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まめ知識カテゴリ: 食事

ダイエットに失敗する原因は?(2015年2月)

 

イラスト友人のジャーナリストを仮にAさんと呼びます。彼は、スポーツ系に強いライターでよくトレーニング関連の本を制作するために、その道のプロであるトレーナーや大学の先生に取材に行きます。そこでAさんは、よくこのように言われたそうです。「君はよく“筋トレでダイエット”とか、“美しく柔軟な身体を目指すトレーニング”などをテーマに本を作っているが、自分自身の身体の管理ができないと、説得力がないのでは?」

 

Aさんは高校時代アマチュアレスリングの選手だったので筋肉質の理想的な体格でした。ところが、その後の不規則なライター稼業でかなり贅肉を蓄えていたのです。このAさんに久しぶりに会うと、別人に見える程激変していました。まるで枯れ木が立っているかのように痩せ細っていたのです。いったいAさんに何があったのでしょう。

 

今回は、短期間でのダイエットについて、身近な例からご紹介しましょう。

 

急激なダイエット

Aさんが、行ったのは極端な食事制限でした。もともとアマチュアレスリングの選手だったので、当時行った方法で体重を減らそうとしたのです。レスリングの選手は、試合に出場するためには階級に合わせて身体を作る必要があります。できるだけ軽いクラスで戦った方が基本的に有利なので、試合前は減量ということになります。この当時の減量は、飲む水まで制限される過酷なものだったといいます。皆さんもボクサーの減量の様子をご存知でしょう。前の試合が終わってから増えてしまった体重を、指定された計量日までにどのようなことをしても落とすという過酷な世界です。

 

現代のボクサーは、管理栄養士の指導のもとに、減量しながらも必要な栄養を摂れるように配慮された食事をするということが、試合で勝利するためにも大切な条件となっているようです。しかし、昔の体重別の競技ではそうした恵まれた環境にいる選手は少なかったのです。日々、練習量を増やしながら食べ物を削っていき、水分まで制限していました。

 

イラストAさんは、どうやらこの高校時代の減量を一念発起でまた行ってしまったようなのです。しかも、トレーニングは一切せずに、食事制限だけの減量。甘いもの、ごはんやパンなどの炭水化物は一切摂らないというものです。

 

確かに体重は減りましたが、見た目は痩せたというよりやつれた感じになりました。歯の噛み合わせまで悪くなったと本人が言うように、会話していても言葉が聞き取りにくくなってしまいました。顔色が悪いのと皺(しわ)が深くなったことで、実年齢以上に一気に老けてしまった印象でした。

 

こうした極端なダイエットは、リバウンドという避け難い事態の他に、様々な問題を引き起こします。

 

ダイエット臭

前記にあげたような、老け顔になってしまうという点、この原因は栄養不足になった身体が、体内に蓄えられた脂肪だけでなく筋肉も分解してしまい、表情筋などもその対象になるということが考えられます。

 

さらに、他人に悪い印象を持たれてしまうのが、ダイエット臭と言われる独特の甘酸っぱい体臭や口臭です。これは、エネルギー不足になった脳が、食事で入ってこないエネルギーの代わりに非常用のエネルギー源として作るように肝臓に命じた「ケトン体」によるものです。このとき、肝臓で作られるアセトン・アセトン酢酸・βーヒドロキシ酪酸の総称が「ケトン体」と呼ばれるもので、糖尿病などと同じ臭いが発生することがあるのです。「ケトン体」が血液中に増加すると口臭としても放出されます。

 

さらに、空腹感が唾液の分泌を低下させ、唾液によってコントロールされている口内環境も悪化してさらに強い口臭を生んでしまいます。

 

このダイエット臭が、はっきり認識されるような飢餓状態を放っておくと、自律神経系やホルモンバランスを崩し、身体に様々な問題が起きてきます。

 

イラストダイエット臭を改善するためには、まず脳に必要な栄養素である糖分を送るために、炭水化物を摂る必要があります。タンパク質、脂質ももちろんバランス良く摂らなければなりません。さらにエネルギーの枯渇に対応して身体の基礎代謝が落ちていますので、これを上げるために有酸素運動を取り入れます。ウォーキングや軽いジョギング、ゆっくりとした水泳など、あまり心拍数が上がらない運動を継続的に行うことが重要です。

 

さらに筋肉トレーニングで筋肉量を増やすことも基礎代謝を高める効果があります。

 

健康的な生活を送るための「体力」の喪失

食事制限による極端なダイエットで、失われるのは筋肉や若さだけではありません。前向きに仕事や人生を楽しむための「体力」が失われてしまうのです。

 

「体力」は、病気やストレスに打ち勝つための「防衛体力」。運動に必要な「行動体力」という概念に分けることができますが、そのどちらも損なわれてしまい、生活そのものから潤いや喜びを失ってしまいます。

 

この「体力」という言葉にまとめられる「防衛体力」、「行動体力」を分かりやすく説明すると以下のようになります。

 

○「防衛体力」

  •  免疫力(病原菌などに対する抵抗力)
  •  環境変化に対する抵抗力(暑さや寒さに対する抵抗力)
  •  生理的変化に対する抵抗力(時差や、運動時の身体の変化に対する抵抗力)
  •  精神的ストレスに対する抵抗力

 

○「行動体力」

  •  筋力(重いものを持ち上げたりする能力)
  •  筋持久力(持続的に力を使う能力)
  •  瞬発力(瞬発的に力を発揮する能力)
  •  全身持久力(ランニングなどで使う全身の持続力)
  •  柔軟性
  •  俊敏性
  •  平衡性(片足でバランスをとって立ち続ける能力)

 

こうした「体力」は、何歳になっても人が健康に生きていく上でなくてはならないものです。従って、食事制限による極端なダイエットは、リスクが大きいので避けるべきだということになります。

 

背広を着た縄文人

ある大学の先生が、『現代人は「背広を着た縄文人」である。』ということを本に書いておられました。この考え方に基づけば、現代の生活を営む我々が、なぜ肥満に苦しむことになったのか、明解に説明できます。

 

人類が誕生してから、現在まで経過した時間を仮に1年、12ヵ月に置き換えてみたとします。現代の便利な生活、このパソコンや、電話などの情報機器に囲まれ、コンビニなどで24時間いつでも食べたいものを手に入れられる生活を、人類が誕生してからどのくらいの月日にあたるか、想像してみてください。

 

秋ぐらいでしょうか。いやもう少し後、12月の何日かというイメージをもたれる方もいることでしょう。正解は、12月31日の午後11時50分。人類誕生から今までを1年に換算すると、現代はこの最後の10分間にあたるというのです。人類はそれまで、11ヵ月30日と23時間50分は、便利な文明機器も持たず、飽食の時代もなかったわけです。

 

イラスト従って私達の身体は、飢餓に耐え、外的の襲撃からも身を守るという環境に適応したまま、いわゆる背広を着ていても、中身は縄文人と同じというわけです。豊富な食べ物、特に甘いもの、塩、高温で調理した食べ物などがいつでもあるという生活ではなかったわけですから、こうした環境にまだ適応できていないため、肥満になってしまうわけです。

