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健康まめ知識

「タバコ」がもたらす害を考える(2010年10月)

 

     
 
10月のテーマ:
「タバコ」がもたらす害を考える
 今月から増税により値上がりする「タバコ」。値上げ率は1箱100円以上で過去最高と言われ、愛煙家からも「これを機に禁煙・減煙する」という声も聞かれます。その一方で「値上がり前にまとめ買いする」という動きも多く、今回の値上げが喫煙率の低下に繋がるかどうかは未知数。タバコが健康に良くないことは周知の事実ですが、今回は改めてタバコが及ぼす健康被害についてお話します。
 
     

 

なぜ喫煙は「身体に良くない」のか
 

 
喫煙による健康被害は、タバコの煙に含まれる有害物質によって引き起こされます。タバコの煙に含まれる4000種におよぶ化学物質のなかで、3大物質はタール、一酸化炭素(CO)、ニコチンです。例えばタールは発がん性が確認されている物質を含み、一酸化炭素はヘモグロビンによる組織への酸素運搬機能を妨げ、組織の酸素欠乏をもたらします。ニコチンは喫煙により約8秒で脳に達し快楽を伴う精神効果があり、タバコ依存の原因と考えられています。また、この他にも、ホルムアルデヒドやシアン化水素など、実に「200種以上」の有害性が確認されている物質が、タバコの煙の中には含まれているのです。

これらの有害物質は、主流煙(喫煙者がフィルターを通して吸う煙)よりも、副流煙(タバコの火のついた部分から立ち上る煙)のほうに高濃度で含まれており、喫煙者はもちろん、喫煙者の周囲にいる人の健康も脅かすといわれています。

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喫煙がもたらす健康被害
 

 
喫煙は「百害あって一利なし」と言われますが、実際にどのような害があるのでしょうか。代表的なものを以下に挙げていきます。

<様々な病気の発病リスクを高める>
心血管疾患
 

 
喫煙は心筋梗塞、脳卒中、突然死、末梢血管障害といった「心血管疾患」の発生率を高めます。心血管疾患は生死に直接関わる重大なものが多く、喫煙習慣によって増加した死因には、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)、心筋変性、大動脈瘤、動脈硬化(下肢の動脈の慢性閉塞症等)、脳血栓、その他の脳血管障害があります。このことからも、喫煙習慣によって死亡リスクが増大することが分かります。

メタボリックシンドローム
 

 
近年注目されている「メタボ」ですが、その発生因子には過食や運動不足の他に喫煙習慣も含まれます。これは喫煙が脂質代謝や糖代謝に影響を与えるためで、これによってメタボリックシンドロームの発症リスクが高まるのです。また、メタボリックシンドロームでかつ喫煙している人は、脳梗塞や虚血性心疾患にかかるリスクが著しく高まり、さらに深刻な健康被害が懸念されます。

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がん
 

 
「喫煙」イコール「肺がん」というイメージがありますが、実は肺以外の部位のがん発生にもタバコは影響します。喫煙習慣のある人とない人で発生率を比較すると、肺がん4.5倍、喉頭がん32.5倍、口腔・咽頭のがん3.0倍、膀胱がん1.6倍、食道がん2.2倍、胃がん1.4倍、膵がん1.6倍、肝がん3.1倍という調査結果も発表されており、そのリスクの大きさを表しています。

がん以外の肺疾患
 

 
喫煙は肺がん以外の肺疾患にも影響し、がん以外の肺疾患で最も多いのは、慢性気管支炎と肺気腫を含む慢性閉塞性肺疾患(COPD )です。

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消化器疾患
 

 
喫煙は食道や胃、膵臓、肝臓等の消化器にも悪影響を及ぼします。喫煙が原因となる疾患、あるいは影響を与える消化器疾患には、胃潰瘍をはじめ、十二指腸潰瘍、膵炎、肝炎、歯周病(歯槽膿漏等)があります。

   
なぜ禁煙できないのか
 

 
では、このような健康被害があるのに、なぜタバコを吸う人がいるのでしょうか。その理由は、タバコに含まれるニコチンにあると考えられます。タバコの主成分であるニコチンは、自律神経のうち、副交感神経を刺激する薬物です。タバコを吸うと、ニコチンは煙に乗って肺に取り込まれ、血流にのって脳に達します。こうして脳の副交感神経系が刺激されると、血圧はやや下がり、呼吸は少し遅くなり、消化器系の活動が促進されます。同時に、休息の時のほっとした気分やくつろいだ気分がもたらされることから「タバコを吸うと落ち着く」「イライラするとタバコが吸いたくなる」といった状態になり、いわゆるタバコ(ニコチン)依存症になると考えられます。

ちなみに、ニコチン中毒と依存症を混同して認識しているケースが見られますが、「中毒」の場合は、タバコの誤飲などによってニコチンの持つ強い毒性が身体に害を及ぼすことを指し、「タバコがやめられない」「吸わないと我慢できない」などの状態は「ニコチン中毒」ではなく「依存症」となります。

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このような健康被害だけでなく、例えば女性には特に気になる美容面では、喫煙によって「小じわが増える」「顔色が悪くなる」などの影響があると言われる他、経済的にも少なからぬ影響があるのは当然です。最近では禁煙・分煙の区域やお店が増えるなど、社会的にも禁煙を推奨する動きになっているのも、タバコの持つ害を考えれば納得のはず。愛煙者の方は、この機会に禁煙・減煙を考えてみてはいかがでしょうか。

 

 

2010年10月28日