画像

まめ知識カテゴリ: 食事

感染症にかかったときの食事(2008年2月)

 

感染症にかかったときの食事

 
 
 

 毎年12月から3月頃の冬に多く発生する病気と言えば、インフルエンザウィルスやノロウィルスによる「感染症」。 特に、ノロウィルスなどによる「感染性胃腸炎」は嘔吐や下痢のために、体内の水分や塩分が大量に失われると脱水状態になり体力の弱い乳幼児、高齢者の方は症状が重症化しやすいので注意が必要です。

感染症にかからないためには、うがいや手洗いなどの感染予防を行うと供に、毎日の食事で十分な栄養を摂り、ウィルスに負けない丈夫な身体作りを心がけることが大切です。

しかしながら、もし感染症にかかってしまったら、次のことに気をつけて食事をとるようにすると良いでしょう。

 
     
 
○食欲がある時  
 

普通に食事をとって構いませんが、もしお腹の調子が悪い時は…

・消化が良い食べ物(食物繊維や高脂肪食品など消化・吸収されにくい食物や刺激物は避ける)や調理方法(軟らかく茹でる、蒸すなど)を選ぶようにしましょう                  

・1回の食事量を減らし、食事回数を増やすとお腹に負担をかけません

・ゆっくりとよく噛んで食べましょう

 
     

○下痢をしている時

 
 

便の状態を見て、便の状態と同じような形状のものをとるようにしましょう

「軟便」:うどんや茶碗蒸し野菜の煮物などの軟らかい食べ物

「ドロドロ便」:裏ごしなどのドロドロの食べ物

「水のような水様便」:スープや果汁、イオン飲料などの水分

 
     

○吐き気・嘔吐がひどく食事が摂れない時

 
 

下痢・嘔吐などにより身体から大量に損失した水分や塩分を補うことが大切ですが、水など浸透圧の低い水分ばかり摂取しているとかえって体調が悪くなることがあります。そのような時は塩分・糖分が適切な割合で配合された吸収の良い経口補水液(Oral Rehydration Solution)を少量ずつ回数多く摂取して脱水を予防すると良いでしょう。

 
   ★家庭で作る経口補水液★

湯冷まし1リットルに砂糖40gと食塩3gを加えてよく溶かします。

レモンやグレープフルーツ果汁を少量加えると飲みやすくなります。

(夏期の熱中症にも軽度であれば効果があります)

 
     
○回復したら、なるべく早く普段の食事に戻しましょう!  
 

 

 

健康な1年の始まりは、 毎日の食事をよく「噛む」ことから(2008年1月)

 

     
 
1月のテーマ:
健康な1年の始まりは、

毎日の食事をよく「噛む」ことから

 新年明けましておめでとうございます。毎年のことではありますが、新しい1年の始まりという大きな節目を迎え、みなさん気持ちを新たにしていることと思います。今回は健康にこの1年を過ごすために、食事の大切さ、「噛む」ことの大切さについてお話しします。
 
     

 

 
咀嚼(そしゃく)のはたらき
 
  咀嚼とは、食べ物をよく噛みくだき、味わうことです。食べ物を口の中で何度も噛んで細かくすることで栄養として消化吸収されやすくなるため、咀嚼はからだにとって大切な役割をもっています。また、咀嚼回数が多くなると唾液がたくさん出ますが、この唾液にも消化吸収や殺菌力を高める作用があります。他にも、咀嚼の刺激が脳を経て胃に伝わることで、咀嚼運動に見合った胃液が分泌されて効率的に消化が行われるなど、栄養を摂取するための「食事」という行為において咀嚼は大変重要です。

しかし、現代人は昔に比べて食べ物を噛む回数が減っていると言われています。その要因の第一には、軟らかい食べ物が多くなったことが挙げられます。一説によると、日本人の咀嚼回数は弥生時代の1/6、昭和10年代と比べてもなんと約半分の回数に減っているとも。子供の頃からよく噛む習慣がないために顎の成長が遅れ、歯並びが悪くなったり、噛む筋肉自体が弱くなっている現代人が増えているのです。

 
咀嚼はなぜ大切か
 

 食べ物の変化に加え、忙しい現代社会ではゆっくり食事をする時間がないという問題もあるようです。しかし、先にお話しした通り「よく噛んで食べる」ことは健康づくりの第一歩。咀嚼の役割を知ることで、その大切さを見直してみましょう。