 

健康的な生活、生き生きとした人生を歩むために最も大切なのは、何かということ。それは、この説に照らしてみれば明らかです。中身は縄文人の我々は、飽食に走らず、外的に襲われたり、狩猟の必要がなくても毎日歩いたり、軽いジョギングや水泳をする。重いものを持つ必要がなくても筋肉に刺激を与え、筋力を保つ。食べ物は、四季の恵みを大切にし、旬でないもの、高温の油で調理したものなどは、あまり大量に摂らない。

 

便利な文明社会にあっても、身体は縄文人と同じ環境に適応している生き物であるという自覚。そういったことが大切なのではないでしょうか。

 

 

夏の落とし穴「夏太り」にご注意!!(2014年8月)

 

図1

今年の夏は、冷夏になる、いや昨年と同じように猛暑になる等と予想が錯綜しています。今のところいきなり梅雨が明けたため、暑さが酷く身体にこたえるという人も多いことでしょう。そこでビール党ならビールが、それ以外の人には、酎ハイや冷たい清涼飲料がとても美味しく感じられる日々を送っていることでしょう。

しかし、冷たい飲み物が内臓脂肪を増やす原因の一つだということをご存知ですか。「コールドドリンク症候群」と名付けて注意を促す医師もいます。暑さも本番を迎える季節に誰もが陥る危険がある甘い罠ならぬ「冷たい罠」、さらにそれがもたらす内臓脂肪について今回は触れてみましょう。

 

 

誰もが陥りやすい「コールドドリンク症候群」

どこにいっても自動販売機のある風景。外国人が日本を訪れたときその多さに驚くと言います。その状況を治安の良さという側面で引き合いに出す人もいますが、これは「コールドドリンク症候群」に拍車をかけているのです。さらに、コンビニエンス・ストアに入れば、冷たく美味しい新製品の数々。家に帰っても、冷蔵庫を開ければ冷たい缶ビールや清涼飲料があなたを待ち受けています。暑さから逃れたい一心でそれらについ手が伸びてしまうのも仕方のないこと。確かに冷たいものを飲むと体温が下がり、一時的に暑さから逃れることができます。

 

しかし、飲料することによりお腹を冷やすと身体はその冷えから脂肪で内臓を包んで守ろうとするのです。最後の氷河期に順応した人類が、生き延びるために獲得したのが、こうした脂肪を蓄える能力だったといわれます。見方を変えれば、太りやすい人というのは、環境に順応する能力の高い人ということになるわけです。

 

 

貯蓄型の「中性脂肪」、やりくり上手の「脂肪酸」

図2脂肪とは一体何なのかを確認しておきましょう。体内には、脂肪酸、中性脂肪、コレステロール、リン脂質の4種類の脂肪があります。このうち中性脂肪と呼ばれるものが、肉の切り身で目にするあの白い脂身の部分です。皮下脂肪や内臓脂肪として蓄積される脂肪は、全て中性脂肪で、体内の脂肪の約90%を占めるとされています。この中性脂肪は、万が一に備えて貯蓄される脂肪の貯金です。しかし、度を越すと、肥満や健康を害する一因となります。

 

生きていくため一番に使われるエネルギーとして活用されているのが脂肪酸。中性脂肪と比べるとその割合は、ずっと少ないわけですが、やりくり上手の奥様のように出費をおさえて働いてくれるのです。また、脂肪酸は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり、不飽和脂肪酸には、オレイン酸、リノール酸、EPA(エイコサペンタエン酸)など身体に良い働きをするとされる脂肪酸などがあります。

 

コレステロールは、筋肉や血液の中にありリン脂質とともに細胞膜を構成したり性ホルモンを作る大切な役割があり、大人の体内には、100グラムから150グラム程あるとされています。結合するたんぱく質の比重によりLDLコレステロール(悪玉コレステロール)とHDLコレステロール(善玉コレステロール)に分けられます。コレステロール値というとこれらを合わせた総コレステロール値を指します。

 

リン脂質は、先ほど触れたように細胞膜の構成成分で、水に溶けない中性脂肪を水に馴染ませ血液中に存在できるようにする働きがあるとされています。

 

体内に存在する4種類の脂肪はいずれも人が生きていく上で大切な役割を担っています。問題はその量なのです。人類が飢餓の時代を生き延びるために獲得した資質が、飽食の時代を迎えて健康を阻害するシステムとなってしまっているのです。

 

脂肪の蓄積システム

図3それでは、そうした脂肪の蓄積が行われる時、体内でどのようなシステムが働いているのか紹介しましょう。ご存知のように食べ物が体内に入ると胃や腸で消化が行われ、さまざまな栄養が吸収されます。ごはんや麺類、パンなどの多く含まれる炭水化物は、体内でブドウ糖になり、肝臓から血液中に送り込まれます。これが身体のエネルギーとなるわけですが、このブドウ糖の量が多くなると膵臓からインスリンというホルモンが分泌され、インスリンはブドウ糖をエネルギーとして活用するために働きます。また、余ったブドウ糖を中性脂肪に変えて脂肪細胞に取り込む働きもします。

 

このエネルギーの活用と、貯蔵のバランスがとれているうちは、もちろん人は肥満になることはありません。過食や摂取したエネルギーに見合うだけの運動がなされない状態が続くと、貯蔵庫に脂肪が貯められていきます。身体は、そのうちやってくるかもしれない飢餓に対して生き延びるためのシステムとして中性脂肪に変えたエネルギーを蓄える訳です。これも、人によりますが、体脂肪率で25%まではそれほど問題ではなく、むしろ正常な機能が働いていると考えて良いでしょう。しかし、それを超えて過食や運動不足が続くとインスリンの効き目が悪くなる「インスリン抵抗性」を招き、体脂肪の蓄積が加速される事態になります。

 

大人であれば250億から300億の脂肪細胞が全身に分布しています。昔は、脂肪細胞の数は増えず、一つひとつの脂肪細胞が肥大化して肥満すると言われていましたが、その後の研究で脂肪の蓄積が進むと脂肪細胞も分裂をして、その数が増えるということが明らかになっています。一方で一つの脂肪細胞が米粒や小豆の大きさにまで肥大した例が見つかっています。これは肥満が進んだ結果、脂肪細胞が老化して細胞分裂の力を失い以上に肥大化してしまったものと考えられています。こうなるとそれを元に戻すのは大変。簡単には脂肪が落ちなくなってしまいます。

 

また、脂肪細胞が持つもう一つの大切な働きも失われてしまいます。これは、脂肪細胞が満腹中枢を刺激して過食を制御するためのレプチンというホルモンを出しているというのが近年の研究で分かってきたのですが、細胞の老化はこうした機能を阻害してしまうと考えられます。

 

