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まめ知識カテゴリ: 健康まめ知識

新しい一年の始まりに、心の健康を考える(2007年1月)

 

     
 
1月のテーマ:
新しい一年の始まりに、心の健康を考える
 みなさん、新年明けましておめでとうございます。健康のこと、生活のこと、仕事や勉強のこと…新しい年の始まりに、一年の目標はたてましたか?お正月休みで緩んだ生活のリズムもそろそろたて直して、今年も元気にスタートしましょう。

さて、ここでは毎回身近な病気などについてお話ししていますが、今回は少し趣向を変え、精神障害のひとつであるPTSD(外傷後ストレス障害)について触れていきます。

 
     

 

PTSD(外傷後ストレス障害)とは?
 

 PTSDとはPost-traumatic Stress Disorderの略称で、戦争や自然災害、事故、家庭内暴力や性的虐待など、自分自身や身近な人の生命や身体に脅威となる外傷的な出来事を経験した後に長く続く心身の病的反応を指します。日本では阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件に関連して大きく取り上げられ、注目されるようになりました。

<主な症状>

PTSDでは、以下の3症状が同時に出現します。

1.再体験

原因となった体験を、意図しないのに繰り返し思い出してしまう(フラッシュバック)ことや、悪夢など。

2.回避

原因となった体験を思い出してしまうような、類似した出来事を意識的もしくは無意識的に避け続ける行動をとること、感情や感覚などの反応性の麻痺など。

3.持続的な覚醒亢進(こうしん)

交感神経の亢進(高ぶる)状態が続き、睡眠障害や神経過敏、集中困難などイライラした状態が続く。

 
PTSDにかかるケース
   PTSDは、心的な外傷を受けた後、上記のような症状が数週間から数ヶ月の間に起こり、数年に渡って続く精神障害です。通常ならば衝撃的な出来事を体験した場合でも、時が経つにつれてそのショックや記憶は薄れていくものですが、受けたショックがあまりにも大きすぎる場合などに発症するとみられています。ただし個人差も大きく、同じような体験をした場合でも発症する人としない人がいるように、個人の性格やストレスへの過敏性など、様々な要因が発症に影響していると研究が進められています。また、幼児期など自我の未発達な段階で受けた大きな心的外傷は特に危険性が大きいと考えられ、早期の対応が必要とされています。

PTSDの重症度には大きな幅があり、比較的軽症のものから重症のものまで、患者によって様々です。大災害や大事故でなくても、家庭や学校、会社内など日常生活をとりまく環境のなかで受けた心的外傷が発端となることもあり、昨年も大きく取り上げられていた「いじめ」問題も重要な要因のひとつと言われています。

 
治療について
   現在のところ、主な治療は薬物療法と心理療法です。睡眠障害や過敏症状などには抗不安薬、抑うつ症状には抗うつ薬などが用いられ、心理療法ではカウンセリングを中心に体験を言葉にする行動療法などが行われています。しかし、多くの患者は、原因となった体験を思い出したくないがために、それについて語るのを避ける傾向があり、周囲からの協力や理解を得にくいという問題点があります。誰かに話して相談できる態勢づくり、また、周囲がその人を心理的に支えていくことが治療の第一歩です。

医療機関では、精神科・心療内科が本症の診療に当たっています。

 
 
 残念ながら事故や事件は後を絶たず、被災者や被害者、その家族の苦しみは続いています。ただし、PTSDはあくまでも回復可能な病気です。原因となった心的外傷を取り除くことはできませんが、その体験が日常生活に大きな障害を起こさなくなることが第一の回復と考えられます。原因となるような事故や事件が起こらないことを願いつつ、今年も一年明るく健康に過ごしましょう!

 

 

体の芯・骨を丈夫にして骨粗しょう症を予防しよう(2006年12月)

 

     
 
12月のテーマ:
体の芯・骨を丈夫にして骨粗しょう症を予防しよう。
 いよいよ2006年も最後の月。「師走」と呼ばれる通り、何かと忙しい時期ですが、1年の最終チェックに体の芯・骨の健康を考えてみましょう。骨が弱くなると心配されるのが、「骨粗しょう症」という病気です。この機会に、食事をはじめとする生活習慣を見直して、骨を元気に丈夫に保ちましょう。
 
     

 

骨粗しょう症ってどんな病気?
 

 「骨粗しょう症」とは、骨を構成するカルシウム不足が原因で骨の密度が減り、骨がスカスカになって骨折しやすくなる病気です。現在日本では約5,000万人もの患者がいると言われ、高齢の女性に特に多い病気でもあります。

本来骨は硬くて丈夫なものですが、髪の毛や皮膚と同じように新陳代謝を繰り返しています。古くなりもろくなった骨の一部を壊して(骨吸収)、新しい骨に作り替えるはたらき(骨形成)を「骨のリモデリング」と呼び、これは成長期を過ぎたあとも一定のサイクルで続きますが、加齢や運動不足などの生活習慣が原因でこのバランスが崩れると骨粗しょう症の原因となります。

 
なぜ骨が弱くなるの?
 