   
 
食べ物の消化を助ける
 

よく噛むことで食べ物が細かくなり、唾液と混ざって適度に水分が増すため飲み込みやすくなります。また、唾液にはアミラーゼという消化酵素も含まれているため、消化吸収をよくしてくれます。

虫歯や歯周病を予防する
 

咀嚼することで分泌される唾液には、消化酵素の他にも口内の浄化作用があります。さらに口内環境を中性に保とうとする作用があり、虫歯や歯周病の原因となる酸を薄めてくれます。また、唾液に含まれるパロチンというホルモンが、カルシウムと結合して強い歯を作ってくれます。

歯並びを整える
 

よく噛むことで顎の骨や顔の筋肉が発達し、顎が強くなります。顎の発達が遅れていると、歯の大きさとの本来のバランスがくずれてしまい、正しい位置に歯が生えずに歯並びが悪くなってしまいます。

食べすぎ・肥満を防止する
 

よく噛んで食べると、唾液が多量に分泌されるために血糖値が上がり、脳の満腹中枢に働いて満腹感を与えてくれます。よく噛むことで自然と食事のペースもゆっくりになり、食べすぎを予防します。

脳に刺激を与える
 

咀嚼運動が脳に連続的な刺激を与えることで、脳が活発に機能します。眠気を覚ますのにガムを噛むのもその一例で、噛むという行為によって記憶力や集中力が高まります。また、こどもの脳の発育を促したり、老人の痴呆予防にも役立つと言われています。

新陳代謝を高める
 

咀嚼によって、EGF(表皮成長因子)と呼ばれるホルモンも分泌されます。これは細胞分裂を促進するホルモンで、新陳代謝が活発になり若々しい身体を保ってくれます。

   
 

 生きていくためには「食べる」という行為は必要不可欠なものですが、食事とは味覚だけでなく、視覚や嗅覚、触覚など五感で味わうものです。よく噛むことでゆっくりと食事を楽しむことができれば、それは心の余裕や充足感にもつながります。身体のためにも、豊かな生活のためにも、

よく噛んで食べるということはとても大切なのです。普段よく噛まずに飲み込んでしまうという人は、まずは「噛む」ことを意識して、ゆっくりおいしく食事をするよう心がけましょう。

   

 

 

食料自給率とフード・マイレージ(2008年1月)

 

食料自給率とフード・マイレージ
茨城県栄養士会
管理栄養士  大津 美紀
 
 
  みなさん、「食料自給率」ってご存知ですか?

食料自給率とは、国民一人一人が食べている食料を国内産でどれくらい賄っているかを示す割合のことです。ニュースや新聞などで使用されている食料自給率は、一般的に、カロリー(熱量)で計算した数字です。

食料自給率は下記のように算出することができます。

2007(H19)年8月10日、農林水産省によると、2006年度の日本の食料自給率は39%に下がったと発表されました。これは、1993(H5)年に冷夏でお米が不作であった年以来の低い水準になってしまいました。では、以前のわが国の食料自給率はいったいどのくらいだったのでしょうか。図に2005(H17)年までの食料自給率の推移を示しました。どうしてこのように低い水準になってしまったのでしょうか。実は、私たちの食生活の変化と関わりがあるのです。

 
 
  図のように、私たちの食生活は主食のお米と野菜などの多様な副食から成り立った食生活というものから、お米などの主食が減り、主菜と脂質が増加するということが起こり、栄養の偏りが生じてしまったのです。またライフスタイルの変化、食品に関する技術の進歩やグルメ化なども影響を与えたものの1つです。これらの栄養の偏りなどの変化は、昨今言われている、メタボリックシンドロームなどの病気の発症だけでなく、食料自給率とも関連があるのです。
 
 
  次に、日本以外の国の自給率はどうなっているでしょうか?

