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まめ知識カテゴリ: 疲労回復・リフレッシュ

中高年に人気の「ラジオ体操」(2014年10月)

 

イラスト今年の夏は異常な暑さが印象的でした。それに続く急激な気温の変化と天候の不順。気持ちの良い日本の秋の到来が待ち遠しいところでしたが、10月に入り、やっと身体を動かすにはちょうど良い季節がやってきました。

 

最近、中高年に何故か人気なのが「ラジオ体操」。子供の頃、夏休みにスタンプを押してもらうことが楽しみで、毎朝眠い目をこすりながら参加したあの「ラジオ体操」です。この2年あまりで関連本が10冊以上、中にはシリーズで数十万部も売れている本もあるようです。

 

今月の健康コラムは、この「ラジオ体操」の人気の秘密、その効用などについて紹介したいと思います。

 

「ラジオ体操」とは?

ラジオ体操という名の通り、ラジオ放送局が健康のための体操指導を行うというのが始まりです。1920年代からアメリカやドイツで放送されており、日本でも徒手体操を指導員の号令で行う番組がありました。

 

現代のラジオ体操の原型になるのは、アメリカの保険会社が健康増進のために始めたラジオ体操番組”Setting up exercise” だと言われます。

 

日本では、昭和天皇の即位を祝う事業としてラジオ体操が提案され、文部省に委嘱。国民健康体操の名称で天皇の御大典記念事業の一環として放送が始められたといいます。その後、全国放送として定着し今に至る「ラジオ体操」は当時の日本人の健康増進のためにスタートした、肝いりの番組だったわけです。子供の頃は、夏休みのイベント以外にも様々な機会に行っていたように思うのですが、いつのまにか、ストレッチや体幹トレーニングなど、新しいメソッドに比べ時代遅れの運動というイメージが定着した「ラジオ体操」。

 

それがなぜ復権したのでしょうか。

 

かつてのマイナスイメージはどこから?

イラスト「ラジオ体操」は、運動競技や日常生活をスタートする前の軽いウォーミングアップとして広く活用されていました。ところが「ストレッチ」が、1970年代後半スポーツの指導者などにより急速に広まり、まずアスリートの準備運動がこの新しい科学的なスポーツメソッドに取って代ったのです。

 

動きに反動をつけた「ラジオ体操」のような準備運動は、暖まっていない筋肉や関節に有害だといったことが、あらゆるスポーツシーンで語られました。学校のクラブ活動など、身近なところでも必ずそうした話題が出た程です。

 

こうした反動で弾むような動作で筋肉を伸ばす方法を「バリスティックストレッチ」(動的ストレッチ)と言い、現在「ストレッチ」呼ばれている「静的ストレッチ」と比べて、急激に伸ばされた筋肉が起こす「伸張反射」と呼ばれる防衛反応のために、かえって筋肉が反射的に収縮してしまうとされました。

 

こうしたマイナスの情報は、現在の「ラジオ体操」の盛り上がりの中では、あまり話題にはならないようです。現代では、「静的ストレッチ」、「動的ストレッチ」ともにそれぞれの良さがあるという認識が一般的です。どうやら、「静的ストレッチ」の優れた点を強調するために、ことさら「動的ストレッチ」が悪者にされたというのが真相なのかもしれません。いずれにしても現在では、「ストレッチ」を専門に教える教室などでも「静的ストレッチ」と「動的ストレッチ」、それぞれの良さが紹介されることが多いようです。

 

「ラジオ体操」の効果

イラストでは、「動的ストレッチ」でもある「ラジオ体操」のどこが現在の人気を呼んでいるのでしょうか。その理由のいつくかを挙げてみましょう。

 

まず、運動としての効果そのものよりも分かりやすい理由がいくつかあります。

 

一つは、「ストレッチ」(静的ストレッチ)や「ヨガ」、「ピラティス」、「リポーズ体操」、「フェルデンクライス」などと比べてエクササイズの動作が分かりやすいという点。子供の頃から慣れ親しんでいる「ラジオ体操」の動作は、特に中高年の方で知らない人はいらっしゃらないでしょう。

 

先生の指導を受けないと身体の動かし方が分からないとか、どこかの教室やスポーツ施設に通わなければならないということは、ありません。もちろん費用もかかりません。これも大きな要素でしょうか。毎日、決まった時間にラジオの前に居ればいいだけですから。

 

次に効果ですが、どれも簡単な分かりやすい動きで構成された「ラジオ体操」ですが、一通りこの運動を行うだけで、400以上の筋肉が刺激を受け活性化されるといいます。毎日ラジオの前で決まった時間に行うということも、生活のリズムを作ってくれます。筋力が刺激を受けて高まり、柔軟性も保てますし、血流が良くなって代謝も高まるといった生活習慣病を気にしなければいけない中高年にとって、とても良い効果を生むのです。

 

イラスト運動強度としても、ある程度のスピードで歩くウォーキングと同程度。体脂肪を燃焼させ、免疫力を高めて病気になりにくい体質にしてくれるちょうど良い強度ということになります。

 

さらに「ラジオ体操」は、姿勢を良くするという動きが多いのも大人向けと言えます。筋力や柔軟性の低下、あまり歩かない生活などは、背骨のゆがみや悪い姿勢を生む原因となりますが、良い姿勢をサポートする軽い運動はとても効果的です。

 

また一般的に「ラジオ体操」というと第一を指しますが、これは「子供からお年寄りの一般の人が行うことを目的」とし、第二は筋力の強化をポイントとした動きで、第一と比べて運動量も多くなっています。相当な運動効果があるということになりますので、通院やリハビリ中の方は、運動の可否を医師に相談してください。

 

身体をほぐすストレッチでバランスの良い身体に(2014年9月)

 

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年齢とともに身体が硬くなってきた、そう感じる人は多いことでしょう。若い頃どんなに身体が柔らかくても、加齢とともに関節の稼働域は狭くなり、筋肉は弾力を失って硬くなってきます。

 