 骨の主成分となるミネラルで、体内に含まれるカルシウムのうち、99%が骨に含まれています。残りの1%は血液などに含まれ、わずか1%と言えども体や細胞の機能と深い関わりのある大切な役割を担っているため、血中のカルシウム濃度が不足すると、骨からカルシウムを引き出していくしくみになっています。つまり、カルシウム不足の状態が続くと、骨からどんどんカルシウムが溶け出してしまうのです。

 
骨粗しょう症になりやすい人はどんな人?
 
骨粗しょう症になる原因には様々なものがありますが、以下に主なものを挙げます。
○生活習慣に関わるもの

・ カルシウム不足の人

 偏食で栄養バランスの偏っている人や乳製品を摂らない人など、カルシウム不足は大きな原因のひとつです。

・ 体を動かすことの少ない人

 適度な運動は骨に刺激をあたえ、骨を丈夫にします。運動しないと骨は次第に弱くなってしまいます。

・ 日光に当たらない人

 カルシウムの吸収に欠かせないビタミンDは、日光に当たることで皮下に合成されます。日光に当たらない生活を続けていると、カルシウムを摂取していても体内に充分吸収されません。

・ 喫煙習慣のある人

 煙草に含まれるニコチンは、腸からのカルシウムの吸収を阻害し、カルシウムを尿内に排出してしまいます。

・ 極端なダイエットをしている(していた)人

 無理な食事制限など、栄養不足の状態になるダイエットは、同時にカルシウム不足の原因にもなり、骨量の減少を引き起こします。

○体質・年齢に関わるもの

・加齢によるもの

 年をとると、性ホルモンの産出が低下するほか、骨芽細胞(骨をつくる細胞)の働きが弱くなります。高齢者は食事の量が減る傾向もあるため、カルシウムの吸収量も低下します。

・閉経した人

 閉経によって女性ホルモンが急激に減少すると、破骨細胞(骨を壊す細胞)の働きに骨芽細胞の働きが追いつかなくなり、骨が弱くなっていきます。

・骨粗しょう症と診断された家族がいる人

 骨粗しょう症は遺伝するものではありませんが、骨量の減少傾向が同じであったり、乳製品の好き嫌いなど食生活が似ている場合が多く、注意が必要です。
 
  骨粗しょう症の予防法は?
 

 丈夫な骨を保つには、普段の食事と生活スタイルに注意することが大切です。
○食事編

まずは十分な量のカルシウムを摂ること。日本人のカルシウムの1日の所要量は600mgとされています。乳製品や小魚類、大豆食品など、カルシウムを多く含んでいる食品を積極的に取り入れましょう。

カルシウムの吸収に必要なビタミンDなど他の栄養素にも気を配らなくてはいけません。良質のたんぱく質を含む食品など、バランスの良い食生活を心がけましょう。また、スナック菓子やインスタント食品などに含まれるリンは、体に必要な栄養素のひとつですが、摂りすぎるとカルシウムの吸収を妨げてしまうので気をつけましょう。

 ○生活編

適度な運動は、骨を丈夫に保つのに大切な役割を果たします。過激な運動をする必要はなく、ウォーキングなどの軽い運動を毎日続けることがポイントです。元々骨が弱くなっている恐れの高い高齢者の方は、転んで骨折したりする事もありますので、無理な運動は避けてあくまで軽い運動から始めましょう。

また、喫煙やアルコール・コーヒーなど嗜好品の摂取は骨量の減少につながります。喫煙や過度の飲酒にも気をつけましょう。

 
 女性の骨量は、概ね50歳を過ぎると急激に低下するものです。市町村などで行われている骨診断を受けるなどして、まずは自分の骨量を知っておきましょう。閉経後は年1回のペースで骨量を測定し、減少の経過を観察すると良いようです。一方男性は、70歳くらいまでは骨量測定の必要はないと言われていますが、病歴などによっても骨量に差が出てくるので油断は禁物です。

カルシウムをたくさん含んだバランスのよい食事、日中の運動など健康的な生活は骨にも健康を与えます。来年からと言わず、今から骨のために生活改善してみませんか?

 

 

今年は何型?インフルエンザは予防が肝心!(2006年11月)

 

     
 
11月のテーマ:
今年は何型?インフルエンザは予防が肝心!
 にわかに寒くなり、季節はいよいよ冬めいてきました。秋から冬、この季節の変わり目に注意したいのは、やっぱり「風邪」。なかでも、インフルエンザは普通の風邪とは違う感染症で、特に注意が必要な病気です。国内で毎年約1,000万人がかかるというインフルエンザ。今回は、本格的な流行を前に、インフルエンザの予防についてお話します。
 
     

 

インフルエンザと風邪の違いは?
 