日本は先進国の中で低い水準になっています(図を参照)。他国に比べて低い水準になっているのは、先ほどあげた食生活の変化や農業従業者の減少の影響だけでなく、国土面積や農地面積、人口などが関連しています。 国連の推計によると、今後、途上国の人口が大幅に増加することにより2050年には世界人口が92億人に達すると見込まれております。また、途上国の経済成長による食料消費の拡大が予想されます。さらに、地球温暖化防止対策の1つとして、穀物から燃料用のエタノールを作る取り組みが行われております。そのことにより、私たちの食料や家畜などの飼料になるとうもろこしが減ってしまうのです。

 
 
 現在の状況で、今後、世界の食料は足りるのでしょうか。

わが国は食料自給率が低いことからもわかるように、輸入に依存している現状です。2006(H18)年度の内閣府が行った「食料の供給に関する特別世論調査」でもわが国の将来の食料供給に「不安がある」とする回答が約8割あり、その理由として「国際情勢の変化による輸入の減少」という回答が約6割でした。また、私たちの食料はどのように海外から運ばれているのでしょうか。飛行機や船で食料を運んできます。つまり、食料を運ぶためのエネルギーが必要とされていることがわかります。

このことから、「フード・マイレージ」という考え方があります。これは「相手国別の食料輸入量」に「輸送距離」をかけたもののことです。

 
 
 できるだけ、食料の運搬にかかるエネルギーを抑えることは、環境への影響を軽減することにもつながるのです。

一方、政府は、食料自給率を2015(H27)年度までに45%に引き上げることを目標にしております。目標を達するべくさまざま取り組みを行っております。2005(H17)年に制定された食育基本法の背景にも自給率の低下があり、食育の推進とともに食料自給率をあげる取り組みがされております。地産池消、地域で生産されたものを地域で消費しようとする取り組みもその1つです。また、先ほどあげたフード・マイレージによる環境への影響などを考える時、地産池消を取り組む1つの理由となるのです。

私たちにもすぐにできそうなものとは思いませんか?他に、重要なものとして、日々の「食生活の見直し」ができないでしょうか。食生活の見直しは、みなさんの一人一人の健康や病気の予防だけでなく、食料、さらには、環境にもつながっていくのです。健康的な生活を営むために、望ましい食生活を送り、また、地域でとれた食材を取り入れてみましょう。

食卓の上に並ぶ食材がどこのものか?どこからやってきたのか?考えてみてはいかがでしょうか。

 
参考文献

農林水産省  「我が国の食料自給率 平成17年度食料自給率レポート」

農林水産省HP  http://www.maff.go.jp

図については農林水産省HPより抜粋

内閣府  「食料の供給に関する特別世論調査」

 

 

 

免疫力の高まる食生活(2007年12月)

 

免疫力の高まる食生活

 
 
 
 
 人の体を病気から守るしくみ,それが免疫です。免疫は体内に侵入したウイルスや病原菌を攻撃するだけでなく,監視したり,防御したり,共存したりと,さまざまな役割をもっています。免疫力には個人差があり,風邪をひいても鼻水が出る程度で治ってしまう人,高熱をだして寝込んでしまう人と、その時の免疫のパワーで大きな違いが生じます。免疫力は,ストレスや老化(酸化)によって低下しやすく,笑うことで増強に役立つことが証明されています。内なる治癒力,免疫力を高め,健康を維持していくためには「栄養,運動,睡眠」に気を配った生活が大切です。そしてもっと注目されているのが食生活のあり方,食事法です。
 
<<免疫力を高める食事法>>
1. 良質のたんぱく質源となる食品を!!
  肉 魚 卵 貝類 大豆 豆製品 牛乳 乳製品

これらの食品は血液や筋肉となり健康な体づくりの基礎,免疫に関係する細胞をつくる材料です。また鉄,銅,亜鉛,カルシウム等ミネラルが豊富で不足するとリンパ組織が萎縮するなど免疫システムそのものの働きが悪くなります。

2. 緑黄色野菜や果物をたっぷり!!
 
食事で摂取した栄養素の吸収を促したり,免疫力をサポートするビタミンが大いに活躍します。たくさんの種類の野菜,果物を食べることが大切です。
3. 海そう,きのこ,発酵食品を積極的に!!
 
 
腸は,免疫力を左右する大事な臓器です。海そう,きのこに多い食物繊維は腸内細菌のエサになったり,排便を促したりして腸の調子を整え大活躍するほか,含有成分が免疫システムを活発にします。ヨーグルト,納豆など発酵食品は,腸内細菌である善玉菌の仲間であり,腸内に善玉菌が多く,腸内細菌のバランスがよい程,風邪や食中毒から身を守る効果を高めます。
4. 脂肪は少なめに!!
 
