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多汗症かな?と思ったら|症状や原因、治療をすべき目安とは(2024年6月)

多汗症とは、過剰な発汗により日常生活に大きな影響を与える健康問題です。この症状は、身体の特定の部位から大量の汗が出ることで、個人の生活の質や精神的な健康に悪影響を及ぼします。普段から人より汗が多いと感じ、生活するうえで不便を感じている方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、多汗症の原因や症状について解説し、予防に効果的な対策方法や治療を考えるべき目安などをご紹介します。

◆多汗症とは?

多汗症は、発汗時に通常よりも多くの汗が出る症状で、程度によっては日常生活のさまざまな場面に支障をきたすことがある疾患です。

多汗症には、全身にわたって多量の発汗が見られる「全身性多汗症」と、手のひら、足の裏、脇、顔など特定の部位で多くの発汗が見られる「局所性多汗症」があります。さらに、神経障害、感染症、内分泌代謝異常、精神的緊張などが原因となる「続発性多汗症」と、特定の原因が不明である「原発性多汗症」に分類されます。

◆多汗症の症状

多汗症の症状は、日常生活に支障をきたすほどの過剰な発汗です。人によって程度は異なりますが、重度の場合、汗が手のひらから滴り落ちることもあります。さらに、足や脇の不快な臭い、汗による指先の冷え、手足に水疱(水ぶくれ)ができる、表皮がめくれるといった皮膚のトラブルも引き起こします。多汗症により、患者はさまざまな精神的苦痛を経験し、仕事や勉強に支障をきたすことや、対人関係に影響が及び、生活の質(QOL)が著しく低下することもあるでしょう。

精神的苦痛が大きい場合、うつ病などの精神疾患を併発することもあるため注意が必要です。多汗症の症状は、幼児期から思春期にかけて発症しやすく、10~30代にかけて多く見られる病気です。

◆多汗症のセルフチェック

以下の項目に当てはまる数が多いほど、多汗症の症状レベルが高いといえます。気になる方は、ぜひチェックしてみてください。治療すべきかの目安は、「汗が原因で生活に支障が出ているかどうか」です。これらの症状に悩まされており、改善したいと考えている場合は皮膚科を受診しましょう。

  • 手のひらや足の裏、脇が常に汗で湿っている
  • 気温が高い季節でなくてもたくさん汗をかく
  • 緊張により多量の汗が出る
  • 脇の汗染みが気になり、好きなファッションを選べない
  • 汗が原因で1日に何度も着替える
  • 手汗で文字がにじむ、スマホが反応しないなど、生活に支障が出る
  • 汗をかくことをおそれて仕事や勉強に集中できない
  • 日中は大量の汗に悩まされるが、睡眠中は汗をほとんどかかない
  • 多汗症の家族歴がある

◆多汗症の原因

多汗症の原因はさまざまにあり、全身性多汗症と局所性多汗症ではそれぞれ原因が異なります。ここでは、多汗症の原因についてご紹介します。

◎全身性多汗症の原因
  • 内分泌・代謝性発汗:甲状腺機能亢進症、更年期障害、糖尿病、肥満症など
  • 神経障害:パーキンソン病など
  • 温熱性発汗:運動、高温の環境、発熱などによる発汗
  • 薬剤副作用:向精神薬、睡眠導入薬、非ステロイド抗炎症薬、ステロイド薬などの服用による発汗
  • 感染症:結核、敗血症など
  • 特発性発汗:原因不明の発汗
◎局所性多汗症の原因
  • 精神性発汗:精神的な緊張による発汗(手のひら、足の裏、脇など)
  • 神経障害による発汗:胸部交感神経切除後などによる発汗(体幹)
  • 味覚性発汗:辛いものなどを食べたとき(顔面)
  • その他:皮膚疾患による局所多汗症など

◆多汗症を予防する対策法

発汗を減らすために、できるだけ強いストレスを避ける生活を心がけることが重要です。ストレスが溜まっていると感じたら、心と体をリラックスさせられる時間を確保して解消しましょう。

辛いものや刺激物、カフェインの摂りすぎも交感神経を優位にするため、できるだけ避けるのが無難です。ほかにも、適度な飲酒用を守ることや喫煙を控えることなど、交感神経を優位にさせないよう心がけることが大切です。睡眠時間を十分とり、栄養バランスの良い食事を心がけましょう。

ただし、これらの対策は神経障害や糖尿病などによる発汗の予防にはなりません。多汗の原因がほかにある場合は、その治療を優先させてください。

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多汗症は、多くの人々にとって困難な問題ですが、適切な治療と日常生活での対策を講じることで、症状を効果的に管理することができます。自身の体質やライフスタイルに合った方法を見つけることが重要であり、医療専門家のアドバイスを受けることも大切です。多汗症は、治療を受けていない潜在的な患者が多い病気です。ただ人より汗が多いだけと放置せず、多汗症と向き合いながら、快適で充実した生活を送るための一歩を踏み出しましょう。

骨盤のゆがみの原因と対処法|ゆがみを解消して正しい姿勢を手に入れよう(2024年5月)

骨盤は背骨の下部に位置し、上半身と下半身をつないで支える重要な役割を果たしています。しかし、日常生活を過ごすうえで、骨盤がゆがんでしまうことがあります。骨盤のゆがみは、姿勢が乱れるだけでなく、体にさまざまな不調を引き起こすおそれがあるため注意が必要です。この記事では、骨盤がゆがんでしまう原因や改善方法をご紹介します。骨盤のゆがみによる体の不調に悩まされている方や、姿勢の悪さが気になる方は、ぜひ参考にしてください。

◆骨盤のゆがみにより引き起こされる不調

骨盤がゆがむと、体にさまざまな影響を及ぼします。まずは、骨盤がゆがむことで引き起こされるおそれのある不調をご紹介します。

◎腰痛

骨盤は、上半身と下半身を支える腰椎と密接につながっている部分です。骨盤がゆがむと腰椎にもずれが生じ、神経が圧迫されて腰痛を引き起こすおそれがあります。また、腰痛だけにとどまらず、股関節やひざの痛みにつながる可能性もあるため注意が必要です。

