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夏の落とし穴「夏太り」にご注意!!(2014年8月)

 

図1

今年の夏は、冷夏になる、いや昨年と同じように猛暑になる等と予想が錯綜しています。今のところいきなり梅雨が明けたため、暑さが酷く身体にこたえるという人も多いことでしょう。そこでビール党ならビールが、それ以外の人には、酎ハイや冷たい清涼飲料がとても美味しく感じられる日々を送っていることでしょう。

しかし、冷たい飲み物が内臓脂肪を増やす原因の一つだということをご存知ですか。「コールドドリンク症候群」と名付けて注意を促す医師もいます。暑さも本番を迎える季節に誰もが陥る危険がある甘い罠ならぬ「冷たい罠」、さらにそれがもたらす内臓脂肪について今回は触れてみましょう。

 

 

誰もが陥りやすい「コールドドリンク症候群」

どこにいっても自動販売機のある風景。外国人が日本を訪れたときその多さに驚くと言います。その状況を治安の良さという側面で引き合いに出す人もいますが、これは「コールドドリンク症候群」に拍車をかけているのです。さらに、コンビニエンス・ストアに入れば、冷たく美味しい新製品の数々。家に帰っても、冷蔵庫を開ければ冷たい缶ビールや清涼飲料があなたを待ち受けています。暑さから逃れたい一心でそれらについ手が伸びてしまうのも仕方のないこと。確かに冷たいものを飲むと体温が下がり、一時的に暑さから逃れることができます。

 

しかし、飲料することによりお腹を冷やすと身体はその冷えから脂肪で内臓を包んで守ろうとするのです。最後の氷河期に順応した人類が、生き延びるために獲得したのが、こうした脂肪を蓄える能力だったといわれます。見方を変えれば、太りやすい人というのは、環境に順応する能力の高い人ということになるわけです。

 

 

貯蓄型の「中性脂肪」、やりくり上手の「脂肪酸」

図2脂肪とは一体何なのかを確認しておきましょう。体内には、脂肪酸、中性脂肪、コレステロール、リン脂質の4種類の脂肪があります。このうち中性脂肪と呼ばれるものが、肉の切り身で目にするあの白い脂身の部分です。皮下脂肪や内臓脂肪として蓄積される脂肪は、全て中性脂肪で、体内の脂肪の約90%を占めるとされています。この中性脂肪は、万が一に備えて貯蓄される脂肪の貯金です。しかし、度を越すと、肥満や健康を害する一因となります。

 

生きていくため一番に使われるエネルギーとして活用されているのが脂肪酸。中性脂肪と比べるとその割合は、ずっと少ないわけですが、やりくり上手の奥様のように出費をおさえて働いてくれるのです。また、脂肪酸は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり、不飽和脂肪酸には、オレイン酸、リノール酸、EPA(エイコサペンタエン酸)など身体に良い働きをするとされる脂肪酸などがあります。

 

コレステロールは、筋肉や血液の中にありリン脂質とともに細胞膜を構成したり性ホルモンを作る大切な役割があり、大人の体内には、100グラムから150グラム程あるとされています。結合するたんぱく質の比重によりLDLコレステロール(悪玉コレステロール)とHDLコレステロール(善玉コレステロール)に分けられます。コレステロール値というとこれらを合わせた総コレステロール値を指します。

 

リン脂質は、先ほど触れたように細胞膜の構成成分で、水に溶けない中性脂肪を水に馴染ませ血液中に存在できるようにする働きがあるとされています。

 

体内に存在する4種類の脂肪はいずれも人が生きていく上で大切な役割を担っています。問題はその量なのです。人類が飢餓の時代を生き延びるために獲得した資質が、飽食の時代を迎えて健康を阻害するシステムとなってしまっているのです。

 

脂肪の蓄積システム

図3それでは、そうした脂肪の蓄積が行われる時、体内でどのようなシステムが働いているのか紹介しましょう。ご存知のように食べ物が体内に入ると胃や腸で消化が行われ、さまざまな栄養が吸収されます。ごはんや麺類、パンなどの多く含まれる炭水化物は、体内でブドウ糖になり、肝臓から血液中に送り込まれます。これが身体のエネルギーとなるわけですが、このブドウ糖の量が多くなると膵臓からインスリンというホルモンが分泌され、インスリンはブドウ糖をエネルギーとして活用するために働きます。また、余ったブドウ糖を中性脂肪に変えて脂肪細胞に取り込む働きもします。

 

このエネルギーの活用と、貯蔵のバランスがとれているうちは、もちろん人は肥満になることはありません。過食や摂取したエネルギーに見合うだけの運動がなされない状態が続くと、貯蔵庫に脂肪が貯められていきます。身体は、そのうちやってくるかもしれない飢餓に対して生き延びるためのシステムとして中性脂肪に変えたエネルギーを蓄える訳です。これも、人によりますが、体脂肪率で25%まではそれほど問題ではなく、むしろ正常な機能が働いていると考えて良いでしょう。しかし、それを超えて過食や運動不足が続くとインスリンの効き目が悪くなる「インスリン抵抗性」を招き、体脂肪の蓄積が加速される事態になります。

 

大人であれば250億から300億の脂肪細胞が全身に分布しています。昔は、脂肪細胞の数は増えず、一つひとつの脂肪細胞が肥大化して肥満すると言われていましたが、その後の研究で脂肪の蓄積が進むと脂肪細胞も分裂をして、その数が増えるということが明らかになっています。一方で一つの脂肪細胞が米粒や小豆の大きさにまで肥大した例が見つかっています。これは肥満が進んだ結果、脂肪細胞が老化して細胞分裂の力を失い以上に肥大化してしまったものと考えられています。こうなるとそれを元に戻すのは大変。簡単には脂肪が落ちなくなってしまいます。

 

また、脂肪細胞が持つもう一つの大切な働きも失われてしまいます。これは、脂肪細胞が満腹中枢を刺激して過食を制御するためのレプチンというホルモンを出しているというのが近年の研究で分かってきたのですが、細胞の老化はこうした機能を阻害してしまうと考えられます。

 

内臓脂肪を減らす生活習慣の改善

体内に蓄えられる脂肪は、皮下脂肪と内臓脂肪とに分かれますが、生活習慣病のリスクを高めるのが内臓脂肪です。動脈硬化を促進し、血圧を上げ、狭心症や心筋梗塞、脳出血や脳梗塞など命に関わる重大な病気を引き起こす原因にもなるのです。また、インスリンの働きを妨げ高血糖状態を招き易くし、糖尿病を発症させる要因にもなると考えられます。

 

この問題の内臓脂肪を減らすには、どうしたら良いでしょうか。まず、内臓脂肪を溜め込みやすいといわれる生活習慣を見てみましょう。

 