脂肪は体の酸化を促すうえ摂りすぎは肥満も招いて免疫力を低下させます。ある程度は体に必要成分ですが控えめに摂ることです。

 

<<免疫力を支えるのは「食」です>>
旬の食材によるバランスのよい食事を,楽しく,おいしく食べて,病気から「体」を守る免疫力を高めることが大切です。
 

 

 

スポーツと食事(2007年11月)

 

スポーツと食事

 
 
 
 
スポーツの秋!食欲の秋!読書の秋!・・・・・人によって秋の楽しみ方は様々かと思いますが,スポーツをするには絶好の季節です。心身の健康のためにも進んで体を動かしましょう。
 
スポーツをする人は食事の気配りが大切!
部活動や地域のクラブでスポーツをする人の食事について考えてみましょう。成長が著しく体格などの個人差も大きい時期ですが,スポーツをするからといって特別な食事があるわけではありません。ごく普通の食品をじょうずに組み合わせた食事を毎日とればよいのです。もちろん,1日3回規則正しく食事をする習慣を身につけることが大切です。正しい食事の積み重ねは,スポーツをする人にとってなくてはならないものなのです。

基本は
食事で主食・主菜・副菜(汁物も含む)・牛乳,乳製品・果物をとるように

心がけましょう。

主食 ご飯,パン,麺類など
主菜 肉,魚,卵,豆料理など
副菜 野菜,芋,きのこ類,海藻料理など
牛乳

乳製品

牛乳やヨーグルト,チーズなど
果物 果物
食事のこんなところに気を配りましょう
炭水化物をしっかりとりましょう
  エネルギーのもととなるご飯やパン,めん類などをとりましょう。
たんぱく質,カルシウムをとりましょう
 
成長が著しいこの時期、睡眠中の成長ホルモンの働きにあわせて、夕食はたんぱく質、カルシウムに富んだ食事となるように心がけることが大切です。もちろん栄養的にかたよらないようビタミン、無機質の多い野菜類もたっぷりとりましょう。
水分を補給しましょう
 
活動が激しければ激しいほどのどが渇きます。運動中の水分補給はとても大切です。水分が不足すると熱中症や脱水症などになりやすくなります。じょうずに水分を補給しましょう。

・炭酸飲料や糖分が多く口あたりがよいものを選びがちなので注意しましょう。

・市販されているスポーツドリンクにも糖分がふくまれていすので、飲みすぎに注意しましょう。

鉄分を忘れずにとりましょう
 
鉄分の不足は、スポーツをする人にとって命とりともいえる
スタミナ不足になります。それは気力をなくすことにもつなが
ります。鉄分が不足したままスポーツを続ければ、めまい、立ちくらみなど貧血になります。
夕食をしっかりとりましょう
  放課後のトレーニングが、暗くなるまであったり、さらに習いごとに行ったりすると、夕食を一人で食べる場合も出てきます。そんなときは好きなものを自由に食べてしまいがちですので注意しましょう。
運動後の筋肉疲労には,たんぱく質やビタミンなどをとりましょう
  激しい運動の後、筋肉に疲労が残るときがあります。そんなときは整理体操をしっかりやることはもちろんのこと、たんぱく質やビタミンに富んだ食事をとることや睡眠をたっぷりとることがなによりの解決策です。胃腸などの消化吸収力も低下していますから、汁気の多いものや、消化のよいものにしましょう。

 

アドバイス
 疲れ知らずの筋肉を作ろう!
運動を長く続けると,足が動かなくなったり,腕が上がらなくなったりします。

なぜ筋肉は疲れるのでしょうか?

筋肉が疲れるのは,筋肉のなかにあるエネルギーのもと(筋グリコーゲン)を使い果たしたり,エネルギーを作り出すときにできた乳酸が筋肉中にたまってしまうことが原因です。

さて,疲れ知らずの筋肉を作るには,よく練習をすることはもちろん,日ごろの食事でたんぱく質やビタミンなどいろいろな栄養素をとることが大切です。また,筋肉にエネルギーのもとであるグリコーゲンを蓄えるためには,炭水化物をしっかりとることが大切です。

さらに,グリコーゲンを早く回復させるためには,練習が終わったら,なるべく早く食事をするとよいです。

 

 

 

“減塩” 心がけていますか(2007年10月)

 

“減塩” 心がけていますか

 
 
 
 
・食塩の摂りすぎは血管がダメージを受け、高血圧の原因、さらに命にかかわる病気《動脈硬化・脳卒中・腎不全》に繋がります。
 
◇ うす味でおいしく食べるには
新鮮な食材、旬の食材を使う
  素材の味を楽しみましょう
香辛料を上手に使う
  胡椒、辛子、カレー粉、ハーブ類
  しそ、生姜、山椒、柚子
酸味やだしの利用
  ポン酢醤油、だし割醤油
調理法
  焼き目をつける、香ばしさや風味を生かす
  炒める、揚げる  
 