◎肩こりと頭痛

骨盤のゆがみが体を支える筋肉のバランスを崩し、肩や首の筋肉に過度な負担をかけてしまう可能性があります。肩こりや頭痛を引き起こします。

◎むくみや冷え

骨盤のゆがみが足やひざに不均衡な負担をかけ、リンパの流れが滞りやすくなります。筋肉が凝り固まることで血流が悪くなり、むくみや冷えとして不調が現れてしまうこともあるでしょう。

◎生理痛・生理不順

骨盤は、子宮の周りを囲うように配置されています。そのため、ゆがむことで子宮や卵巣などを圧迫してしまうおそれがあるのです。圧迫されて血流が低下することで生理痛がひどくなったり、生理不順になったりすることがあります。

◎姿勢・体型の崩れ

骨盤がゆがんだまま生活を続けると、姿勢が悪くなったり、体型が崩れたりするおそれがあります。左右のバランスが乱れ、体のどちらかに負担が集中してしまうのです。片方に脂肪や筋肉がつきやすくなってしまうため、体型が崩れてしまうケースも珍しくありません。

◆骨盤のゆがみの原因

骨盤がゆがんでしまう原因はさまざまです。注意深く原因を把握し、予防することが大切です。

◎運動不足による筋力低下

骨盤周りには多くの筋肉が関与しているため、運動不足による筋力の低下は、骨盤のゆがみを引き起こす可能性があります。筋肉が衰えると、適切な姿勢を維持するのに支障をきたし、骨盤の安定性に影響を与えます。定期的な運動習慣を身につけることが、骨盤の健康維持に重要です。

◎日常生活の癖

日常の些細な習慣が、骨盤のゆがみにつながることがあります。たとえば、一方の肩で荷物を持つことや片足に偏った立ち方、座るときの足の組み方などです。これらの癖は、自分でも気づかぬうちに身についてしまっており、修正が難しいことがあります。

◎妊娠や出産による体の変化

女性の場合、妊娠や出産に伴う体の変化が骨盤のゆがみを引き起こすことがあります。妊娠中はお腹が大きくなるため、体の重心が変化し、骨盤に負担がかかってしまうのです。出産後も、骨盤の元の位置に戻りにくい場合があるため注意が必要です。

◆骨盤のゆがみの改善方法

骨盤のゆがみを修正するためには、いくつかの方法があります。ここでは、自宅で簡単に実践可能な、骨盤のゆがみ改善方法を紹介します。

◎正しい姿勢の維持

正しい姿勢を保つことは、骨盤のゆがみを改善するうえで重要です。耳・肩・腰・ひざ・くるぶしを一直線に保つことを意識しましょう。立ち姿勢や座り方、寝姿勢にも注意を払い、維持するのが改善の近道です。寝るときは仰向けで寝ると、ゆがみを緩和するのに効果的です。

◎筋トレ

筋力トレーニングも、骨盤のゆがみを緩和するのに役立ちます。スクワットや腹筋を行うことで、骨盤周りの筋肉を強化し、骨盤の安定性を向上させましょう。しっかりとした体づくりを意識し、骨盤をサポートするための筋力を養うことが大切です。

◎ストレッチ

骨盤のゆがみを改善するためには、ストレッチも有効です。ねじりや側面の伸ばしストレッチを行い、筋肉をほぐしましょう。仰向けになり、ストレッチボールやテニスボールを用いて背中をほぐすこともおすすめです。また、腰回しや骨盤押し込み、骨盤回旋などの骨盤ストレッチも有効です。

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骨盤がゆがんでしまう原因や、対処法をご紹介しました。上半身を支え、下半身をつなぐ重要な部分である骨盤は、ゆがんでしまうと体にさまざまな不調を招くおそれがあります。心当たりのある方は、原因を追究し、改善のために筋トレやストレッチを日常生活に取り入れてみてください。

春の自律神経を整えるための腸内環境改善ガイド(2024年4月)

春は季節の変わり目であり、多くの人々にとって自律神経の乱れが生じやすい時期です。気候の変化による心身的ストレスや気圧の変化などが要因となり、体が不調を訴えることがあります。その解決策の一つとして、体の中で重要な役割を果たす腸内環境を改善するのがおすすめです。この記事では、春の自律神経の乱れを整えるための腸内環境の改善方法についてご紹介します。

◆腸内細菌の重要性

腸と自律神経は、深い関わりがあります。まずは、健康を支える腸内細菌の基礎知識をご紹介します。

・腸内細菌の働き

腸内細菌は、健康に極めて重要な役割を果たしています。消化や栄養吸収はもちろん、免疫系の調節や神経伝達物質の生成など、さまざまな生理的機能に影響を与えているのです。 腸内細菌のおもな働きは、消化器系のバランスを保ち、病原菌の増殖を抑えるなど、体内の防御機能を強化することです。そのため、腸内細菌のバランスが崩れると、健康上の問題が生じる可能性があります。

・腸内細菌の種類とその影響

腸内細菌は約100兆個、1000種類以上の種類が存在しており、それぞれが異なる機能や影響を持っています。大きく分けると、善玉菌・悪玉菌・日和見菌の3種類です。

ビフィズス菌を代表とする善玉菌は、腸内環境を整え、免疫力を高める働きがあります。一方で、悪玉菌は、細菌毒素や発がん物質を産生するなど、体に悪い影響を及ぼす菌で、代表的な菌は大腸菌です。日和見菌は、体が健康なときは影響がありませんが、体が弱っているときに悪い働きをすることがあります。これらの菌のバランスが乱れると、消化不良や免疫機能の低下などの問題が生じる可能性があります。

