では、このような健康被害があるのに、なぜタバコを吸う人がいるのでしょうか。その理由は、タバコに含まれるニコチンにあると考えられます。タバコの主成分であるニコチンは、自律神経のうち、副交感神経を刺激する薬物です。タバコを吸うと、ニコチンは煙に乗って肺に取り込まれ、血流にのって脳に達します。こうして脳の副交感神経系が刺激されると、血圧はやや下がり、呼吸は少し遅くなり、消化器系の活動が促進されます。同時に、休息の時のほっとした気分やくつろいだ気分がもたらされることから「タバコを吸うと落ち着く」「イライラするとタバコが吸いたくなる」といった状態になり、いわゆるタバコ(ニコチン)依存症になると考えられます。
ちなみに、ニコチン中毒と依存症を混同して認識しているケースが見られますが、「中毒」の場合は、タバコの誤飲などによってニコチンの持つ強い毒性が身体に害を及ぼすことを指し、「タバコがやめられない」「吸わないと我慢できない」などの状態は「ニコチン中毒」ではなく「依存症」となります。
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