◎こうしてみましょう―(1)
みそ汁・・・・・2杯分を、みそ大さじ1杯(15cc)で作ります(これで1杯分の塩分は1gです)
!プラス!
1、 具だくさんにする(具に含まれるミネラルで減塩効果抜群!!)
2、 天然だしを使う(削り節、だし昆布、煮干、干し椎茸など)
  *だしの素には塩分が含まれています。
  *化学調味料は食塩と同じ働きをしてしまいます。

◎こうしてみましょう―(2)
みそづけ焼き・・・塩味のついていない生の魚の切身

(これから生鮭はおすすめ!!お肉でもOK!)

“4切分”
味噌 大さじ1杯
醤油 小さじ1杯
みりん 大さじ1杯
あれば柚子の皮を刻んで
*よく混ぜ合わせて、1切につき大さじ1/2杯を、焼く直前に上面に塗って焼きます*
(これで1切の塩分は0.7gです)
 
!少しずつでもうす味に慣れ、食塩摂取量を減らしていきたいですね!
 

 

 

食物繊維とは?(2007年9月)

 

食物繊維とは?

社団法人 茨城県栄養士会

山口 雅子

 
 
 
食物繊維(ダイエタリー・ファイバー)とは、食品中の成分のうち、人の消化酵素で消化されにくい成分のことをいい、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維とに分けられます。
□水溶性食物繊維
不純物の吸収を妨げ、排泄させる
・糖分の吸収速度を緩やかにし、血糖値の急上昇を防ぐ(糖尿病予防)
・血液中のコレステロール値を下げる(動脈硬化予防)
・血圧の上昇を防ぐ (高血圧予防)

□不溶性食物繊維

食品の水分を吸収して膨らみ、腸の働きを活発化
・便のかさを増やして排便を促す(便秘予防、改善)
・発ガン性物質などの腸内の有害物質を体外へと排出させる(がん予防)
・かさが増えることで満腹感が得られる(肥満予防、ダイエット)
・よく噛むことで歯茎やあごが鍛えられる(虫歯予防)
 
■第六の栄養素【食物繊維】
 
役に立たないと考えられていた食物繊維ですが現在では5大栄養素(たんぱく質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラル)に続く、「第6の栄養素」として重要視されています。
 
 
■現代の食生活では不足気味
 
未精製の穀類に根菜、豆類の煮物といった、昔ながらの和食の献立とは違い、高タンパク・高脂肪になりがちな現在の食生活において、食物繊維は不足傾向にあるといわれています。

食物繊維が不足すると、便秘はもちろん、肥満や糖尿病といった生活習慣病の原因にもなりかねません。しかし過剰に摂取すると、下痢の症状を引き起こして体に必要なミネラル分まで排出してしまったり、かえって便秘がひどくなることもあります。

特にサプリメントなどで食物繊維を補う際には、摂取量に注意が必要です。

 
 
■食物繊維(g)成人1日あたりの目標量
 
  男性:20g

女性:17g
*目標量…生活習慣病一次予防のために

現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量

食事バランスガイド

 ■食物繊維を多く含む食品 

□水溶性食物繊維
こんにゃく/海藻類(寒天、こんぶ、ひじき、わかめ、もずく、など)/果実類

□不溶性食物繊維

穀類(そば、ライ麦、など)/豆類(大豆、あずき、えんどうまめ、など)/野菜類(ごぼう、切り干し大根、ブロッコリー、たけのこ、とうもろ こし、など)/イモ類(さつま芋、里芋、山芋、など)/キノコ類(えのきだけ、きくらげ、しいたけ、など)
 

   

 

 

夏バテを助長する現代生活。 冷やしすぎにご用心!(2007年8月)

 

     
 
8月のテーマ:
夏バテを助長する現代生活。

冷やしすぎにご用心!

 各地で真夏日が続き、今年の夏は例年にないほどの猛暑となりました。山場は過ぎた感がありますが、まだまだ暑さの続きそうな予感です。この暑さのせいで、熱中症も随分と話題になりましたが、こまめな水分補給だけでは防げないのが夏バテです。暑さからくる食欲不振や睡眠不足などその原因は様々ですが、体調管理に気をつけて夏場を元気に乗り切りましょう。
 
     

 

夏バテの原因はクーラー?
 
