“平熱”の範囲は一人ひとり異なります。大人の平均的な体温は36.6~37.2℃といわれますが、毎日体温を測り記録をとらなければ、その人の“平熱”はわかりません。自分自身の平均的な体温を知り、日々の健康管理にお役立てください。ここでは、いわゆる“平熱”の考え方や、体温計での正しい検温のポイントをご紹介します。
◆大人の平均的な体温
体温計で体温を測ったとき、いわゆる“平熱”と思われる数値と比べて「これって発熱かも?」と不安になった経験がないでしょうか。なかには体温が37.0℃に達したときを目安に、発熱を疑う方もいらっしゃるようです。しかし、大人の平均的な体温は36.6~37.2℃といわれており、必ずしも37.0℃が発熱と判断されるとは限りません。一方で、普段の平熱がやや低い傾向にある方の場合は、37.0℃でも発熱と判断されることもあるでしょう。このように体温には個人差があり、さらには時間帯や生理周期などの条件により変動しています。まずは定期的に体温を測りご自身の平熱を知ることが大切です。
◆家庭向けの体温計の種類
家庭向けの体温計には種類があります。一般的によく知られているのは、脇の下で体温を測る「脇式体温計」です。脇式体温計は、細長い棒状をした体温計の先端を脇へ当て、腕と体側で挟むように使います。体温を測り終えるまでにやや時間がかかるのが特徴です。ほかにも、耳の穴のなかで体温を測る「耳式体温計」もあります。耳式体温計は、本体を手で持ち、センサー部分を耳に入れて使います。たった数秒で体温を測れるのが特徴で、子どもの体温を測定するときにも役立ちます。ただし、値段は脇式体温計よりもやや高額です。
◆基本的な体温の測り方
多くの家庭に常備されている脇式体温計を使った場合の、体温の測り方をご紹介します。まずは、体温計の電源を入れましょう。体温計が起動し、検温の準備ができたら、先端にあるセンサー部分を斜め下方向から脇の中心へ当てます。このとき、体温計のディスプレイが体の内側を向くようにしつつ、もっとも温度が高い脇の中心に挟むのが大切です。体温計の角度は30~45度を目安にしましょう。しっかりと腕を締めて、反対の手で軽く押さえた状態で検温が完了するまで待ちます。体温計の先端が脇からはみ出さないようご注意ください。
◆毎日の体温を測るときのポイント
ご自身の平熱を知るために、体温は毎日測るのが好ましいでしょう。最後に、定期的に体温を測定し記録をつける方へ向けて、ポイントをお伝えします。
・検温の時間も記録しておく
人間の体温は1日のうちに変動しているため、平熱を知るために検温の記録をつけるなら、毎日同じ時間に体温を測定する必要があります。時間帯ごとの平熱を知りたい方は、「起床時」「10~12時(午前)」「16~18時(午後)」「就寝前」の4つのタイミングで検温するのが理想です。このとき、体温と併せて検温の時間も忘れずに記録しておきましょう。
・体温が上がりやすいタイミングを避ける
体温は私たちが日常生活で行うさまざまな活動でも上がることがあります。たとえば、運動をしたとき、食事を摂った直後などはその一例です。定期的な検温をするときは、体温が上がりやすいタイミングを避けておきましょう。上記の4つのタイミングで記録をとるなら、午前と午後の検温では昼食や夕食を摂る前に体温を測ります。
“平熱”といえる体温は人により異なるため、日頃から正しい方法で検温して、ご自身の平熱を知っておくことが大切です。平熱と比較して体温が高いときや低いときは、体調の異変を疑ってみましょう。体温を測るときは毎日同じ時間に、体温が上がりやすいタイミングを避けて検温し、体温と時間帯を併せて記録してください。
健康診断では正常という結果が出ても、時間帯によっては高血圧になってしまう「仮面高血圧」という症状があります。仮面高血圧は検査で見つからないため、深刻な病気を引き起こすまで気づけないケースが多いなど、危険があります。万が一、仮面高血圧になってしまってもすみやかに気づけるように、ご自宅でも血圧をチェックしておきましょう。