図4[問題のある悪生活習慣]
 ①食事は必ず満腹になるまで食べる
 ②早食いでよくかまないで食べる
 ③朝食抜きが多く、夕食が遅い
 ④寝る前に何か食べる習慣がある
 ⑤宴会が多く、お酒を飲むと食べ過ぎてしまう
 ⑥冷たい飲み物をよく飲む
 ⑦揚げ物などが好きだ
 ⑧テレビを見ながらだらだら食べるのが好きだ
 ⑨運動するのが苦手だ

 

まずは、問題のある生活習慣をあらためるところからスタートしてください。

 

筋肉痛はなぜ起きるのか(2014年7月)

 

図

若い時と比べて筋肉痛が遅れてやってきた。これは身体が老化したサインと思われる人も多いはず。しかし筋肉痛の原因は、諸説ありまだハッキリとわかっているわけではありません。自分の筋力の許容範囲を超えた運動が、筋繊維や周辺の結合組織を傷つけ、その修復が行われるときに痛みを覚えるという説が有力なようですが、そうしたメカニズムについて完全に解明されているわけではありません。今回はこの筋肉痛に関して、取り上げてみたいと思います。

 

 

筋肉痛はなぜ起きるのか

筋肉痛は、「運動により筋肉繊維が傷ついて痛みを感じる」ものというイメージがありますが、実は痛みを感じる神経はこの筋繊維にはつながっていません。筋肉は筋繊維とそれを覆う形の筋膜とで出来上がっていますが、神経はこの筋膜に繋がっているのです。筋膜というのは、脳の司令で動かすことができない部分で、皆さんが自分の意志で動かすことができる筋肉というイメージとは異なる部分です。では、なぜ筋肉痛を感じるのでしょうか。

 

一つの説として、運動強度が一定の限界を超えると筋繊維が傷つき、それを修復しようと血液成分が働き始めたときに痛みを起こす刺激物質が生産され、それを筋膜を経て神経が感じ取ってしまうと言われています。加齢などで、血流が悪くなり、この刺激物質が生産されるところまで時間がかかった場合、痛みが発生するのも遅れることになります。これが、年齢とともに筋肉痛が遅れてやってくる原因の一つと考えることができるかもしれません。

 

また、筋肉痛は、筋肉を縮める動きより、筋肉を伸ばす動きを途中で止める運動によって引き起こされるといわれます。階段を上る動きより階段を下りるときに使われる脚の前面の筋肉の動きが痛みを引き起こします。階段を上るときは、脚の前面の筋肉が縮まり後ろの筋肉が伸びて身体を持ち上げます。反対に階段を下りるときには、脚の裏側の筋肉が縮み、脚の前面の筋肉が体重を支えるために伸びる途中で力が入ります。

 

登山などで経験される方も多いかもしれませんが、登りより下山の時に使った脚の前面や膝の周辺の筋肉が翌日から二日後にかけて痛みを感じるものです。

 

筋肉痛を治すには

図筋肉痛は、その痛む筋肉をこれ以上酷使するなというサイン、身体の防衛機能という側面もあります。まず、睡眠によって回復を図ることが大切で、特に筋肉の修復をするために大切な働きをする成長ホルモンが多く分泌される夜10時から朝の2時までの睡眠のゴールデンタイムと言われる時間帯はしっかりと寝るようにします。

 

また、先ほども触れたように、筋肉痛は痛みを起こす刺激物質が関与していると考えられますので、この刺激物質を早く身体の外に出してしまうという方法が有効な手段ということになります。そのために必要なのが血流の確保。しかし、痛みが血流を阻害してしまうこともあるのです。

 

痛みを感じるとその部位の筋肉は、硬くなります。筋肉が硬くなるとそこに通う血管も圧迫されて血流が悪くなるのです。まずは、この筋肉を緩めることを考えましょう。

 

筋肉はある程度伸ばすことで、緩めることができます。無理をしない程度にストレッチを行います。できるだけゆっくりと伸ばしてください。反動を付けることは厳禁です。脚の前面が痛むのであれば、膝を折って足の土踏まずの部分にお尻を乗せるようにして伸ばします。痛むところを伸ばすのですから、少々辛いですが、我慢してゆっくりストレッチすると後で楽になります。同時に脚の裏側も伸ばしておきましょう。 

 

図運動した後、痛みが起きる前にストレッチを行う習慣をつけると、痛みを軽減することができます。また、運動前にウォーミングアップを十分にして、ストレッチも行うようにすれば、なお効果的です。

 

また、筋肉痛のときには、栄養補給も大切です。痛んだ筋肉を補修するためとタンパク質だけをとればよいというわけではありません。炭水化物や脂質も同時にバランス良く摂るようにしましょう。必要な炭水化物を摂らないと、身体は筋肉を分解してそこから栄養素を取り出そうとします。これでは痛んだ筋肉の修復どころではなくなってしまいます。

 

しっかりとした食事にとりかかるには時間がかかりますから、その前に栄養補助食品等を利用するというのも筋肉痛対策として効果的です。運動直後にアミノ酸を補給し、溜まった乳酸を分解するクエン酸が摂れるレモン、疲れていても喉を通り易いバナナなどを摂るというのも良いでしょう。

 

また、筋肉痛は痛むからとじっとしているより、ウォーキングなどの軽い運動を行った方が早く回復します。これも軽い運動が血行を改善してくれるからです。水泳や水中ウォーキングも効果的です。水中で動くことで適度に水が身体をマッサージしてくれるので、回復を早めてくれます。

 

筋肉痛を防ぐには

図筋肉痛は、運動不足の証明でもあります。毎週末に山に行っているような人は、登山での筋肉痛とは無縁です。同じ筋肉であれば日頃十分刺激を与えておけば筋肉痛になることはありません。しかし、そうした運動習慣があっても、新たなスポーツやフォームに挑戦して、それまであまり稼働させていなかった筋肉を動員するとやはり痛みは起こります。それでも運動習慣のある人は、比較的軽くて済むのです。これは、運動習慣によって血管や心臓の機能が正常に保たれ、全身の血流が良くなるという運動効果の現れです。

 

運動習慣のない人は、無理のないペースで歩くということが、基本になりますが、夏の暑い時間帯のウォーキングはオススメできません。できるだけ朝早い時間帯、涼しいうちに行いましょう。

熱中症の予防と対策(2014年6月)

イラスト

 

毎年この季節になると、必ず話題になる脱水症状や熱中症。近年では家の中にいても熱中症の危険があると言われています。昨年も猛暑日が続きました。特に幼児や、危険な症状を認識しにくい高齢者には注意が必要です。今回は、この脱水症状や熱中症の予防についてご紹介します。

 

 

人間のカラダは水でできている!?