 夏バテを引き起こす一番の原因はもちろん暑さですが、そもそも恒温動物である人間は、ある程度の体温調節を行う機能が備わっているものです。しかし冷房のある現代の生活に慣れ、汗をかいて体温を調節する身体の働き自体が低下してしまっているそうです。これは「冷房病」と呼ばれる現代病のひとつで、冷房の利いた涼しい部屋と蒸し暑い屋外の温度差に身体がついていけず、自律神経の働きが損なわれてしまうというものです。
冷房病の症状
 

頭痛、肩こり、腹痛、神経痛、免疫力の低下、慢性的な疲労感やストレス感など

冷房病の予防
 

エアコンの設定温度だけでなく、外気との温度差に注意すること。5度以内が理想的と言われています。また、冷風を直接身体に当てないこと、足元を冷やしすぎないことも大切です。

能動汗腺衰退症とその予防
 

小さな頃から冷房の利いた部屋で生活してきたため、汗をかく汗腺の数自体が減少してしまうこと。発汗する習慣をつけるためにも、シャワーで済ませず半身浴で汗をかき、血行を良くしましょう。

 
夏を元気に過ごすコツ
 
生活リズムを安定させる
 

規則正しい生活は健康な身体づくりの第一歩。起床と就寝の時間、食事の時間をなるべく一定に保ちましょう。

冷房を上手に利用する
 

外気温との差は5度を目安に、室内を冷やしすぎないように。ドライ(除湿)運転を活用すると体感温度を下げられます。

寝つきをよくする工夫を
 

暑くて寝苦しいからといって、冷房をつけっぱなしにすると夏風邪や下痢の原因になります。タイマー運転を上手に利用し、就寝前の入浴やストレッチなどで安眠を誘う工夫を。

適度な運動をする
 

陽射しの強い日中は外出するのも億劫になりますが、朝夕の比較的涼しい時間帯にウォーキングする習慣をつけると食欲増進や寝つきを良くする効果も得られます。もちろん、運動中や運動後の水分補給は忘れずに。

 

 
夏バテ予防に効果的な食事
   どうしても食欲が落ちてしまう夏場。そうめんなどの口当たりのよいものばかり食べてしまいがちですが、バランスのとれた食事は暑さに負けない身体づくりの基本。卵、肉、魚など血や肉をつくる良質なタンパク質、消化のよい大豆食品や牛乳などの食品も忘れずに摂りましょう。
 
疲労回復を助ける有機酸
 

酢酸、クエン酸、リンゴ酸などの有機物質には、乳酸などの疲労物質を分解する作用があります。代表的な食材は梅干、レモン、醸造酢など。最近では水や炭酸で割って手軽に飲めるタイプの商品も出回っているので、水分補給とあわせて毎日意識的に採り入れてみてはいかがでしょうか。

エネルギーの代謝をよくするビタミンB群
 

糖質を代謝してエネルギーに変える「ビタミンB1」や、消化を助けて糖質を燃焼させる「ビタミンB2」、神経の働きや脳の機能を正常に保つ「ビタミンB12」など、ビタミンB群は栄養バランスを整える強力な助っ人。以下に挙げた代表的な食材を積極的に摂りましょう。
<ビタミンB1>

豚肉、ニラ、枝豆、うなぎ、ゴマ、玄米など
<ビタミンB2>

うなぎ、レバー、魚、ブロッコリー、パセリなど
<ビタミンB6>

レバー、魚(赤身)、玄米など
<ビタミンB12>

レバー、貝類(アサリ、牡蠣、シジミなど)、魚など

利尿効果のある野菜
 

キュウリなどの夏野菜に含まれるイスクエルシトリは体内の余分な水分を排出し、熱を下げてくれる働きがあります。キュウリのほか、スイカ、トマト、苦瓜(ゴーヤ)など。

食欲を増進させる香辛料
 

香りと刺激で食欲を増進してくれるスパイスや香味野菜。夏の人気メニュー・カレーに代表されるように、香辛料の利いた食事は食欲増進にぴったりです。また、ニンニク、青じそ、みょうが、ショウガ、ワサビ、ネギなどの香味野菜も食欲を刺激してくれます。

   
 夏場の体調管理に水分補給が大切とはいっても、冷たいものや甘いジュースの摂り過ぎは胃腸の働きを妨げたり、血糖値を上げて空腹感をなくし、食欲不振を引き起こすこともあります。また、ビールなどのアルコールは水分を排出する利尿作用があるため、かえって水分不足になることも。水分補給にはミネラルウォーターやスポーツドリンクを、そして栄養と睡眠をじ充分にとって、夏バテしらずの身体を作りましょう!
 