インフルエンザと風邪は、そもそも原因となるウィルスの種類が違います。インフルエンザは高熱が出るだけでなく、筋肉や関節の痛みなど全身に出る症状が強く、気管支炎や肺炎を併発しやすいなどの特徴があり、抵抗力のない乳幼児や高齢者にとっては生命にかかわる危険も。また、突然大流行することもある、恐ろしい病気です。

「普通の風邪と思っていたら、インフルエンザだった」ということのないよう、以下のような症状を感じたら早めに医師の診断を受けましょう。

<チェックポイント>

・地域内、職場・学校などでインフルエンザが流行している。

・一般的な風邪の症状(咳や鼻水など)がなく、突然高熱が出る。

・38℃以上の発熱およびひどい悪寒を感じる。

この他、間接や筋肉の痛み、倦怠感や疲労感、頭痛、寝込んでしまうほどの症状が出た場合も「ただの風邪だから」と見過ごさずにインフルエンザを疑いましょう。

 
インフルエンザの流行型
 

インフルエンザにはさまざまな型があり、原因となるインフルエンザウイルスは大きく分けてA型、B型、C型の3つに分類されます。さらに毎年の流行を経て変異株があらわれ、特にA型ウイルスは多くの変異株があり、世界的な流行を引き起こすこともあります。A型ウイルスは渡り鳥などによって国を越えて運ばれ、どの型が流行するかという予測は、地球規模の動向を解析して行われます。

予測技術が高まり、毎年実際の流行とほぼ一致するため、予防にはその年の予測をもとに作られた混合ワクチンが効果的です。新型ウイルスが出現しないかぎり、ソ連型、A香港型、B型、どの型が流行しても効果があります。ワクチンの効果が出るのは、接種から約2週間後で効果は5ヶ月前後持続します。日本でインフルエンザが流行するのは例年12月~3月で、1月下旬から2月初旬にピークを迎えることが多いといわれるので、流行前のこの時期に予防接種を受けておくのがいいでしょう。

ただし、体調やアレルギーなどの既住症などによって接種できないこともあるので、医師に相談しましょう。

 
日常生活から予防を!
 
インフルエンザ予防のポイントは、体力をつけて体の抵抗力をつけておくことと、ウイルスに接触しないこと。以下にまとめた予防法を、今日から実践してください。

・栄養と休養を十分とる

食事と睡眠をしっかりとり、体力をつけておきましょう。体の抵抗力をつけておくことで感染しにくい体になります。

・人ごみを避ける

感染の原因となるウイルスに接触しないよう、多くの人が集まる場所は極力避けるように。外出時はマスクを着用するのも良いでしょう。

・温度と湿度を適度に保つ

ウイルスが好むのは、低温・低湿の環境。特にインフルエンザウイルスは湿度に弱いため、加湿器などを活用して室内を快適な湿度に保ちましょう。

・手洗いとうがいを励行する

外出後は、手洗いとうがいを必ず行いましょう。手洗いは接触による感染を、うがいはのどの乾燥を防ぎ、ウイルスの感染を予防します。

 
まずは予防が第一ですが、万が一インフルエンザの疑いがあるような症状が出た場合は、早めに診断を受けること。発症から48時間以内であればインフルエンザウイルスの増殖を抑える薬が処方されるようになり、その服用は早いほど効果的です。ウイルスがのどや鼻の粘膜に広がり高熱が出てしまうと、根本的な治療が間に合わず、長期間休まなくてはならなくなってしまうこともあります。また、乳幼児や高齢者にとっては命にかかわる危険もあるため、できるだけ早く診断を受けるようにしましょう。

とにかく「インフルエンザは普通の風邪と違って恐ろしい感染症」であることを知り、予防に細心の注意を払って冬を乗り越えましょう。

 

 

食欲の秋到来!美食家は痛風になりやすい?(2006年10月)

 

     
 
10月のテーマ:
食欲の秋到来!美食家は痛風になりやすい?
 食欲の秋。暑さも過ぎ、食べ物がおいしい季節です。「うまい肴をつまみにお酒を飲むのが何よりの楽しみ」という人もいるかと思いますが、そんな人は特に注意して欲しいのが痛風という病気。「オヤジの病気」のイメージが強い痛風ですが、若い男性にも意外と多いもので、全国に数十万人の患者がいるといわれる病気です。今回は、あのレオナルド・ダ・ヴィンチも苦しめられたという「痛風」についてお話します。
 
     

 

痛風ってどんな病気?
 

「風が吹いただけで痛い」ほど足の関節が痛む病気、として知られる痛風。ある日突然足の親指の付け根が腫れ、立ち上がれないほどの痛みが発作的に起こります。この発作はたいていの場合1週間ほどで治まりますが、半年から1年の期間を経てまた同じような痛みが起こり、繰り返すうちに足首や膝の関節まで広がってくるように。怖いのは、この痛みと併行して内臓が侵されていくこと。間接の強烈な痛みだけでなく、腎臓などの内臓にも障害が起こってしまう病気と覚えておきましょう。

 
痛風の原因
 

痛風の原因となるのは尿酸という物質で、人間の体の中に必ず一定量あるものです。この尿酸値が何らかの原因で上昇し、蓄積していくと、ナトリウムと塩を作り結晶になります。その尿酸塩の結晶が間接の内面に沈着してしまうのが、痛風発作の原因。尿酸塩は間接以外の部分にも溜まり、特に腎臓には溜まりやすいので痛風の人は腎機能にも注意が必要です。

●痛風にかかりやすいのは男性

痛風患者のほとんどは男性。100人の患者のうち、女性は1、2名ほどしかいないほど男性に多い病気です。その理由は血液中の尿酸濃度(血清尿酸値)の違いにあり、一般的に男性よりも女性のほうが尿酸値が低いもの。女性ホルモンには腎臓からの尿酸の排泄を促す働きがあるためですが、閉経後に女性ホルモンの分泌が減ると尿酸値も少しずつ上昇するので、おおむね50歳以上の年代では男女の尿酸値の差は縮まってきます。