人間の身体に占める水の割合はどのくらいなのかご存知ですか?実は胎児は身体の約90%が水でできています。新生児で約75%、子供で約70%、成人では約60~65%と言われ、これが老人になると50~55%にまで下がります。

 

これは、老化現象の一つで細胞内の水分の低下が原因とされています。また、成人になって水分の割合が低くなる原因の一つは、体脂肪率の増加にあります。そのため、女性の方が水分量の割合が低い傾向にあるとされます。

イラスト

 

この水分量がどれだけ、私たちの生存にとって大切かというと、体重の約2%の水分が失われただけで、喉や口が渇き食欲が減退するなどの不快感に襲われます。約6%が不足すると眠気や頭痛、脱力感が生じ、約10%が不足すると循環不全、腎不全、筋肉の痙攣などの症状を起こし、それ以上不足すると意識を失い、約20%が不足すると死に至ることになります。

 

私たちの身体の水分は、約100兆個もある細胞内に3分の2、残りは細胞と細胞の間にある細胞間液と血液中にあります。生命を維持するために大切な役割を果たしているわけです。

 

水分不足がもたらすさまざまな危険

炎天下のスポーツやイベントなどで、脱水症状を起こし倒れた人が病院に搬入されるというニュースが毎年聞かれます。本来人間がもっている体温調節機能が働かない状態になったときに、熱中症に陥ってしまいます。熱中症と総称される日射病や熱射病で死亡者がでる程深刻な状態になることもあります。

 

日射病は全身の倦怠感、吐き気、欠伸から始まって、酷くなると頭痛や意識障害まで引き起こします。炎天下で激しい運動などをしたときに、汗を大量にかいて身体の中の水分が不足すると心臓に戻る血液の量が減ってしまい、脱水状態に近づくと意識を失います。そのまま死亡することもあるのです。

 

また、熱射病とされるのは高温多湿の状況で長時間身体を動かしたとき、大量の汗とともに体内の塩分や水分が流失し、体温の調節が効かなくなって起こる症状です。温度を感じ取る力が衰え、高い室温に気付かない高齢者が、室内でこの熱射病の症状を起こすということもあるのです。

 

それ以外に、熱失神と呼ばれるのは、暑さで血管が拡張して血圧が下がり、めまいや失神が起こる状態。熱けいれんと呼ばれるのは、大量の発汗で汗とともに塩分が体外に流出し、血液中の塩分濃度が低くなっておこる筋肉のけいれん。熱疲労というのは、大量の発汗で脱水症状を起こし、倦怠感やめまい、頭痛、脱力感、吐き気などを起こすものです。

 

最高気温が30度を超えると、こうした症状の重くなる人が増え、さらに気温が上がると死亡者数も急激に増える傾向にあります。

 

熱中症を防ぐには

イラスト炎天下での長時間の活動は、避けてください。亜熱帯化が進んでいると言われる日本では、最近35度を超える気温になることもあります。ご存知のようにこの気温35度というのは、日差しを遮ったところで計る温度です。アスファルトなどの照り返しを受ける炎天下の道路などは、さらに高い温度になっているのです。

 

また、熱中症は気温が上がる10時から16時の間に多く発生していますが、幼児や高齢者は、これ以外の時間でも十分注意しましょう。服装も大切です。発汗性や吸湿性、通気性の良い素材の服を身に着け、屋外ではつばのある帽子を着用します。

 

暑い時間帯は、全国で電気の使用量が急激に増え、節電が望ましいとされますが、健康を害しては何もなりません。エアコンと扇風機、窓の開け閉めによる上手な換気などを心がけて熱中症を予防しましょう。特に幼児や高齢者には、保護者や周囲の人が十分配慮することが大切です。

 

熱中症の対処

イラスト先ほど紹介した「熱けいれん」の場合は、けいれんしている箇所を軽く伸ばし、マッサージをします。また、「熱疲労」の場合は、心臓よりも足を高くして仰向けに涼しいところに寝かせます。スポーツ飲料を少しずつ飲ませましょう。

 

「熱射病」の場合は、身体の下に当て物などをして、上半身をすこし立てて涼しいところに寝かせ身体を冷やします。首や、脇の下、足の付け根などにビニール袋に氷水を入れたものをあてます。身体の表面を冷やすことが大切です。

 

また、熱中症が重篤な状態で意識がはっきりしないような場合は、すぐに救急車を呼びます。車が到着するまで、吐いた場合に気管を詰まらせてないように、涼しいところに横向きに寝かせます。
熱中症は、回復したと思っても一度病院で診察してもらうようにしましょう。

高血圧は日本人にとって大きな健康リスク(2014年5月)

 

イラスト毎年5月17日は高血圧の日とされていることをご存知ですか?
日本高血圧学会と日本高血圧協会は、第30回日本高血圧学会総会において、毎年5月17日を「高血圧の日」と制定することを宣言し、日本記念日協会により認定登録されました。今月はこの高血圧についてとりあげます。

 

 

降圧薬治療を開始すべきか

日本高血圧学会は、2014年の「高血圧治療ガイドライン」を公表しました。これによると、高血圧の診断基準(降圧薬治療開始基準)は、従来の「収縮期140mmHg以上、拡張期90mmHg以上」という数値を維持しながら「若年・中年高血圧」の血圧を下げる努力目標を、この診断基準と統一しました。同様に後期高齢者(75歳以上)は「収縮期150mmHg以上、拡張期90mmHg以上」とされ、以前の基準より若干緩和されたのですが、この高血圧治療ガイドラインを超えている人の割合が50代になると女性が50%を超え、男性では70%近くと言われています。多くの人が、数値では高血圧と診断されながら、降圧薬治療を開始しようか、それともそれ以外の方法でなんとかならないかと思案しているのではないでしょうか。今回はそうした悩みをお持ちの方のために情報をご紹介します。

 

高血圧になる原因とは

イラスト血圧が高くなる原因は、遺伝的な要素、肥満によるもの、運動不足によるもの、塩分の高い食生活や喫煙、飲酒の習慣などがあげられますが、普段あまり意識していなくともストレスが要因となることもあります。また、糖尿病や腎臓病などの病気が原因で血圧が高いという場合もあります。

 

最初にあげた遺伝的な要素としては、国立国際医療研究センター研究所の加藤規弘・遺伝子診断治療開発研究部長らの研究グループが「東アジア人を対象に、高血圧に関する大規模全ゲノム関連解析を行い、新規のもの5つを含む計13の遺伝子座を同定した」と発表しました。5万人以上の東アジア人の全遺伝情報を解析し、高血圧に関連する13種類の遺伝子を特定したとし、このうちの5種類は白人ではみつかっていないということです。 

 

イラスト日本人は高血圧になりやすいといわれますが、その要因の一つが遺伝子にあったわけです。この高血圧が日本人に最も多かった時期が、1960年代前半で、この時期をピークに下がる傾向にあるとされています。これは、1955年に高血圧の治療を受けている人が人口10万人に対して61人しかいなかったのに、1975年には475人になり、降圧薬を飲む人が増えたということからです。