◆健康な腸内環境を整える方法

健康な腸内環境を維持するためには、腸内細菌のバランスを整えることが不可欠です。ここでは、健康な腸内環境を整える方法をご紹介します。

・腸内細菌のバランスを整える食事

腸内細菌の生態系のことを「腸内フローラ」と呼びますが、腸内フローラのバランスを整えるためには、バランスの取れた食事が重要です。腸内フローラを整えるためには、善玉菌と一緒に、善玉菌のエサとなる食品を合わせて摂ることが良いといわれています。

善玉菌を含む食品を「プロバイオティクス」、善玉菌のエサとなる食品を「プレバイオティクス」と呼びます。プロバイオティクスに分類される食品は、ヨーグルトやキムチ、納豆などの発酵食品が代表的です。食物繊維やオリゴ糖などのプレバイオティクスを一緒に摂ることで、腸内細菌のバランスが良くなり、健康な腸内環境が整うでしょう。

・ストレス管理と腸内環境の関係

ストレスは腸内細菌のバランスを乱し、消化器系の不調を引き起こす可能性があります。ストレスを管理するためには、リラックスするための方法を取り入れることが重要です。深呼吸や瞑想、適度な運動などのリラックス方法を積極的に行い、ストレスが腸内環境に与える影響を軽減しましょう。

◆春の自律神経を整えるための生活習慣改善

腸と自律神経は深い関わりがあるため、いくら腸内環境を整えようとしても、自律神経が乱れたままではうまくいきません。春の自律神経のバランスを整えるためには、健康的な生活習慣を身につけることが重要です。以下の方法を取り入れて、心身の健康をサポートしましょう。

・良質な睡眠の確保

睡眠は、自律神経のバランスを整えるために不可欠です。十分な睡眠を確保することで、ストレスホルモンの分泌が抑制され、自律神経が安定します。寝る前にリラックスする習慣を取り入れ、快適な睡眠環境を整えることで、春の不調を軽減することができるでしょう。

また、朝の光は体内時計をリセットしたり、副交感神経を交感神経に切り替えたり、さまざまな効果が期待できます。朝目覚めたら、カーテンを開けて朝日を浴び、体を活動モードにチェンジしましょう。

・適度な運動の取り入れ

適度な運動は自律神経のバランスを整えるだけでなく、腸内環境の改善にも効果的です。有酸素運動やストレッチなどの運動はストレスを軽減し、腸のぜん動運動を促す効果が期待できます。ハードなトレーニングである必要はありません。毎日少しずつでも運動を取り入れ、心身の健康をサポートしましょう。

・発酵食品と食物繊維の摂取

自律神経を整えるために、善玉菌を多く含む発酵食品を積極的に摂り、腸内環境を整えることが大切です。さらに、善玉菌のエサとなる食物繊維を一緒に摂ることで、善玉菌を増やす働きが期待できます。

また、食事はできるだけリラックスした状態で、ゆっくりと楽しむのがおすすめです。副交感神経が活発になると、唾液や消化液の分泌が促され、ぜん動運動もスムーズになります。

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春は寒暖差や気圧の変化により自律神経の乱れが起きやすい季節ですが、腸内環境の改善はその解決策の一つとして注目されています。腸内細菌のバランスを整え、健康な腸内環境を維持するために、バランスの取れた食事、適度な運動、ストレス管理などの生活習慣改善が重要です。これらの取り組みを通じて、春の自律神経の乱れを軽減し、心身の健康を守りましょう。

梅干しの健康効果とは?食べることで得られるメリットと注意点(2024年3月)

梅干しは、日本の伝統的な食品でありながら、その健康効果は近年注目されています。酸っぱい味わいの背後に隠された豊富な栄養素が、体にさまざまな健康効果を与えてくれることがわかってきました。しかし一方で、梅干しは塩分が高い食品としても知られています。健康のためにそこで今回は、梅干しの健康効果と摂取するメリット、食べ方の注意点などをご紹介します。

◆梅干しの効能・効果

・疲労回復効果

梅干しの酸味の正体は、疲労回復効果があるとされているクエン酸です。クエン酸は、疲労の元となる乳酸を体外に排出する働きがあります。そのため、体の疲れや肩こりの解消にも効果的です。クエン酸にはほかにも、細菌の増殖を防ぐ働きや、カルシウムの吸収を促す働きなどもあります。

・食欲増進効果

酸味豊かな梅干しは、唾液の分泌を促すため食欲増進効果があります。夏バテなどで食欲が落ちてしまったときは、梅干しを使った料理を試してみるのがおすすめです。

・動脈硬化予防効果

梅の果汁を長時間煮詰めて作られる「梅エキス」には、血流を改善し、生活習慣病の一環である動脈硬化などを予防する効果が期待されている成分が含まれています。ムメフラールと呼ばれ、平成11年に農林水産省食品総合研究所の研究で発見された注目すべき成分です。梅に豊富に含まれるクエン酸と協力して作用し、相乗効果が期待されるとされています。

・便秘予防効果

梅干しには、植物性乳酸菌も多く含まれています。腸内環境を整える働きがあるため、便秘予防や肥満の抑制、免疫力の向上、抗アレルギー効果などが期待されます。さらに、悪玉菌を抑制する働きのあるカテキン酸というアミノ酸も含まれているため、乳酸菌と相乗効果を発揮して、より高い整腸作用が期待できるでしょう。

・アンチエイジング効果

梅干し1個には、リンゴの33倍にもあたる0.03mgものビタミンEが含まれています。ビタミンEは、高い抗酸化作用を持つことで知られています。「若返りのビタミン」とも呼ばれ、血行を促進させて血管や肌、細胞の老化を防止してくれる働きがあるため、生活習慣病の予防にも効果的です。

◆梅干しを食べるときの注意点

梅干しには豊富な栄養素が含まれており、体にさまざまな健康効果をもたらしてくれます。しかし、塩分が多く含まれるため、摂りすぎには注意が必要です。ここでは、梅干しを食べるときの注意点をご紹介します。