◆仮面高血圧とは
仮面高血圧とは、健康診断や検査で血圧を測ると正常値なのにもかかわらず、ご自宅などで別の機会に測ると、高血圧になっていることを指します。正常血圧の仮面をつけているという意味で、このような名称で呼ばれるようになりました。仮面高血圧になる原因は、以下のようなものが考えられます。
- 普段の喫煙量が多い(病院で検査を待つ時間はタバコが吸えないため血圧が下がる)
- 日頃強いストレスがある(病院では医師に診てもらう安心感によりストレスが和らぐ)
- 加齢による動脈硬化が起きている
- 心臓や内臓に障害がある
- 服用している降圧薬の効き目が早朝には薄れている
- 糖尿病が悪化している
生活習慣の影響で検査を受けるときに血圧が下がりやすい方や、体調によって血圧の変動が大きい方は、仮面高血圧になりやすくなっています。
この仮面高血圧と似たものに、「白衣高血圧」や「ストレス高血圧」があります。「白衣高血圧」とは、仮面高血圧とは反対に、検査のときに血圧が高くなってしまう症状です。医師や看護師の白衣を見ると、緊張して血圧が高くなってしまうことが原因だと考えられています。白衣高血圧であっても、普段は正常血圧で高血圧による合併症がない場合は、特に治療の必要はありません。
「ストレス高血圧」とは、ストレスに反応することで血圧が上がる症状を指します。ストレスの多い職場で働いている方や、長年ストレスを抱えている方が発症しやすい症状です。災害時にも、強い心理的負担からストレス高血圧になる方が多くいらっしゃいます。
◆仮面高血圧は一般的な高血圧よりも健康リスクが高い
健康と診断されがちな仮面高血圧ですが、実は一般的な高血圧よりも病気になるリスクが高いと言われています。アメリカ・コロンビア大学のトーマス・ピッカリング教授の研究報告によれば、脳心血管疾患のリスクで正常血圧の方が1だとすると、持続性高血圧の方が2.94倍、仮面高血圧の方が3.86倍になるとわかりました。仮面高血圧の方は検査では正常と診断されるため、動脈硬化が進んでいても気づかずに放置してしまい、心筋梗塞や脳卒中といった命に関わる病気を引き起こしてしまうケースが多いのです。
また、すでに高血圧と診断されている方の中にも、時間帯による血圧上昇に気づいていない方がいらっしゃいます。たとえば、降圧剤を使用しているものの、24時間にわたり降圧できていないため、早朝には高血圧になるといったケースです。このような場合は、服用している薬を長時間作用型のものに変える必要があります。高血圧になっていることに気づかない状態は大変危険であるため、よく確認しておくようにしましょう。
◆仮面高血圧の対処法
仮面高血圧に気づくためには、ご自宅で血圧を測るのが効果的です。健康診断では異常がなかった方も、一度はご自宅で測定しておきましょう。なお、家庭で血圧を測る際は、以下の点に注意してください。
- 1日2回、決まった時間に測る
- 食後1時間以上経ってから測る
- 直前にタバコを吸ったり、コーヒーを飲んだり、薬を服用したりといったことは避ける
- 常に同じ腕を、同じ姿勢で測る
- 腕を締め付けない状態で測る
- 寒い場所で測らない
測定した結果、ご自宅で高血圧になっているようなら、病院で診てもらうことをおすすめします。
また、仮面高血圧になりにくい生活も心がけましょう。仮面高血圧になりやすい方には、このような特徴があります。
- 睡眠時間が短い
- 喫煙をする、または受動喫煙を受けている
- お酒をたくさん飲む
- 職場や家庭でのストレスが大きい
- 塩分をたくさん摂る
- メタボリックシンドロームである
仮面高血圧にならないためには、これらの状態をできるだけ避けることが必要になります。血圧を正常に保つためにも、普段から健康的な生活を心がけましょう。
皆さんは日頃から「体重管理」を行っていますか? 最近は肥満や成人病を予防するため、常日頃から体重を計り、スマートフォンなどにメモをして管理している方が多いと聞きます。成人病等のリスクが高まっていると言われている現代だからこそ、多くの人が健康を意識するようになっているのですね。