 

厚生労働省の「健康日本21」における試算によれば、国民の血圧が平均2mmHg下がれば、脳卒中による死亡者は約1万人減り、新たに日常生活活動が低下する人の発生も3,500人減ることが見込まれています。また、循環器疾患全体では2万人の死亡が防げるとしています。高血圧を下げることがどれだけ大切かわかりますね。

 

高血圧は何歳から増え始めるのか

厚生労働省が平成18年に行った国民健康・栄養調査によると30歳以上の40~50%が高血圧で、やはり年齢とともに上がる傾向にありました。高血圧の人が約50%を超えるのは、男性で50代(59.2%)、女性では60代(57.6%)。70歳以上になると、男性では約71.4%が、女性では約73.1%が高血圧だとされています。高血圧がいかに重要な医療問題となっているかわかりませんか。日本人の最大の健康リスクは高血圧にあるという指摘もあるほどです。ところが、そうした問題をなかなか自分のこととして捉えて医療機関に相談しないという人が、相変わらず多いのが現状です。

 

日本高血圧協会と日本高血圧学会は、高血圧啓発キャンペーン「ウデをまくろう、ニッポン!」を実施。今年の高血圧啓発のテーマを“減塩”と“医師相談”として日本高血圧週間5月9日~17日を中心に、高血圧の危険性や減塩・医師への相談の重要性などについて啓蒙活動を行っています。血圧が高めだという認識がある人は、まず食生活を見直し、医師に相談するようにしてください。

 

軽い運動で高血圧に対処

イラストまた同時に降圧効果のある運動もお勧めします。運動療法は薬物療法や食事療法とともに高血圧治療に有効だとされています。また、体を動かすことで、心肺機能を高め、血液もサラサラにしてくれるので、心筋梗塞や動脈硬化予防にも役立ちます。

 

運動の降圧効果は、どれくらいかというと、高血圧患者が定期的に軽く汗ばむ程度の運動を週3回、1回30分以上行うと収縮期血圧20mmHg以上、拡張期血圧10mmHg以上の低下が見られた患者が 半数以上いたという研究事例もあります。ここでいう汗ばむ程度の運動というのは、ウォーキングやサイクリング、水泳など有酸素運動をさしますが、肥満や足の関節に痛みがあるという人の場合、水中ウォーキングや水中エアロビクス運動などプールで行うものが良いでしょう。

 

高齢者を対象にした研究では、ストレッチと筋肉運動のプログラム30分を月2回、3ヶ月間行ったところ、収縮期が10mmHg程度低下したというものがあります。
以上のようなことから、高血圧に対処し健康を維持するためにも、身体に無理をかけない運動を続ける習慣をつけるようにしましょう。

 

新年度のスタートで健康をそこなわないためのコツ(2014年4月)

 

イラスト4月は、進学や就職、転勤など、新生活に適応するために何かとストレスの多い時期。何事にでも意欲的に取り組むのは素晴らしいことです。しかし、頑張り過ぎてしまうという人もいるでしょう。新しい環境にすんなり適応できる人はよいのですが、物事はなかなか上手く行かない場合も多いものです。俗にいう五月病に取りつかれてしまい、何やら疲れを感じてやる気を失ったりする人もいるのではないでしょうか。

今回は、新年度のスタートで健康をそこなわないためのコツを紹介したいと思います。

 

頑張りすぎないことが大切

異なった環境に適応することが得意な人と、苦手な人がいると思いますが、これは仕方のないことです。新しい環境が仕事場である場合は、頑張らざるを得ないと考えるのは当然かもしれません。しかし、新しい環境に自分を合わせるのが苦手な人は、無理は禁物です。ストレスレベルが許容範囲を超えてしまうと、様々な症状や病気を引き起こすことがあります。

 

その一つが副腎疲労です。朝起きられない程の疲労を感じ、出勤することさえできなくなってしまうことがあります。実は副腎はコルチゾールというストレスに対処するためのホルモンを分泌している大切な臓器なのですが、睡眠不足に加えて糖分やカフェインの摂り過ぎや、感染症などの要因が長く続くとそのストレスに耐えられる限度を超えて副腎疲労を引き起こしてしまいます。

 

最初は自覚症状のないままストレスに対処するコルチゾールの分泌量が増え、そのまま対処のピークに達してもストレスが減らないと副腎が機能低下を起こし、分泌するコルチゾールの量も減って行きます。するとコルチゾールによる身体の修復と調整が間に合わなくなって、様々な身体の不調を感じるようになります。女性の場合は、月経が止まることもあります。

 

イラスト疲れた身体をコーヒーで無理に覚醒させる習慣のある人は要注意。また疲れた時にカフェイン含有量の多いチョコレートを食べると、このカフェインが副腎を刺激してコルチゾールの分泌を促すため、自分を鞭打つ習慣がついてしまいます。結果的にはそれが副腎を疲労させてしまうのです。

 

もし、疲れきって動けないという状況の場合は、医師による診察が必要になります。そうなるまえに、無理は控えて毎日の生活で、食生活を改善し睡眠時間をたっぷりとるなどして疲労回復に努めましょう。カフェインの摂取量を徐々に減らして行くことも大切です。

 

新年度は運動習慣を身に付けるチャンス 

イラスト新しいチャレンジとして、少々増えすぎてしまった体脂肪を落とすことも兼ねてスポーツに取組む人もいると思います。適度な汗をかく運動は、様々な健康効果をもたらしてくれますが、実は副腎のストレスも軽減してくれるのです。副腎から分泌されるコルチゾールは体内に蓄積された重金属が酸化して体内で炎症を起こした場合、対処のために使われます。この水銀などの重金属は、皆さんの大好きなマグロなど大型魚を食べるとそこに多く含まれているのですが、副腎を疲労させる原因の一つになってしまうのです。

 

しかし、この重金属は軽い有酸素運動による発汗や入浴で汗とともに体外に排出することができます。適度な運動習慣を身に付けると、結果的にストレスに強い身体を獲得できるというわけです。
汗をかく運動が身体に良いからといって、普段運動習慣の無い人や、新年度に久しぶりに運動を再開しようという人がいきなり激しい運動をしてはいけません。激しい運動は、筋肉の炎症をもたらし、ここでもコルチゾールが大量に動員されることになるからです。何事も無理は禁物です。

 

今からでもできる最新の花粉症対策(2014年3月)

     
 