そこで必要になるのがストレッチ、つまり伸ばす運動です。しかし、ストレッチが具体的にどのような運動で、筋肉や関節にどのような効果をもたらすかということは、意外に知られていません。ストレッチを運動を専門的に行う前の準備運動だと思っている人も多いことでしょう。しかし、柔軟性は、日常生活を健康に営むためにもとても大切なものです。肩こりや腰痛、肉離れや腱の断裂を起こす原因の一つとなるのも柔軟性の欠如です。猛暑をしのいだ後に、少し身体を動かしたいという時期を迎え、そのスタートで思わぬ怪我をしないためにも、今回はストレッチについて紹介します。

 

ストレッチを行い、筋肉を伸ばすことで身体に良い影響を及ぼすことがいくつかあります。筋肉が固まっていると血管が圧迫され、血液の循環が滞ることになります。また、固まった筋肉によって神経が圧迫されて痛みを生じることがあります。肩こりもそうです。さらに股関節などが固まって身体がスムーズに動かないと、日常生活でのものの上げ下げの際に、本来なら身体全体に分散される負担が腰の一カ所に集中して腰痛を起こすということもあるのです。

 

ストレッチにより筋肉のこわばりが取れると、圧迫されていた血管が拡張し血液循環がスムーズになります。血液の流れが良くなるとコリだけでなく冷え性なども緩和され、日常生活が快適になるのです。

 

図さらに精神的にも、ストレッチの気持ち良さがリラックス効果をもたらし、質のよい睡眠とストレスの軽減をもたらしてくれます。また、筋肉のコリによって悪くなった姿勢も良くなります。パソコン作業などのデスクワークを長時間行っていると、肩や背中、腰などの筋肉が硬くなります。さらに続けると太腿の裏側の筋肉が硬くなり、この筋肉が縮むことで骨盤が引っ張られて後傾し、猫背気味の悪い姿勢になってしまいます。

 

こうした誰もが陥りがちな悪い姿勢を正すためにも、ストレッチで筋肉の柔軟性を高めることが大切です。

 

筋肉が柔軟になる仕組み

筋肉をストレッチで伸ばしても、それで筋肉が伸びっぱなしになるわけではありません。筋肉が伸びやすくなるのです。これは、材質として筋肉が伸びやすくなるという面と、力が抜けていわゆる脱力して伸びやすくなるという2つの側面があります。ストレッチを行うことで、筋肉の組織がそれに対応して一時的に柔軟性が向上するのですが、続けていくことで一時的な柔軟性が本質的に伸びやすい筋肉へと変化していくと考えられています。

 

ストレッチはいつやるのが効果的か

図運動の前にストレッチをすると良いというイメージがありますが、筋肉は暖まった状態のほうがよく伸びます。また、運動の後に溜まった乳酸を上手く流す効果も期待できるので、運動をして十分身体が暖まった後、クールダウンの一環として行うと身体の柔軟性を高めることができます。

 

さらに特別な運動をしない人、肩こりや腰痛を緩和したいという人は、お風呂上がりが最適です。お風呂で十分に筋肉が暖まったところで、気持ち良く感じる程度に筋肉を伸ばしましょう。

 

専門的に部位別に分けたストレッチの種類は1000以上あると言われますが、その中からここでお風呂上がりに布団の上で行うのに適した簡単なストレッチを数種類紹介します。

 

①肩と胸のストレッチ

できるだけ背中を真っすぐにして両手を伸ばす(10秒から20秒静止)

 

②肩の横側のストレッチ

肩にある三角筋を伸ばすストレッチ。肩の位置を動かさないように腕をクロスさせる。

(左右とも10秒から20秒静止)

 

③首横側のストレッチ

手を軽く添えて頭を横に傾ける。力を入れずに行うこと。(左右とも10秒から20秒静止)

 

④太腿内側と首と背中のストレッチ

足首を持って、足の裏を合わせる。背筋を伸ばすことで、首と背中もストレッチ。つま先を両手で持つようにすると更に効果的。(左右とも10秒から20秒静止)

 

⑤腿の内側と肩のストレッチ

④の姿勢から両膝に手を置いてさらに腿をストレッチし、肩を交互に顔の前にもってくると肩もストレッチできる。

 

⑥腰のストレッチ

左膝を立て右ひじで左膝を押しながら腰をひねる。顔を後ろに向けるように。(左右とも10秒から20秒静止)

 

ストレッチはスポーツクラブや公共施設での講習会、書籍やDVDなどでも紹介されています。運動の得手不得手や、年齢等にも関係なく誰でも自分に合った強度で行えますから、気軽にチャレンジしてみると良いでしょう。 

 

 

 

筋肉痛はなぜ起きるのか(2014年7月)

 

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若い時と比べて筋肉痛が遅れてやってきた。これは身体が老化したサインと思われる人も多いはず。しかし筋肉痛の原因は、諸説ありまだハッキリとわかっているわけではありません。自分の筋力の許容範囲を超えた運動が、筋繊維や周辺の結合組織を傷つけ、その修復が行われるときに痛みを覚えるという説が有力なようですが、そうしたメカニズムについて完全に解明されているわけではありません。今回はこの筋肉痛に関して、取り上げてみたいと思います。

 

 

筋肉痛はなぜ起きるのか

筋肉痛は、「運動により筋肉繊維が傷ついて痛みを感じる」ものというイメージがありますが、実は痛みを感じる神経はこの筋繊維にはつながっていません。筋肉は筋繊維とそれを覆う形の筋膜とで出来上がっていますが、神経はこの筋膜に繋がっているのです。筋膜というのは、脳の司令で動かすことができない部分で、皆さんが自分の意志で動かすことができる筋肉というイメージとは異なる部分です。では、なぜ筋肉痛を感じるのでしょうか。

 

一つの説として、運動強度が一定の限界を超えると筋繊維が傷つき、それを修復しようと血液成分が働き始めたときに痛みを起こす刺激物質が生産され、それを筋膜を経て神経が感じ取ってしまうと言われています。加齢などで、血流が悪くなり、この刺激物質が生産されるところまで時間がかかった場合、痛みが発生するのも遅れることになります。これが、年齢とともに筋肉痛が遅れてやってくる原因の一つと考えることができるかもしれません。

 

