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冬の子どもの肌トラブルに要注意!なめまわし皮膚炎とは?(2023年1月)

「なめまわし皮膚炎」とは、冬の乾燥する時期、幼児を中心に多くみられる皮膚病の一つです。「舌なめずり皮膚炎」「口なめ病」「なめかん」と呼ばれることも。口の周囲に赤みや腫れ、ただれなどの症状が現れ、ヒリヒリとした痛みがあります。唇が妙に赤かったり、口の周りの舌の届く範囲に赤い輪がみられたりする場合は、なめまわし皮膚炎の可能性があります。今回は、なめまわし皮膚炎の原因や予防法をご紹介します。

 

◆なめまわし皮膚炎の原因

なめまわし皮膚炎は、とりわけ空気が乾燥しがちな冬の子どもに多くみられる症状です。乾燥によってカサカサになった唇を、舌でなめてうるおそうとして何度も繰り返すことで起こります。唇の乾燥と、舌でなめるという物理的刺激が加えられることで口周辺の皮膚が荒れてしまうのです。皮膚の乾燥が大元の原因となるため、乾燥する時期やアトピー性皮膚炎をお持ちの方はとくに注意しましょう。

 

唇をなめた瞬間はうるおって感じるかもしれませんが、唇の水分が蒸発しやすくなり、かえって乾燥が進んでしまいます。乾燥して荒れた唇をなめる、という行為を繰り返すことで、唇とその周辺の肌が傷ついて炎症してしまうのです。

 

◆冬に唇が乾燥しやすいのはなぜ?

人間の皮膚は、水分の蒸発を防ぐために皮脂膜で覆われて保護されています。皮脂膜は汗腺と皮脂腺からそれぞれ分泌される、汗と皮脂が混ざり合ってできたものです。気温が低いと血行が悪くなり、皮脂や汗の分泌も減少します。皮脂膜が減少する冬は、肌のバリア機能も低下してしまう時期なのです。

 

ただでさえ肌トラブルに注意が必要な時期なのに加え、唇には皮脂腺がありません。暖房器具などの使用でさらに空気が乾燥しやすいため、唇は荒れやすくなってしまいます。

 

◆なめまわし皮膚炎の予防法と対処法

子どものなめまわし皮膚炎の予防法は、大元の原因である「唇の乾燥」を避けることが大切です。ここでは、なめまわし皮膚炎の予防法と対処法をご紹介します。

 

・なめまわし皮膚炎の予防法

空気が乾燥しがちな冬は、水分を意識的に多めに摂るように心がけましょう。冬場は汗をあまりかかないため、水分を失っている自覚が少ないことから、水分摂取量が減ってしまいがちです。子どもには、体を冷やさないように、少し冷ました白湯をこまめに飲ませるようにしましょう。

 

また、なめる行為自体を予防するために、口の周りに食べ物や飲み物、歯磨き粉などがついたままにしておかないことも大切です。清潔を保ち、ワセリンやリップクリームでしっかり保湿し、肌を保護しましょう。

 

・なめまわし皮膚炎の対処法

なめまわし皮膚炎は、一般的には保湿剤の塗布を繰り返して治療します。ただれがひどい場合は、弱めのステロイド外用薬を使用するケースもあります。さらに日中は、紙マスクを着用することで口周りの湿度が高くなるため、なめまわし行為の軽減に効果的です。子どもはリップクリームなどを塗ってもすぐになめてしまうことも多いため、入眠後や覚醒前に塗るのがおすすめです。

 

口の周りに炎症などの症状がみられても、必ずしもなめまわし皮膚炎であるとは限りません。激しい痛みを訴える場合やただれがひどい場合などは、皮膚科の受診をおすすめします。

 

冬の子どもに多くみられる「なめまわし皮膚炎」の原因や予防法などをご紹介しました。子どものなめまわし皮膚炎は、指しゃぶりや爪噛みのように子どもの習慣が原因の疾患です。やめさせようと叱ったり注意したりしても、ほとんど効果がなく、かえって悪化させてしまうこともあるといいます。なかなか改善しないときは皮膚科を受診しましょう。

 

コーヒーの飲みすぎは危険?健康的にコーヒーを楽しむための目安量(2022年12月)

朝、起き抜けに飲んだり、甘いお菓子とのペアリングを楽しんだり、毎日コーヒーを飲む習慣があるという方は多いのではないでしょうか。アフリカ大陸で発見されてから、栽培方法やコーヒー文化が世界中に広まり、現在では多くの人に愛飲されています。しかし、コーヒーはカフェインを多く含むため、「飲みすぎは体に悪い」と考える方も多いでしょう。そこで今回は、コーヒーの過剰摂取が体に悪いといわれる理由や、コーヒーを飲むことで得られるメリット、1日の目安量などをご紹介します。

 

◆コーヒーの飲みすぎは危険って本当?