内臓脂肪を減らす生活習慣の改善

体内に蓄えられる脂肪は、皮下脂肪と内臓脂肪とに分かれますが、生活習慣病のリスクを高めるのが内臓脂肪です。動脈硬化を促進し、血圧を上げ、狭心症や心筋梗塞、脳出血や脳梗塞など命に関わる重大な病気を引き起こす原因にもなるのです。また、インスリンの働きを妨げ高血糖状態を招き易くし、糖尿病を発症させる要因にもなると考えられます。

 

この問題の内臓脂肪を減らすには、どうしたら良いでしょうか。まず、内臓脂肪を溜め込みやすいといわれる生活習慣を見てみましょう。

 

図4[問題のある悪生活習慣]
 ①食事は必ず満腹になるまで食べる
 ②早食いでよくかまないで食べる
 ③朝食抜きが多く、夕食が遅い
 ④寝る前に何か食べる習慣がある
 ⑤宴会が多く、お酒を飲むと食べ過ぎてしまう
 ⑥冷たい飲み物をよく飲む
 ⑦揚げ物などが好きだ
 ⑧テレビを見ながらだらだら食べるのが好きだ
 ⑨運動するのが苦手だ

 

まずは、問題のある生活習慣をあらためるところからスタートしてください。

 

「ノロウィルス」には正しい知識で対策を(2013年12月)

 

     
 
12月のテーマ:
「ノロウィルス」には正しい知識で対策を

 この冬も、ノロウイルスなどの感染性胃腸炎が大流行の兆しがあり、首都圏の患者報告数が各所で警報基準値を超えているといいます。国立感染症研究所によると、感染性胃腸炎の報告数は例年11月に入ると増えだし、12月にピークを迎えるというパターンがここ数年くりかえされているということです。今、まさに感染症対策に最大の注意が必要な時期を迎えていますが、ノロウイルスに対する知識が不足していたり、間違った常識のために感染のリスクを膨らませてしまったりするケースが多いとも言われます。そこで、今回は正しい対策をとるための基礎知識と、多くの人がしている誤解について紹介したいと思います。

 
     

 

ノロウイルスとは
 

  2002年の第12回国際ウイルス学会で、それまで「ノーウォークウイルス」または「小型球形ウイルス」と呼ばれていたものが「ノロウイルス」と定められました。それまで、電子顕微鏡による観察ではその形態が認められていたウイルスの遺伝子解析が進んだ結果、正式な分類学上の名前がついたわけです。

このウイルスの特徴は、高齢者から乳幼児まで広い年齢層で急性胃腸炎を引き起こし、感染力も非常に強いというもので、下痢や嘔吐を引き起こします。この嘔吐された吐瀉物に含まれるウイルスが、乾燥しホコリとともに空気中に舞い上がりそれを吸入すると感染してしまうという厄介な性質をもっているのです。

 
誤解その1「アルコール消毒すればウイルスは退治できる」
 

 普段からバイ菌類は、アルコールで消毒できると言われています。傷口の痛みに堪えてアルコール消毒した経験は、どなたもあることでしょう。あの痛みも消毒のためと我慢していたはずです。ところが、ノロウイルスにはこのアルコールが効かないのです。ノロウイルスは、エンペロープ(宿主細胞の膜)と呼ばれるものを持っていないので、アルコールや少しばかりの高温では消毒することができないのです。乾燥や酸にも強く、水中でも長時間生きる事ができるという性質を持っています。集団感染に至るケースが多いのも、こうしたしぶとい性質によるものなのです。

誤解その2「一度感染すれば免疫ができて、二度と感染しない」
 

 ノロウイルスには、多くの遺伝子型があるため、一度ノロウイルスに感染してその遺伝子に免疫ができたとしても、別の遺伝子型のノロウイルスには、また再び感染してしまうことがあるのです。また、腸粘膜での局所感染なので免疫ができたとしても、その免疫の持続時間が短いといわれます。一度感染したから、もう大丈夫と思って油断していると再感染を起こすこともあります。

誤解その3「ノロウイルスは、もともと牡蠣がもっているウイルスだ」
 

 生牡蠣を食べて感染する事が多いので、もともと牡蠣の内部に生息していると思っている方も多いのではないでしょうか。しかし、ノロウイルスは牡蠣ではなく、海水の中に生息しています。牡蠣のような二枚貝は海水を常に吸い込み、吐き出しているので、海中のノロウイルスが内蔵に蓄積され、凝縮されてしまうのです。もともと人間から排泄されたウイルスが、海水中に流れこんで海水を汚染しているというのが実態なのです。

アサリや蛤、ムール貝なども同じ二枚貝ですが、生で食べないため感染源にならないのです。また、ホタテの貝柱も生で食べますが、ウイルスがいる内蔵は食べないのでこれもまた感染するリスクが少ないとされます。

   
ノロウイルスにかかった場合の対処法
 

 子供や老人がノロウイルスに感染すると、激しい下痢や嘔吐による脱水症状で重症化するケースがあります。脱水症状が進むと意識障害を起こし、最悪の場合死亡することもあります。特に幼児の場合は、自分の吐瀉物を喉に詰まらせて窒息してしまうことがあるので注意が必要です。
 脱水症状を進行させないためには、スポーツ飲料を薄めたものや経口補水液をこまめに飲ませるようにすると良いでしょう。水分補給の目安は体重1kgあたり50mlを4時間で与えます。10kgの体重の子供であれば500mlを4時間で給水というのが目安になります。病院で点滴による水分補給という方法もあるので、とにかく医療機関にまず診断を仰ぐことで、大事に至らないように注意しましょう。

   
看護による感染に注意しましょう
 

 子供がノロウイルスにかかると心配でつきっきりで看護するという場合もあるでしょう。しかし、感染予防対策も同時にとらないと家族全員が感染してしまう危険があります。
 まず、家族の一人が感染した場合、他の家族と隔離して看護する人間は一人にします。前記のようにアルコール消毒は効き目がありませんから、家族全員が流水と石鹸でこまめに手洗いするという衛生管理を徹底します。

吐瀉物や下痢便には大量にノロウイルスが含まれていますから、清掃にはマスクと手袋を着用して空気中にウイルスが舞い上がらないように注意してください。汚染物は、ビニール袋にいれて密封します。

さらに、塩素系消毒剤を使って、患者の周辺の床やドアノブ、患者が手を触れる可能性のある所を消毒します。マスクや清掃に使った布類もビニール袋に密閉して廃棄してください。

   
市販薬は使わない
 

 ノロウイルスによる嘔吐や下痢は、身体がウイルスを排出しようとして起きる症状なので、市販の下痢止め等を使う事は逆効果になります。嘔吐や下痢を市販薬で止めてしまうと体内にウイルスを残してしまう事になるので、自己判断で薬を使う事は厳禁です。市販薬に頼らず、まず医療機関に症状を伝えて、対処法を相談してください。

これからの流行する時期に備えて、勝手な判断をせず正しい対処方法を理解したうえで、ノロウィルスに対応していきましょう。

   

 

食後にすぐ横になるのは良い? それとも悪い?(2013年3月)

 

     
 
3月のテーマ:
食後にすぐ横になるのは良い?

それとも悪い?