3月のテーマ:
今からでもできる最新の花粉症対策

 日本人の4人に1人が花粉症だといわれています。毎日の花粉情報に一喜一憂している人も多いことでしょう。花粉の心配の少ない雨の日が待ち遠しいという声も聞きます。ご存知のように、花粉症とはスギやヒノキなどの花粉が飛ぶ季節にだけ症状がある季節性アレルギー性鼻炎のことですが、鼻だけでなく眼のかゆみや涙、充血が伴ったり、皮膚やのどのかゆみ、下痢症状なども伴うことがあります。この時期は、長年花粉症に悩まされている人にとって憂鬱な時期。春が四季の中で一番好きだったのに、嫌いになったという人もいることでしょう。
 今月は、こうした不快な症状を緩和する方法を紹介します。

 
     
花粉症のメカニズム
 

 今年初めて花粉症になったという人もいることでしょう。この10年の花粉飛散量の平均は、それ以前の10年間の平均と比べて2倍以上になっているというデータがあります。初めて花粉症を発症する年齢も、子供から高齢者まであらゆる年代に見られ、もうこの歳だから花粉症にはならずに済んだと安心することもできないのです。そうした人のためにも、その発症メカニズムをあらためて紹介します。

 
その1
 

 スギやヒノキなどの花粉が、目や鼻から人体に入ってくると、私たちの身体はそれが有害な侵入者かどうか判断します。

その2
 

 身体にとって有害なので排除すると判断した場合、この侵入者に反応する物質を作る仕組みが働きます。リンパ球が働いて作り出すこの物質をlgE抗体と呼びます。

その3
 

 抗体ができた後で、再び花粉が体内に入ってくると、鼻や目の粘膜にある肥満細胞の表面にある抗体と結合します。
(ちなみにこの肥満細胞とは、太ることとは関係がなく、顕微鏡でのぞくと膨れて見える様子が肥満を想像させるので名付けられたもので、顆粒細胞と呼ばれることもあります。)

その4
 

 すると肥満細胞からヒスタミンなどの化学物質が分泌されて、花粉をできるだけ体外に洗い流そうとします。
くしゃみで吹き飛ばそうとしたり、鼻水や涙で洗い流そうとしたり、逆に鼻づまりを起こして中に入り込むことを防ごうとするわけです。

   
初期療法を行えば比較的楽に花粉症の時期を乗り越えられる
 

 悪化してから病院に行くよりも、症状の軽いうちに治療を受けるとそのシーズンを通して花粉症の症状を軽くすることが可能です。毎年花粉症で苦しんでいる人は、できれば花粉の飛び始める前に病院に行きましょう。

今月は、もう花粉の飛散が始まっています。関東地方は2月中旬には飛び始めますから、来年は、1月中に病院に行くと効果的な初期療法が受けられるということを覚えておきましょう。花粉症の発症を遅らせたり、飛散量の多い時期の症状を軽くすることができ、薬の量や使用回数を少なくすることもできます。

   
自分でできるケアも知っておきましょう
 

 花粉症を悪化させて苦しまないためには、早めに診察を受けることが大切ですが、症状を軽くするために自分でできるケアもありますので、それをご紹介します。

 
その1
「外出するときは帽子、マスク、花粉症対策用の眼鏡などを装着する」
 

 花粉を身体に取り入れないように、マスクで鼻と口を覆い、髪の毛への付着も帽子などで極力防ぎ、最近デザイン性も向上した花粉症対策用の眼鏡などで目からの花粉の侵入を防ぎます。市販されているほとんどのマスクは吸気に際して95%以上花粉を除去するとされています。ただ、マスクは花粉が付くと目詰まりしますから、できるだけ頻繁に取り替えるようにします。安いマスクを毎日使い捨てにすると経済的で、衛生的だとされています。

その2
「外出から帰ったら、できだけ身体についている花粉を落としてから入室する。」
 

 髪の毛や、衣服には外出中にたくさんの花粉が付着しています。花粉症でない人は、無頓着になりがちですが、家族に花粉症で苦しんでいる人がいる場合、できるだけ玄関に入る前に埃を払うように全身から花粉を振り落として、家に持ち込む花粉の量を減らしましょう。

その3
「洗濯物は室内干しにする」
 

 これも、花粉症対策には大切なポイントです。花粉症で苦しみながら、平気で洗濯物を外に干している人もいるようですが、洗濯物の乾き具合よりも花粉を家に取り込まないようにすることの方が大切です。

その4
「外出から帰ったら、洗顔し、市販の人工涙液などで目を洗う」
 

 目の周辺についた花粉は、洗顔で落とします。ただし、水道水で目を洗うと目を痛める可能性もあるので、目を洗うときは市販の人工涙液などを使うようにします。

その5
「鼻を生理食塩水で洗う」
 

 鼻を洗う簡単な器具と生理食塩水を用意し、外出から帰ったときなどに洗浄すると、鼻の中に入った花粉を洗い流すことができ、症状を軽くすることができます。ただし、洗い過ぎると悪影響がでる場合がありますので注意しましょう。

その6
「部屋の中を乾燥させない」
 

 花粉症の症状に苦しんでいるときは、とくに目や鼻の粘膜が乾燥に弱くなっています。加湿器等を使って、室内の保湿を心がけましょう。3月はまだ寒い時期。特にエアコンなどで室内を温める場合、室内の空気は乾燥しがちなので保湿を心がけることが大切です。

   
 

 これからの季節、花粉症の方にとってはつらい時期ですので、早めに準備をするなど花粉とのつきあい方を工夫するとともに、花粉症ではない方も家や会社などに、できるだけ花粉を持ち込まないよう配慮をしてはいかがでしょうか。

   

 

クロストレーニングのすすめ(2014年2月)

     
 
2月のテーマ:
「クロストレーニングのすすめ」

 クロストレーニングと言っても何?と思われるかもしれません。単純にいうと複数の種目の運動を行うトレーニングのことです。なぜそれがおすすめかということを今回は、ご紹介したいと思います。

 
     
体幹の筋肉を使うと故障が減る
 

 ランニングやテニス、ゴルフ等を趣味のスポーツとして楽しんでいらっしゃる方は多い事でしょう。でも、中高年の方でこうした趣味のスポーツに熱中すると、必ずといって起きるのが筋肉や関節などの故障です。よくあるのがランニングで起こす、脚や膝の故障。テニスでは、テニス肘。ゴルフではゴルフ肩というのが有名ですね。いずれも特定の箇所に負担のかかる動きを、関節や筋肉などが耐えられる限界を超えて繰り返した結果、故障を引き起こしてしまうことが多いとされています。

 スポーツ専門のトレーナーの中には、中高年になると特に体幹の筋肉が弱くなって、本来体幹から力を出すべきところを、身体の末端の筋肉を酷使するフォームになり、故障を引き起こす原因になっているという指摘をされる方もいます。

 例えば赤ちゃんがハイハイする姿を観察すると、体幹を使って動いている事がよくわかります。まだ、腕や脚に十分な力がないのに、思ったより活発に動き回るのは、体幹の筋肉を巧く使っているからです。人間は本来、本能的にこうした動きができるものなのですが、大人になって筋力がつき、その筋肉で動く事を覚えてしまうと体幹を使う事を忘れてしまうのです。使わなければ、筋肉は衰えていきますから、ますます体幹を使う動きをしなくなってしまいます。

   
一流選手は一般の人より筋肉が肥大していない?
 