・梅干しは1日1個が目安

文部科学省の食品成分データベースによれば、梅干し1個(可食部20g)には、3.6gの塩分が含まれています。厚生労働省で定められている1日の食塩摂取量の目標値は、男性が7.5g未満、女性が6.5g未満です。高血圧や慢性腎臓病の重症化を予防するなら、男女ともに6g未満に抑えることが推奨されています。梅干しは摂りすぎに注意し、1日1個を目安にしましょう。

参照:「文部科学省 食品成分データベース」
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=7_07022_7

「厚生労働省 e-ヘルスネット ナトリウム」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-024.html

・人それぞれ適量は異なる

たくさん汗をかく夏場や、特定の疾患にかかっている方など、状況次第で塩分の摂取が必要になる場合もあります。その場合、1日1個以上食べても健康への影響は少ないと考えられます。しかし、塩分の摂りすぎは高血圧のリスクが高まるため、摂りすぎには注意しましょう。また、病院から塩分を制限されている方は、かかりつけ医師に相談して、適量を食べるようにしてください。

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梅干しの健康効果や、食べ方の注意点をご紹介しました。「梅はその日の難逃れ」といわれるほど、古くから体にいい食品として親しまれています。体にいい成分を豊富に含む一方で塩分も多く含むため、食べすぎには注意が必要です。適量は人それぞれ異なるため、自分に合った量を心がけながら、毎日の食事に取り入れてみてください。

加齢性難聴は認知症のリスクにもつながる?初期症状と予防法(2024年2月)

年齢を重ねる中で直面する「加齢性難聴」。その影響は、単なる聴力低下だけではないかもしれません。加齢性難聴の進行を緩やかにするためには、早い段階で症状に気づくことが大切です。放置していると、認知症や命にかかわるリスクと結びつく可能性があるため注意しましょう。本記事では、加齢性難聴への理解を深めながら、初期症状や予防法についてご紹介します。

◆加齢性難聴とは?

◎どんな病気?

加齢性難聴とは、内耳にある蝸牛の有毛細胞に損傷が生じることで引き起こされる感音難聴のことです。細胞数の減少や聴毛が抜け落ちることで、聴力の低下が進行します。加齢以外にも、神経回路や脳の認知機能低下が影響している可能性も指摘されています。

◎加齢性難聴の初期症状

加齢性難聴の初期症状はさまざまですが、気づきにくいサインも存在するため注意しましょう。たとえば、テレビの音が聞こえづらくなり、音量を上げることが増えたり、電子機器や家電の音に気づけなくなったりするなどの症状には注意が必要です。また、耳鳴りがする、話し声が大きくなるなどの症状が現れることもあります。

◎加齢性難聴の治療法は?

現代医学では、加齢性難聴を完治することは難しいとされています。一度減少してしまった内耳の感覚細胞を元に戻すことは不可能です。しかし、難聴の原因が加齢性難聴でない場合、投薬や手術で治療ができる可能性もあります。歳のせいと決めつけずに、初期症状に気づいたらすぐに耳鼻咽喉科に診てもらうようにしましょう。

◆加齢性難聴によるリスク

・外出時や災害時の危険に気づきにくい

外出時、車のクラクションや後方の自転車に気づかないなど、事故などに遭いやすくなる危険性があります。また、災害を知らせる警報に気づけなかった場合、避難が遅れて命にかかわるおそれもあるため注意が必要です。

・認知症のリスクが高まる可能性がある

近年の研究からは、加齢性難聴と認知症の関連性が浮上しています。聴力低下が神経回路や脳の認知機能に影響を与え、認知症の初期症状が現れる可能性があると指摘されているのです。フランスでは、65歳以上を対象に認知症テストを行いました。それによると、難聴があり補聴器を使用していない人の結果が、同じく難聴があり補聴器を使用している人よりも悪かったという結果が出ています。難聴への適切な対処は、認知症の予防にもつながると考えられます。

◆加齢性難聴は初期症状に気づくことが大切

加齢性難聴は、根本的な治療法がありません。しかし、初期症状に気づいて適切な対処をすれば、病気の進行を抑えることが可能です。初期症状に気づいたら、すぐに耳鼻咽喉科へ受診しましょう。早期に補聴器をつかって聞こえをサポートすることで、加齢性難聴の進行を緩やかにできます。

◆加齢性難聴悪化の原因と予防法

◎加齢性難聴が悪化する原因

加齢性難聴の原因は加齢ですが、悪化する主な原因は、騒音環境に置かれることによる音響外傷です。騒音など大きな音が出ている場所で仕事をしている人や、大音量でテレビを見たり音楽を聴いたりしている人は注意しましょう。

また、糖尿病や動脈硬化、高血圧なども、神経機能を低下させるため難聴の原因になります。そのほか、血流の悪化を招くため、飲酒・喫煙も原因になります。

◎加齢性難聴の予防法
・騒音を避ける

加齢性難聴を予防するためには、騒音の出る場所を避けることが重要です。大音量でテレビを見たり音楽を聴いたりすることも、内耳の有毛細胞を壊し、難聴の発生につながるおそれがあるため音量に注意しましょう。

・生活習慣の見直し

加齢性難聴の予防においては、健康的な生活習慣が重要です。バランスの取れた食事、適度な運動・睡眠、禁酒、禁煙などは、加齢性難聴の予防法として挙げられます。また、定期的な耳の健康チェックや聴覚検査も重要です。これらの生活を普段から心がければ、加齢性難聴の予防が期待されます。

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加齢性難聴のリスクや予防法をご紹介しました。現代の医療では根本的な治療法がないため、加齢性難聴が発生したら補聴器で聴力を補いながら悪化を防ぐという対応が必要になります。認知症の進行につながるリスクも懸念されているため、初期症状に気づいたらすぐに耳鼻咽喉科に相談しましょう。加齢性難聴についての理解を深めると同時に、その重要性を認識し、適切なケアや予防策を積極的に取り入れることが、健康な耳と認知機能の維持につながります。

無病息災!一年の健康を祈っておせち料理を食べよう(2024年1月)

お正月に食べる日本の伝統的な料理といえば、豪華なおせち料理。おせち料理はおいしいだけではなく、「今年一年、健康な毎日を送れますように」と、無病息災を祈る気持ちが込められています。一年の始まりを彩る縁起の良いおせち料理には、栄養たっぷりの食材とおいしさが凝縮されています。しかし、おせち料理に込められた意味やどんな栄養素が含まれているのか、知らずに食べている方も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、おせち料理の由来や込められている意味、食べ方の注意点などをご紹介します。

◆おせち料理とは?