コーヒーはカフェインが含まれているため、体に悪いというイメージを持たれている方も多いのではないでしょうか。まずは、カフェインの摂りすぎが原因で引き起こされるおそれのある症状をご紹介します。

 

・不眠

カフェインには眠気覚ましの効果があることで知られていますが、これはカフェインに覚醒効果があるためです。人は、脳内で「アデノシン」という物質が「アデノシン受容体」と結合することで眠気を感じます。コーヒーを飲むと、カフェインがアデノシンの働きを邪魔するため、眠気を感じにくいといわれています。

 

しかし、カフェインを過剰に摂取すると心拍数の増加やめまい、不安、震えなどの症状が出ることもあるため摂りすぎには注意が必要です。興奮状態が続いて眠れなくなるなど、眠りに悪影響を及ぼすおそれがあります。

 

・消化器系への悪影響

コーヒーを飲むと、胃のむかつきや吐き気などの症状が出る場合もあります。カフェインの摂りすぎで興奮状態になると、消化器官に悪影響が及ぶことがあるためです。下痢や嘔吐などの症状が出る場合もあるため、胃腸の調子が悪いときなどは、コーヒーは避けるのが無難です。

 

・胎児への悪影響

カフェインの胎児への影響はまだ確定していませんが、自然流産や胎児発育遅延などが懸念されることから、過剰摂取は控えたほうが好ましいと考えられています。妊娠中や授乳中などはコーヒーの摂取を控えることが推奨されています。肝機能などが未熟な赤ちゃんは、成人よりもカフェインの影響を受けやすいとされているのです。

 

◆コーヒーを飲むことで得られるメリット

コーヒーには、「クロロゲン酸」というポリフェノールが赤ワインに匹敵する量で含まれています。ポリフェノールは抗酸化作用があるため、体内の活性酸素を追い出し、若々しい体を保つのに効果的です。活性酸素が原因で引き起こされる生活習慣病の予防にも効果があるとされ、研究が進められています。

 

また、コーヒーのいい香りにはリラックス効果があります。コーヒーの香りで気分が落ち着いたり、幸せな気持ちになったりする人も多いのではないでしょうか。忙しいときや疲れているときなど、コーヒーを淹れて一息ついてみるのもおすすめです。

 

◆1日あたりの適切なコーヒーの摂取量

カフェインの適切な摂取量に関しては個人差があるとされているため、国や地域によって異なります。日本をはじめ、海外でも具体的な数値などは定められていません。

 

胎児への影響が懸念されている妊娠中・授乳中の方に対しては、各国で摂取量の目安が定められています。WHOを例に挙げると、「妊婦はコーヒーの摂取量を1日に3~4杯までにすべき」としています。

 

粉末10g熱湯150mlで抽出した場合、コーヒー100mlあたりのカフェイン量は60mg。インスタントコーヒー2gを熱湯140mlで溶かした場合は、57mgが目安です。

 

【出典】食品安全委員会 ファクトシート「食品中のカフェイン」

 

近年、カフェインを多く含むエナジードリンクの過剰摂取が原因の急性中毒が相次いでいます。なかには心肺停止や死亡に至る例もあり、カフェインの大量摂取による健康被害について注意が呼びかけられています。心停止に至ったケースでは、いずれもカフェインを6g以上摂取していたというデータもあるため、摂取量の目安にしてみてください。

 

コーヒーは過剰摂取による危険性も懸念されていますが、さまざまなメリットも期待できます。適量を守りながら、健康的に毎日のコーヒータイムを楽しみましょう。

 

 

寝違えの原因って何?正しい対処法と予防法で悪化を防ごう!(2022年11月)

朝起きたときに、首に強い痛みを感じて動かせなかったり回せなかったりした経験がある方も多いのではないでしょうか。このような症状は、一般的に「寝違え」と呼ばれています。寝違えは、本格的な体調不良とはいい切れないまでも、肩や首の痛みで動きが著しく制限されてしまいます。通常、時間の経過とともに改善していきますが、一日中不快で気になってしまうためできるだけ早く改善したいもの。今回は、多くの人を悩ませている小さな不調の一つ、「寝違え」の正しい対処法と予防法をご紹介します。

◆寝違えの症状と原因について

「寝違え」は、医学用語でいうと「急性疼痛性頚部拘縮(きゅうせいとうつうせいけいぶこうしゅく)」と呼ばれます。肩や首周りのじん帯や筋肉に、急性の炎症が起きることで首や肩に痛みが生じる状態です。まずは、寝違えの症状と、原因についてご紹介します。

・寝違えの症状

寝違えは、検査などで判断できるほどの変化が現れないのが一般的です。そのため、寝違えかどうかは自己判断になります。主な症状は、首の後ろや肩にかけての筋肉痛のような痛みです。じん帯や筋肉が炎症を起こしているため、首を曲げることや回すことが困難になったり、起き上がれなくなったりすることがあります。まれに、手の痺れや肩こりを伴う場合もあります。

・寝違えの原因

寝違えは、検査しても骨に異常がみられるわけではないため、明確な原因を特定することはできません。しかし、寝違えの主な原因は、睡眠中の不自然な姿勢とされています。睡眠中は筋肉が緩んだ状態になるため、不自然な姿勢が長時間続くと筋肉や腱が伸びたり頸椎や背骨に負担がかかったりします。その結果、神経の傷みや血行不良が起こり、寝違えを発症してしまうのです。枕やベッドなど、体に合わない寝具を使用していると寝違えを起こしやすいため注意しましょう。