 ゴルフやランニングを良くされている人で、脹脛(ふくらはぎ)の筋肉が異常に左右に張って、肥大している人を見かけますが、これは体幹を使う事を忘れてしまった人の典型的な筋肉の付き方です。本人は、よく運動をしているからだと自賛されていることも多いのですが、その運動で故障を引き起こすリスクが高まっているという自覚が必要です。筋肉の肥大は、運動による筋肉の破壊と超回復の結果だとされますので、身体の末端の一部の筋肉に過大な負荷がかかっている状態だということになるのです。

 一流の選手は意外に身体の末端の筋肉は肥大していないものです。例えば、マラソンの世界で驚異的なタイムを出し続けるアフリカの選手達の脹脛は、運動をしていない一般の大人の脹脛よりも細く引き締まって見えます。それでいて、あの驚異的なスピード。まさに体幹の筋肉のパワーによるもと考えざるをえません。

   
体幹の筋肉を目覚めさせるには
 

 さて、ではなぜクロストレーニングが良いかということになりますが、実は体幹の筋肉を目覚めさせて使えるようにするには、専門的なトレーニングメニューが必要になります。できれば体幹トレーニングを熟知したトレーナーの指導も受けたいところです。でも、現実的にはそれはなかなか難しいかもしれません。そこで、複数の運動を行なうクロストレーニングで、筋肉や関節への負担を分散しながら、健康に良い運動を継続的に行なうことをおすすめしたいわけです。

 例えばゴルフをした後に、プールで泳ぐ。そうすると疲労した脹脛の筋肉が、水泳のキックによる筋肉への刺激でほぐされ固くなった筋肉が柔らかくなります。これは、歩くという行為は足首を曲げた状態で脹脛の筋肉を使いますが、バタ足のキックは足首を伸ばしたまま主に太ももの筋肉を使って行なわれますから、隣接する脹脛にも豊富な血流がめぐり疲労物質を代謝させてくれるのです。

 泳ぎが苦手な人は、水中ウォーキングでも効果があります。胸を張って腕を振り、膝を前に突き出すように脚を運ぶように意識してください。水が身体の動きを制限して、体幹の筋肉も動員しないと前に進まないので、あるていど強制的に体幹の筋肉が目覚めさせてくれます。

 また、自転車を取り入れるのも良いでしょう。町乗り用のクロスバイクと呼ばれるスポーツ自転車でも良いと思いますが、慣れてきたらロードレーサーと呼ばれるペダルを靴に固定するビンディングを装備したスポーツ用の自転車にすると、さらに効果的です。ママチャリと言われる一般の自転車は、ペダルを上から下に踏みつけて、前に進みますが、脚をペダルに固定すると全く別の筋肉を使ってペダルを“回す”ことになるのです。

 最初は意識をしなければできないのですが、身体の後ろ側の筋肉、広背筋(背中の筋肉)や中臀筋、大臀筋(お尻の筋肉)、ハムストリング(太腿の裏側の筋肉)で、ペダルごと脚を上に引き上げるように力を入れ、踏み下ろすときに少しだけ力を入れて、脚の重さでベダルを押し下げるようにすると、奇麗なペダリングで長距離でも楽に走破できるようになります。

 身体の中心に近い大きな筋肉を動員して動くことで、疲労を防ぎながら身体に良い有酸素運動を長い時間続けることが可能になります。

 ただし、ロードレーサーと呼ばれる本格的な自転車は、メンテナンスや安全走行に関する知識も不可欠なので、家の近くの専門店で相談してから、手に入れるようにしてください。ヘルメットなどの身を守る装備のことや、道路での走り方は、専門的なスタッフに指導してもらうのが一番です。

   
クロストレーニングでアクティブな生活を
 

 クロストレーニングは、普段行っている好きな運動に、水泳やウォーキング、自転車などを組み合わることで、特定個所に負担をかけずに、筋肉や関節の故障を防ぎながら、長い年月のアクティブな生活を可能にする大切なトレーニング方法です。ぜひお試しください。

   

 

 

「心の健康と瞑想」(2014年1月)

     
 
1月のテーマ:
「心の健康と瞑想」

 瞑想と聞くと、皆さんは何を思い浮かべますか。寒いお寺の本堂で座禅を組んだり、しびれをきらした脚の痛みでしょうか。何やら辛いイメージを持つ人もいるかもしれませんが、実際の深い瞑想状態を体験すると、とても心地良い感覚に包まれ、ストレスからの回復力が劇的に向上すると言われます。

現代人にとってストレスは万病の元という考え方があるくらい、高血圧をもたらし、血管や心臓を痛めつけるなど、過剰なストレスは、身体を損ねる元凶として知られています。このストレスを解消するには、歩いたり、自転車に乗ったり、泳いだりといった有酸素運動が良いとされますが、寒さも厳しくなり 、外にでるのはなかなか大変です。そこで、今回は家の中でもできる効果的なストレス軽減法である瞑想について紹介しましょう。

 
     

 

ネガティブな発想になりやすい脳を瞑想で開放する
 

 有名な元格闘家に、サクセスストーリーと健康で強い精神や身体の作り方について話を聞いたところ、朝、晩と毎日二回瞑想しているということでした。前向きな発想を得たり、創造的な仕事をするときに、瞑想をしていると良い発想が生まれ、仕事も巧くいくと言います。瞑想の何が良いかというと、考えない状態を作り出す事ができる点です。脳の中では一日に何万回も様々なことを考えていますが、その大半がネガティブな内容なのです。特に座ってじっと考え事をした場合、何事にも否定的なシミュレーションが頭を過ります。過去の経験や悪い噂をベースにしたネガティブな予想や分析が、人間の脳は得意なのです。

そうすると、新しい自由な発想が生まれる余地がなくなってしまいます。新しい事を学習しようとしても、古い情報とそれが複雑に絡んだ思考の澱が邪魔をしてしまうのです。その人が本来持っている潜在的な力を発揮しようとしても、このネガティブな思考がその発現を阻害してしまいます。新しく物事を始めるときに「よく考えてからやりなさい」と周辺の人はアドバイスするものですが、新しいことにチャレンジしようとしたとき、先に後ろ向きな思考が浮かんでしまい、結局チャンスを逃してしまうというのは、多くの方が経験する事でしょう。

ストレスを受けた状態というのもこの脳の働きが影響しています。例えば何かが巧くいかなくて叱られたり、大切なものを失った場合、脳は一日に何万回とこの巧くいかなかった状態を繰り返しシミュレーションし、それがストレスを生んでいるのです。瞑想をして、何も考えない脳の状態を作り出す訓練を行うと、少なくとも瞑想をしている間は、このストレスから開放され、また、ストレスに対抗する身体の準備ができるのです。