「おせち」とは、季節の節目である「節(せち)」の日を指す言葉です。漢字では「御節」と書き、かつて平安時代の朝廷では正月を含む5つの節に「五節会(ごせちえ)」という儀式が行われていました。そのとき、神に供える特別な料理として「御節供(おせちく)」が調理されていたのです。

江戸時代に入り、幕府が「節句(せっく)」を公式な祝日として定め、一般庶民にも広まりました。これが後に、最も大切な正月の料理を指して「おせち」と呼ばれるようになったのです。おせち料理は正月から15日までの来客に振る舞われ、もてなしの象徴となりました。

◆おせち料理の意味と栄養

おせち料理には、無病息災や子孫繁栄、不老長寿などを願った意味と栄養が詰まっています。伝統的な料理の中でも代表的な料理と、それぞれに込められた意味、栄養素などをご紹介します。

◎黒豆

黒豆は、食物繊維やミネラルが豊富で、健康的な食材です。「黒=邪気を払う」「豆=マメに働き、達者で暮らす」という意味があり、魔除けと無病息災の願いが込められています。

◎昆布巻き

昆布巻きは、「喜ぶ」の語呂合わせや、別名「広布(ひろめ)」と呼ばれることから「広める」につながる縁起の良い料理とされています。食物繊維やミネラルが豊富に含まれており、健康な毎日の後押しをしてくれるでしょう。

◎田作り

「田作り」の名前の由来は、かつてカタクチイワシの肥料によって米が5万俵も収穫されたことにあり、「五万米」と書いて「ごまめ」とも呼ばれることもあります。小さいながらも頭と尾がそろうカタクチイワシは、縁起が良い食材として知られています。

◎栗きんとん

さつまいもと栗で作る栗きんとんは、家族の結びつきや円満な関係を象徴する縁起のいい料理です。また、黄金色をしていることから財運を運ぶとされています。ビタミンやミネラル、水溶性食物繊維も豊富に含まれています。

◎伊達巻き

伊達巻きは、その形状が掛軸や書物を連想させるとして、学業成就の願いが込められた料理です。卵の良質なタンパク質が豊富で、エネルギー源としても優れています。

◎たたきごぼう

ごぼうは深く根を張る性質があることから、家族や家業が土地にしっかりと根づいて代々続くことを祈る意味が込められています。また、ごぼうをたたくという動作も、身を開いて開運につながるといわれている縁起のいい料理です。食物繊維が豊富なたたきごぼうは、腸内環境を整え、健康な体づくりをサポートします。

◎里芋・八つ頭

里芋は、根元の親芋から派生する形で子芋、さらにその下には孫芋が続くように成長します。同じく里芋の仲間である八つ頭は、親芋と子芋が一つに結びついて成長していきます。どちらも、子孫繁栄を願う意味を込めた食材です。

◎尾頭付きの鯛

鯛は、「めでたい」の語呂合わせで古くから縁起の良い魚とされています。高たんぱく低脂肪で、血中コレステロールを下げる働きのあるタウリンも豊富です。

◎伊勢海老

伊勢海老は、長いひげと曲がった腰を老人に例えられ、長寿の象徴として縁起物とされています。高たんぱく低脂肪で豊かな旨味があり、華やかで贅沢感のある食材として重宝されます。

◆おせち料理を食べる際の注意点

おせち料理は保存がきくよう、塩分や糖分を多く使用しているため、食べすぎには注意が必要です。食べる順番を工夫すれば、糖の吸収を緩やかにし、正月太りを防ぐことができます。ここでは、おせち料理を食べるおすすめの順番をご紹介します。

1. まずは食物繊維を中心に

たたきごぼうやタケノコ、れんこん、紅白なますなど、食物繊維が豊富な食材から摂りましょう。ゆっくりよく噛んで食べれば満腹感が得られ、血糖値の上昇も穏やかになります。また、食物繊維にはコレステロールの上昇も防ぐ働きもあります。

2.タンパク質を摂る

鯛やエビ、かまぼこなどのタンパク質が豊富なおかずを摂ることで、さらに糖の吸収を抑えられるでしょう。タンパク質は、炭水化物よりも消化に時間がかかり、消化吸収されてから緩やかに糖に変わります。

3. 糖質は最後に摂る

栗きんとんや伊達巻き、黒豆などの甘味がある料理は、最後に摂るのがおすすめです。これにより、血糖値の急激な上昇を防ぎ、食べすぎも予防できます。

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日本のお正月の食卓を彩るおせち料理は、一年の健康を祈る気持ちが込められた栄養豊富な料理です。食べすぎに注意しながらバランス良く楽しむことで、新しい一年を元気に迎えられるでしょう。お正月には、料理に込められた意味や願いをかみしめながら、おせち料理を味わってみてください。

インフルエンザワクチンって効果はあるの?効果的な接種時期と注意点(2023年12月)

新型コロナウイルスの感染拡大防止処置が緩和された2022年ころから、再び流行し始めたインフルエンザ。毎年寒くなる時期に猛威を振っていたインフルエンザですが、2023年は9月から流行し始めるなど、異例の様相をみせました。そのため、インフルエンザワクチンの効果や持続時間、最適な接種時期などについて気になった方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、インフルエンザワクチンの基本的な特徴、効果的な接種時期、および注意すべきポイントについてご紹介します。

◆インフルエンザワクチンとは?