 
痛風を防ぐには
 
痛風を防ぐには、尿酸値を下げることが大切。それには尿酸のもとになるプリン体という物質を減らすのが第一です。

●尿酸値を上昇させる要因

・食生活

「美味しいものにはプリン体が多い」と言われていましたが、厳密な制限は難しいため、最近では痛風患者に対しての食品制限はそれほどされなくなっています。ただし、肥満度が高いほど尿酸値も上がるため、食事の総量を減らすことは大切です。

・遺伝

痛風患者の約2割は、父親や叔父、従兄弟に痛風もちがいます。痛風には遺伝的な体質が関連するので、親類に痛風患者がいる人は注意が必要です。

・アルコール

アルコールを飲むと尿酸値は一時的に上昇します。特にビールにはプリン体が多く含まれるので、痛風には大敵。焼酎やウイスキーなどの蒸留酒にはあまり含まれませんが、アルコールが代謝するときに尿酸値が上がるため、アルコール自体好ましくありません。

・ストレス

様々な病気の原因となるストレス。ストレスや激しい運動は尿酸値を上昇させる原因となります。

・他の病気の影響

腎機能の低下や、血液の病気などによって尿酸値が上がることも。悪性腫瘍が原因で高尿酸血症になることもあるので、注意が必要です。

●尿酸値を下げるには

尿酸値を下げるため日常生活で注意するポイントに、以下のようなものがあります。

・肥満を解消する

摂取カロリーの総量を制限すること、そして標準体重をキープすること。多品目を少しずつ、ゆっくり噛んで食べるよう心がけましょう。

・アルコールを控える

多量の飲酒は避け、特にビールを控えましょう。休肝日をつくるのは、肝臓を含め他の臓器にも良いことです。

・水分を十分とる

尿が1日2リットル以上になるのが理想。そのため、毎日2リットル以上の水分をとるようにしましょう。

・軽い運動をする

激しすぎる運動は尿酸値を上昇させてしまいますが、ウォーキングなどの有酸素運動ならOK。痛風患者に多い高血圧などの合併症にも効果的です。

 
痛風発作が起こった場合は、患部を冷やし、間接を安静にしましょう。痛み止めの内服薬は発作を悪化させることもあるので服用を避け、早めに医師の診断を受けること。

ダイエットと同じく厳しい食事制限を続けることは難しいものですが、日常生活での注意ポイントを守ることが大切。痛風は「尿酸が溜まっているから注意しろ」という身体からのサインと考えましょう。

 

 

食欲の秋到来!腸内環境を整えて、おいしく食べよう。(2006年9月)

 

     
 
9月のテーマ:
食欲の秋到来!腸内環境を整えて、おいしく食べよう。
 残暑は続きますが、季節は徐々に秋へと色づいてきました。さて、秋と言えばやっぱり”食欲の秋” 健康と食は切っても切れない大切な関係。健康の源である食事をおいしく楽しむために、胃腸の自己管理は欠かせません。そこで今回は、腸内環境についてお話しします。
 
     

 

健康に役立つ”腸内細菌”
 

  私たちの体の中には無数の細菌が棲息しています。細菌と聞くと、なんだか体に悪いもののように感じますが、常在菌と呼ばれるこの細菌たちは、病原菌など身体へ有害な菌の進入や増殖を防ぐ大切なもの。その中で、腸内に棲息する細菌を腸内細菌と呼びます。

●腸内細菌とは

常在菌が最も多く棲息しているのが消化管内で、胃腸管の内壁を覆うように棲みつく無数の細菌が腸内細菌です。腸内細菌は、食べた栄養素から体を構成するのに必要なタンパク質などを合成したり、ビタミンを生成したり、免疫機能を強化させたり、中性脂肪や血糖などの代謝を促進させたりと、健康に関わる多くの働きをしています。

●善玉菌と悪玉菌

さて、腸内細菌といえば善玉菌という言葉を耳にしたことがある人も多いかと思います。お腹に良いとされる「乳酸菌」がそれで、糖類を分解して乳酸や酢酸を生産したり、便秘や下痢を防いだり、消化・吸収・代謝を助けるなどの働きをもつ細菌の総称です。

ちなみに、腸内細菌には、この善玉菌と悪玉菌、そして食生活や体調によって善玉・悪玉のどちらにもなりうる日和見菌の3種類が存在します。悪玉菌は、その名の通り体に悪い働きをする菌で、ブドウ球菌やウェルシュ菌などが挙げられます。

生まれたばかりの赤ちゃんのお腹の中はほとんどが善玉菌ですが、成長と共に悪玉菌が増え、菌のバランスが崩れていきます。悪玉菌が増える原因には、ストレスや薬の服用によるもの、便秘、食生活や疾病などが挙げられますが、悪玉菌が増えると様々な有害物質が生成されることになり、免疫力が低下したり生活習慣病が発症しやすくなると言われています。