ほかにも、普段しない運動をしたときや重いものを持ちすぎたときなど、一部の筋肉が痙攣していると寝違えが起こりやすくなります。

◆寝違えてしまったときの対処法

寝違えてしまったときは、無理に痛い方向に動かそうとせず安静にしましょう。炎症が悪化し、かえって痛みが増してしまう可能性があります。強い痛みや熱感のある腫れを伴う炎症を起こしている場合は、冷やすことで痛みを和らげることが可能です。冷湿布や氷嚢を患部にあて、痛みや腫れが治まるまで冷やしましょう。

腫れや痛みが落ち着いたら冷やすのをやめて、首や肩の筋肉の緊張をほぐすために温めるのがおすすめです。痛みを感じない程度のストレッチが有効な場合もありますが、痛みを我慢して行うストレッチは、かえって症状を悪化させてしまう可能性があるため注意しましょう。

寝違えは、基本的に安静にしていれば数時間から数日で治りますが、あまりにも痛みが強い場合や早く治したい場合などは、整形外科を受診してください。

◆寝違えを予防しよう!

寝違えの主な原因は寝ているときの不自然な姿勢であるため、正しい姿勢で寝ることを心がけたり、就寝環境を整えたりすることで寝違えを予防できます。

腰が沈みすぎるベッドや寝返りしにくい高さの枕などは、使用を見直しましょう。自然な寝返りができる寝具を使用することで、筋肉や背骨への負担が軽減されるため、不自然な姿勢の予防に効果的です。

また、筋肉が緊張やコリで硬くなっていると寝違えやすくなります。しっかり湯船に浸かって体を温めたり、寝る前に軽いストレッチをしたりして筋肉をほぐしておきましょう。

寝違えてしまったときの対処法や予防法についてご紹介しました。寝違えの主な原因は、寝ているときの姿勢にあります。不自然な姿勢になってしまわないよう、寝具や就寝環境を見直しましょう。寝違えは、基本的には安静にしていれば改善する症状ですが、強い痛みや腫れなどの症状がある場合は、ご紹介した対処法を試してみてください。

ロカボを意識した食事で食後高血糖を予防し、体質改善を目指そう(2022年10月)

三大栄養素の一つである炭水化物に含まれる糖質は、血糖値をあげる要因になっています。食後に血糖値が急上昇すると、インスリンが大量に分泌され、習慣化すると肥満や生活習慣病を引き起こすおそれがあります。「ロカボ」とは、緩やかな糖質制限食のことです。テレビや広告で目にする機会も増えてきていますが、具体的にどのような食事を指すのか、ご存じない方も多いのではないでしょうか。今回は、肥満や生活習慣病予防に効果的な「ロカボ」の基本的な基準と考え方、正しい実践方法などをご紹介します。

 

◆ロカボに関する基礎知識

「ロカボ」とは、一般社団法人食・楽・健康協会の登録商標です。食後の血糖値の上昇は、肥満をはじめとした生活習慣病につながるおそれがあります。まずは、ロカボの基本的な基準や考え方など、基礎知識からご紹介します。

 

・ロカボとは?

ロカボとは、緩やかな糖質制限を意味する言葉で、語源は「Low Carbohydrate(ロー カーボハイドレート)」です。Carbohydrateは、ご飯やパン、麺類などに含まれる炭水化物のことを指します。ロカボは完全に糖質の摂取を禁止するのではなく、適正な糖質を心がけることを推奨しています。

 

血糖値が上昇すると分泌されるインスリンは、肥満と大きく関わりのあるホルモンです。ロカボは、血糖値の急上昇を抑えることでインスリンの分泌量を減少させ、脂肪の生成を抑えることを目標としています。「健康を目的とした食事法は、おいしく楽しく続けられるものでなくてはならない」という考えを基に、無理なく日常生活に取り入れられる工夫がされています。食事制限の経験がない方や、食事制限に抵抗のある方でも始めやすい体質改善方法といえるでしょう。

 

・ロカボの基準

ロカボは、糖質制限と違って糖質を極限まで減らすのではなく、工夫して糖質を抑える方法です。具体的には、糖質の量を1食あたり20~40g、間食を10g以下にして、1日の糖質量を70~130g以内に抑えることを目指します。

 

ロカボを意識した食事では、ご飯やパン、麺類などの炭水化物の摂取量を減らし、その分肉や魚、野菜、豆類などのタンパク質を多く摂取します。これまで、ダイエット目的のカロリー制限といえば、食事の量を極端に減らしたり、間食を禁止したりする方法が一般的でした。しかし、この方法では継続するのは難しいといえます。ロカボは、おいしく楽しく続けられることを基準に、無理なく日常生活に取り入れられる方法です。糖質の量にさえ気をつければ、カロリー・脂質・タンパク質に制限はないため、お腹いっぱい食べても問題ありません。

 

◆ロカボの正しい実践方法

ロカボを生活に取り入れるなら、食品に含まれる糖質量をある程度知っておく必要があります。1食あたり40gまでなら糖質を摂っても問題ないため、炭水化物がまったく食べられないわけではありません。過激な糖質制限は低血糖症を引き起こすおそれもあるため、1日の糖質量70~130gは必ず摂取するよう心がけてください。

 