インフルエンザワクチンは、ウイルスの毒性をなくし、免疫を作るのに必要な成分だけを使用して作られている、不活性化ワクチンの一種です。感染そのものを完全に防ぐものではなく、重症化や死亡を防ぐことを目的として作られています。つまり、接種すればインフルエンザに感染しなくなる、というわけではありません。

◆インフルエンザワクチン接種に適した時期

インフルエンザワクチンを接種すると、約2週間で免疫がつきはじめ、1カ月後にはピークに達します。ワクチンの効果はその後約4カ月間続くため、インフルエンザの流行時期に合わせて接種するのが望ましいでしょう。インフルエンザの流行がピークを迎えるのは、毎年12月下旬から3月上旬であるため、12月中旬までにワクチン接種が完了しているとより高い効果が期待できます。

◆インフルエンザワクチンに関する注意点

インフルエンザワクチンを接種する際には、いくつかの重要な注意点が存在します。ワクチン接種に対する理解を深め、自身と周囲の健康を守りましょう。

・接種回数

インフルエンザワクチンの接種回数は、主に年齢によって分けられます。12歳未満の場合は、免疫がつきにくいため通常2回接種が必要です。13歳以上65歳までは、初めて接種する場合は2回接種が推奨されますが、毎年接種している方や一度かかったことがある方は1回の接種でも十分です。65歳以上の場合、通常は1回の接種で十分な免疫が得られます。2回接種する場合は、2~4週間の間隔をあけて接種してください。

・接種年齢

インフルエンザワクチンの接種は、生後半年から可能です。ただし、1歳前の赤ちゃんについては効果がまだ不確かなため、慎重に検討する必要があります。とくに幼保園、小学校などで集団行動している子どもたちに対しては、接種が望ましいとされています。

・副反応

ワクチンの接種後24時間は、副反応が発生する可能性があります。しかし、インフルエンザワクチンを接種したからといって、インフルエンザに感染しないというわけではありません。接種後24時間以内は、体調変化に十分な注意が必要です。副反応は、接種した局所の腫れや痛み、または発熱や頭痛、吐き気などの症状が現れることがあります。稀に接種直後にアナフィラキシーショックを起こすことがあるため、接種後30分程度は医療機関内で安静にしておくことをおすすめします。

・卵アレルギーがある方

インフルエンザワクチンは、卵白を使用して培養されています。そのため、卵アレルギーがある方は、アレルギー反応が出る可能性があります。ただし、人によっては必ずしもワクチンの接種が不可能というわけではありません。卵アレルギーを抱えている場合は、事前に担当医に相談することが重要です。

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インフルエンザワクチンは、感染自体を防ぐのではなく、重症化を防ぐことを目的としています。その年の予測されるウイルスに基づいて毎年ワクチンが作られるため、毎年接種が必要になるワクチンです。ピークが予測される時期に備えて、早めに予防接種を予約しておくことをおすすめします。感染拡大を防ぐため、また、感染予防のためには、手洗い・うがいやマスク着用も効果的です。自身の健康だけでなく、周囲の人々の健康も考慮しながら、積極的な予防行動を心がけましょう。

健康診断でコレステロール値が気になったら?知っておきたい対策法(2023年11月)

コレステロールは、私たちの健康に大きな影響を及ぼす物質の一つです。コレステロール値が気になる方、あるいは高いと診断された方々にとって、その役割や対策法について知っておくことは非常に重要です。この記事では、コレステロールの種類や役割について解説したうえで、コレステロール値を下げる方法や対策法をご紹介します。

◆コレステロールの種類

コレステロールは一つの単語で表されますが、実際には2つの主要なタイプがあります。それぞれ役割や健康への影響も異なるため、しっかり把握しておきましょう。

◎HDLコレステロール:

HDLコレステロールは「高密度リポプロテインコレステロール」の略で、通常「善玉コレステロール」と呼ばれます。血管の中から余分なコレステロールを回収し、肝臓に戻す働きをします。HDLコレステロールが正常に働くと、血管の詰まりを予防し、心臓疾患のリスク低減に有効です。

◎LDLコレステロール:

一方、LDLコレステロールは「低密度リポプロテインコレステロール」の略で、「悪玉コレステロール」とも呼ばれます。LDLコレステロールの主な働きは、肝臓で作られたコレステロールを全身に運ぶことです。しかし、LDLコレステロールは、過剰になると血管の内壁に沈着し、プラーク(動脈硬化)の形成を促進します。このプラークが成長すると、血管が狭くなり、血液の流れが阻害され、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めてしまうのです。

◎コレステロール値が高くなるとどうなる?

コレステロール値が高い状態、とくにLDLコレステロールが過剰に存在する場合、心臓疾患や血管疾患のリスクが高まります。これは、血管の内壁にコレステロールが蓄積してしまうことにより、動脈硬化が進行するためです。結果として、心臓への酸素供給が制約され、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を引き起こす可能性が増加します。コレステロール値の高さは、高血圧や糖尿病といった他のリスク要因と相まって、心臓疾患の危険性を増加させるため注意しましょう。

◆コレステロールの役割

コレステロールは体に悪いイメージをもたれている方も多くいますが、それぞれ体内で重要な役割を果たしており、一概に「体に悪い」とはいい切れません。

LDLコレステロールは、通常細胞内に取り込まれ、細胞膜の形成やホルモンを生み出す役割があります。

HDLコレステロールの役割は、組織に蓄積した余分なコレステロールを肝臓に戻すことです。コレステロールの代謝を調整し、体内のコレステロールバランスを保つ重要な働きを持っています。