 昔から「食事をしたあとで、すぐ横になると牛なる」とよく言われたものです。子ども心に、牛のような姿にはなりたくない、お腹いっぱいものを食べて、ごろごろしている怠け者にはなりたくないと考えた人もいたことでしょう。

主に、行儀の悪さを戒めた躾だったわけですが、同時に、そこには食事後にすぐ横になってはいけないという健康のための古人の知恵が秘められていたようにも思います。

一方で、ある剣豪小説に、若い武芸者が食べたものを効率よく消化して身体の栄養とするため、食事の後に真上を向いて静かに横たわることを日課にしているという場面がでてきたりします。

実は、消化という作業は、生き物にとって大変な力仕事なのです。元々固体であったものを噛み砕いて、消化液で溶かし、さらに酵素で分解し、血管を通れる栄養素にするという作業を驚くほど短時間でやってのけているのです。身体の血液を消化のために内蔵、消化器官に集中するために静かに横になるというのも合理的に思えます。さて、身体にとって食後にすぐ横になった方が良いか、ならない方がよいのか、今回はこのことをテーマとしてみました。

 
     

 

逆流性食道炎について
 

 
逆流性食道炎とは、食べ物を消化するための胃酸や十二指腸液が、食道に逆流することで食道の粘膜にびらんや炎症を引き起こす疾患名で、食後すぐに横になることが、この病気の要因の一つとされています。

食後にすぐ横になってはいけないという古人の教えは、この疾患に対する戒めだったのでしょうか。では、少しこの疾患について説明しましょう。

逆流性食道炎の症状としては、胸焼けがしてみぞおちのあたりに痛みがあったり、食事中や食後に横になると喉や口の中に胃酸が逆流して酸っぱいものがこみ上げてきたりします。胸のあたりに違和感・不快感があったり、腹部に膨満感があるという症状もあります。

また喉に違和感があったり、声がかすれる場合があります。食べ物が食道を通るときに痛みを伴うこともあります。怖いのは、就寝中に逆流物が気道にはいり、呼吸器疾患を起こすことです。

要因としては、ストレスや暴飲暴食、喫煙、飲酒。噴門とも呼ばれる食道下部括約筋の弛緩や喫煙や加齢による機能低下。食道裂孔ヘルニアという胃の一部が胸腔内に入り込んでしまう病気。妊娠、肥満、便秘、運動による腹圧の上昇、消化不良などとされていますが、一般的には「高齢化などによる噴門の機能低下」が最大要因として知られています。

食べ物を消化するための胃液は、一日に1.5?2リットルも分泌されます。この強い酸である胃液への耐性が弱い食道に胃液が逆流しないように蓋をしているのが噴門と呼ばれる部位です。この噴門が緩んでしまうと食べ物が逆流してしまうのです。

噴門の機能低下は、高齢化ばかりでなく、一回の食事量が多すぎたり、食の欧米化で油分の多い食事ばかり摂りすぎると下部食道括約筋の締まりが弱まり、噴門が開きやすくなってしまうのです。最近、若い人にもこの疾患が増えているのは、この食習慣の欧米化や遅い時間の食事、肥満により脂肪で胃を圧迫するなどの原因が考えられます。これらの原因に、食後すぐに横になる習慣が重なるとリスクが高まると考えて良いでしょう。

次にその予防と治療について紹介します。

 前述のような症状が気になり、肥満している場合は、医師に相談して体質改善と減量を行うこと、生活習慣を改善することが何より大切です。辛いものや脂っこいものを好んで食べたり、遅い時間の食事は消化系に様々な負担をかけます。

治療は、生活改善とともに薬物治療を行います。症状の緩和には食道を刺激する胃液の産生を抑制する薬物を使用します。薬物での治療は中断すると発症時と同じような症状になることが多いので、症状の進行状況をみながら治療薬の増減を行います。

治療薬は、胃酸の分泌抑制剤や消化管運動機能改善剤、胃酸の濃度を中和する制酸剤などを使用します。こうした薬による治療の効果が現れない場合や、食道狭窄などによる出血があるときや食道裂孔ヘルニアが確認されたときは、外科治療を行うこともあります。

手術は機能が低下した噴門や下部食道括約筋の修復や食道裂孔ヘルニアによる裂孔した横隔膜の縫合などを行います。また、高齢者の場合、加齢により緩くなってしまった食道裂孔の縫合などを行う噴門形成術を行うこともあります。

   
食後の安静
  食後に横になって安静にするのは、高齢者の場合上半身は起こした状態で安静にするというのがベストでしょう。この姿勢であれば逆流性食道炎の予防にもなります。もう一つ肝臓という臓器にとっても食後の安静は大切だということも説明しておきましょう。

肝臓には胃や腸で栄養を吸収した血液が集まってきます。この血液が肝臓の中を通過するときに肝臓に栄養が吸収されます。この血液の量が横になると立っているときの2倍から4倍になるといわれます。食後に30分から1時間ごろ寝をすると栄養たっぷりの血液が肝臓に集まり、慢性肝炎などの肝臓病がある人に良いだけでなく、肝臓病を未然に防ぐ効果も期待できます。腹八分目に和食をいただいて、食後にクッションを背に長椅子にゴロンと横になるというのは最高の贅沢かもしれません。

 

上手に使おうサプリメント(2011年10月)

 

     
 
10月のテーマ:
上手に使おうサプリメント

毎日の食事で不足しがちなビタミンやミネラル、アミノ酸などの栄養補給やダイエットに気軽にドラッグストアやコンビニエンスストア、通信販売で購入できるようになったサプリメント。

栄養補助食品(えいようほじょしょくひん)、健康補助食品(けんこうほじょしょくひん)とも呼ばれており、近年、私達の暮らしに身近になってきました。

 
     

 

サプリメントの歴史
 

サプリメントは、「食事だけでは、必要な栄養素を摂れないときに、それを補うもの」という目的で近代になってアメリカで誕生しました。

アメリカでは日本のような国の保険制度がないため、病気になると高額な医療費もかかるため、人々の健康管理に対する意識も世界トップレベルといわれています。

予防医学への関心から「サプリメント大国」とも言われているくらい、サプリメントが一般的に広く利用さており、米国成人の6割以上が何らかの形で日常的にサプリメントを利用していると言われています。

サプリメント

アメリカのサプリメントは「ダイエタリー・サプリメント」と呼ばれ、DSHEA という法律で「薬と食品の中間のもの」 と定義されており、厳しく規制されています。

日本ではアメリカのような規制はなく 「サプリメント」 とは、医薬品ではなく「食品」 と同じ扱いとなっており、サプリメントに関する薬効は認められていません。

しかし栄養機能の表示については一定の取り決めがあり、栄養素ごとに、成分の規格基準が定められています。

   
特定保健用食品(トクホ)との違い
 

最近、「トクホ」という言葉をコマーシャルなどでよく聞くようになりました。特定保健用食品(トクホ)は、科学的根拠の分析、有効性や安全性の審査を踏まえた上で、一定の有効性が確認され、厚生労働省が認可した食品のことを言います。