また、筋肉痛は、筋肉を縮める動きより、筋肉を伸ばす動きを途中で止める運動によって引き起こされるといわれます。階段を上る動きより階段を下りるときに使われる脚の前面の筋肉の動きが痛みを引き起こします。階段を上るときは、脚の前面の筋肉が縮まり後ろの筋肉が伸びて身体を持ち上げます。反対に階段を下りるときには、脚の裏側の筋肉が縮み、脚の前面の筋肉が体重を支えるために伸びる途中で力が入ります。

 

登山などで経験される方も多いかもしれませんが、登りより下山の時に使った脚の前面や膝の周辺の筋肉が翌日から二日後にかけて痛みを感じるものです。

 

筋肉痛を治すには

図筋肉痛は、その痛む筋肉をこれ以上酷使するなというサイン、身体の防衛機能という側面もあります。まず、睡眠によって回復を図ることが大切で、特に筋肉の修復をするために大切な働きをする成長ホルモンが多く分泌される夜10時から朝の2時までの睡眠のゴールデンタイムと言われる時間帯はしっかりと寝るようにします。

 

また、先ほども触れたように、筋肉痛は痛みを起こす刺激物質が関与していると考えられますので、この刺激物質を早く身体の外に出してしまうという方法が有効な手段ということになります。そのために必要なのが血流の確保。しかし、痛みが血流を阻害してしまうこともあるのです。

 

痛みを感じるとその部位の筋肉は、硬くなります。筋肉が硬くなるとそこに通う血管も圧迫されて血流が悪くなるのです。まずは、この筋肉を緩めることを考えましょう。

 

筋肉はある程度伸ばすことで、緩めることができます。無理をしない程度にストレッチを行います。できるだけゆっくりと伸ばしてください。反動を付けることは厳禁です。脚の前面が痛むのであれば、膝を折って足の土踏まずの部分にお尻を乗せるようにして伸ばします。痛むところを伸ばすのですから、少々辛いですが、我慢してゆっくりストレッチすると後で楽になります。同時に脚の裏側も伸ばしておきましょう。 

 

図運動した後、痛みが起きる前にストレッチを行う習慣をつけると、痛みを軽減することができます。また、運動前にウォーミングアップを十分にして、ストレッチも行うようにすれば、なお効果的です。

 

また、筋肉痛のときには、栄養補給も大切です。痛んだ筋肉を補修するためとタンパク質だけをとればよいというわけではありません。炭水化物や脂質も同時にバランス良く摂るようにしましょう。必要な炭水化物を摂らないと、身体は筋肉を分解してそこから栄養素を取り出そうとします。これでは痛んだ筋肉の修復どころではなくなってしまいます。

 

しっかりとした食事にとりかかるには時間がかかりますから、その前に栄養補助食品等を利用するというのも筋肉痛対策として効果的です。運動直後にアミノ酸を補給し、溜まった乳酸を分解するクエン酸が摂れるレモン、疲れていても喉を通り易いバナナなどを摂るというのも良いでしょう。

 

また、筋肉痛は痛むからとじっとしているより、ウォーキングなどの軽い運動を行った方が早く回復します。これも軽い運動が血行を改善してくれるからです。水泳や水中ウォーキングも効果的です。水中で動くことで適度に水が身体をマッサージしてくれるので、回復を早めてくれます。

 

筋肉痛を防ぐには

図筋肉痛は、運動不足の証明でもあります。毎週末に山に行っているような人は、登山での筋肉痛とは無縁です。同じ筋肉であれば日頃十分刺激を与えておけば筋肉痛になることはありません。しかし、そうした運動習慣があっても、新たなスポーツやフォームに挑戦して、それまであまり稼働させていなかった筋肉を動員するとやはり痛みは起こります。それでも運動習慣のある人は、比較的軽くて済むのです。これは、運動習慣によって血管や心臓の機能が正常に保たれ、全身の血流が良くなるという運動効果の現れです。

 

運動習慣のない人は、無理のないペースで歩くということが、基本になりますが、夏の暑い時間帯のウォーキングはオススメできません。できるだけ朝早い時間帯、涼しいうちに行いましょう。

熱中症の予防と対策(2014年6月)

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毎年この季節になると、必ず話題になる脱水症状や熱中症。近年では家の中にいても熱中症の危険があると言われています。昨年も猛暑日が続きました。特に幼児や、危険な症状を認識しにくい高齢者には注意が必要です。今回は、この脱水症状や熱中症の予防についてご紹介します。

 

 

人間のカラダは水でできている!?

人間の身体に占める水の割合はどのくらいなのかご存知ですか?実は胎児は身体の約90%が水でできています。新生児で約75%、子供で約70%、成人では約60~65%と言われ、これが老人になると50~55%にまで下がります。

 

これは、老化現象の一つで細胞内の水分の低下が原因とされています。また、成人になって水分の割合が低くなる原因の一つは、体脂肪率の増加にあります。そのため、女性の方が水分量の割合が低い傾向にあるとされます。

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この水分量がどれだけ、私たちの生存にとって大切かというと、体重の約2%の水分が失われただけで、喉や口が渇き食欲が減退するなどの不快感に襲われます。約6%が不足すると眠気や頭痛、脱力感が生じ、約10%が不足すると循環不全、腎不全、筋肉の痙攣などの症状を起こし、それ以上不足すると意識を失い、約20%が不足すると死に至ることになります。

 

私たちの身体の水分は、約100兆個もある細胞内に3分の2、残りは細胞と細胞の間にある細胞間液と血液中にあります。生命を維持するために大切な役割を果たしているわけです。

 

水分不足がもたらすさまざまな危険

炎天下のスポーツやイベントなどで、脱水症状を起こし倒れた人が病院に搬入されるというニュースが毎年聞かれます。本来人間がもっている体温調節機能が働かない状態になったときに、熱中症に陥ってしまいます。熱中症と総称される日射病や熱射病で死亡者がでる程深刻な状態になることもあります。

 

日射病は全身の倦怠感、吐き気、欠伸から始まって、酷くなると頭痛や意識障害まで引き起こします。炎天下で激しい運動などをしたときに、汗を大量にかいて身体の中の水分が不足すると心臓に戻る血液の量が減ってしまい、脱水状態に近づくと意識を失います。そのまま死亡することもあるのです。

 