さて、体重を計るために必要なアイテムと言えば「ヘルスメーター」。体重をはじめ、体脂肪率や筋肉量もチェックすることができる機器です。より詳しく身体の状態を確認できるので、健康管理には必需品と言えるでしょう。そんなヘルスメーターですが、一体何を基準に選べばよいかご存じですか?今回は、ヘルスメーターの正しい選び方についてご紹介します。
◆ヘルスメーターは3タイプに分類できる
ヘルスメーターは「体重計」、「体脂肪計」、「体組成計」といった3タイプに分けられます。体重計は体重のみを計るシンプルなもので、最近は体重を100g単位で表すデジタル表示の製品が主流です。販売価格もリーズナブルなので、とりあえず体重さえ計れれば良いという方にオススメでしょう。
体脂肪計は、体重に加えて身体の体脂肪率を表示するヘルスメーターです。製品によっては内臓脂肪や筋肉量を計ることもできます。体脂肪率は健康管理において重要な数値の一つなので、気になる方はこちらをチョイスしましょう。
体組成計は本格的な健康管理に取り組みたい方にオススメのアイテムです。体重や体脂肪のほか、基礎代謝や筋肉量、推定骨量や体水量など、ありとあらゆる組成の数値を計測します。そしてこれらの数値を元に、BMIや体年齢の判定を行うという優れものです。
最新の体組成計はより多くの組成を計測し、より正確な数値を表示してくれるため、健康管理をしっかり行いたいという人に重宝されています。お値段こそ若干張るものの、とにかく健康管理を徹底したい方は導入してみてはいかがでしょうか。
◆製品によって差がある?計測項目や機能をチェック!
体重や体脂肪率といった計測項目は、製品によって異なります。たとえば、体重は基本的に100グラムあるいは200グラム単位での計測となりますが、計測単位が大きいほどリーズナブルになり、より細かく計れる物ほど高価になる傾向があります。
「たった100グラムでしょ?」と思った方も多いでしょう。しかし、100グラム単位で計測できるヘルスメーターなら、ごくわずかに体重が減っただけでもそれが目に見えて現れます。つまり、「ダイエット中のモチベーション維持」につながる、という訳です。ダイエット中は少し体重が減るだけでも嬉しいもの。逆に、少しでも体重が増えれば翌日からの食事や運動などに注意するようになるでしょう。これからダイエットに取り組む、あるいは現在取り組んでいる方は、100グラム単位の製品を選ぶと良いかもしれません。
また、体脂肪は0/1%単位、最大で75%まで計ることができる製品が多いです。中には体脂肪率をレベル判定する機能を備えた製品もあるので、興味のある方は製品情報を確認してみましょう。
高価なヘルスメーターは計測項目が多いのはもちろん、その結果をユーザーに分かりやすく伝える判定機能を備えている傾向にあります。体重はともかく、内蔵脂肪や基礎代謝などは数値を見ただけでは良し悪しがわかりにくいので、判定機能をうまく活用したいところです。
◆とにかく使いやすい製品を選ぼう
いろいろとヘルスメーターの特徴などをご紹介してきましたが、最終的にはご自身が“使い易い”と思える物を選ぶのが大切です。特に、測定値の見やすさや電源ボタンとなるフットスイッチの位置は使い勝手に影響があるので必ず確認するようにしてください。
また、複数人で使用する場合は「登録人数」もチェックしておく必要があります。登録人数は2人から6人が一般的で、迷った際は家族人数分の登録ができる製品をチョイスすると良いです。
◆まとめ
いかがだったでしょうか。最近はスマートフォンと連動するヘルスメーターも登場しており、より健康管理がしやすい時代となっています。今現在体重計しか備えていないという方は、これを機に体脂肪計や体組成計の導入を検討してみてはいかがでしょうか?
毎年5月17日は高血圧の日とされていることをご存知ですか?