コレステロールが不足すると、肌や髪の潤いや艶が失われたり細菌に感染しやすくなったりするおそれがあります。さらに血管の細胞が脆くなり、脳内出血などのリスクが高くなるため注意が必要です。

◆コレステロール値を下げる対策法

コレステロール値を正常な範囲に保つためには、食生活と生活習慣の見直しが必要です。以下は、コレステロール値を下げるための対策法です。

◎健康的な食事

飽和脂肪酸を制限し、トランス脂肪酸を避けることが重要です。これは、加工食品やファーストフードに多く含まれています。1日3食バランスの取れた食事を心がけ、間食や夜食は控えるようにしましょう。魚、大豆製品、野菜、果物、全粒穀物、ナッツ類、健康的な油(オリーブオイルなど)を中心とした食事がおすすめです。

◎適度な運動

週に150分以上の有酸素運動を行うのが望ましいとされていますが、まずは少しずつ習慣化していくことが大切です。運動はHDLコレステロールを増加させ、LDLコレステロールを減少させる効果が期待できます。早歩きのウォーキングやヨガなど、有酸素運動と呼ばれる運動から始めてみましょう。

◎喫煙とアルコールの制限

喫煙をやめ、アルコール摂取を適度に制限することで、コレステロール値の改善が期待できます。喫煙や過度なアルコール摂取は、動脈硬化を高める要因になるといわれています。

◎薬物療法:

高コレステロール症の治療には、医師の指導のもとでコレステロール降下薬が使われることがあります。これは、食事療法と運動だけでは効果が不十分な場合に選択されます。

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コレステロールは私たちの体にとって欠かせない物質です。HDLコレステロールとLDLコレステロールの適切な管理は、心臓疾患や血管疾患のリスクを軽減するのに効果的です。健康診断や血液検査でコレステロール値に問題がある場合は、ご紹介した方法でコレステロール値を下げる対策を行うことをおすすめします。バランスの良い食事と規則正しい生活習慣を維持し、コレステロール値を適切な範囲に保ちながら健康な毎日を送りましょう。

突然めまいに襲われたら?めまいの種類と原因、対処法について(2023年10月)

近年、突然のめまいに襲われ、医療機関を受診する人が増えているといいます。誰にでも起こるおそれがあるめまいですが、症状や原因によって種類があることはご存知でしょうか? めまいの種類によっては早期治療が必要になることもあるため、いざというときのために、原因や対処法を把握しておくことが大切です。そこで今回は、めまいの主な種類とその原因、効果的な対策法について説明します。めまいに対する知識を深め、その症状に臨機応変に対処する方法を学びましょう。

◆めまいの種類

めまいは、その症状や原因に応じて異なる種類に分類されます。ここでは、主要な3つのめまいの種類に焦点を当て、それぞれの特徴や主な症状について紹介します。

・回転性のめまい

回転性のめまいとは、まるで自分や周りの物体がぐるぐると回転しているように感じる症状です。このめまいは、主に内耳のバランス感覚に関連する異常が原因とされています。そのほかにも睡眠不足やストレス、加齢など、さまざまな原因があるため、めまいの症状だけで原因の特定はできません。

典型的な症状には、ふらつき、吐き気、嘔吐、平衡感覚の喪失が含まれます。良性発作性頭位めまい症候群(BPPV)やメニエール病など、さまざまな疾患が回転性のめまいを引き起こす原因となることもあります。

・浮動性のめまい

浮動性のめまいは、自分や周りの環境が揺れているように感じる症状が特徴です。「地に足がつかない感覚」や、「足元がフワフワする感覚」と表現されます。このめまいは、脳梗塞や脳腫瘍、脳出血などの脳の病気が原因となる場合があるため注意が必要です。ストレスによって交感神経が低下すると脳の血流が悪くなり、めまいが生じる可能性もあります。

・立ちくらみのようなめまい

立ちくらみのようなめまいは、立ち上がった瞬間や急激な体位変更時に起こることがあります。これは一時的なめまいであり、通常は一過性の問題です。主な原因は、一時的な血圧の変動や脱水症状です。症状には立ち上がった瞬間にふらつきやふらつきを感じることが含まれ、通常、数分から数十秒で自然に収まります。ただし、持続的な立ちくらみのようなめまいが繰り返し起こる場合は、病院を受診しましょう。

◆めまいを伴う病気と対処法

めまいは、さまざまな疾患や病気の症状として現れることがあるため、正確な診断と適切な対処法が重要です。以下では、めまいを伴う主な病気とそれに対する対処法について説明します。

・良性発作性頭位めまい症候群(BPPV)

良性発作性頭位めまい症候群(BPPV)は、内耳から剥がれ落ちた耳石が、三半規管に入り込むことが原因で引き起こされる病気です。主な特徴は、急激な頭部の動きや体位変化によって、めまいやふらつきが引き起こされることです。回転性のめまいが1分程度持続し、安静にしていると治まりますが、再度頭部を動かすとめまいが起こります。

通常2週間から1カ月で自然治癒しますが、対処法としては耳鼻咽喉科医が行う浮遊耳石置換法と呼ばれる特殊な体位法が一般的です。耳石が正常な位置に戻るのを助け、めまいの症状を軽減します。

・メニエール病

メニエール病は、内耳に関連した慢性的な疾患で、回転性のめまい、難聴、耳鳴りなどの症状を引き起こします。内耳にあるリンパ液が増えむくんだ病態を指しますが、むくみの原因は不明です。めまい発作は突然現れ、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。めまいも数十分から数時間続くのが特徴です。

メニエール病の対処法は、点滴や服薬などの薬物療法で一時的に回復します。しかし、繰り返し起こるため、症状の重さなどに合わせて薬物療法や食事療法で対処するのが一般的です。