体と健康に大切な腸内細菌ですが、一度バランスの崩れた腸内環境は、放っておけば改善されるというものではありません。腸内細菌のバランスを整えるには、偏った食事ではなく、腸内細菌が好んで食べる乳酸菌やオリゴ糖、食物繊維などをしっかりと摂るように心がけることが大切です。

 
ビタミンを作る腸内細菌
 

健康づくりに欠かせないもののひとつにビタミンがありますが、このビタミンを生成するのが腸内の善玉菌。腸内細菌がつくり出すビタミンには、ビタミンB郡(ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12)、葉酸、ビタミンKなど、多くの種類が確認されています。

●ビタミンの種類

【ビタミンA】

皮膚や粘膜を丈夫にする。

【ビタミンB1】

脳を活性化し、疲労を防ぐ。

【ビタミンB2】

発育を促進する成長ビタミン。

【ビタミンB6】

タンパク質をつくる。

【ビタミンB12】

貧血を改善する。

【ビタミンC】

コラーゲンの生成を助ける、ビタミンの代表格。

【ビタミンD】

強い骨や歯をつくるカルシウムを調整する。

【ビタミンE】

活性酸素から体を守る。

【ビタミンK】

血液凝固と骨の健康に役立つ。

【ベータカロチン】

緑黄色野菜に豊富に含まれる、抗酸化ビタミン。

【ビオチン】

皮膚の健康を保つ。

【葉酸】

赤血球や細胞を作るのに役立つ

 

 
ストレスは善玉菌の大敵!
 
強いストレスは腸の蠕動(ぜんどう)運動をコントロールする自律神経中枢にも影響を及ぼし、便秘や下痢を引き起こす要因となります。不規則な便通は腸内細菌のバランスを崩し、善玉菌を減らして悪玉菌を増殖させてしまいます。

●便秘

便通が不規則で、水分の少ない便が出るのが便秘です。便が何日も腸内に滞ると、悪玉菌が繁殖して便を腐敗させます。腐敗した便は有毒物質やガスを発生し、これらの毒素が血液によって全身に運ばれると、様々な病気を引き起こす原因ともなります。便秘気味の人は、食物繊維と水分をしっかりととり、正しい食生活を心がけましょう。

●下痢

便に含まれる水分が腸内で十分に吸収されずに排泄されるのが下痢です。体を冷やさないように気をつけ、温かいスープなどで失われた水分や栄養素を補給しましょう。ただし、腹痛や嘔吐、発熱、血便など異常を感じる下痢の場合は食中毒などの可能性も考えられるので、速やかに医師の診断を受けましょう。

 気持ちのいいお通じは腸の健康につながり、便通を正しく整えることが腸内環境を良好に保つ秘訣です。そのためにもストレスをためないように自分なりの解消法を見つけるなど工夫し、積極的に食物繊維を摂るように心がけましょう。

食物繊維の一日の摂取量の目安は、20~30gです。食物繊維は玄米や麦芽米などの穀類、大豆などの豆類、さつまいもや山芋などのいも類、ごぼうやにんじんなどの根菜類などの野菜に多く含まれています。また、わかめやひじき、寒天などの海藻、きのこ類、乳製品なども食物繊維を多く含む食品。これらの食材を毎日の食事に積極的に取り入れ、上手に食物繊維を摂取しましょう。

 
「食欲の秋」と言えば、気になるのがダイエット。しかし、食べる量を減らすダイエットは便の量と体内の水分を減らすことになり、便秘へとつながる恐れも。また、食事を抑えるだけで運動をしないダイエットも、筋肉を落とし腸の働きを鈍くしてしまうため、腸内環境には好ましくないものです。健康な腸の働きを助けるのは、規則正しい生活とバランスのよい食事、そして快便です。おいしく食べて、体の中から健康管理に努めましょう。

 

 

寝苦しい季節、環境を整えて快眠を手に入れよう。(2006年8月)

 

     
 
8月のテーマ:
寝苦しい季節、環境を整えて快眠を手に入れよう。
寝苦しい夏の夜。クーラーなしでは寝つけなかったり、起きたら汗びっしょり…なんて人も多いのではないでしょうか? 夏に限らず、生活リズムの乱れやストレスの多い現代社会の影響か、現代人は5人に1人が不眠に悩まされているそうです。十分な睡眠時間が得られない人も、すっきりとした寝覚めが感じられない人も、睡眠環境を整えて『快眠』を手に入れましょう。
 
     

 

理想の睡眠時間は8時間?
 

よく理想の睡眠時間は「1日8時間」と言われますが、実はこれには医学的根拠はありません。多くの人の睡眠時間が6~9時間程度という統計から出された平均値に過ぎず、また、この平均値も年々減少傾向にあるようです。国民生活時間調査(2000年NHK調べ)によると、日本人の平均睡眠時間は7時間23分で、年代別に見ると30代が6時間57分、40代が6時間59分と、働き盛りの年代に特に睡眠時間が短いという現象が見られます。

睡眠時間にはかなりの個人差があり、毎日3~4時間の睡眠で十分な睡眠が得られる人もいれば、9時間以上の睡眠が必要な人もいるのが実情。基本的には、日中眠気がなく活動できるのに十分な睡眠時間が確保されていれば、睡眠時間は何時間でも構わないと言われています。

