中高年に必要な筋力トレーニングとは(2013年4月)
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Aさんは、三人のお子さんを持つお父さんです。上の二人のお子さんと公園で遊ぶのは楽しかったのに、三人目の時は身体がついていかなかったと言います。子供は、少しもじっとしていないもの。何かに興味を引かれると、急に飛び出してしまいます。Aさんは二人目までは余裕でそうした動きについていくことができたのに、少し年齢の離れた三人目のお子さんの動きには対応できなかったそうです。 あるとき、公園で走ってきた自転車に向かって飛び出した子どもを止めようと、急にダッシュしたAさんは、アキレス腱を断裂する大ケガをしてしまったのです。急に走り出したり、走っている方向を急に変える動きには、速筋繊維が主に使われます。この速筋繊維は、遅筋繊維に比べて加齢とともに萎縮し、なくなってしまう性質が強いものです。40歳を過ぎると筋肉の筋繊維数が減少し、筋繊維の消失現象が起こりますが、特に失われるのがこの速筋繊維なのです。Aさんは、普段健康のためにジョギングなどをしていたのですが、この速筋繊維がいつのまにか萎縮していて、急な動きで過度に負担のかかった筋繊維が切れてしまったのです。 ジョギングを趣味にしている人に、「長く走るのは得意、フルマラソンもタイムは遅いけれども必ず完走します。でも速く走るのは苦しくて無理」という人は意外に多いものです。これは遅筋繊維が鍛えられていて持続力はあっても、速筋繊維は萎縮してしまって力がでない筋肉に変わっているからです。速筋繊維は、それを意識した筋力トレーニングを行わなければ、維持できないものなのです。 速筋繊維は中高年であってもトレーニングで強化することができます。最近の研究では、90歳を超えた高齢者でも負荷をかけた筋肉トレーニングで、筋力が高まることが実証されています。ただし、中高年の筋力トレーニングを、安全に効果的に行うには、きちんとした指導者のいる施設を利用したほうが良いでしょう。 |
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中高年の筋力トレーニングはこの点に注意 | |
まず注意しなければならないのは、過度の血圧上昇です。息を止めて力を入れると血圧が上がって危険な状態になることがあります。息を止めて力むと収縮期の血圧が300mmHg、拡張期の血圧が200mmHgといった状態になることもあるからです。最近は、洋式便器の普及で少なくなったと言われる脳出血。昔は寒い時期に和式便器で踏ん張ったときに倒れるということがよくありました。息を止めて力むとこれと同じ状況を引き起こすことになります。 これは息を止めると胸腔内圧が上がって血流を阻害し、血圧を上げてしまうのが原因と考えられます。胸腔内圧を上げないようにするには、トレーニング時に、必ず息を吐きながら筋肉に負荷をかけること、これだけで血圧を上げすぎる危険を回避できるのです。 また、筋肉に負荷をかけるウェイトリフティングなどを習慣的に行っていると、一般の健常者と比較して動脈伸展性が低くなるという報告があります。この動脈伸展性が低下すると収縮期の血圧が上昇します。逆に、ジョギングなどの有酸素運動を日常的にしている人は動脈伸展性が高いと報告されています。 つまり、中高年の筋肉トレーニングはいざというときの瞬発力の維持には必要ですが、その筋力トレーニングで血圧を上げないようにするために、同時に有酸素運動を習慣化することが大切だということです。 |
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トレーニング効果は、どのくらい続くのか | |
こうしたトレーニングは少なくとも2ヶ月程度は継続しないと効果が現れてきません。しかし、風邪を引いたり、仕事が忙しくなったりといった理由でトレーニングを休み、そのまま止めてしまうことはないでしょうか。 そうした場合、トレーニング効果はどのくらい続くものかご存知ですか。有酸素トレーニングを行うと最大酸素摂取量が増加しますが、ある検証によるとトレーニングで増加した最大酸素摂取量は、3~4週間程でトレーニング前に戻るという結果が確認されました。このことから、トレーニングで増加した筋力も3~4週間で元に戻ると考えられます。これが高齢になるとさらに低下率が増加すると言われています。 やはり、「継続こそ力なり」で、継続する工夫こそが大切だということになります。春に始めた物事は長続きすると言われますが、さらに年齢と経験を重ねた中高年には、若い人にはない知恵と自分を知っているという強みがあります。どうすれば自分のモチベーションを楽しく維持できるか、己の性格に合った方法を探し出せるのか、必ず見つけることができるではないでしょうか。 飛び越せると思った水たまりが越えられなかったり、ちょっとしたつまずきで、身体が支えられずに転んでしまうなどということにならないように、筋肉トレーニングと有酸素運動、この二つをバランスよく日常生活に取り入れることができれば、あなたはよりアクティブに人生を楽しむことができるでしょう。 |
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