また、熱射病とされるのは高温多湿の状況で長時間身体を動かしたとき、大量の汗とともに体内の塩分や水分が流失し、体温の調節が効かなくなって起こる症状です。温度を感じ取る力が衰え、高い室温に気付かない高齢者が、室内でこの熱射病の症状を起こすということもあるのです。

 

それ以外に、熱失神と呼ばれるのは、暑さで血管が拡張して血圧が下がり、めまいや失神が起こる状態。熱けいれんと呼ばれるのは、大量の発汗で汗とともに塩分が体外に流出し、血液中の塩分濃度が低くなっておこる筋肉のけいれん。熱疲労というのは、大量の発汗で脱水症状を起こし、倦怠感やめまい、頭痛、脱力感、吐き気などを起こすものです。

 

最高気温が30度を超えると、こうした症状の重くなる人が増え、さらに気温が上がると死亡者数も急激に増える傾向にあります。

 

熱中症を防ぐには

イラスト炎天下での長時間の活動は、避けてください。亜熱帯化が進んでいると言われる日本では、最近35度を超える気温になることもあります。ご存知のようにこの気温35度というのは、日差しを遮ったところで計る温度です。アスファルトなどの照り返しを受ける炎天下の道路などは、さらに高い温度になっているのです。

 

また、熱中症は気温が上がる10時から16時の間に多く発生していますが、幼児や高齢者は、これ以外の時間でも十分注意しましょう。服装も大切です。発汗性や吸湿性、通気性の良い素材の服を身に着け、屋外ではつばのある帽子を着用します。

 

暑い時間帯は、全国で電気の使用量が急激に増え、節電が望ましいとされますが、健康を害しては何もなりません。エアコンと扇風機、窓の開け閉めによる上手な換気などを心がけて熱中症を予防しましょう。特に幼児や高齢者には、保護者や周囲の人が十分配慮することが大切です。

 

熱中症の対処

イラスト先ほど紹介した「熱けいれん」の場合は、けいれんしている箇所を軽く伸ばし、マッサージをします。また、「熱疲労」の場合は、心臓よりも足を高くして仰向けに涼しいところに寝かせます。スポーツ飲料を少しずつ飲ませましょう。

 

「熱射病」の場合は、身体の下に当て物などをして、上半身をすこし立てて涼しいところに寝かせ身体を冷やします。首や、脇の下、足の付け根などにビニール袋に氷水を入れたものをあてます。身体の表面を冷やすことが大切です。

 

また、熱中症が重篤な状態で意識がはっきりしないような場合は、すぐに救急車を呼びます。車が到着するまで、吐いた場合に気管を詰まらせてないように、涼しいところに横向きに寝かせます。
熱中症は、回復したと思っても一度病院で診察してもらうようにしましょう。

「心の健康と瞑想」(2014年1月)

     
 
1月のテーマ:
「心の健康と瞑想」

 瞑想と聞くと、皆さんは何を思い浮かべますか。寒いお寺の本堂で座禅を組んだり、しびれをきらした脚の痛みでしょうか。何やら辛いイメージを持つ人もいるかもしれませんが、実際の深い瞑想状態を体験すると、とても心地良い感覚に包まれ、ストレスからの回復力が劇的に向上すると言われます。

現代人にとってストレスは万病の元という考え方があるくらい、高血圧をもたらし、血管や心臓を痛めつけるなど、過剰なストレスは、身体を損ねる元凶として知られています。このストレスを解消するには、歩いたり、自転車に乗ったり、泳いだりといった有酸素運動が良いとされますが、寒さも厳しくなり 、外にでるのはなかなか大変です。そこで、今回は家の中でもできる効果的なストレス軽減法である瞑想について紹介しましょう。

 
     

 

ネガティブな発想になりやすい脳を瞑想で開放する
 

 有名な元格闘家に、サクセスストーリーと健康で強い精神や身体の作り方について話を聞いたところ、朝、晩と毎日二回瞑想しているということでした。前向きな発想を得たり、創造的な仕事をするときに、瞑想をしていると良い発想が生まれ、仕事も巧くいくと言います。瞑想の何が良いかというと、考えない状態を作り出す事ができる点です。脳の中では一日に何万回も様々なことを考えていますが、その大半がネガティブな内容なのです。特に座ってじっと考え事をした場合、何事にも否定的なシミュレーションが頭を過ります。過去の経験や悪い噂をベースにしたネガティブな予想や分析が、人間の脳は得意なのです。

そうすると、新しい自由な発想が生まれる余地がなくなってしまいます。新しい事を学習しようとしても、古い情報とそれが複雑に絡んだ思考の澱が邪魔をしてしまうのです。その人が本来持っている潜在的な力を発揮しようとしても、このネガティブな思考がその発現を阻害してしまいます。新しく物事を始めるときに「よく考えてからやりなさい」と周辺の人はアドバイスするものですが、新しいことにチャレンジしようとしたとき、先に後ろ向きな思考が浮かんでしまい、結局チャンスを逃してしまうというのは、多くの方が経験する事でしょう。

ストレスを受けた状態というのもこの脳の働きが影響しています。例えば何かが巧くいかなくて叱られたり、大切なものを失った場合、脳は一日に何万回とこの巧くいかなかった状態を繰り返しシミュレーションし、それがストレスを生んでいるのです。瞑想をして、何も考えない脳の状態を作り出す訓練を行うと、少なくとも瞑想をしている間は、このストレスから開放され、また、ストレスに対抗する身体の準備ができるのです。

瞑想を取り入れたとされる成功者は、例えばアップルのスティーブ・ジョブス、マイクロソフトのビルゲイツ、京セラの稲森和夫氏など数多く知られています。スポーツマンでも、NBAで大活躍したマイケル・ジョーダン、日本人では、最近「心を整える。」という本が大ヒットした、日本代表のサッカー選手長谷部誠なども瞑想を取り入れているといいます。