これらの食品には、国が認めた印として“トクホマーク”がついています。サプリメントや栄養ドリンクは栄養機能食品と呼ばれ、特定保健用食品の基準は満たしていません。

   
サプリメントの種類
 
サプリメントには成分と効果によっていくつかの種類があります。大切なのはまずビタミン・ミネラルを充分摂り体を正常な状態に機能させた上でより健康を増進させるものや特定の部位に働きかけるものを摂取することです。

サプリメントの種類
   
[1] 人間が生きていく上で必ず必要になる栄養
 

ビタミン、ミネラル、必須脂肪酸(DHA、EPA)など。これらの本来食事から摂取する身体の基本になる栄養素は生きていくために必要不可欠なもので、不足した場合に様々な不調が起こる原因となります。

[2] 摂取することでより体の機能が良くなる栄養
 

アロエやイソフラボン、クロレラ、霊芝、ビール酵母、黒酢などです。[1]にプラスして摂取することでより健康を増進できる栄養素です。

[3] 特定の部分に働きかける栄養
  主にハーブや薬草類が原料で古来より疾病の治療や予防に使われてきた物が多くあります。イチョウ葉やセントジョーンズワートなどが代表格です。
 
サプリメントの摂り方
 
サプリメントは栄養補助の役割り サプリメントの摂り方
 

サプリメントはあくまでも足りない栄養を補うものですので、サプリメントを摂ってさえいれば、食事はどうでもいいというわけではありません。

基本的には、毎日の食事で必要な栄養素を摂るのが理想です。

一日の摂取量を守って服用
 

サプリメントの表示ラベルには1日の摂取(目安)量が書かれています。成分によっては摂りすぎによる過剰症を起こす場合がありますので、必ず1日の摂取量を守るようにしましょう。

また成分によっては単独ではなく、何種類か組み合わせて服用することで効果を発揮する場合がありますので、よく調べてみましょう。

薬ではありませんが、基本は食事の後に摂取するのが理想的といわれています。

保存に気をつけましょう
  品質の劣化を防ぐためにも、高温多湿な場所に長時間置いかないなど、保存方法にも気を付けましょう。

製品によっては保存方法がラベルに表示されていますので、必ず守るようにしましょう。

 

「食中毒」に気をつけよう!~食中毒の予防と対策~(2011年6月)

 

     
 
6月のテーマ:
「食中毒」に気をつけよう!

~食中毒の予防と対策~

梅雨時期ということもあり、蒸し暑い日やジメジメと湿気の多い日が続いています。スコールのような雨が急に降ったり、日が落ちると冷え込んだり、お天気が不安定な時期でもあるので、お出かけのときには雨具や上着を忘れないようにしたいものです。今回は、前回に引き続き、高温多湿の季節に増える「食中毒」について、普段から気を付けておきたいポイントをご紹介します。

 
     

 

食中毒の原因と症状
 

 食中毒とは、食中毒の原因物質である細菌やウイルスが付着した食品や、有害・有毒な物質が含まれた食品を食べることによって起こる健康被害のことです。

食中毒にかかると、多くの場合嘔吐や腹痛・下痢など、急性の胃腸障害が起こりますが、ほとんどは軽い症状で済むことが多いと言われています。しかし、中にはO-157やフグ毒のように死に至る食中毒もあります。また、体の抵抗力の弱い子どもや高齢者が食中毒にかかると重症化する傾向があるため、特に注意が必要です。

   
「食中毒三原則」
    食中毒を予防するためには、普段から「つけない、増やさない、やっつける」の食中毒三原則を守ることが大切です。

■ポイント1.細菌を「つけない」
●調理をする際の注意

手洗いの敢行はもちろん、健康管理にも注意し、調理に関係ない人や物、ペットなどを調理場に入れない(置かない)こと。
●調理場を清潔にする

まな板や包丁、食器やふきんは常に清潔なものをつかい、調理台やシンク、天井や床なども衛生的な管理を心がけること。
■ポイント2.細菌を「増やさない」
●食材管理の注意

新鮮な材料を使って衛生的な調理を心がけ、生鮮食品はなるべく5℃以下で保存し、早めに使うこと。
●調理後の注意

加熱調理した食事でも、室温で放置せず、調理したらすぐに食べるよう心がけること。
■ポイント3.細菌を「やっつける」
●加熱調理の際の注意

加熱が必要な食材は、75℃以上で1分間以上加熱し、必ず中心部まで火が通るようにすること。
●保存の際の注意

細菌の繁殖を防ぐため、室温での食品保存は避け、冷蔵庫で保存する際は0℃以下の状態で行うこと。

   
普段から気をつけたい「食中毒予防」のポイント
  ■キッチン編
調理を始める前、食事の前には必ず手を洗いましょう。(※手の洗い方については次項で詳しく解説します) また、調理の前にキッチンや調理器具をチェックし、清潔な状態であることを毎回確認する習慣をつけましょう。まな板や包丁などは違う食材を調理するごとに洗浄するようにし、特に生ものを調理した後は熱湯消毒を心がけてください。
■買い物編
食材は新鮮なものを選び、買い置きの際は特に、消費期限に十分注意しましょう。 生ものや冷凍食品など、冷蔵・冷凍が必要な食品は買い物の最後にカゴへ入れ、持ち歩きの時間をなるべく少なくしましょう。また、購入後の車内放置には特に注意し、速やかに帰宅して冷蔵(冷凍)庫へ入れるようにしてください。
■お弁当編

常温に中~長時間置いてから食べることの多いお弁当は、特に注意が必要です。職場・学校などで冷蔵庫が使えれば活用し、無い場合も直射日光の当たる場所などには絶対に置かないようにしましょう。
<お弁当づくりのポイント>
・弁当箱は常に清潔なものを使い、水滴が残ったまま食材を詰めないこと。

・弁当箱はできるだけ通気性のよいものを使用するか、保冷材などを活用して細菌が繁殖しづらい状態を保つ工夫をすること。

・レタスやキュウリなど生野菜は避けること。

・熱い食品(ご飯を含む)を詰めるときは、できるだけ急速に冷ましてから詰めること。

   
食中毒を予防する、手洗い方法
 

  1. 時計や指輪を外し、両手を流水でよくぬらす
  2. 液体石けんを手のひらにとり、手の平をよく洗う

    (※固形石けんは細菌の繁殖場所となっている場合があるため、液体石けんのほうが好ましいとされています)

  3. 両手の甲をよく洗う
  4. 指をからませるようにして、指の間をよく洗う
  5. 片方をじゃんけんのグーの形にし、その手の指の背や爪の部分を洗う

    (反対も同様に)

  6. 親指をもう片方の手のひらで包み、親指をくるくると回すように洗う

    (反対も同様に)

  7. 指先、爪の部分をよく洗う

    (爪はなるべく短くしておき、爪の間も洗う習慣をつける)

  8. 手首をもう片方の手の平で包み、手首をくるくると回すように洗う

    (反対も同様に)