・脳疾患

まれに、脳卒中、脳腫瘍、脳出血などがめまいの原因となることがあります。こうした場合、早急に神経科や脳神経外科の受診が必要です。めまい以外にも手足のしびれや脱力感、ろれつが回らないなどの症状がある場合は、脳卒中の疑いがあります。 めまいが脳疾患と関連する場合、原因となる病気に応じた治療が必要です。病院を受診後、手術や薬物療法、リハビリテーションなどが必要となる場合があります。

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めまいの種類や原因、突然のめまいに襲われたときの対処法などをご紹介しました。強いめまいが頻繁に起こる場合や症状が悪化する場合は、医師の診察を受けることが重要です。めまいを伴う病気にはストレスや加齢、更年期などさまざまな原因があり、症状の重症度や持続期間も異なります。慢性的なめまいに悩まされている場合は、早期の医師の診察と適切な治療を受けることが、病気の進行を抑える鍵となります。自己診断や自己治療は避け、専門医の指導を受けましょう。

旅行シーズンに気をつけたい「エコノミークラス症候群」とは?(2023年9月)

旅行シーズンには、飛行機に乗って国内外を旅するという方も多いでしょう。旅行に行くときは、旅先を訪れる楽しみとともに、長時間の飛行による健康リスクも念頭に置く必要があります。そのなかでも、「エコノミークラス症候群」は、知っておくべき重要な問題です。エコノミークラス症候群は、血流の滞りや血栓の形成など、深刻な健康問題を引き起こす可能性があるため注意が必要です。今回は、エコノミークラス症候群の症状や原因について解説したうえで、予防法をご紹介します。

◆エコノミークラス症候群とは?

エコノミークラス症候群(Economy Class Syndrome)は、長時間の飛行などで狭い座席に長時間座り続けることによって引き起こされる病気です。足や下腹部の血流が悪くなることで静脈のなかに血栓ができてしまう病気で、正式名称は「深部静脈血栓症」といいます。血栓が肺の血管に詰まってしまうと、急性肺血栓塞栓症を引き起こすおそれがあります。

飛行機のエコノミークラスの座席のような、狭い空間に長時間座り続けることで起こることから、エコノミークラス症候群と呼ばれるようになりました。とくに、4時間以上の長時間フライトになる場合は注意しましょう。

「旅行者の血栓症」と称されることもありますが、エコノミークラス以外でも発症する可能性はあります。飛行機で発祥するケースが一般的ですが、車や電車、デスクワークなど、長時間同じ姿勢で座り続けるときは注意が必要です。

◆エコノミークラス症候群の具体的な症状

エコノミークラス症候群の初期症状として、足のむくみ、痛み、赤み、熱感などがあります。これらの症状は、静脈の血流が滞っていることによるものであり、もっとも深刻な合併症としては、肺血栓症が挙げられます。血栓が肺に移動して血管を詰まらせ、呼吸困難や胸痛を引き起こし、最悪の場合は死に至ることもある恐ろしい病気です。旅行中、または旅行後に、これらの症状が現れた場合は、早急に医師の診察を受けましょう。

◆エコノミークラス症候群の原因

エコノミークラス症候群の主な原因は、長時間同じ体勢のまま座りっぱなしになり血流が滞ることです。エコノミークラスの座席は、足を伸ばすスペースが限られているため血液の循環が悪化しやすくなります。さらに、飛行機内は空気が乾燥しているため、血液がドロドロになりやすい環境といえます。血液がドロドロだと、血栓ができやすくなるためエコノミークラス症候群が発症しやすくなってしまうのです。

また、エコノミークラス症候群になりやすい人の特徴として、肥満の方や生活習慣病がある方、下肢静脈瘤がある方、妊娠中または出産直後の方などが挙げられます。心配される場合は、事前に医師に相談したうえで予防法を試してみてください。

◆エコノミークラス症候群の予防法

エコノミークラス症候群を予防するためには、以下のポイントに注意することが重要です。

・適度な運動

長時間同じ体勢でいることを避けるために、フライト中に座席を立ち上がり、通路を歩いたり足首を回したりしましょう。また、座席でできる足のエクササイズやストレッチも有効です。

寝ているときに体が冷えすぎると、体調不良を招くほか、眠りが浅くなってしまう可能性があります。また、血行不良が引き起こされることにより、寝起きの体が重くだるく感じることもあります。エアコンの風が体に直接当たらないように、風向きを床と平行にしておくのがおすすめです。

・圧迫ストッキングの着用

専用の圧迫ストッキングは、足の血液循環をサポートし、血栓形成のリスクを軽減します。飛行中に着用することで、血流改善に役立ちます。

・十分な水分摂取

飛行中は十分な水分を摂ることが大切です。水分不足が血液のドロドロ化を引き起こす可能性があるため、定期的に水分補給しましょう。ただし、アルコール類は利尿作用があり、脱水を起こしやすくなるため注意が必要です。

・座席の変更

予約時に通路側の座席を選ぶことで、座席を立ち上がる回数が増えて血流が改善されます。また、座席の傾斜や位置を変えることも血液の滞りを防ぐ助けになるためおすすめです。

・適切な服装

窮屈な服装やタイトな靴は血液の循環を妨げることがあります。ゆったりとした服装と、足先に余裕のある靴を選ぶよう心がけましょう。

・栄養バランスのとれた食事

飛行中の食事は、塩分摂取が増える傾向があります。塩分を控えめにし、フルーツや野菜を含むバランスのとれた食事を選ぶことで、血液の循環を促進できます。

エコノミークラス症候群は、長時間の飛行に伴うリスクとして注意が必要です。適切な予防策を講じることで、安全かつ快適に旅行を楽しむことができます。長時間の座り姿勢に不安のある方は、旅行前に医師のアドバイスを受けることもおすすめです。健康的で快適な旅行のために、エコノミークラス症候群の予防法をぜひ試してみてください。旅行の思い出を心地よいものにするために、健康を第一に考えた行動を心がけましょう。