   
簡単に行える瞑想
 
瞑想を誰でも簡単に行なえる方法を紹介しましょう。
 
  1. 座ります。別に固い床に座禅を組む必要はありません。自然にリラックスして楽に座れる状態であれば、椅子に座っても胡座をかいてもかまいません。できれば静かな部屋で、照明も少し落とします。背筋は伸ばしますが、緊張しない程度に。
  2. 眼を軽くとじ、眼から様々な情報が入らないようにします。いつも無意識に行っている呼吸を、意識的に行います。
  3. 鼻から息をゆっくり吸って、鼻から息をゆっくりはきます。
  4. この呼吸を感じ、そこに意識をもっていきます。
  5. この呼吸を20回以上繰り返し、呼吸数を数える事に集中します。
  6. できるだけ考えない状態を作り出します。
  7. 10分から20分程、この状態を続けたら、瞑想を終了して意識が戻ってくるのを待ちます。眼を閉じたままで数回深呼吸をして、両手で身体に触れて瞑想状態を解きます。
  8. 静かに眼を開けます。 
   
生活に瞑想を取り入れて、ストレスを軽減
 

 瞑想をサポートする小物類もあります。アロマオイルで、心のリラックスを手助けしてくれるものがあり、アロマに抵抗が無い人にはお勧めです。座る姿勢を楽にする瞑想用のクッションもありますし、瞑想用のCDとして制作されたものも沢山あります。チベットの高僧が奏でる浄化音を聞く事ができるCDなどです。こうした小物で楽しく演出して、生活の中に瞑想を巧く取り入れることで、ストレスを軽減してはいかがでしょう。

   

 

夏太りしていませんか?(2012年9月)

 

     
 
9月のテーマ:
夏太りしていませんか?

一昔前は「夏やせ」に注意しようと言われましたが、猛暑が続く近年、気をつけなければならないのは「夏太り」のようです。日中だけでなく夜になっても汗だくになってしまう毎日。汗をかくと、運動をしたのと同じにエネルギーを消費しているような気になってしまいます。これが実は落とし穴です。体温を下げるための発汗はさほどエネルギーを使いません。汗をかいたことで夏バテを恐れ、脂っこいものばかりを食べ過ぎると、成人病のリスクのある内臓脂肪が増えてしまいます。

 
     

 

夏太りの原因とは
 
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夏太りには、いくつかの典型的な原因があります。一つは先にあげた発汗によるエネルギー消失を過大に意識しての過食。夏バテを予防しようと、土用の丑の日に鰻を食べる習慣が古くからあるように、鰻や焼き肉など、こってりした栄養価の高いものでスタミナをつけようと考えてしまいがちです。発汗で失いがちなビタミンB1を多く含む鰻や豚肉をとることは確かに大切ですが、油分の多い食物のとり過ぎは夏太りに直結します。高カロリーの食べ物が食卓にならぶことの少なかった時代はともかく、現代の夏バテは栄養不足より、冷たいものの飲み過ぎやクーラーによる冷え、ソーメンや冷やし中華などの麺類に偏った食事に原因がある場合が多いのです。

冷たい飲み物のとりすぎは、内蔵の働きを悪くするだけでなく、内蔵そのものを冷やすため、その冷えに対抗しようと身体は内蔵の周りに脂肪をつけて冷えから守ろうとします。夏太りの場合、皮下脂肪よりも内臓脂肪の増加が目立つのもこの身体の働きが関係しているといわれます。また麺類は、あまり噛むことをせずに食べられるので、噛むことによる満腹感が乏しく、ついつい食べ過ぎてしまう傾向にあります、ご存知のように麺類などの炭水化物は、とりすぎれば体脂肪として蓄積されます。しかも、炭水化物に偏った食事では、発汗で失ったビタミンやミネラルの補給が十分にできません。ビタミンやミネラルは脂肪の燃焼に不可欠なため、これが不足するとさらに体脂肪がエネルギーとして利用されずに身体に留まることになります。

発汗で失われるカリウムも夏太りに関係します。カリウムが不足すると身体に「むくみ」が生じやすくなるのです。暑いからといって冷たい飲み物を大量にとり、冷房の効いた部屋であまり動かない生活をしていれば、全身がむくんで短期間で体重の急増をもたらすことになります。

また、もともとしなやかで弾力のある動脈が高い血圧を受け続けると、動脈の壁が傷ついて固くなります。これが動脈硬化で主に細い動脈で起こるため細動脈硬化と呼ばれます。血管の内部に酸化したコレステロールが蓄積されて起こる粥状硬化は比較的太い動脈で起こり、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こします。

   
夏太りを解消するためには、適切な食べ物を腹八分目に
 

先にあげたように、冷たい麺類など炭水化物の過食には注意しましょう。水分補給も夕方以降は、冷たい飲み物を控え、できるだけ温かい飲み物をとるように心がけましょう。午前中は「身体から悪いものを排出する時間帯」といわれ、日が暮れると「身体に蓄える時間帯」になるとされます。水分は午前中に多めにとり、日が沈んだら少なめにすると「むくみ」対策に効果があります。

「むくみ」対策にオススメの食べ物は、きゅうり、冬瓜などのウリ科の野菜や、バナナなどのカリウムの豊富な果物。発汗とともに失いがちなビタミンB群(ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸など)も、脂肪の代謝には欠かせません。水溶性ですので、長時間水につけたり加熱しすぎる調理は避けることが大切です。これらの栄養素を多く含む食品は次のとおりですが、一度にたくさんとっても体外に排出されてしまいますので、できるだけ毎日の食事に上手に取り込むようにしてください。

○ビタミンB1

豚肉・うなぎ・たらこ・ナッツ類

○ビタミンB2

豚レバー・鶏レバー・牛レバー・うなぎ・牛乳

○ビタミンB6

かつお・まぐろ・牛レバー・さんま・バナナ

○ビタミンB12

牛レバー・鶏レバー・カキ・さんま・あさり・にしん

○ナイアシン

たらこ・かつお・レバー類・びんながまぐろ・落花生

○パントテン酸

レバー類・鶏もも肉・にじます・子持ちがれい・納豆

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良い睡眠で夏太りを解消する
 
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暑くて寝苦しい夜が続くと、睡眠不足になりがちです。だからといってクーラーに頼りすぎると、夏風邪をひいたりして体調を崩してしまうことがあります。寝苦しい夏の夜に十分な睡眠をとることは大変難しいものですが、睡眠時間が短いと肥満になりやすいという研究結果も報告されています。良い睡眠をとることは、夏バテや熱中症にならないための体調管理や、夏太り対策としても有効だと考えられます。