 

 

「家庭でできる食中毒予防」(2007年8月)

 

「家庭でできる食中毒予防」

 
 
 
 いよいよ暑い夏がやってきました。特に今年の夏は過去最高の暑さと言われています。

夏は気温や湿度が高くなるため食中毒が多発します。食中毒というと、レストランや旅館などの飲食店での食事が原因と思われがちですが、家庭の食事でも発生しており、昨年、全国で発生した食中毒の14%は家庭の食事が原因と言われています。

 食中毒には、O157やサルモネラなどの細菌による食中毒や、食品に洗剤などの物質が混入したりして発生する化学性食中毒、毒きのこなどを食べたときに発生する自然毒中毒などさまざまな種類のものがありますが、その大半をO157に代表される細菌性の食中毒が占めています。細菌がもしまな板についたとしても、肉眼では見えません。しかし、目に見えなくとも簡単な方法をきちんと行えば細菌による食中毒を予防することができるのです。
 

食中毒予防の三原則

「食中毒菌をつけない」

細菌は魚、肉、野菜などの食材にすでに付着していることがあります。また調理器具や手指を介して他の食品を汚染してしまうことがあります。菌をつけないために、台所や食器類は常に清潔に保ち、作業中は調理器具や手指をこまめに洗うことが大切です。

「食中毒菌を増やさない」

細菌は栄養、水分、温度の条件がそろった時、爆発的に増えます。室温で放っておくと、10~20分で2倍に増える菌もありますので冷蔵庫等で保存をしてください。0℃以下でも死なない菌もありますので、冷蔵庫を過信せず早めに使い切ることが大切です。

「食中毒菌をやっつける」

ほとんどの食中毒菌は熱に弱いのですが、きちんと火が通っていないと生き残ります。加熱が必要な食品は中心部の温度が75℃以上になって1分間は加熱しましょう。

あなたも今すぐこの食中毒予防の三原則から成り立っている 次の「わが家の食中毒予防6つのポイント」をきちんと行い、家庭から食中毒をなくしましょう!

わが家の食中毒予防6つのポイント

ポイント1 食品の購入

購入した食品は、肉汁や魚などの水分がもれないようビニール袋などに分け持ち帰りましょう。
生鮮食品などのように冷蔵や冷凍などの温度管理の必要な食品の購入は、買い物の最後にし、購入したら寄り道せず、まっすぐに持ち帰りましょう。

ポイント2 家庭での保存

冷蔵や冷凍の必要な食品は、持ち帰ったら、すぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れましょう。
冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は、-15℃以下に維持することがめやすです。

ポイント3 下準備

手を洗うことは食中毒予防の基本です。調理を始める前や食品を取り扱う前後、こまめに手を洗いましょう。
生の肉や魚を切った後、洗わずにその包丁やまな板で、果物や野菜など生で食べる食品や調理の終わった食品を切ることはやめましょう。洗ってから熱湯をかけたのち使うことが大切です。

ポイント4 調理

加熱して調理する食品は中心部まで十分に加熱しましょう。
生の肉や魚を切った後、洗わずにその包丁やまな板で、果物や野菜など生で食べる食品や調理の終わった食品を切ることはやめましょう。洗ってから熱湯をかけたのち使うことが大切です。

ポイント5 食事

食卓に付く前に手を洗いましょう。
調理前の食品や調理後の食品は、室温に長く放置してはいけません。

ポイント6 残った食品

残った食品は早く冷えるように浅い容器に小分けして保存しましょう。
残った食品を温め直す時も十分に加熱しましょう。

茨城県では、7月1日(日曜日)~8月31日(金曜日)を「食中毒予防月間」と定めて食中毒予防啓発活動を実施しています。

 

 

 

学校給食の「食と健康」(2007年7月)

 

学校給食の「食と健康」

つくば国際短期大学

准教授 板倉 洋子

 
 
 
 学校給食の歴史は明治22年山形県鶴岡市(学校給食発祥の地として碑が建っている)