  9. 流水でよく洗い流し、ペーパータオルや乾燥した清潔なタオルで拭く

    (※エプロンや共用のタオルなどでは絶対に手を拭かないこと。また、消毒用アルコールなども併用すると更に効果的ですが、必ず清潔に洗い乾燥させた手に使用するようにしましょう)

   
食中毒にかかったときの対処法
  ■早めの受診が第一!
食中毒は、場合によっては死に至ることもあるということを忘れず、決して軽視はせずに早めに医療機関へ行くようにしてください。

また、受診する際、原因と思われる食品やおう吐物、便などをビニール袋などに入れて持参すると、診断の際の重要な手がかりになります。(※二次感染を防ぐため、取り扱いには十分に注意してください!)
■家庭での対処法

食中毒で下痢やおう吐を繰り返すと、水分が不足し、脱水症状を起こす場合があります。

水分補給と適当な塩分、糖分などの補給に気を配りましょう。

(スポーツドリンクなどは手軽に水分・ミネラルが取れるので便利です)

市販の下痢止め薬などは安易に使用せず、まずは医療機関を受診して医師に相談してください。

くどいようですが、「たかが食中毒」と軽視は禁物です。「いつも食べているから大丈夫」「加熱したから大丈夫」と油断せずに、清潔・安全を確認してから食事をするようにするだけで、食中毒のリスクは減らせます。清潔な手、清潔な食器で、安心して食事を楽しめるよう普段から気をつけていきましょう。

 

 

「食中毒」に気をつけよう!~食中毒の主な原因と症状~(2011年5月)

 

     
 
5月のテーマ:
「食中毒」に気をつけよう!

~食中毒の主な原因と症状~

天気の良い日は半袖一枚でも過ごせるほど暖かい日も増え、初夏を感じる季節になりました。今年は冬から春にかけて寒さが長引いたため、気温の上昇が余計に急激に感じられるようです。気温や湿度が上がるにつれて、心配になるのが「食中毒」です。焼肉店で起こった食中毒事件も記憶に新しいですが、外食時はもちろん、普段の食事にも潜む「食中毒」の危険についてお話します。

 
     

 

食中毒とは
 

 食中毒とは、食中毒の原因となる細菌やウイルスが付着した食品や、有害・有毒な物質が含まれた食品を食べることによって起こる健康被害のことです。

主な症状は嘔吐や腹痛・下痢などの胃腸障害ですが、なかにはO-157やフグ毒のように死に至る食中毒もあります。特に、体の抵抗力の弱い子どもや高齢者が食中毒にかかると重症化する傾向があります。また、食中毒は通常、人から人へ感染することはありませんが、腸管出血性大腸菌(O-157など)、ノロウイルス、赤痢菌などは感染力が強く、人から人へ感染することがあります。

   
食中毒のおもな原因物質と症状
    食中毒には様々な原因物質がありますが、微生物(細菌、ウイルスなど)によるもの、化学物質によるもの、自然毒によるもの及びその他に大別されます。

■細菌によるもの
<感染型>
・サルモネラ菌

生肉、生レバー、食肉加工品、生野菜、生ケーキ、うなぎ、スッポンなどに含まれます。 潜伏時間は約5時間から72時間(平均12時間)で、主な症状は、下痢・腹痛・発熱(38℃~40℃) の他、嘔吐・頭痛・脱力感・倦怠感を起こすこともあります。
・腸炎ビブリオ

近海の魚介類(赤貝、アオヤギなど)、魚介類調理後の包丁、まな板などに含まれます。

潜伏時間は約10時間~24時間(短い場合で2~3時間)で、主な症状は、激しい腹痛、下痢などの他、発熱・はき気・おう吐を起こす場合もあります。
・カンビロバクター

生肉(鳥肉など)、サラダ(二次汚染)などに含まれます。

潜伏期間は1~7日(平均2~3日)と長いことが特徴で、主な症状は、下痢、腹痛及び発熱の他、倦怠感、頭痛、めまい、筋肉痛等が起こることがあります。

初期症状は、風邪と間違われることもあります。
・エルシニア菌

牛乳、乳製品、食肉などの冷蔵品に含まれます。

潜伏期間は2~5日と長く、摂取した菌の量や感染者の年齢によって、症状は異なりますが、発熱、下痢、おう吐などの症状の他、虫垂炎のような猛烈な腹痛におそわれることもあります。
<毒素型>
・黄色ブドウ球菌

おにぎり、弁当、菓子、煮豆などに含まれます。

潜伏時間は1~5時間(平均3時間)と他の食中毒菌に比べて短いのが特徴で、激しい嘔吐・腹痛の他、下痢を伴うこともあります。発熱は少ないようです。
・ボツリヌス菌

缶詰・びん詰め食品、いずし(魚肉発酵食品)などに含まれます。

潜伏時間は8時間~36時間で、主な症状は吐き気、嘔吐など。症状が進むと視力障害、言語障害、えん下困難(食品を飲み込みづらくなる)などの神経症状が現れ、重症例では呼吸困難により死亡することもあります。
<その他>
・病原性大腸菌(O-157、O-111など)

生レバー、生肉、生サラダ、水などに含まれます

潜伏期間は3~5日で、激しい腹痛と大量の新鮮血を伴う下痢が特徴ですが、健康な成人では軽症または無症状に終わる場合もあります。また、まれに下痢が始まってから数日から2週間以内に貧血や急性腎不全などの症状を呈する溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症することがあります。

ベロ毒素という毒素をつくるので若年齢層の子供などは重症化しやすい傾向があります。

■ウイルスによるもの
<感染型>
・ノロウイルス

生かきなどの食品、水などに含まれます。

潜伏時間は24~48時間で、吐き気やおう吐・腹痛・下痢・発熱(38℃以下)があります。通常はこれらの症状が1~2日続いた後に治癒し、後遺症もありませんが、体力の弱い乳幼児、高齢者で脱水症状がひどい場合には、水分と栄養補給を行い、体力が消耗しないように注意が必要です。

また、感染しても発症しない場合や軽い風邪のような症状で済む場合もあります。
・A型肝炎ウイルス

水、野菜、魚介類などに含まれる。

感染力が強く集団発生することがある食中毒で、急性肝炎、全身倦怠感、発熱、筋肉痛、黄疸、肝腫大、食欲不振などが起こります。

■自然毒によるもの
<植物性自然毒>
・毒キノコ

ツキヨタケ、カキシメジ、クサウラベニタケ、ニガクリタケなど。 摂取後30分~3時間程度で徴候があらわれ、嘔吐、下痢、腹痛などの症状が起こります。 ドクツルタケ・シロタマゴテングタケは猛毒で、徴候は6時間以上(通常10時間程度)であらわれ、嘔吐、腹痛、下痢、肝臓腎臓の機能障害を起こして死亡する例もあるので特に注意が必要です。
・ジャガイモの芽

ジャガイモはソラニンやチャコニン(カコニン)などの有毒なアルカロイド配糖体を含みます。特に皮層や芽に多く含まれ、嘔吐、下痢、呼吸困難などの症状が起こることがあります。
・青梅、アンズなどの種子