また、糖質以外は制限がないとはいえ、過度のカロリー摂取は禁物です。茹でる・蒸すなどの調理法を中心に、栄養のバランスを考えながら1日3食は必ず食べるようにしましょう。糖質制限に体が慣れず、まれに下痢や吐き気などの症状が出てしまう場合があります。急に糖質摂取量を減らすのではなく、1~2週間かけて徐々に減らしていく方法がおすすめです。

 

ロカボ食を続けることによって体質改善の効果が感じられるのは、2週間後以降といわれています。体重や体脂肪率が目標に達しても、すぐに普通食に戻すのではなく、続けることがポイントです。これまで制限していた分、歯止めがきかなくなって暴飲暴食につながるおそれもあるため注意しましょう。普通食に戻すときは、徐々に戻して体を糖質に慣れさせていくことが大切です。

 

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おいしく楽しく続けられる体質改善法、ロカボについてご紹介しました。肥満をはじめとする生活習慣病の要因は、糖質の過剰摂取ともいわれています。ロカボを意識した食生活にすることで、体質改善や生活習慣病の予防効果が期待できます。中長期的に継続できるよう、無理のない範囲で取り入れてみてください。

 

 

血管年齢とは?動脈硬化を防ぐために血管を健やかに保とう(2022年9月)

日本では、約4人に1人が血管の病気で亡くなっているといいます。日本人の死因で上位を占める脳卒中や心筋梗塞は、実は脳や心臓の病気ではなく、血管の病気であることはご存知でしょうか。血管年齢とは、その名の通り血管の老化具合を表したものですが、近年は実年齢以上に血管の老化が進んでいる人が増えているといいます。今回は、血管の老化が進んでしまう原因や、血管年齢を健やかに保つポイントなどをご紹介します。

◆血管年齢についての基礎知識

「人は血管とともに年を取る」といわれているように、血管は加齢とともに老化します。しかし、血管年齢と実年齢が同じとは限りません。ここでは、血管年齢の基礎知識をご紹介します。

・血管年齢とは?

血管は、老化が進むと血管の壁が硬くなったり狭くなったりします。いわゆる「動脈硬化」と呼ばれる老化現象のことで、進行すると血流が悪くなり、さまざまな病気を引き起こす原因になります。血管年齢とは、動脈硬化の進み具合を表す言葉です。

動脈硬化は、加齢以外にも食生活や生活習慣などが原因で進行してしまいます。実年齢以上に血管年齢が高い人は、血管の病気のリスクも高い状態といえるでしょう。しかし血管年齢は、生活習慣を改善すれば健やかに保つことができるといわれています。

・血管年齢があがることで生じるおそれのあるリスク

血管年齢が高くなると血流が悪くなるため、冷えや腰痛、肩こり、肌荒れなどの不調が現れます。進行が進めば、脳・心筋梗塞や深部静脈血栓症など、血管の病気のリスクも高くなってしまうため注意が必要です。

動脈硬化は、症状の悪化に気づきにくいことから、「サイレント・キラー(静かな殺し屋)」と呼ばれることもあります。知らず知らずのうちに動脈硬化が進み、ある日突然重大な病気を引き起こすことも珍しくありません。

◆血管年齢があがる要因

血管年齢は加齢にともない高まりますが、血管年齢は生活習慣と密接に関係しています。高脂血症(脂質異常症)や高血圧、不整脈などの生活習慣病は、動脈硬化を加速させてしまいます。そのため、生活習慣病の要因となる、食生活の乱れや運動不足、睡眠不足、ストレス、喫煙などの習慣は、血管年齢があがる要因であるといえるでしょう。

◆血管年齢を健やかに保つ生活習慣

動脈硬化の進行を防ぐために、血管年齢を健やかに保つ生活習慣を取り入れましょう。もっとも効果的な方法は、食生活の改善です。

・バランスの良い食事と減塩を心がける

偏りの少ない野菜中心の食事を心がけましょう。脂質や糖質の摂りすぎは、血管の細胞を傷つけたり血液の流れを妨げたりするおそれがあります。肉だけでなく、動脈硬化の予防に効果的なEPAやDHAが豊富な青魚も積極的に摂りましょう。

高血圧を予防するために、減塩に気を遣うことも大切です。体内の塩分を排出させる働きをもつ、カリウムを多く含む大豆や海藻は、意識的に食事に取り入れましょう。

・血管を強くするために運動習慣を作る

有酸素運動には、血行促進効果があります。有酸素運動やストレッチで血管に適度な刺激を与えることで、血管が強くしなやかになります。過度な運動でなく、無理なく続けることが大切です。駅まで歩いてみたり、エスカレーターでなく階段を使用したり、生活のなかにできる範囲で運動を取り入れてみましょう。

・生活習慣を見直す

睡眠不足や喫煙などの生活習慣も、血管年齢をあがる原因になります。日ごろからできるだけ早寝早起きを心がけ、自律神経のバランスを整えましょう。喫煙の習慣がある人は、自身の健康のためにも周囲の人への悪影響を避けるためにも、禁煙を検討してみてください。

血管年齢は年齢とともに高くなりますが、食生活の乱れや運動不足などで老化が進むといわれます。一方で、生活習慣の改善で血管を健やかに保つことができます。さまざまな病気の原因となる動脈硬化の進行を防ぐためにも、血管年齢を意識しながら生活習慣を見直してみましょう。