で困窮家庭に昼食を無料で供されたことが始まりです。第二次世界大戦時に一時中断しましたが、昭和21年12月11日付け、「学校給食実施の普及奨励について」が文部、厚生、農林三省から次官通達が出され、新しい学校給食制度がスタートしました。

食糧不足の中で連合軍放出の物質・ユニセフ・ララ(アジア救済連盟)の援助物質、脱脂粉乳と缶詰類によって、昭和22年1月からは全国都市部の約3,600校、29万人に対して学校給食が実施されました。茨城県でも水戸、土浦、日立の21校で米軍の軍用缶詰と脱脂粉乳を主材とした補食給食・他の市町村の145校ではミルク給食が実施されました。

(当時では一般に普及していなかったコンビーフ・牛肉の缶詰、脱脂粉乳と家庭から持ち寄った野菜で給食を作り、児童の栄養失調を救っていました。昭和28・9年頃でしたがアルミニウム食器から伝わる温かさとほんのり甘いミルク給食が私は大好きでした)

このように貧困からの救済や栄養補給から始まった学校給食は昭和29年6月「学校給食法」が成立後、給食の実施体制は普及・充実して児童生徒の体位向上や栄養教育の浸透が図られました。

現在、茨城県の学校給食実施率は小学校・中学校ともに100%です。(夜間定時制高等学校、県立・国立特殊教育諸学校も実施されています)学校の食事は今や「生きた教材」として食育の教材となり、栄養教育は生涯にわたって児童生徒が望ましい食習慣と自己管理能力を身に付ける、生活習慣病等の疾患予防を”食育のねらい”と変化している。もちろんしっかりと美味しさ、みんなで食べることの楽しさも追及し、数年前の給食とは献立が変わっています。児童生徒を持つご家庭には予定献立表が配られているのでぜひ毎月ご覧になってください。

 (以前、服部幸生さんが食育講演会の中で健康寿命と平均寿命についてお話をされました。健康寿命と平均寿命の差を比べると欧米では大体5年なのに対して、日本では女性が9.13年、男性が6.77年と長い年月を寝たきりや痴呆症で長生きしなければならない。超高齢化を迎える前の数値に驚き、幼児期・小中学生の時から「食事と健康の関連」を学び良い食習慣を持つことの大切さを痛感しました。)

さて、平成18年4月以来、茨城県で20名の栄養教諭が採用になっています。県内の学校栄養職員は274名ですが内20名が栄養教諭として、赴任した地域全体の食育を推進するため課題を探り、食に関する指導のコーディネータとして、大きなエンジンを駆けてひた向きに頑張っています。

栄養教諭制度が施行された平成17年度は全国の配置がわずか34名でしたが(茨城県は0人)、平成18年度359名(茨城県は10人)、平成19年は974名(茨城県は10人)と配置人数が増えています。

現在学校給食は学習指導要領の学級活動に位置付けられ教育の一環であること、給食が持つ影響力の大きさ(児童生徒・家庭・地域との連携)と栄養教諭が推進した教育の結果と食育を推進する姿勢(学校・家庭・地域の調整役として)がこの配置人数に表れていると思われます。また現在、勤務している学校栄養職員も栄養教諭認定講習会を受講し、資質の向上を図っていることも大きな推進力になりました。

早寝早起き、朝ごはんの標語を基に平成22年までに朝食ゼロにしようとする食育活動と食料自給率の低下に歯止めをかけ、地域と密着した学校給食の運営推進の一つとして給食で使用する食材の30%以上を地場産業で賄うことが学校給食の課題になっています。

日々、食事が持つ意義が進化し、中でも学校・家庭・地域との連携した取り組みが今一段と加速されています。推進を担う栄養教諭・学校栄養職員の資質向上を図るため、第48回目の全国栄養教諭・学校栄養職員研究大会が7月26日・27日水戸市に於いて開催されます。約1,000名が実践発表、シンポジウム、10の分科会等に分かれ、児童生徒に対する食に関する指導のあり方や学校給食の充実方策について研究協議が行われます。

給食が「生きた教材」であるという所以は

(1) 生活習慣予防のねらいを持った給食を食べる。
(2) バランスの取れた食品の組み合わせ方や食事量を食べ続けていくことで学ぶ。
(3) 生涯に亘って健康に良い食品を選択できるよう論理的な組み立てが習慣化する。

このねらいを持った給食は「生きた教材」であるという所以です。