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健康まめ知識

健康への第一歩は歯から(2013年1月)

 

     
 
1月のテーマ:
健康への第一歩は歯から

 市民合唱団で歌われている方に、練習はさぞ大変でしょうと訊ねたところ意外な答えが返ってきました。きついのは歌の練習ではなく、口臭だというのです。往々にして年齢層が高いため歯周病にかかっている人の割合が多いようです。歯周病からくる口臭を我慢しながら、声を合わせて練習をするのはきついと言うのです。日本人の約70%の人が歯周病にかかっているというデータがあります。歯を失う原因としても虫歯よりも歯周病の方が多いのですが、普段あまり自覚症状が無いために、歯周病のケアには無関心になりがち。しかし、気づかないうちに周囲の人には多大な迷惑をかけていることもあるのです。今回は、この歯周病について紹介します。

 
     

 

歯周病とは
   虫歯は、歯そのものが病気になってしまうものですが、歯周病は、歯を支えている組織が壊れていく病気です。その始まりは、歯の汚れ。歯垢と呼ばれる歯の表面についた食べ物のかすに細菌が繁殖したものが歯周病の原因となりますが、この細菌は、24時間汚れを放置すると繁殖してしまうと言われています。適切な歯磨きによって食べ物のかすを取り除いてしまえば、この細菌の繁殖は防げるのですが、不適切な歯磨きなどで、歯垢ができてしまうと、それから約2日ほどで、今度はもっとやっかいな歯石に変化してしまいます。歯石になってしまうと歯ブラシで取り除くのは難しいので、歯石になる前に取り除くことが大切です。

また、不適切な歯磨き以外にも歯周病を引き起こしやすくなる原因があります。その一つが喫煙です。タバコに含まれているニコチンは、血管を収縮させる作用がああるので、血液の流れを悪くします。血行を悪くすると身体の抵抗力が低下し、細菌が繁殖しやすくなり、しかもニコチンと共に多くの有害物質が歯垢に混じって歯に付着したり、口内の環境を整える働きのある唾液の分泌量が減る原因にもなります。

唾液が少なくなるとドライマウスと呼ばれる口腔乾燥症の状態に陥ります。これは、水分の補給が十分でなかったり、口を開けて呼吸する口呼吸をしている人がなりやすい症状ですが、唾液は細菌の繁殖を押さえる免疫機能を持っているので、唾液量の低下は歯周病にもつながります。
 また、糖尿病を患うと身体の抵抗力が弱くなるので、歯周病を引き起こしやすくなります。恐ろしいのは、虫歯菌や歯槽膿漏の菌が抜歯などの際に、血中に紛れ込むと感染性心内膜炎という心臓病まで引き起こしてしまうことです。特に重度の歯槽膿漏の場合、口内にたくさんの細菌が存在するので、そのリスクが増大します。症状としては、熱が出たり、動悸が激しくなったりしますが、ひどい場合は弁膜が壊れ急性心不全を起こすこともあります。

   
歯周病の見分け方
  ●歯茎からの出血

歯ブラシをかけたとき、出血をするようであれば、まず初期の歯周病を疑います。出血を怖れて、出血部を避けてブラッシングしているとさらに歯周病が進行してしまいます。正しいブラッシングを続けても出血があるようなら、すぐに歯科医に相談してください。
●口臭

虫歯に食べかすが詰まって腐敗した臭いと歯周病の場合の口臭は違いますが、口臭はなかなか本人は気がつかないもの。歯周病の臭いの原因は、歯と歯茎の境に付着した細菌が歯に沿って根の方に侵入し、そこで繁殖して臭いを発します。周囲の人に注意されたらすぐに歯科医に相談してください。
●歯がグラグラする

歯周病が進行すると歯を支えている組織が壊れるので、歯がグラグラしてきます。しかし、相当ひどくなるまで気がつかない場合が多く、舌の先で触って動くのを感じるようになったときは、すでに手遅れです。
 初期の歯周病をチェックするには、親指と人差し指で歯をつまみ、ゆすってみて動きを感じるようでしたら要注意として、歯科医に相談しましょう。何かものを噛んだときにたよりない感じがしたときも危険な兆候です。

   
歯周病の治療
   歯周病の初期であれば、まず歯科医で溜まった歯石を取り除いて、ブラッシングを毎日丁寧におこなっていれば改善されていきます。その後は定期的に歯科医に歯石の除去をしてもらい歯周ポケットの深さなどをチェックし、加齢とともに増すリスクに対処するようにしましょう。

進行した歯周病で、歯槽膿漏になると治療もたいへんです。歯周病の進行で深くなった歯周ポケットからは、スケーリングという器具を使った治療だけでは奥深くの歯石が取り除けなくなります。そこで、歯茎を切開して奥深くの歯石や感染歯質を除去したり、溶けた骨を回復するための処置を行う歯周外科治療が必要になることもあります。

さらに歯周病が進行して、歯槽骨の大部分が溶けてしまい回復の見込みがない状態になると、他の歯や骨に悪影響を及ぼす恐れがあるため、抜歯しなければなりません。

高齢者が歯を失う原因として最も多いのは、この重度の歯槽膿漏によるものです。

   
歯周病の予防
   予防のために最も大切なのは、歯磨きです。しかし、単にブラッシングをすれば良いというものではありません。最近でもたまに見かけるのは、大きめの歯ブラシに歯磨き粉をたっぷり付けてゴシゴシと磨いている人。歯を磨いたという達成感はあるものの、歯や歯茎を傷つけるばかりで、歯垢の取り残しを生じてしまいます。歯垢を落とすためには、小ぶりな歯ブラシで最初は柔らかめのものを選んで、歯の一本一本に対して磨くというより細かく振動させて刺激を与えるようなイメージでブラッシングします。

歯ブラシの当て方は、歯と歯茎の間に歯ブラシを45度の角度であてて歯垢をかき出すバス法という基本的な磨き方と、歯に対して歯ブラシの全面を直角にあてて振動させるスクラッピング法などいくつかの方法があります。いずれも一度歯科医で指導を受けると理解しやすいでしょう。

前述したように、唾液は細菌の増殖を抑える働きがありますが、寝ている間は、分泌が減少します。つまり、寝ている間は菌が増殖しやすい状態にあるわけです。就寝前の歯磨きが重要なのは、そのためです。

そして、朝起きたときが、口内に最も細菌が増殖している状態になります。朝起きたらまず歯磨きをして、この細菌を体内に取り込まないようにします。
 以前は食後にすぐに歯を磨きましょうと言われていました。ところがこれが誤りだったことが分かってきました。食事をすると口内のPH値が酸性に傾きます。アルカリ性の歯の表面が、この酸によって侵されやすい状態にあるわけです。ここで歯磨きを行うと酸に溶かされた歯を削ってしまうことになります。

口内のPH値は、唾液が食後30分~1時間で中和してくれますから、歯ブラシで磨くのは、その後にしましょう。食後すぐは、水で口をすすぐ程度にしておき、唾液による歯の表面を補う再石灰化の作用の後に、歯ブラシを使うというのが正しい歯周病ケアとなります。

 

2013年01月28日