便秘になりやすい人となりにくい人の違いとは?便秘体質になる習慣と対策(2022年8月)

 

腹痛や肌荒れ、食欲不振など、体にさまざまな悪影響を及ぼす「便秘」。便秘とは、3日以上排便がない状態、または毎日排便はあるものの残便感がある状態を指します。便秘体質が解消されず、慢性的に便秘に悩まされている方も少なくないといいます。では、毎日同じ食事を摂っている家族でも、便秘になりやすい人と便秘になりにくい人がいるのはなぜでしょうか。便秘になりやすい人は、知らず知らずのうちに便秘になりやすい生活習慣を送っているかもしれません。今回は、便秘になりやすい人の特徴を解説したうえで、便秘解消のための対策をご紹介します。

 

◆便秘になりやすい人の特徴

便秘になりやすい人は、便秘になりやすい生活習慣を送っている可能性があります。ここでは、便秘になりやすい人の特徴をご紹介します。便秘にお悩みの方は、当てはまる項目がないか確認してみましょう。

・水分が不足している人

便は、水が主成分です。水分摂取量が少なければ生成されにくくなるため、便秘の原因になってしまいます。発汗により体内水分量が減る場合も同様です。普段からあまり水分を摂らない人や、汗をかいても水分を摂らない人は便秘になりやすいといえるでしょう。

 

・食物繊維が不足しがちな人

食物繊維は、小腸で消化吸収されず大腸まで達するため、整腸効果や便通を整える効果が期待できる食品成分です。食物繊維の摂取量が少ないと便の量が少なくなるため、便秘につながるおそれがあります。食事の栄養バランスが偏っていたり食事の量が少なかったりする人は、食物繊維不足が原因で便秘になりやすくなっている可能性があります。

 

・運動不足の人

普段何気なく排便しているつもりでも、実は排便にもそれ相応の筋力を使っています。運動不足で腸から便を排出する力が弱まり、便秘につながるケースもあるのです。普段運動したり歩いたりする機会が少なく、腸腰筋や腹筋が弱まっている人は、便秘になりやすいといえるでしょう。また、加齢によって筋力が衰えたことにより便秘になってしまうこともあります。

 

・ストレスを抱えている人

ストレスによって自律神経が乱れると、腸の働きが低下してしまうため便秘になりやすくなります。仕事などで忙しく、日常的にストレスを抱えている人は、便秘になりやすいといえます。また、不規則な生活や寝不足など、自律神経のバランスが崩れてしまう生活習慣を送っている人も同様に注意が必要です。

 

◆便秘解消のための対策

便秘の原因は人それぞれですが、生活習慣の見直しが便秘解消の近道です。ここでは、便秘解消のためにすぐに始められる対策をご紹介します。

 

・生活リズムを一定に保つ

便秘解消のために、まずは自分の排便リズムを作りましょう。睡眠時間をしっかり確保し、できるだけ1日3食決まった時間に食事を摂ることが大切です。生活リズムを一定に保つことで腸が正常に機能し、毎日決まった時間に便意を感じられるようになるでしょう。

 

・食事を見直す

毎日の食事を見直し、乳酸菌や食物繊維など、整腸作用のある食材を取り入れましょう。乳酸菌や食物繊維は、適度な水分を含み、腸の通過もスムーズな理想的な便を作ってくれます。また、便の主成分である水分をしっかり摂取することも大切です。

 

・運動不足を解消する

腸に集まった便をしっかり排出できるよう、適度に運動を取り入れましょう。激しい運動ではなく、毎日のウォーキングや軽い腹筋運動などでも十分効果が期待できます。通勤時に1駅分を歩いてみたり、お風呂上りにストレッチやマッサージをしたり、意識的に運動を取り入れてみてください。

 

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便秘になりやすい人の特徴や、便秘解消のための対策法をご紹介しました。便秘になりやすい人は、便秘の原因となる生活習慣がある可能性が高いといえます。便秘に悩まされている人は、ご紹介した便秘解消のための対策を、意識的に日常に取り入れてみてください。

 

怒りが健康に与える影響とは?アンガーマネジメントを身につけよう!(2022年7月)

思い通りにいかないことがあったときや身勝手な人に振り回されたときなど、イライラして怒鳴ったり周りに当たったりしてしまうこともあるでしょう。怒ることに対してネガティブなイメージを持たれている方も多いかもしれませんが、怒りの感情そのものは決して悪いものではありません。しかし、怒りやイライラなどのストレスは、健康に悪影響を及ぼすとされています。怒りやストレスはなくすことはできませんが、だからこそうまく付き合っていくことが大切です。そこで今回は、怒りが健康に与える影響や、怒りを管理する「アンガーマネジメント」を身につける方法などをご紹介します。

◆怒りが健康に与える影響

「怒ると血圧が上がる」と耳にしたことがあるのではないでしょうか。血圧とは、心臓から送り出された血液が血管内部にかける圧力のことです。心臓は脳の命令ではなく自律神経の働きで動いており、怒りを感じると自律神経が乱れるといわれています。

 

自律神経には交感神経と副交感神経の2種類がありますが、怒りやイライラなどの心的ストレスは交感神経の活動を活発にさせます。交感神経は、心臓の鼓動を早めたり血管を収縮させたりする働きがあるため、怒ると血圧が上がるといわれているのです。ストレスや高血圧は、健康にさまざまな悪影響を及ぼします。

◆アンガーマネジメントとは?