体内呼吸を止め、死に至らせる猛毒・青酸(シアン)配糖体を含んでいます。
<動物性自然毒>
・フグ毒

フグの種類や季節によってテトロドトキシンを含む部位や毒の強さは異なりますが、フグ毒はテトロドトキシンと呼ばれ、青酸カリの1,000倍の毒力を持っています。 潜伏期間は1時間以内と短く、くちびるや手の感覚麻痺、運動神経麻痺、呼吸麻痺などが起こり、発症後死に至るまでは8時間以内と言われています。

■化学毒によるもの
・農薬など

洗剤や農薬等が混入した食品を摂取したことによって起こる食中毒です。 嘔吐や腹痛、下痢が起き、ときにはめまいやショック症状を伴うこともあり、死亡する危険性もあります。
・ヒ素・銅・鉛・錫など

金属の器具や容器から溶出したスズや銅を摂取したことによって起こる食中毒や、ヒスタミンを多く蓄積した食品を摂取したことによるアレルギー様の食中毒があります。 嘔吐や腹痛、下痢が起こる他、めまいやショック症状を伴うことがあり、死亡する危険性もあります。

このように、食中毒は場合によっては死に至ることもあるため、軽視は絶対に禁物です。食中毒かな?と思ったら、すぐに医療機関で受診をしてください。その際、原因と思われる食品やおう吐物、便などをビニール袋などに入れて持参すると、診断の際の重要な手がかりになります。(※二次感染を防ぐため、取り扱いには注意してください)

食中毒を防ぐには、細菌(原因物質)を体内に入れないことが大原則です。次回は食中毒の予防と対策についてお話します。

 

 

「味覚障害」を予防して、おいしく食べよう!(2010年1月)

 

     
 
1月のテーマ:
「味覚障害」を予防して、おいしく食べよう!
 新年明けましておめでとうございます。昨年猛威を振るった新型インフルエンザもようやく落ち着きをみせてきましたが、まだまだ油断は禁物です。新しい年の始まりを祝うと共に、改めて気を引き締め、家族みんなが健康で過ごせるよう生活面を見直しましょう。さて、お正月といえばおせち料理や親戚が集まっての外食やご馳走など、食べる楽しみも多い時期。今回は、そんな「食べる楽しみ」を守る、味覚障害の予防についてお話します。
 
     

 

味覚障害とは
 
 味覚障害とは、読んで字のごとく「味」を感じる味覚に障害が起こる病気。最も多い症状は「味覚の低下」や「味覚の消失・脱失」で、食べ物の味がわからなくなってしまうというものです。この症状は味覚障害患者の約7割に現れており、続いて多いのが『何も食べていないのに苦い味がする』などと訴える「自発性異常味覚」で、この症状は味覚の低下と一緒に現れる場合もあります。この他、本来の味と違った味を感じる「錯味(さくみ)症」や「異味(いみ)症」、何をたべてもおいしく感じられない「悪味(あくみ)症」などがあります。思い当たる症状がある場合は、一度、内科や耳鼻科で受診をしてください。

また、自覚症状がない方も、以下のチェックシートで自己診断をしてみましょう。当てはまる項目が多いほど味覚障害になっている恐れがあるので注意してください。

<味覚障害チェックシート>

最近、食べ物の味がしなくなった気がする
以前に比べて食べ物を「おいしい」と感じなくなった
「甘い」「酸っぱい」「辛い」「苦い」のうち、感じない味がある
口の中に何も入っていないのに味がする
色々な臭いを感じなくなった
舌がピリピリと痛むことがある

 

味覚障害の原因
 
 そもそもなぜ「味覚障害」が起こるのでしょうか?その主な原因は、血液中の亜鉛不足にあると言われています。また、薬の副作用や、肝障害・腎障害・消化器障害・糖尿病などの病気、食品添加物の影響などによっても起こることがあり、原因の分からない「特発性味覚障害」もあります。

このように、「味覚障害」の起こる原因はさまざまですが、共通するのは身体の組織や細胞医必要な亜鉛の欠乏と考えられます。亜鉛が不足することによって舌の奥にある「味蓄(みらい)」という部分の味細胞の生まれ変わりが遅くなり、味細胞の構造や機能に影響を与えるということが最近の研究結果で明らかとなってきたのです。

<味覚障害の主な原因>

血中の亜鉛不足…
  偏った食生活などが原因で、味覚機能を維持するために必要な血液中の亜鉛の量が正常値より少ない状態。
二次的な亜鉛不足…
  薬や食品添加物の影響/一部の薬や食品添加物が、消化管内で亜鉛と結合して体内への亜鉛の取り込みを低下させたり、体内からの亜鉛の排泄を促進させたりする。

全身の病気の影響/糖尿病や肝障害・腎障害は体内での亜鉛の利用を妨げる。消化器障害は体内への亜鉛の取り込みを低下させる。

特発性の味覚障害…
  血液中の亜鉛の量は正常で原因は不明だが、亜鉛を内服すると症状が改善する。

 

味覚障害を予防するために
 
 味覚機能は年齢と共に徐々に低下し、70歳くらいになると一気に低下すると言われています。しかし、味覚障害になるのは高齢者に限ったことではありません。将来的に味覚障害にならないためにも、次のことに気をつけて味細胞が正しく味を感じられるようにしておくことが大切です。

<味覚障害を防ぐためのポイント>

亜鉛を含む食品を食べる。
  厚生労働省では、亜鉛の1日の摂取量の目安を成人男性11~12mg、成人女性9~10mgと発表しています(アメリカやカナダなどの先進国では男性15mg、女性12mgとされている)。しかし、普段の日本人の食事では6~9mgしかとれていないと言われており、目標の半分しか摂取できていないのが現状です。緑茶や抹茶、牡蠣など、亜鉛が含まれている食品を意識的にとるように心掛けましょう。ちなみに、牡蠣は特に亜鉛が豊富で、100g中に40~70mgの亜鉛を含むので、大粒の牡蠣を1つ食べれば1日の目標値を軽くクリアすることができます。
栄養バランスのとれた規則正しい食生活を心がける。
  亜鉛は体内で合成されないため食品からとらなくてはいけませんが、現代は土壌中のミネラルが少なくなった土地が多く、そこで育った作物中のミネラルも減ってきています。ただでさえとりづらくなった亜鉛を効率的に摂取するため、インスタント食品やファストフードなどの手軽な食品を食べるのを控え、栄養バランスのとれた食事を心掛けましょう。

また、加工食品のとりすぎにも注意が必要です。ほとんどの食品にはポリリン酸ナトリウムなどの食品添加物が含まれており、これらは体内から亜鉛を排出してしまうのです。そしてパンや漬物、しょうゆなどの変色・変質を防止するために含まれるフィチン酸という天然物質も、亜鉛を吸収しづらくする作用があるので注意してください。

喫煙・飲酒を控える
  舌に直接刺激を与える喫煙が良くないのはご存知のとおりですが、アルコールも味覚障害の原因のひとつです。これは、アルコールを分解するためにたくさんの亜鉛が使われるためです。また、亜鉛が不足するとアルコールを分解する酵素のはたらきが鈍くなるので、お酒をよく飲む人ほど亜鉛をとるようにしましょう。