瞑想を取り入れたとされる成功者は、例えばアップルのスティーブ・ジョブス、マイクロソフトのビルゲイツ、京セラの稲森和夫氏など数多く知られています。スポーツマンでも、NBAで大活躍したマイケル・ジョーダン、日本人では、最近「心を整える。」という本が大ヒットした、日本代表のサッカー選手長谷部誠なども瞑想を取り入れているといいます。

   
簡単に行える瞑想
 
瞑想を誰でも簡単に行なえる方法を紹介しましょう。
 
  1. 座ります。別に固い床に座禅を組む必要はありません。自然にリラックスして楽に座れる状態であれば、椅子に座っても胡座をかいてもかまいません。できれば静かな部屋で、照明も少し落とします。背筋は伸ばしますが、緊張しない程度に。
  2. 眼を軽くとじ、眼から様々な情報が入らないようにします。いつも無意識に行っている呼吸を、意識的に行います。
  3. 鼻から息をゆっくり吸って、鼻から息をゆっくりはきます。
  4. この呼吸を感じ、そこに意識をもっていきます。
  5. この呼吸を20回以上繰り返し、呼吸数を数える事に集中します。
  6. できるだけ考えない状態を作り出します。
  7. 10分から20分程、この状態を続けたら、瞑想を終了して意識が戻ってくるのを待ちます。眼を閉じたままで数回深呼吸をして、両手で身体に触れて瞑想状態を解きます。
  8. 静かに眼を開けます。 
   
生活に瞑想を取り入れて、ストレスを軽減
 

 瞑想をサポートする小物類もあります。アロマオイルで、心のリラックスを手助けしてくれるものがあり、アロマに抵抗が無い人にはお勧めです。座る姿勢を楽にする瞑想用のクッションもありますし、瞑想用のCDとして制作されたものも沢山あります。チベットの高僧が奏でる浄化音を聞く事ができるCDなどです。こうした小物で楽しく演出して、生活の中に瞑想を巧く取り入れることで、ストレスを軽減してはいかがでしょう。

   

 

「ノロウィルス」には正しい知識で対策を(2013年12月)

 

     
 
12月のテーマ:
「ノロウィルス」には正しい知識で対策を

 この冬も、ノロウイルスなどの感染性胃腸炎が大流行の兆しがあり、首都圏の患者報告数が各所で警報基準値を超えているといいます。国立感染症研究所によると、感染性胃腸炎の報告数は例年11月に入ると増えだし、12月にピークを迎えるというパターンがここ数年くりかえされているということです。今、まさに感染症対策に最大の注意が必要な時期を迎えていますが、ノロウイルスに対する知識が不足していたり、間違った常識のために感染のリスクを膨らませてしまったりするケースが多いとも言われます。そこで、今回は正しい対策をとるための基礎知識と、多くの人がしている誤解について紹介したいと思います。

 
     

 

ノロウイルスとは
 

  2002年の第12回国際ウイルス学会で、それまで「ノーウォークウイルス」または「小型球形ウイルス」と呼ばれていたものが「ノロウイルス」と定められました。それまで、電子顕微鏡による観察ではその形態が認められていたウイルスの遺伝子解析が進んだ結果、正式な分類学上の名前がついたわけです。

このウイルスの特徴は、高齢者から乳幼児まで広い年齢層で急性胃腸炎を引き起こし、感染力も非常に強いというもので、下痢や嘔吐を引き起こします。この嘔吐された吐瀉物に含まれるウイルスが、乾燥しホコリとともに空気中に舞い上がりそれを吸入すると感染してしまうという厄介な性質をもっているのです。

 
誤解その1「アルコール消毒すればウイルスは退治できる」
 

 普段からバイ菌類は、アルコールで消毒できると言われています。傷口の痛みに堪えてアルコール消毒した経験は、どなたもあることでしょう。あの痛みも消毒のためと我慢していたはずです。ところが、ノロウイルスにはこのアルコールが効かないのです。ノロウイルスは、エンペロープ(宿主細胞の膜)と呼ばれるものを持っていないので、アルコールや少しばかりの高温では消毒することができないのです。乾燥や酸にも強く、水中でも長時間生きる事ができるという性質を持っています。集団感染に至るケースが多いのも、こうしたしぶとい性質によるものなのです。

誤解その2「一度感染すれば免疫ができて、二度と感染しない」
 

 ノロウイルスには、多くの遺伝子型があるため、一度ノロウイルスに感染してその遺伝子に免疫ができたとしても、別の遺伝子型のノロウイルスには、また再び感染してしまうことがあるのです。また、腸粘膜での局所感染なので免疫ができたとしても、その免疫の持続時間が短いといわれます。一度感染したから、もう大丈夫と思って油断していると再感染を起こすこともあります。

誤解その3「ノロウイルスは、もともと牡蠣がもっているウイルスだ」
 

 生牡蠣を食べて感染する事が多いので、もともと牡蠣の内部に生息していると思っている方も多いのではないでしょうか。しかし、ノロウイルスは牡蠣ではなく、海水の中に生息しています。牡蠣のような二枚貝は海水を常に吸い込み、吐き出しているので、海中のノロウイルスが内蔵に蓄積され、凝縮されてしまうのです。もともと人間から排泄されたウイルスが、海水中に流れこんで海水を汚染しているというのが実態なのです。

アサリや蛤、ムール貝なども同じ二枚貝ですが、生で食べないため感染源にならないのです。また、ホタテの貝柱も生で食べますが、ウイルスがいる内蔵は食べないのでこれもまた感染するリスクが少ないとされます。

   
ノロウイルスにかかった場合の対処法
 

 子供や老人がノロウイルスに感染すると、激しい下痢や嘔吐による脱水症状で重症化するケースがあります。脱水症状が進むと意識障害を起こし、最悪の場合死亡することもあります。特に幼児の場合は、自分の吐瀉物を喉に詰まらせて窒息してしまうことがあるので注意が必要です。
 脱水症状を進行させないためには、スポーツ飲料を薄めたものや経口補水液をこまめに飲ませるようにすると良いでしょう。水分補給の目安は体重1kgあたり50mlを4時間で与えます。10kgの体重の子供であれば500mlを4時間で給水というのが目安になります。病院で点滴による水分補給という方法もあるので、とにかく医療機関にまず診断を仰ぐことで、大事に至らないように注意しましょう。

   
看護による感染に注意しましょう
 

 子供がノロウイルスにかかると心配でつきっきりで看護するという場合もあるでしょう。しかし、感染予防対策も同時にとらないと家族全員が感染してしまう危険があります。
 まず、家族の一人が感染した場合、他の家族と隔離して看護する人間は一人にします。前記のようにアルコール消毒は効き目がありませんから、家族全員が流水と石鹸でこまめに手洗いするという衛生管理を徹底します。