アンガーマネジメントとは、怒りの感情とうまく付き合いコントロールするための手法です。誤解されることもありますが、アンガーマネジメントは怒らないことを目標とするものではありません。怒りの感情とうまく付き合い、発生した怒りをうまく扱いながら適切な対応をすることを目標とするものです。身につけることでさまざまな効果が期待できるとして、家庭や職場はもちろん、スポーツ界などでも注目されています。

◆アンガーマネジメントを身につける方法

アンガーマネジメントを身につけるためには、自分の意識から変えていく必要があります。ここでは、すぐに実践できる怒りをコントロールするテクニックをご紹介します。

 

・ストップシンキング(思考停止)

怒りを感じたときに、まず思考を停止させる方法です。怒りの感情を態度・行動に移す前に、思考を強制的に断ち切りましょう。怒りが継続する時間は6秒間といわれているため、何も考えずにピークが過ぎるのを待つことで怒りが増幅してしまうのを防げます。

 

・スケールテクニック(怒りの数値化)

怒りの度合いを客観的に見て、10段階評価やパーセンテージなどで数値化する方法です。数値化を癖づければ、「今日は○%だから先日ほどではない」と気づけることもあるでしょう。

 

・グラウンディング(意識をそらす)

怒りを感じたら、怒りの対象となるものから意識をそらし、まったく関係のないものに注意を向ける方法です。たとえば空を見上げてみたり、時計の秒針を目で追ってみたり、別のものに集中してみましょう。怒りの感情から意識をそらすことで、距離を置いて冷静に考えることができます。

 

・コーピングマントラ(心が落ち着く言葉を唱える)

心が落ち着く言葉を心の中で唱え、怒りが収まるのを待つ方法です。「大丈夫」「問題ない」など、気持ちを落ち着かせる言葉を自分自身に投げかけることで、冷静に対処できることがあります。好きな人やペットの名前など、心が落ち着く言葉であればなんでも構いません。

 

・タイムアウト(仕切り直す)

上記のテクニックを試しても怒りが抑えられない場合は、一旦その場から離れ、仕切り直しましょう。休憩を挟んだり後日改めて話し合いの場を設けたりすることで、冷静に怒りの原因と向き合うことができます。どうしても怒りが収まらないときは、無理に抑え込まず、時間をしっかり置いてみてください。

 

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怒りの感情が健康に与える影響や、怒りを管理するアンガーマネジメントのテクニックなどをご紹介しました。怒りの感情は、避けることができない自然な感情の一つです。怒りに振り回され、心や体に悪影響が及ぶのを防ぐためには、怒りの感情とうまく付き合っていくことが大切です。体のためにも、心穏やかに過ごせるようアンガーマネジメントを身につけてみてください。

 

 

冷房病とは?夏場に冷房と上手に付き合うための対策法を紹介(2022年6月)

気温が高くなる夏場は、熱中症の予防として冷房(エアコン)の使用が推奨されています。暑い時期でも涼しく快適に過ごすことができる冷房は、夏には欠かせない存在といえるでしょう。一方で、設定温度が自由に変えられないオフィスや学校などでは、「冷房病」と呼ばれる弊害も起きています。今回は、冷房病の基礎知識や、予防・対策法についてご紹介します。

◆冷房病とは?

冷房病(クーラー病)とは、冷房が効いた寒い部屋で過ごしたり、気温差の激しい屋内外を行き来したりすることで起こってしまう、さまざまな体調不良のことです。人それぞれ体感温度や適温は違いますが、オフィスや学校では冷房の設定温度が自由に変えられない場合も多いでしょう。そのため、冷房に合わせて羽織ものを準備しておくなど、対策が必要とされます。冷房が効きすぎて寒いと感じても、対策を取らずに我慢していると冷房病になってしまうおそれがあるため注意しましょう。

◆冷房病の原因と症状

人間の体は、自律神経の働きによって体温を一定に保つよう調節し、気温の変化に順応できるようになっています。暑さを感じると血管を広げて血流を良くし、汗をかきやすくすることで熱を逃がそうとします。一方、寒さを感じると血管や筋肉を収縮させ、熱の放出を防ごうとするのです。

体が気温の変化に慣れるには、2週間ほどかかるといわれています。その間、しっかり体調管理を行えば、自律神経に負担をかけることなく慣れていくことが可能です。しかし、冷房の効きすぎているオフィスで長時間仕事をしたり、温度差の激しい屋内外を行き来したりすると、自律神経のバランスが崩れてしまいます。自律神経が正常に働かなくなると、気温差に体がついていけなくなり、さまざまな不調が起きてしまうのです。

冷房病の症状として、体のだるさや倦怠感、頭痛、腹痛、肩こり、風邪症状、食欲不振、消化不良、不眠などが挙げられます。自律神経が乱れると体温調節がうまくできなくなるため、「冷え」に対する抵抗力が弱くなってしまうのです。この「冷え」によって引き起こされるさまざまな体調不良は、総称して冷房病と呼ばれています。また、自律神経はホルモンにも大きく関わっているため、女性は生理不順や生理痛の悪化などがみられる場合もあります。

