高齢者以外も気をつけたい「骨粗しょう症」(2012年12月)
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「骨粗しょう症」とは | |
骨は、カルシウムやコラーゲンなどの繊維によって構成されていますが、この構成比は変わらなくても絶対量が不足し、骨の微細構造が劣化した状態を「骨粗しょう症」といいます。初期の症状は、背骨や腰の痛みを感じる程度ですが、進行すると骨がつぶれてきて背中や腰が丸くなってきます。
骨密度の基準値は、骨密度がピークを迎える20歳から44歳までの間の平均値を取り、その基準値から80%以下を「骨減少域」、70%以下を「骨粗しょう症」と判断します。男女ともに生理現象として、自然に骨量は減少してきますが、女性は閉経を境に減少量が増加し、60歳代で約3割、80歳代では約6割の人が発症すると言われています。 一般的に「骨粗しょう症」の原因、または危険因子とされるものは、加齢、性別、早期の閉経、やせた体格、薬物による影響、運動不足、カルシウム摂取不足、ビタミンDの摂取不足、喫煙、アルコールの過剰摂取、偏食等があげられます。 しかし、Aさんの場合は、多少アルコール摂取量が多いという程度でこうした例にはあてはまりませんでした。もう少し、要因について掘り下げてみましょう。 |
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代謝による骨量の低下 | |
様々な栄養素は、身体の中に取り込まれ、必要な箇所で利用された後、不要となったものは排泄されるという「代謝」が行われます。カルシウムも同様で、身体に取り込まれ硬い骨としての役割を果たし、また身体の外に排出されることを「カルシウム代謝」といいます。このカルシウム代謝が激しいスポーツやある種の薬物により過剰に促進されることがあります。良く知られる薬剤でステロイドというホルモン剤もこれにあたります。ステロイドは抗炎症剤として効果的な薬ですが、その利用には注意が必要で、常用すると1年程で骨量が著しく減少するとされています。どうしてもステロイドを使わなければならない場合、カルシウムとビタミンDを補給して副作用を押さえる必要があります。
また、骨折してギプスで固定すると1日に1~2%の筋力低下とともに骨量の低下も起こります。宇宙飛行士が無重力の環境で、1日あたり200mgのカルシウムが骨から失われるというのも骨に刺激を与えないという同様の要因からと考えられます。初期の宇宙飛行士は、このため地球に帰還すると筋力と骨量の低下でまず立って歩けないという状況になっていました。骨に刺激のない無重力の環境では、身体が骨のカルシウムを不要なものとして、代謝してしまったわけです。 逆に、骨に加重による力が加わるとその骨はストレスで変形します。変形の割合が一定の範囲を超えたとき、骨はそのストレスに負けまいとして骨量を増やします。骨の量が増えてそのストレスによる変形の割合が一定範囲内に収まるまで、骨は強くなり続けるという性質があるのです。 |
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転んで骨を折らないために | |
高齢者の約3割が年間に1回以上転倒を経験するというデータがあります。その数%が骨折を起こしていると考えられ、その2割以上が、大腿骨頸部骨折だとされます。
Aさんは、幸い50歳という比較的若い年齢だったため、1ヶ月安静にし、食事と投薬で骨は元通りに回復しましたが、高齢者の場合、治療に時間がかかる場合もあり、そのまま寝たきりになってしまうケースも少なくありません。 「骨粗しょう症」の予防のためには、骨量を増やす目的ばかりでなく、できるだけ転倒しないような身体作りも大切になってきます。転倒は、バランスを崩したときに起こりますので、バランスを保つための反射神経に連動する筋力をつけましょう。 |
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正しいスクワット | |
どこでも簡単にできるスクワットで、身体の重量を十分に支えることができる筋力を養います。
肩幅より少し広く足を開き、足先を外側に開いて立ちます。手を腰か太ももに置いて、息を吸いながらお尻を突き出すようにして太ももが床と平行になるようにしゃがみます。大切なのはこのとき背筋を伸ばしておこなうこと。息を吐きながらゆっくりと立ち上がり、膝が伸びきらないところで止まって、またしゃがみます。 膝を伸ばしきると膝の負担が大きくなるのと筋肉に対するトレーニング効果が少なくなるので、必ず膝を伸ばしきらずに続けてゆっくりしゃがみます。これを無理のない回数行い、毎日継続するようにしましょう。 |