お正月に食べる日本の伝統的な料理といえば、豪華なおせち料理。おせち料理はおいしいだけではなく、「今年一年、健康な毎日を送れますように」と、無病息災を祈る気持ちが込められています。一年の始まりを彩る縁起の良いおせち料理には、栄養たっぷりの食材とおいしさが凝縮されています。しかし、おせち料理に込められた意味やどんな栄養素が含まれているのか、知らずに食べている方も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、おせち料理の由来や込められている意味、食べ方の注意点などをご紹介します。
◆おせち料理とは?
「おせち」とは、季節の節目である「節(せち)」の日を指す言葉です。漢字では「御節」と書き、かつて平安時代の朝廷では正月を含む5つの節に「五節会(ごせちえ)」という儀式が行われていました。そのとき、神に供える特別な料理として「御節供(おせちく)」が調理されていたのです。
江戸時代に入り、幕府が「節句(せっく)」を公式な祝日として定め、一般庶民にも広まりました。これが後に、最も大切な正月の料理を指して「おせち」と呼ばれるようになったのです。おせち料理は正月から15日までの来客に振る舞われ、もてなしの象徴となりました。
◆おせち料理の意味と栄養
おせち料理には、無病息災や子孫繁栄、不老長寿などを願った意味と栄養が詰まっています。伝統的な料理の中でも代表的な料理と、それぞれに込められた意味、栄養素などをご紹介します。
◎黒豆
黒豆は、食物繊維やミネラルが豊富で、健康的な食材です。「黒=邪気を払う」「豆=マメに働き、達者で暮らす」という意味があり、魔除けと無病息災の願いが込められています。
◎昆布巻き
昆布巻きは、「喜ぶ」の語呂合わせや、別名「広布(ひろめ)」と呼ばれることから「広める」につながる縁起の良い料理とされています。食物繊維やミネラルが豊富に含まれており、健康な毎日の後押しをしてくれるでしょう。
◎田作り
「田作り」の名前の由来は、かつてカタクチイワシの肥料によって米が5万俵も収穫されたことにあり、「五万米」と書いて「ごまめ」とも呼ばれることもあります。小さいながらも頭と尾がそろうカタクチイワシは、縁起が良い食材として知られています。
◎栗きんとん
さつまいもと栗で作る栗きんとんは、家族の結びつきや円満な関係を象徴する縁起のいい料理です。また、黄金色をしていることから財運を運ぶとされています。ビタミンやミネラル、水溶性食物繊維も豊富に含まれています。
◎伊達巻き
伊達巻きは、その形状が掛軸や書物を連想させるとして、学業成就の願いが込められた料理です。卵の良質なタンパク質が豊富で、エネルギー源としても優れています。
◎たたきごぼう
ごぼうは深く根を張る性質があることから、家族や家業が土地にしっかりと根づいて代々続くことを祈る意味が込められています。また、ごぼうをたたくという動作も、身を開いて開運につながるといわれている縁起のいい料理です。食物繊維が豊富なたたきごぼうは、腸内環境を整え、健康な体づくりをサポートします。
◎里芋・八つ頭
里芋は、根元の親芋から派生する形で子芋、さらにその下には孫芋が続くように成長します。同じく里芋の仲間である八つ頭は、親芋と子芋が一つに結びついて成長していきます。どちらも、子孫繁栄を願う意味を込めた食材です。
◎尾頭付きの鯛
鯛は、「めでたい」の語呂合わせで古くから縁起の良い魚とされています。高たんぱく低脂肪で、血中コレステロールを下げる働きのあるタウリンも豊富です。
◎伊勢海老
伊勢海老は、長いひげと曲がった腰を老人に例えられ、長寿の象徴として縁起物とされています。高たんぱく低脂肪で豊かな旨味があり、華やかで贅沢感のある食材として重宝されます。
◆おせち料理を食べる際の注意点
おせち料理は保存がきくよう、塩分や糖分を多く使用しているため、食べすぎには注意が必要です。食べる順番を工夫すれば、糖の吸収を緩やかにし、正月太りを防ぐことができます。ここでは、おせち料理を食べるおすすめの順番をご紹介します。
1. まずは食物繊維を中心に
たたきごぼうやタケノコ、れんこん、紅白なますなど、食物繊維が豊富な食材から摂りましょう。ゆっくりよく噛んで食べれば満腹感が得られ、血糖値の上昇も穏やかになります。また、食物繊維にはコレステロールの上昇も防ぐ働きもあります。
2.タンパク質を摂る
鯛やエビ、かまぼこなどのタンパク質が豊富なおかずを摂ることで、さらに糖の吸収を抑えられるでしょう。タンパク質は、炭水化物よりも消化に時間がかかり、消化吸収されてから緩やかに糖に変わります。
3. 糖質は最後に摂る
栗きんとんや伊達巻き、黒豆などの甘味がある料理は、最後に摂るのがおすすめです。これにより、血糖値の急激な上昇を防ぎ、食べすぎも予防できます。
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日本のお正月の食卓を彩るおせち料理は、一年の健康を祈る気持ちが込められた栄養豊富な料理です。食べすぎに注意しながらバランス良く楽しむことで、新しい一年を元気に迎えられるでしょう。お正月には、料理に込められた意味や願いをかみしめながら、おせち料理を味わってみてください。