良く眠るためには、睡眠中の身体の温度が大切です。皮膚の温度(体表面の温度)が高く、深部体温(身体の内部の温度)が低いほど眠りに入りやすいということがわかっています。子育ての経験者はご存知だと思いますが、眠くなるとあかちゃんの手は温かくなります。これは、体表面から熱を放散して、身体の内部の温度を下げる働きによるものです。

深部体温を下げる方法には、寝る前にぬるま湯につかるのがおすすめです。あまり長時間入ってはいけませんが、手足の表面を温める程度にぬるま湯に入ると、手足の末梢血管が拡張して、表面からの放散熱が増え、深部体温を下げる効果がありあす。また、夕方に軽い運動をして皮膚から熱の放散をすると同じように深部体温を下げることができます。

深部体温を下げると良く眠れるというのは、昼間働いている脳の疲労を回復させるために、脳の温度を下げ休ませるためと考えられます。枕につけた頭の熱が気になってなかなか寝付けないとういう人は、頭を冷やすために枕を通気性の良いものに交換したり、枕用の保冷剤を利用するのも良いでしょう。

   

 

寒い冬には気をつけたいヒートショック現象(2012年2月)

 

     
 
2月のテーマ:
寒い冬には気をつけたいヒートショック現象

 昨年、東北地方の温泉で2人の男性の突然死が報じられました。原因は入浴中のヒートショック現象による溺死と言われています。一般家庭の浴槽内で起こる溺死者の数は年間約4000人で、うち高齢者は89%(厚生労働省調べ)。
 さらに、原因を浴室やトイレなど家庭内でのヒートショック現象による心臓・脳疾患発作まで広げると、死亡者は全国で年間1万4000人以上(東京救急協会の推計)という数字があります。例年になく寒波の襲来があり、寒さが厳しい上に震災後の無理な節電により風邪をひくなど体調を崩す方も増えてます。

 
     

 

ヒートショック現象とは
 

 「ヒートショック現象」とは、急激な温度変化によって身体が受ける影響のこと。温かい部屋から寒い部屋へ移動すると「ブルっ」と身震いすることがあるように、人は急激な温度の変化にさらされると体内の血管を急激に伸縮させて血圧や脈拍の変動を起こします。これは体温を一定に保つために、人間の身体が反応すること。しかしこの働きが脳卒中や心筋梗塞などに繋がってしまう可能性が高いといわれています。

特に入浴が好きな日本人はヒートショック現象に見舞われることが多いといわれており、お風呂で長時間温まった後、お風呂場から脱衣所に移動した途端、急激に冷たい空気にさらされることがあります。また、この逆も同じ様に 寒い脱衣所からお風呂場へ移動し、冷えた身体を一気に熱いお湯につけることで身体がヒートショック現象を引き起こしてしまい、入浴中に亡くなる、という前出のニュースのようなケースが増えているそうです。特に75歳以上の高齢者には注意が必要と警報を鳴らしています。

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ヒートショック現象を防ぐには
 
入浴時の注意  
 

 脱衣室をあらかじめ暖房で温めておいたり、浴室の浴槽のフタをとって湯気で室内を満たすなど工夫をしましょう。シャワー等で熱めのお湯を出して浴槽にかけても保温効果が上がります。

また一番最初の入浴は浴室内が寒いのと湯の温度が高めなため、からだに負担がかかりがちです。高齢者のいるご家庭は家族が入った後の二番湯を使っていただくようにすると、浴室も温まっているため安心して入浴が出来ます。お風呂の湯温は38~40度が適温であまり長湯をしないこと。半身浴をしたり、水分を摂るなど身体に負担のかからない入浴法を取り入れることも大切です。いきなり湯につかることを避け、リラックスして入浴できるような心掛けをしてください。

トイレでの突然死を防ぐには  
 

 浴室だけでなく、トイレでの脳卒中や心筋梗塞を起こす割合は、突然死の約5%を占めておりあなどれません。トイレでいきむ事や寒い室内でいきなり立ち上がった時など、血圧や心拍の急激な変化等が脳卒中や心筋梗塞を引き起こすと言われています。対策としてトイレや便座などを温かく保温すること、日頃から食生活などに気を配り、便通をよくしておくことも大切です。

   
 
日本家屋は木造住宅が多いため、浴室やトイレ以外にも廊下等温かい室内との温度差が大きな場所があることもヒートショック現象が多いことの一因と言われています。健康に問題がなく、今までまったく元気だった方にも起こる危険性のあるヒートショック現象。節電も求められる今年の冬ですが、命を守るためにも対策を取ることを忘れないようにしましょう。

 

「地震酔い」 その予防と対処法!(2011年4月)

 

     
 
4月のテーマ:
「地震酔い」 その予防と対処法!

未曾有の大震災発生から半月以上が経過しました。被災者の皆さまには、心よりお見舞い申し上げます。

避難所での生活を余儀なくされている方はもちろん、その他の地域の方も、余震や原発事故への不安、停電や断水、そして様々な品不足など、普段通りの暮らしができない環境に身を置く方が多いのではないでしょうか。しかし、こんな時だからこそ、体調管理にはいつも以上に気を付けたいものです。今回は、被災者の後遺症ともいえる“地震酔い”についてお話しします。

 
     

 

地震酔いとは
 

地震酔いとは 東北地方太平洋地震の発生以降、「実際には地震が起きていないのに揺れているような感じがする」「目まいや吐き気がする」といった症状を訴える人が増えているそうです。大地震を経験した恐怖や、悲惨な光景をテレビや新聞で見たショックなどがトラウマになっているせいとも考えられますが、それ以上に、頻発する余震の影響で「地震酔い」をしている可能性が高いと思われます。
地震酔いは「後揺れ症候群」と呼ばれるもので、車酔いや船酔いなどのいわゆる「乗り物酔い」と同じようなものです。