 
睡眠の仕組み
 

睡眠には浅い眠りのレム睡眠と、深い眠りのノンレム睡眠があります。寝付いたあとにはまずノンレム睡眠があらわれ、次に浅い眠りのレム睡眠へと移行します。そのあと再びノンレム睡眠へと移行し、この繰り返しが約90分周期で1晩に4~5回、一定のリズムで繰り返されるのです。

●ノンレム睡眠

脳が眠っている状態で、眠りの深さによって4段階に分けられます。浅い眠りから深い眠りへと進み、一番深いところまでいくと再び浅い眠りに向い、そのあとレム睡眠へと移行します。寝付いた直後はまずノンレム睡眠がおこるため、居眠りはほとんどがノンレム睡眠。そのため、ほんの少し居眠りするだけで脳の休息が得られます。

ノンレム睡眠の特徴は

・入眠直後にあらわれる

・夢はほとんど見ない

・身体を支える筋肉は働いている

・眠りが深くなるにつれ、呼吸回数・脈拍が少なくなる

といったものが挙げられます。

●レム睡眠

一方、身体は深く眠っていても脳が起きているような状態の眠りがレム睡眠。眠りが浅く、寝覚めの準備状態でもあるため、このレム睡眠時に目覚めるとすっきり目覚められます。

レム睡眠の特徴は

・眼球がキョロキョロ動く(まぶたは閉じています)

・身体の力は完全に抜けている

・呼吸や脈拍が不規則

・夢を見やすい

長い時間眠る人でも、脳の睡眠時間であるノンレム睡眠の時間は睡眠時間の短い人と変わらないとの調査結果もあり、長時間の睡眠を確保するよりも睡眠のリズムを知り「質」重視を心がけることで熟睡感が得られるようです

 

 
いびきをかくのは疲れている証拠?
 
「グーグー」といびきをかいて眠る人、はたから見るとぐっすり眠っているように見えますが、実際はどうなのでしょうか。寝ている間に舌や喉の奥の筋肉が緩み、気道が狭くなるために口の中の軟部組織が振動して音が出るのがいびきの仕組み。歳をとればとるほどいびきの回数が多くなると言われ、60代では男性の6割、女性の約半数が一晩に1回はいびきをかくといわれています。

疲れているときやお酒を飲みすぎたとき、鼻炎や扁桃腺炎などの人もいびきをかきやすくなりますが、いびきが多いからといって健康上に問題があるという心配はありません。

●睡眠時無呼吸症候群

ただし、いびきをかく人の中には、新幹線運転手の件などで一時話題になった「睡眠時無呼吸症候群」という病気がかくれていることがあります。いびきの合間に無呼吸状態になる病気で、昼間に耐えられないほどの眠気におそわれる経験のある人は要注意。大きないびきのあとに突然静か(無呼吸状態)になり、そのあと「ヒュー」という空気が抜けるような音や、「ガガっ」というような大きないびきをかく場合は睡眠時無呼吸症候群の疑いがあります。この無呼吸状態は高血圧や動脈硬化を引き起こしやすく、脳梗塞や心不全など命に関わる危険もあるので、家族のいびきが気になる場合は一度注意して観察してみましょう。

●いびき対策

病気とは関係ない普通のいびきでも、隣で眠っている人にとっては騒音に…。いびきをかきやすい人は、以下のような点に注意してみましょう。

・仰向けでなく横向きに寝る

→仰向けで寝ると、舌などが重力で下向きに落ち込み気道が狭くなり、いびきをかきやすくなります。

・枕を高めにしてみる

→頭の位置を上げることで、気道が確保されやすくなります。

・生活習慣を見直そう

→肥満の人はダイエットを、アルコールのとりすぎもいびきの原因になることがあります。

 
ぐっすり眠れる環境づくり
 

快眠を得るためには、寝室の環境も大切。静かで快適な、落ち着ける寝室づくりで、気持ちよい眠りを手に入れましょう。

●快眠できる寝室の条件

・音

→周りが静かになる分、夜間はちょっとした物音でも寝付けない原因に。二重サッシや遮音カーテンなどを利用して外からの騒音を防ぐほか、就寝時間の違う家族間でも協力しあいましょう。

・光

→寝室の理想的な明るさは、20~30ルクス(おぼろげに物が見える程度)が良いとされています。ただし、人によって「真っ暗にしないと眠れない」「多少明かりがあったほうが安心して眠れる」など好みがあるため、実際は自分にとって一番眠りやすい明るさがベスト。ただし明るすぎる寝室は脳を刺激して眠りに入るのを邪魔するため、部屋全体の照明は消して、明るさの調節できる間接照明などを利用するとよいでしょう。

・湿度と温度

→理想的な室温は、夏場が25℃、冬場は15℃、湿度は年間を通じて50%が良いとされています。エアコンをつける場合は、冷房は25~28℃、暖房は18℃~22℃を目安に設定しましょう。また、掛け布団などの寝具も、夏は涼しく、冬は暖かく眠れるように季節に応じて工夫しましょう。

・色

→ベージュやブラウンなど、落ち着いた色合いが好ましく、刺激的な色彩は避けましょう。

●スムーズに眠りに入るために

スムーズに眠りに入るためには、眠る1~2時間前から脳をリラックスさせることが大切。眠りたい時間の直前まで仕事や勉強、ゲームなど頭を酷使する作業をすることは避け、心身ともにリラックスして眠る準備に入りましょう。