◆冷房病予防と対策法

冷房病を予防するためには、できるだけ自律神経への負担を減らすことが大切です。オフィスや学校で、すぐに取り入れられる対策法をご紹介します。

◎体を冷やさない服装

冷房の設定温度が自由に変えられない環境にある場合は、できるだけ体を冷やさないようにする必要があります。カーディガンやひざ掛けを持参したり、腹巻を着用したりと自衛しましょう。また、体を温めるためには、首・手首・足首を温めると効率がいいといわれています。スカーフやレッグウォーマーなどを活用し、冷えを予防しましょう。

◎体を冷やさない食事・飲み物

暑い夏は、冷たい食事や飲み物を摂ってしまいがちですが、冷たいものを摂取すると、体を内外から冷やすことになります。冷房病を予防するなら、意識的に温かい食べ物・飲み物を摂るようにしましょう。また、体を温める効果があるとされる、ショウガやネギ、玉ねぎ、にんにく、唐辛子などを積極的に食事に取り入れるのもおすすめです。

◎適度な運動と入浴

日ごろから適度な運動を取り入れると、血流が良くなり体が冷えにくくなります。デスクワークの場合は、定期的に席を立ち、歩いたり、屈伸運動をしたりして足先まで血液が流れるよう工夫しましょう。また、暑い時期のお風呂はシャワーのみで済ますという方も多いようですが、湯船に浸かることも冷房病を予防に効果的です。入浴後の湯冷めを避けるために、ぬるめのお湯にゆっくり浸かりましょう。

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冷房病の基礎知識や、予防・対策法をご紹介しました。夏の暑い時期を涼しく快適に過ごせる冷房は、熱中症対策としても不可欠です。冷房病対策をとりながら冷房と上手に付き合い、健康に夏を乗り切りましょう。

 

睡眠の質を高めて毎日快活に過ごそう!質の良い眠りを誘うコツとは?(2022年5月)

睡眠は、私たちが健康的な生活を営むうえで欠かせない生活習慣の一部です。しかし、睡眠に関する悩みを抱えている方は多いといいます。たくさん眠ったのに朝に疲れがとれていないと感じたり、日中に頻繁に眠気やだるさを感じたりするときは、質の良い睡眠がとれていない可能性があります。睡眠の質が悪いと、健康や仕事へのパフォーマンスに悪影響を及ぼす恐れがあるため注意が必要です。そこで今回は、質の良い睡眠に関する基礎知識や、睡眠の質を上げるコツをご紹介します。

◆質の良い睡眠とは?

睡眠は、肉体疲労はもちろん、脳の疲労も回復させる重要な生活習慣です。疲れがたまると、脳から発せられる睡眠欲求が強くなり睡眠へと誘われます。

質の良い睡眠とは、「スムーズな入眠」「朝までぐっすり眠れる」「スッキリ目覚められる」などが当てはまる睡眠のことです。眠りが浅く夜中に何度も目が覚める、眠っても疲れがとれない、などの悩みを感じている方は、質の良い睡眠がとれていない可能性があります。睡眠の質の向上に努め、毎日を快活に過ごしましょう。

質の良い睡眠は心身の疲労回復はもちろん、ストレス解消や健康維持、肥満防止など、さまざまな効果が期待できます。

◆睡眠の質を上げるコツ

睡眠の質を上げるためには、睡眠環境と生活習慣、食生活で気をつけたいポイントがあります。睡眠に関して悩んでいる方は、心当たりのあるところから少しずつ、日々の生活に取り入れてみてください。

◎睡眠の質を上げる睡眠環境

・自分に合った寝具を使用する

寝具は、吸湿性・放湿性に優れ、寝心地が良いと感じるものを選ぶことが大切です。起きたときに首や肩にコリを感じる場合は、枕の高さやベッド(敷き布団)の硬さなどが合っていない可能性があります。体型や好みに合わせ、適切なものを選びましょう。

・気持ちが落ち着くアロマや音楽を取り入れる

リラックス効果のあるアロマや、ヒーリングミュージックを取り入れるのもおすすめです。安眠効果があるとされるラベンダーやカモミールなど、お気に入りの香りを探してみてください。また、ヒーリングミュージックは、副交感神経が優位になる作用があります。リラックス効果が期待できるため、心が落ち着き、心地よい眠りに導いてくれるでしょう。

◎睡眠の質を上げる生活習慣

・起床後は自然の光を浴びる

体内時計は、朝起きて日光を浴びることでリセットされます。朝起きたらカーテンを開け、自然の光をしっかり全身に受けましょう。また、目覚める時間を毎日同じ時刻にすると、体内時計のリズムが整いやすくなります。休日もできるだけ同じリズムで過ごすのがおすすめです。

・ぬるめのお湯にゆっくり入浴する

ぬるめのお風呂は副交感神経を優位にさせるため、睡眠の質の向上が期待できます。人は、深部体温が下がると自然に入眠しやすいとされています。入浴後すぐは深部体温が高い状態のため、就寝の1時間前を目安に入浴しておくのがおすすめです。