車酔いや船酔いは視覚情報と平衡感覚とのズレが原因で起こりますが、地震酔いも原理は同じで、地震によって身体が揺れることで三半規管で感じる平衡感覚がズレて、目まいや吐き気などが起こります。
しかし何故「実際には揺れていないのに揺れているように感じる」のでしょうか。これは、人間の脳が持つ「速度蓄積機構」というシステムのせいで、このシステムが、直前に体験した加速度や回転の情報を蓄えているために地震酔いが起こると考えられます。皆さんも、ボートやつり橋など、常に揺れている環境でしばらく過ごした後、大地の上に立っているのに自分の体が揺れているような感覚を味わったことはないでしょうか?地震酔いもこの感覚と同じような現象ですが、地震は特に、人体に与える刺激が強いため揺れている感覚が残りやすいのです。

地震酔いは周期が長い揺れが何度も続く場合に起きやすいと言われますが、今回の地震は揺れた時間が長く、余震の回数も多いため、症状を訴える人が多いようです。また、「余震がまた来るかも知れない」という不安感やストレスが揺れに対する感覚を敏感にさせ、症状を強めている面もあると考えられています。

   
地震酔いの対処法
   乗り物酔いをした場合、車や船から降りてしばらくすれば自然と治るのと同じように、地震酔いもほとんどの人は時間の経過と共に症状は軽くなっていきます。また、余震が今後も続いたとしても、徐々に揺れに身体が慣れて、地震酔いする人は減ってくると考えられています。

吐き気や目まい、不快感など、どうしても耐えられない場合は乗り物酔いの薬を服用すると楽になる場合もありますが、まずは深呼吸してリラックスするようにしてみましょう。
<地震酔いの予防・対処法>

ゆっくり深呼吸して、リラックスする 深呼吸
 

気分の悪さを感じたら、ゆっくりとした呼吸で気持ちを落ち着けましょう。一度大きくゆっくりと息を吐き出すと、自然と呼吸が整います。その後、緊張や不快感が和らぐまで何度か深呼吸を繰り返してみましょう。

身体をリラックスさせる
 

ネクタイやベルト、身体を締め付ける下着などは避け、身体をリラックスさせるようにしましょう。

水分を摂る
  口の渇きを感じる場合は、水やスポーツドリンクなどを飲みましょう。飲み水が不足しているときも、少し口に含むだけでも効果があるので試してみてください。ハーブティーなど、香りにリラックスやリフレッシュ効果のあるドリンクでも良いでしょう。
しっかりと睡眠をとる
 

睡眠不足も地震酔いの要因になります。不安や寒さなどでなかなか寝付けない場合もあるかと思いますが、睡眠不足は様々な体調不良の原因にもなるので、睡眠の確保を心がけてください。

睡眠
ストレスをためない
 

不自由な暮らしや不安のせいでストレスが溜まりやすくなっていますが、身体だけでなく神経を休めることも大切です。軽い運動をする、温かいお茶を飲む、周囲の人と会話するなど、気持ちを楽にできることを見つけてください。

 
 
皮肉な話ですが、今回の大震災がきっかけで、「命の大切さ」や「生きている喜び」に改めて気づいたという声も多く聞かれます。不安な日々が続いていますが、一日も早い復興のためにも、健康第一で前向きに過ごして行きましょう!

 

 

あなたの「いびき」、大丈夫ですか?(2010年3月)

 

     
 
3月のテーマ:
あなたの「いびき」、大丈夫ですか?
 三寒四温を繰り返し、ようやく春めいた日が続くようになってきました。当センターのある茨城県水戸市でも、偕楽園の梅が見ごろを迎え、春の訪れを感じることができます。さて、暖かくなってくると日中の眠気が気になるもの。また、「春眠あかつきを覚えず」と言われるように、過ごしやすい春の夜の睡眠は気持ちよく、ついつい寝過してしまうこともあるものです。今回は、その睡眠に深い関係のある「いびき」についてのお話です。
 
     

 

激しい「いびき」をかく人は、要注意!
 

いびきは「睡眠時に起こる異常な呼吸音」と定義され、発生源は上あごの奥にある粘膜が、睡眠中の呼吸に伴って過剰に振動するために起こります。いびきの原因は、主に「気道の狭窄」によるものなので、長期間いびきが続くと換気低下が起こり、呼吸機能、ひいては血液循環機能に影響が出てきます。眠っている間のことなので本人には自覚がないものですが、大きないびきは周囲の迷惑となるだけではなく、健康面にも影響があるので注意が必要です。

また、「大きないびきをかいている」と指摘された人は、「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」の疑いもあります。5年前にJR西日本の福知山線脱線事故の原因となったことで広く知られるようになった病気ですが、主な症状である「いびき」や「昼間の強い眠気・居眠り」、「熟眠感がない」などに心当たりのある方は、内科や呼吸器科、耳鼻咽喉科などでの受診をおすすめします。

 

頭痛
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
 
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、10秒以上の呼吸停止を一晩に30回以上、あるいは睡眠1時間あたり5回以上繰り返す状態のことで、閉塞型と中枢型の2つのタイプに大別されます。SASの大多数は閉塞型で、これは睡眠中に空気の通り道である上気道が塞がることにより呼吸が障害されて起こります。

<主な症状>

睡眠中の呼吸停止 大きないびきをかく
熟眠感がない 何度も目が覚める
夜間ひん尿 起床時に頭痛がする
胸焼け 日中の強い眠気・居眠り
集中力低下・疲労感 勃起不全・ED
抑うつ    

<原因>

睡眠時の無呼吸状態は、多くの場合、空気の通り道である気道が、部分的あるいは完全に閉鎖してしまうことによって起こります(閉塞型睡眠時無呼吸症候群)。肥満体の人や顎が小さい人などに多く、これらの人は、もともと気道が狭い構造になっている上に、睡眠中には咽頭の筋肉や舌が緩むため、さらに気道が狭くなって閉じてしまうことが原因です。

 