吐瀉物や下痢便には大量にノロウイルスが含まれていますから、清掃にはマスクと手袋を着用して空気中にウイルスが舞い上がらないように注意してください。汚染物は、ビニール袋にいれて密封します。

さらに、塩素系消毒剤を使って、患者の周辺の床やドアノブ、患者が手を触れる可能性のある所を消毒します。マスクや清掃に使った布類もビニール袋に密閉して廃棄してください。

   
市販薬は使わない
 

 ノロウイルスによる嘔吐や下痢は、身体がウイルスを排出しようとして起きる症状なので、市販の下痢止め等を使う事は逆効果になります。嘔吐や下痢を市販薬で止めてしまうと体内にウイルスを残してしまう事になるので、自己判断で薬を使う事は厳禁です。市販薬に頼らず、まず医療機関に症状を伝えて、対処法を相談してください。

これからの流行する時期に備えて、勝手な判断をせず正しい対処方法を理解したうえで、ノロウィルスに対応していきましょう。

   

 

健康寿命をのばす生涯スポーツについて(2013年11月)

 

     
 
11月のテーマ:
健康寿命をのばす生涯スポーツについて

 厚生労働省の資料によると、日本人の平均寿命を平成13年と平成22年で比較すると男性は78.07歳から79.55歳へと0.97年のび、女性は84.93歳から86.30歳へと1.37年のびています。

寿命にはもう一つ、健康寿命という言い方があります。これは、介護などを受けなくても自力で生活のできる状態を保てる年齢ということです。この健康寿命を同じ平成13年と平成22年で比較すると男性は69.40歳から70.42歳へと1.02年のび、女性は72.65歳から73.62歳へと0.97年のびています。この平均寿命と健康寿命の差が、男性で8.67年から9.13年に、女性が12.28年から12.68年に広がっているのです。

つまり、不健康な状態で生きる期間がのびていることになります。これは、不自由な生活を強いられる本人も大変ですが、介護をする周囲の人の負担も増えているわけです。そこで、自分に許された生のギリギリまで元気に過ごしたいという万人の思いに応えようと「健康寿命」をのばす取り組みが様々な機関、研究者によってなされています。

今月は、先月に引き続き、そうした「アンチエイジング」と「健康寿命」をテーマに紹介していきます。

 
     

 

年齢相応にスポーツ競技を楽しむ
 

 高齢者になれば、誰もが運動機能の低下を実感することになります。しかし、低下のレベルは年齢に応じて一律というわけではありません。壮年のベテラン登山者でも難しいエベレスト登頂を、独自のウォーキングで肥満と糖尿病を克服し80歳で成し遂げた三浦雄一郎氏。60歳で剣道を始めて80歳で六段を取得したという人もいます。

過酷さで知られるトライアスロンに、60歳で初挑戦するという人も少なくありません。様々なスポーツのマスターズ大会には、毎年多くの高齢者が参加し、年齢区分ごとの記録も更新されるなど活躍の様子を耳にします。

例えば、4年毎に開催される最も大きな国際総合スポーツ大会であるワールドマスターズゲームズは、1985年のカナダ・トロント大会では22の競技が行われ、8,305人が参加。24年後の2009年のオーストラリア・シドニー大会では、28競技に28,676人が参加しています。

 国内で毎年開催される日本スポーツマスターズは、原則35歳以上と規定された言わば国体の中高年版。今年も9月13日から17日にかけて行われた北九州大会に、水泳、サッカー、テニス、自転車競技、空手道、ゴルフ等13競技が行われました。

 11月30日、12月1日に行われる水泳のジャパンマスターズには、今年も99歳まである5歳刻みの年齢区分に3000人の参加が予定されています。

マスターズ大会とはいえ、競技スポーツには、身体の柔軟性、筋力、心肺能力などが、日常生活レベルを超えて競技レベルであることが要求されます。こうしたスポーツに意欲的に取り組む人たちは、特別に頑健な身体をしているのでしょうか。

確かに、どんなに過酷なトレーニングをしても身体を壊さないという人も中にはいます。しかし、殆どの人は、どのぐらい練習するとケガをしやすくなるか、どのような疲労をためると免疫力が低くなって、風邪を引きやすくなるかという自分なりの経験知をもって、長い競技生活を楽しんでいるのです。つまり賢く自分の身体と対話しながら、日々の練習をコツコツと積み上げ、体調を管理しているのです。

 アンチエイジングという視点で見た場合、こうしたマスターズ競技から得られるノウハウは少なくありません。最も大切なことの一つは、自分の身体と対話する能力を身に付けることができるということでしょう。

世の中には、驚く程たくさんの「身体に良い」とされる健康法、トレーニングメソッド、食事法、養生法などがあります。こうしたものは、どれも身体に良さそうで次々に試したくなるものばかりです。しかし、中には、提案されている理論が真っ向からぶつかり合い、正反対のことを主張している場合もあります。

 アンチエイジングを目指す食事法でも、「健康のために肉を食べなさい」というものと「長生きしたいなら肉は食べるな」という本が、書店に並べてあったりします。「40代からの節制は寿命を縮める」と「粗食のすすめ」というタイトルの本もあります。また、バナナや納豆やトマトジュースやサバの缶詰が話題になり、食料品店の棚から消えてしまうということもありました。ブームに乗って試した人も多いことでしょう。しかし、こうしたことを試してみるということも、あながち無駄だったということばかりではないのです。そのときに自分の身体にどんな変化が起きたかということを観察することで、自分の体質や適応状況を知ることができるのです。

 身体が軽くなったり、重くなったり、胃が重くなったりスッキリしたり。寝起きが良くなったり、寝付きが悪くなったり。熟睡できたり、頭が痛くなったり、筋肉痛になったり、痩せたり体重が増えたりといった自分の身体に起きた変化を注意深く確認しておくこと、自分に向くものと向かないものを見極めて生活に取り入れて行くことが、アンチエイジングに繋がると考えられます。そういった意味で、常に身体を意識することになるスポーツを一つ趣味にしておくことをお勧めします。

   
健康寿命をのばすために
 

 先に挙げた三浦雄一郎氏の父親である三浦敬三氏は、100歳を超えても現役スキーヤーでしたが、健康寿命をのばす長寿遺伝子が活性化している例として加齢制御医学の見地からも注目されました。99歳でモンブラン山系最長であるバレーブランシュ氷河の滑走を成功させた三浦敬三氏は、オフシーズンも毎朝4キロのウォーキングをし、次のスキーシーズンに備えていたそうです。永くつき合えるスポーツを一つ身につけておくことが、健康寿命をのばすということを証明している好例ですね。