・入浴法を工夫

→ぬるめのお風呂にゆっくりつかると緊張がほぐれ、リラックスできます。

・ハーブの香りでリラックス

→カフェインの含まれていないハーブティーは、香りにもリラックス効果があります。お茶だけでなく、アロマオイルやキャンドルを使ってみるのも良いでしょう。神経の緊張や不安を和らげる効果のあるラベンダー、気分を沈静させて不眠症にも効果のあるといわれるカモマイルなど、リラックスできる好みの香りを見つけましょう。

・リラックス音楽を聴いてみる

→脳がリラックスしているときに出るといわれるα波。最近はα波を引き出すような音楽を集めたCDも売られているので、これらの音楽でのんびりとリラックスするのもひとつの手。ただし個人の好みがあるので、却って落ち着かないという人には向きません。

・ホットミルクで身体を温める

→空腹感は眠りにつくのを邪魔しますが、寝る前の過度な飲食も体内リズムによくありません。眠る前に空腹感を感じたときは、ホットミルクがおススメです。

 
それでもなかなか寝付けないときは、眠れないこと自体がストレスになり、余計眠れなくなることも。気分を変えて一度布団から出て、軽いストレッチをしたり、読書をしたり、リラックスした時間を過ごせば自然と眠気がやってきます。

また、十分な時間寝ているのにまだ眠いという人は、生活リズムに原因があるかもしれません。決まった時間に眠り、決まった時間に起きる。本来の生活リズムを取り戻し、気持ちよい熟睡感と目覚めを手に入れましょう

 

 

足の指の皮がポロポロ…これって水虫?(2006年7月)

 

     
 
7月のテーマ:
足の指の皮がポロポロ…これって水虫?
 湿度の高い日本の夏。梅雨があければ、本格的に夏本番です。暑さとともに、食欲不振や日射病、夏バテなどの体調不良も心配になってくるので、身体の調子には注意して過ごしましょう。

さて、蒸し暑い時期は特に気になる靴の中の蒸れ。そう、水虫の多くなる季節です。特効薬のない病気、オヤジの病気と言われた時代も今は昔。対処法や効果的な薬が開発される一方、若い女性や子供の水虫も多くなっています。そこで今回は水虫についてのお話。本人はもちろん、家族に水虫がいる人もぜひご一読ください。

 
     

 

水虫ってどんな病気?
 

 テレビCMなどでご存知の方も多いと思いますが、水虫は一種のカビ。皮膚糸状菌という一種のカビによって生じる感染症を言い、多くは白癬菌というカビが原因です。高温多湿を好むカビの特性と、皮膚のたんぱく質(ケラチン)を栄養源とする性質があるため、足の裏や足指の間などが「住みやすい場所」となるようです。

また、足に発症した場合は水虫ですが、生じる場所が爪なら爪水虫、体ならたむし、股ならいんきんたむし、頭皮ならしらくもと呼び名が変わり、必ずしも足だけに生じるものではありません。

 
足水虫の特徴
 
さらに、足の水虫にもいくつかのタイプがあります。
・ジュクジュクタイプ(趾間型)

一番多いタイプの水虫。足指の間が、びらん(ジュクジュクした状態)して白くふやけるタイプ。皮がむけたり、赤くただれてきたりします。
・ポツポツタイプ(小水疱型)

足裏などに小さな水ぶくれがポツポツとでき、その後薄皮がむけるタイプ。水ぶくれの周りが腫れてくる場合もありますが、水ぶくれが目立たず、薄皮がむけるだけの場合もあります。ちなみに、水ぶくれが破れたときの汁には白癬菌はいないため、この汁から水虫がうつる心配はありません。
・ガサガサタイプ(角質増殖型)

足裏の角質が厚くなりガサガサになって割れたりはがれたりするタイプ。このはがれた皮には白癬菌がすんでいるため、ここから家族などへ感染する場合もあります。また、水ぶくれやかゆみなどがないため、水虫と気付かない場合も多いタイプなので注意が必要です。
・爪水虫

爪の色が白色から黄色に濁り、厚くなるタイプ。進行してくると爪がもろくなって欠けたり、でこぼこになったりします。足水虫が爪にうつることで発症することが多いようです。

 「かゆい」というイメージの強い水虫ですが、かゆみを感じない場合も意外と多いのが実際のところ。特にガサガサタイプの場合、水虫と気付かずに過ごしている人も多いようです。一度自分の足を見て、「もしかして…」と感じるところがあれば、皮膚科へ行ってみましょう。

 
水虫に似た皮膚病
 
 水虫になると、大抵の人は市販の水虫薬で治療を試みます。しかし「薬を塗っても治らない」と、皮膚科に訪れる人も多く、なんとその3割近くが別の病気なんだとか。逆に水虫じゃないと思っていたのに水虫だったというケースもありますが、水虫に似た病気には以下のようなものが挙げられます。
・掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)

手のひらや足の裏などの皮膚に、膿をもったプツプツができる皮膚病
・汗疱(かんぽう)

手のひらや足の裏などの皮膚に、小さな水ぶくれができる皮膚病
・かぶれや湿疹

手のひらや足の裏などがかぶれたり湿疹ができ、赤みやかゆみができる

これらの症状は水虫と間違いやすいものですが、水虫ではないので水虫薬を塗っても治らなくて当然ですね。このような間違いを防ぐためにも、疑わしい場合はやはり皮膚科での診断をおすすめします。

 
水虫治療はどう行うの?
 