 

   その他、「唾液が出るように、よく咀嚼(そしゃく)して食事をする」「朝晩と食後に歯を磨き、口の中を清潔に保つ」なども、普段の生活の中で気をつけて欲しいポイント。いつまでも食事をおいしく食べるため、味覚障害にならないよう普段から気をつけていきましょう。

 

 

ビタミンやミネラル・・・微量栄養素が不足していませんか?(2009年2月)

 

ビタミンやミネラル・・・微量栄養素が不足していませんか?
  現在日本では、エネルギー摂取量は過剰であるものの、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素は不足する傾向にあります。ビタミンやミネラルが不足すると、炭水化物やタンパク質、脂質を効率的に利用することができなくなってしまいます。肥満はもちろん、脂質異常症や糖尿病にはこの代謝異常が大きく関わっています。代謝のメカニズムに負担をかけないためにも、ビタミンやミネラルは毎日きちんと摂取することが必要です。
   
  【微量栄養素のはたらき】
 
エネルギー産生に複合的に作用するビタミンB群
  ビタミンB群は食事で体内に入ってくる3大栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質)を分解・燃焼するのを助け、からだに必要なエネルギーを作り出します。
   
 
心筋梗塞のリスクを下げるビタミンEとC
  抗酸化ビタミンのビタミンA、C、Eは動脈硬化の予防に役立つビタミンです。米国での研究によると、ビタミンEのサプリメント服用が心筋梗塞による死亡率の低減に役立つこと、また、ビタミンEとCの併用でリスクはさらに低減することがわかっています。
   
 
動脈硬化を促すホモシステインを抑える葉酸とビタミンB群
  動脈硬化を引き起こすといわれているホモシステイン。血中の濃度が増えると、LDL(悪玉)コレステロールを酸化させて、血栓の元を作ります。葉酸やビタミンB12、B6にはホモシステインの過剰生成を抑える働きがあることがわかってきました。
   
  バランスをとりながら働くミネラル
  ナトリウムはカリウムと調節しあって血圧や浸透圧の調整を行います。このほか、ミネラルは相互にバランスをとりながら働きます。そのため、ミネラルの摂取バランスが悪いと、体内で上手く働かなくなり、だるい、疲れやすい、風邪を引きやすいなどの症状があらわれます。
   
 
からだに必要な栄養素は、食事からとることが基本です。ビタミンには水に溶ける性質の水溶性ビタミンと、水には溶けにくい脂溶性ビタミンがあるなど、栄養素には様々な特徴があります。最近ではサプリメントなどで手軽に効率よく補給することもできますが、特定の栄養素だけをとるのではなく、毎日のバランスのよい食事から美味しく、無理なく、栄養素をとりたいものです。

 

 

糖尿病を予防する食生活(2009年1月)

 

糖尿病を予防する食生活
 
  ○糖尿病になる人が増え続けています。
   日本人の多くは体質的に糖尿病になりやすい遺伝子をもっていますが、この半世紀余りの間に食生活が急速に豊かになりすぎたことなどが皮肉にも、糖尿病患者数を20倍にも増やす事態をまねきました。

2007年に厚生労働省が発表した糖尿病実態調査の結果によると、糖尿病予備軍を含めて、全国で「糖尿病が強く疑われる」あるいは「糖尿病の可能性を否定できない」人が、2210万人もいるのです。5年前の調査に比べて600万人も増えています。

 血糖値が少々高くても、自覚症状はまったくありません。しかし、血糖値が高い状態が続くと、さまざまな合併症をまねきます。成人の失明の原因の第1位、人工透析を受けなければならなくなる原因の第1位はいずれも糖尿病です。

血糖値が高めと指摘されたら、生活習慣の見直しを始めましょう。糖尿病の誘因は、肥満、食生活の偏り、運動不足などの生活習慣と深く関わります。したがって、糖尿病は一人ひとりの生活習慣の見直しと改善によって予防し、進行を遅らせることが可能になります。

   
 

日本人は糖尿病になりやすい!?

日本人は2型糖尿病になりやすいと言われています。これは、日本人のインスリン(血液中の糖を細胞に取り込み、血糖値を下げる働き)分泌能力が、欧米人に比べ低いからです。欧米人の中には高カロリー、高脂肪の食生活をしている為に、日本では考えられないくらいの肥満体をした人を見かけることがありますが、欧米人のインスリン分泌能力はその高カロリーの食生活に対応でき、過剰に摂取した栄養は脂肪として体につき、血中に糖として残る事はないそうです。ところが日本人はインスリン分泌能力が欧米人よりも低いために、過剰に取った栄養が糖として血中に残ってしまいます。つまり、私たち日本人は欧米人よりも太りにくいかわりに、糖尿病になり易いのです。

もう一つの理由としては、飢餓に強い遺伝子的な要因を持っている為とされています。栄養状態が悪い状態が長く続いた時代に、飢餓に強い遺伝子が残り、子孫に伝わったと考えられていますが、現在では、この節約遺伝子が裏目にでてしまい、高カロリー、高脂肪の食事に対応できず、肥満や糖尿病に陥ってしまうのです。

   
  糖尿病を予防する食事
  ○野菜はたっぷりとろう
  野菜に含まれる食物繊維は、肥満を防ぐ働きをします。野菜は1日に350g以上とり、このうち緑黄色野菜を120g以上とるようにしましょう。
   
  ○食事は決まった時間に、時間をかけて食べよう
 
朝食を抜いたり、食事時間が不規則だったり、寝る前3時間の間に食べるのはよくありません。ゆっくりよくかんで、一家団らん、会話を楽しみながら、時間をかけて食べましょう。
   
  ○甘いものや脂っぽいものは食べ過ぎない
  甘いものや脂っぽいものは太りやすい食品です。食べ過ぎに気をつけましょう。
   
  ○ひとり分ずつ、取り分けて食べよう
  大勢で大皿から食べると、どのくらい食べたかわかりづらいため、たくさん食べてしまいがちです。
   
  ○薄味にしよう
  濃い味のおかずはごはんをたくさん食べてしまいがちです。素材の味をいかした薄味料理を。
   
  ○ながら食いはやめよう
  テレビを見ながら、新聞を読みながらといったながら食いも、食べた量がわかりづらいもの。またよく味わえないため、満足感もありません。
   
  ○多いときは残そう
  多いと感じたら、無理せずに残しましょう。
   
  ○お茶碗は小ぶりのものを
  お茶碗を小さくすると、1膳の量が少なくなるため、食べ過ぎを防げます。
   
  ○調味料はかけずにつける
  マヨネーズやドレッシングは、油が多く、太りやすい食品。お醤油などの塩分は、高血圧の原因になり、糖尿病を悪化させます。直接料理にかけず、小皿にとってつけましょう。
   
  ○食品のエネルギーを知ろう
 

毎日食べるものがどのくらいのエネルギーなのかを知り、食品を選ぶときや食べるときの参考にしましょう。