◎睡眠の質を上げる食生活

・食事は就寝の3時間前までに済ませる

寝る直前に食事をすると、寝ている間も消化吸収が必要となり、睡眠の質の低下を招くおそれがあります。胃腸を休ませるためにも、食事は就寝する3時間前までに食べ終えるのが目安です。食事は1日3食、規則正しくバランスよく食べるのが基本ですが、夕食が遅くなる場合は消化のいいものを心がけましょう。

・カフェインの摂取は控える

カフェインは、眠るために必要な副交感神経の働きを鈍らせる作用があります。また、覚醒作用もあるため、眠る前はカフェインの摂取は控えましょう。一方で、温かい飲み物はリラックス効果が期待できます。眠る前は、温かいハーブティーなど、ノンカフェインの飲み物がおすすめです。

 

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質の良い睡眠に関する基礎知識や、睡眠の質を高めるコツをご紹介しました。睡眠の質を上げるためには、睡眠環境や生活習慣、食生活などの見直しが大切です。1日の終わりには質の良い睡眠で心身の疲れを回復し、健康で快活な毎日を過ごしましょう。

 

オーラルフレイルとは?お口の機能を維持するための予防と対策(2022年4月)

最近、うまく噛めない食べものが増えたり、滑舌が悪くなったように感じたりすることはございませんか? このような症状は、もしかすると「オーラルフレイル」の前兆かもしれません。高齢になり、心身の活力が低下した状態を「フレイル」と呼びますが、オーラルフレイルは、全体的なフレイル進行の前兆になると考えられています。今回は、オーラルフレイルについての基礎知識や、口腔機能を維持するための予防・対策法をご紹介します。

 

◆オーラルフレイルとは?

オーラルは「口」、フレイルは「虚弱」という意味を持つ言葉です。オーラルフレイルとは、噛む・飲み込む・話すなどの口腔機能が衰えることを指します。
オーラルフレイルは、早期の老化現象を示唆する重要なサインであるといわれています。また、噛む力が衰えることで食の偏りが起きたり、滑舌が悪くなることで他者との関わりの減少を招いたりするため、フレイルとの深い関係性が指摘されています。オーラルフレイルの進行が、身体的・精神的・社会的な健康に悪影響を及ぼすと考えられているのです。
オーラルフレイルは早期発見および適切な対応を行うことで、元の健康な状態に戻すことができるという大きな特徴があります。ただし、オーラルフレイルの始まりは、食べこぼしや少しのむせ、滑舌の低下、口の乾燥など、些細で見逃しやすいため注意が必要です。

◆オーラルフレイルの予防法

オーラルフレイルが進行すると、筋力や認知機能など、心身の活力が低下したフレイル状態に陥りやすくなるといえます。要介護のリスクを減らすためにも、オーラルフレイルの予防に努めましょう。

・口腔内を清潔に保つ

オーラルフレイルは段階的に進行し、虫歯や歯周病がその第一段階といわれています。虫歯や歯周病が進行すると、口腔機能が低下し、食べることや話すことに支障が出てきてしまいます。虫歯や歯周病のリスクを減らすために、口腔内の清潔を保ちましょう。毎日の歯磨きやフロス、歯間ブラシに加え、かかりつけの歯科で定期的に検診を受けることをおすすめします。

・口腔機能維持のためのトレーニング

口腔機能とは、食べる機能や会話をしてコミュニケーションをとる機能など、日常生活に欠かせない大切な機能といえます。食べるためには、歯で食べものを口に取り込み(捕食)、飲み込む(嚥下)という一連の動作(咀嚼)を行う必要があります。また、人との会話を楽しむためにも、発音したり表情を作ったりなど、喉や唇、舌、口周りの筋肉を多く使用していることがわかります。口腔機能の衰えを予防するために、以下にご紹介するトレーニングを、ぜひ試してみてください。

◆オーラルフレイルの対策トレーニング

オーラルフレイルは進行してしまっても、適切な対策をとることで改善する可能性があります。ここでは、オーラルフレイルの予防・改善に役立つ、トレーニング法をいくつかご紹介します。

・口周りや舌の筋力をアップさせるトレーニング

唇をすぼめて「う」の発音、唇を横に開いて「い」の発音を繰り返すことで、唇や口の動きがスムーズになります。また、うがいするように頬を膨らませたりすぼめたりする動きを繰り返せば、頬の体操になります。どちらも、気がついたときにいつでも行えるトレーニングです。

・嚥下機能をアップさせるトレーニング

大きく口を開けて10秒間保持した後、しっかり口を閉じて10秒間休みます。朝晩2セット行いましょう。また、舌先を少し出したまま、口を閉じてつばを飲み込むだけでも嚥下機能アップ効果が期待できます。

・咀嚼機能をアップさせるトレーニング

ガムを噛むだけでも咀嚼に必要な筋肉を鍛えることが可能です。片側のみで噛まず、唇を閉じて左右両側で均等に噛むようにしましょう。食事の際も、ひと口で30回以上噛んだり歯ごたえのある食材を選んだりすることで、咀嚼のトレーニング効果が期待できます。

 

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オーラルフレイルの基礎知識や、予防・対策法などをご紹介しました。オーラルフレイルは、可逆的であるという特徴があるため、早めに気づいて対策をとることで改善が望めます。オーラルフレイルは全体的なフレイルと深い関わりがあると考えられます。今回ご紹介したトレーニングなどを日常生活に意識的に取り入れ、予防に努めましょう。