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の弊害について
 
SASの症状、および合併症は、以下の2つによって引き起こされます。
睡眠中に無呼吸が起こるたびに脳波上の覚醒反応が起こり、深い睡眠を得ることができない。
無呼吸により、肺における酸素の取り込みと二酸化炭素の排出が一時的に停止してしまうため、血液中の酸素不足や炭酸ガスの排出不全が反復され、各種臓器に悪影響を生じる。
この2つが原因となり、覚醒後に熟睡感がなかったり、日中の動悸や冷汗、激しい眠気・居眠りが多くなります。また、血液中の酸素濃度の低下により、心肥大や心不全、高血圧、不整脈、脳障害を合併する可能性もあり、大変危険な病気であることがわかります。
予防と治療について
 
SASの治療には、口腔内装具(マウスピース)を装着しての睡眠や、鼻閉の改善手術、扁桃腺の摘出・軟口蓋形成術などがあります。ただし、無計画な手術はかえって症状を悪化させることもあるため、これらの治療には正しい原因の把握が重要です。治療の際は、必ず専門医に受診するようにしましょう。

また、家庭においての治療や予防には自己管理が必要です。

頭痛
肥満の予防
  肥満は首のまわりに贅肉がつき、のどの内側も狭くなるためにいびきをかきやすくなります。
側臥位睡眠
  仰臥位(仰向け)の睡眠は重力の影響により上気道が閉塞しやすくなります。側臥位(横向き)に寝ることで口蓋垂(こうがいすい)周囲の気道閉塞が軽減するため、SASの発生を抑える効果が期待できます。
アルコール制限
  アルコールは筋肉の緊張低下を起こすため、気道が狭くなりやすくなります。禁酒とまではいかなくても、節酒を心がけることも大切です。
いびき予防絆創膏
  鼻づまりが原因の場合に有効なことが多い対処法で、鼻孔を広げることを目的とした絆創膏を鼻に張って就寝します。

 

たかが「いびき」とあなどってしまいそうですが、米国の調査ではSASのない人と比較して死亡率が3~5倍も高いことがわかっています。また、うたた寝や眠気による交通事故や業務能力の低下など、日常生活にも支障をきたす恐れがあるので、いびきチェックを行うか、専門医に受診して気道狭窄の有無を調べてみましょう。

 

 

ベトベト汗を防いで、夏をサラッと快適に!(2009年7月)

 

     
 
7月のテーマ:
ベトベト汗を防いで、夏をサラッと快適に!
  梅雨があければ、いよいよ夏本番。夏休みを楽しみにしている子供たちのために、レジャーの計画をたてているご家庭も多いのではないでしょうか。たくさんの人で賑わう観光地や電車の中、ショッピングセンターなど、むっとする人いきれの中に出かけると、汗や体臭が気になるもの。夏に汗をかくのは当然の生理現象ですが、実はこの汗も健康のバロメーターなんです。生活習慣の改善で、さらっとしてにおいのない、快適な汗をかける身体づくりを目指しましょう。
 
     

 

汗の種類とメカニズム
 
 汗はベタベタしてくさいもの、というイメージがありますが、体質や生活習慣によってそのベタつき具合やにおいが異なります。そもそも汗は体内にたまった熱を放出するためにかくもので、汗を分泌する「汗腺(かんせん)」にはエクリン腺とアポクリン腺の2種類があります。
エクリン腺
  運動をしたり暑いときにかく汗がでるところで、全身に約230万本あると言われています。体外へ熱を放出する大切な役割を担っており、基本的にこの汗腺から出る汗はさらさらしていてにおいもほとんどありません。
アポクリン腺
  脇の下、陰部、乳首やおへその周り、耳の中など特定の部位にある汗腺。ここから出る汗は、脂肪、鉄分、尿素などの成分を含み、乳白色で独特の臭気があります。わきがの主な原因となるのはここから出る汗で、この汗腺が大きかったり多かったりすると起こりやすくなります。

 

あなたの汗はどのタイプ?
   通常全身のエクリン腺からかく汗はさらさらしてにおいも少ないものですが、エアコンに頼りすぎた生活や運動不足などで汗腺の機能が鈍ると、ベタベタした汗をかくようになります。また、汗に含まれている成分によって皮膚の常在菌が繁殖することで、いやなにおいが発生することも。まずは以下のチェック項目から、ベタベタ汗の危険度をチェックしてみましょう。

<ベタベタ汗診断>

入浴はシャワーですますことが多い
運動はほとんどしない
室内ではいつもクーラーをかけている
汗をかいてもそのままにしている
耳垢が湿っている
便秘がち、あるいはくさいおならがよく出る
食事は肉が中心で野菜はあまり食べない
ストレスがたまりやすい、いつもイライラしている
煙草を吸う
お酒が好き

6個以上の項目に当てはまる方は、ベタベタ汗の持ち主、あるいは予備軍の可能性大です。ベタつきやにおいの少ない快適な汗をかけるよう、生活習慣の改善を心がけましょう。

   
生活習慣改善のポイント
 
1. ぬるめのお風呂にゆっくり浸かり、湯上りのクーラーは控える。
  汗腺の機能を回復するためには、「ゆっくり汗をかく」ことが大切。岩盤浴もおススメです。
2. 水分補給と有酸素運動を心がける。
基礎代謝が高まると、血液だけでなく汗もサラサラしてきます。水分補給とともにミネラルの摂取も心がけて。
3. エアコンに頼り過ぎない。
冷房の効いた部屋と蒸し暑い屋外への行き来を繰り返すと、汗腺や脳に変調が起き、ベタベタ汗の原因になってしまいます。
4. 食生活を見直し、腸も健康に。
肉をはじめとする高タンパクな食事を減らし、食物繊維や発酵食品を積極的に摂りましょう。
5. ストレスをためないよう、上手に気分転換を。
ストレスによって交感神経が緊張すると汗をかきやすくなり、におい物質を発生させる原因にもなります。
6. お酒・煙草は控えめに。
お酒を飲む量や回数が多いと肝機能が低下し、血中の遊離脂肪酸濃度が高まりくさい汗の原因に。また、煙草に含まれるにおい物質もくさい汗の原因となります。
 
 このように、健康的な生活、バランスのとれた食生活を送っている人ほど汗のべたつきやにおいが気にならない、サラサラ汗をかけるようになると言えます。もちろん体質など個人差があるので一概には言えませんが、ベトベト汗やにおいの強い汗が気になる場合は、生活習慣や食生活を見直して、快適な汗をかけるよう心がけましょう!