嚥下機能をアップさせるトレーニング
大きく口を開けて10秒間保持した後、しっかり口を閉じて10秒間休みます。朝晩2セット行いましょう。また、舌先を少し出したまま、口を閉じてつばを飲み込むだけでも嚥下機能アップ効果が期待できます。
・咀嚼機能をアップさせるトレーニング
ガムを噛むだけでも咀嚼に必要な筋肉を鍛えることが可能です。片側のみで噛まず、唇を閉じて左右両側で均等に噛むようにしましょう。食事の際も、ひと口で30回以上噛んだり歯ごたえのある食材を選んだりすることで、咀嚼のトレーニング効果が期待できます。
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オーラルフレイルの基礎知識や、予防・対策法などをご紹介しました。オーラルフレイルは、可逆的であるという特徴があるため、早めに気づいて対策をとることで改善が望めます。オーラルフレイルは全体的なフレイルと深い関わりがあると考えられます。今回ご紹介したトレーニングなどを日常生活に意識的に取り入れ、予防に努めましょう。