日本高血圧学会と日本高血圧協会は、第30回日本高血圧学会総会において、毎年5月17日を「高血圧の日」と制定することを宣言し、日本記念日協会により認定登録されました。今月はこの高血圧についてとりあげます。
降圧薬治療を開始すべきか
日本高血圧学会は、2014年の「高血圧治療ガイドライン」を公表しました。これによると、高血圧の診断基準(降圧薬治療開始基準)は、従来の「収縮期140mmHg以上、拡張期90mmHg以上」という数値を維持しながら「若年・中年高血圧」の血圧を下げる努力目標を、この診断基準と統一しました。同様に後期高齢者(75歳以上)は「収縮期150mmHg以上、拡張期90mmHg以上」とされ、以前の基準より若干緩和されたのですが、この高血圧治療ガイドラインを超えている人の割合が50代になると女性が50%を超え、男性では70%近くと言われています。多くの人が、数値では高血圧と診断されながら、降圧薬治療を開始しようか、それともそれ以外の方法でなんとかならないかと思案しているのではないでしょうか。今回はそうした悩みをお持ちの方のために情報をご紹介します。
高血圧になる原因とは
血圧が高くなる原因は、遺伝的な要素、肥満によるもの、運動不足によるもの、塩分の高い食生活や喫煙、飲酒の習慣などがあげられますが、普段あまり意識していなくともストレスが要因となることもあります。また、糖尿病や腎臓病などの病気が原因で血圧が高いという場合もあります。
最初にあげた遺伝的な要素としては、国立国際医療研究センター研究所の加藤規弘・遺伝子診断治療開発研究部長らの研究グループが「東アジア人を対象に、高血圧に関する大規模全ゲノム関連解析を行い、新規のもの5つを含む計13の遺伝子座を同定した」と発表しました。5万人以上の東アジア人の全遺伝情報を解析し、高血圧に関連する13種類の遺伝子を特定したとし、このうちの5種類は白人ではみつかっていないということです。
日本人は高血圧になりやすいといわれますが、その要因の一つが遺伝子にあったわけです。この高血圧が日本人に最も多かった時期が、1960年代前半で、この時期をピークに下がる傾向にあるとされています。これは、1955年に高血圧の治療を受けている人が人口10万人に対して61人しかいなかったのに、1975年には475人になり、降圧薬を飲む人が増えたということからです。
厚生労働省の「健康日本21」における試算によれば、国民の血圧が平均2mmHg下がれば、脳卒中による死亡者は約1万人減り、新たに日常生活活動が低下する人の発生も3,500人減ることが見込まれています。また、循環器疾患全体では2万人の死亡が防げるとしています。高血圧を下げることがどれだけ大切かわかりますね。
高血圧は何歳から増え始めるのか
厚生労働省が平成18年に行った国民健康・栄養調査によると30歳以上の40~50%が高血圧で、やはり年齢とともに上がる傾向にありました。高血圧の人が約50%を超えるのは、男性で50代(59.2%)、女性では60代(57.6%)。70歳以上になると、男性では約71.4%が、女性では約73.1%が高血圧だとされています。高血圧がいかに重要な医療問題となっているかわかりませんか。日本人の最大の健康リスクは高血圧にあるという指摘もあるほどです。ところが、そうした問題をなかなか自分のこととして捉えて医療機関に相談しないという人が、相変わらず多いのが現状です。
日本高血圧協会と日本高血圧学会は、高血圧啓発キャンペーン「ウデをまくろう、ニッポン!」を実施。今年の高血圧啓発のテーマを“減塩”と“医師相談”として日本高血圧週間5月9日~17日を中心に、高血圧の危険性や減塩・医師への相談の重要性などについて啓蒙活動を行っています。血圧が高めだという認識がある人は、まず食生活を見直し、医師に相談するようにしてください。
軽い運動で高血圧に対処
また同時に降圧効果のある運動もお勧めします。運動療法は薬物療法や食事療法とともに高血圧治療に有効だとされています。また、体を動かすことで、心肺機能を高め、血液もサラサラにしてくれるので、心筋梗塞や動脈硬化予防にも役立ちます。
運動の降圧効果は、どれくらいかというと、高血圧患者が定期的に軽く汗ばむ程度の運動を週3回、1回30分以上行うと収縮期血圧20mmHg以上、拡張期血圧10mmHg以上の低下が見られた患者が 半数以上いたという研究事例もあります。ここでいう汗ばむ程度の運動というのは、ウォーキングやサイクリング、水泳など有酸素運動をさしますが、肥満や足の関節に痛みがあるという人の場合、水中ウォーキングや水中エアロビクス運動などプールで行うものが良いでしょう。
高齢者を対象にした研究では、ストレッチと筋肉運動のプログラム30分を月2回、3ヶ月間行ったところ、収縮期が10mmHg程度低下したというものがあります。
以上のようなことから、高血圧に対処し健康を維持するためにも、身体に無理をかけない運動を続ける習慣をつけるようにしましょう。