●皮膚科での診断

では、皮膚科ではどのような診断と治療をするのでしょうか。一般的な流れをご紹介します。

皮膚科ではまず皮膚の状態をみて診断しますが、水虫かどうかの判断は、白癬菌の確認によって行います。皮膚の表面をこすって、顕微鏡で白癬菌の有無を確認することで、水虫かどうかを判断するのです。

●水虫薬について

水虫と診断されたら、そのあとは外用薬による治療が始まります。抗真菌薬を患部に塗布しますが、ジュクジュク水虫や白くふやけている場合、化膿やかぶれを伴っている場合などは、まずはその症状を抑えてから抗真菌薬による治療を開始します。また、爪の水虫の場合は内服薬が必要になりますが、肝臓へ負担がかかることもあるため、医師の指示に従いましょう。

薬を使用する際、大切なのは毎日続けて塗布することです。水虫は角質層の奥深くに寄生している場合が多いため、表面上治ったようにみえても、菌が残っているおそれが高いのです。皮膚のターンオーバーのサイクルは約1ヶ月。つまり、角質層が新陳代謝によって完全に生まれ変わるのには約1ヶ月かかるのです。このことからも、症状が治まったように見えても、それから最低でもさらに1ヶ月は薬を塗布し続けることが水虫治療のポイントなのです。塗るタイミングは、毎日の入浴後がベスト。清潔なのはもちろん、皮膚が柔らかくなっており、成分が浸透しやすい状態になっているからです。また、かゆいところや赤くなっているところ以外にも菌の広がっている可能性があるため、患部周辺になるべく広範囲に塗るようにしましょう。

 
 水虫の正体はカビ。ということは、カビが繁殖しづらい環境を作ることが水虫撃退の第一歩です。カビは高温多湿を好むので、足を蒸らさない、乾燥させる、こまめに洗う、などしてカビの繁殖しにくい状態を保ちましょう。

バスマットやスリッパなどから感染するケースも多いため、家族に水虫のいる家庭はもちろん、プールや公衆浴場、スポーツジムなどでも、最後に足をキレイに洗う、自分専用のスリッパを持参するなどして対処しましょう。また、靴や靴下も通気性のよいものを選ぶようにして、足の蒸れを減らしましょう。

治りにくいと思われている水虫ですが、正しい治療を根気よく続ければ約1ヶ月でよくなるはずです。民間療法も多く出回っていますが、症状を悪化させたりかぶれやただれなどを引き起こしてしまう場合もあるので、おすすめできません。やはり一番は医師の診断を受け、早めに正しい治療を始めること。家族に水虫のいる家庭は、本人だけでなく家族揃って診断するのがよいでしょう。素足になる機会もおおい季節、キレイな足で気持ちよく過ごしましょう。

 

 

胃が痛いのはストレスのせい?(2006年6月)

 

     
 
6月のテーマ:
胃が痛いのはストレスのせい?
 すっかり暖かくなり、半そで一枚で過ごせる陽気になりましたね。でも夜には肌寒い日もしばしば。風邪などに気をつけて過ごしましょう。さて、今回も前回に引き続きストレスが引き起こす心身の不調についてのお話です。今回は大切な消化器官・胃に注目し、胃潰瘍をはじめとするストレス潰瘍についてお話します。
 
     

 

ストレス潰瘍とは?
 

 ストレス潰瘍とは、胃潰瘍(十二指腸潰瘍も含む)の中でも、ストレスの影響が強いもののことで、多発性な上、再発しやすいという特徴をもっています。潰瘍の大きさや深さは様々で、同時にいくつもの潰瘍ができるケースも珍しくありません。

簡単に言うと胃壁や十二指腸がただれて潰瘍ができるという病気ですが、症状で特徴的なのは空腹時におこる腹痛がです。このほか、胸やけやげっぷ、悪心、嘔吐、便秘などがあります。吐血や下血を伴う場合は潰瘍がひどくなっている可能性が高く、早急な治療が必要です。

 
ストレスと潰瘍の関係
 
 近年、潰瘍の原因にヘリコバクター・ピロリという細菌(ピロリ菌)の存在が注目されていますが、ストレスもやはり潰瘍の大きな誘因であると考えられています。

胃潰瘍の原因は、消化器官である胃で分泌される胃液と、その胃液から胃の粘膜を守るはたらきとのバランスがくずれることによると考えられています。精神的なストレスは胃液の分泌を異常に高める一方で、胃壁の防御機能を弱めるため、自分の胃液で胃壁をいじめる結果になり、潰瘍をおこしてしまうのです。

また、慢性的な過労による不眠、倦怠感、肩こり、頭痛など体の不調と同時に、焦燥感、抑うつ感、過敏など精神的な不調を伴うこともあり、胃潰瘍はやはり生活上のストレスと深く関わっていると考えられます。

 
こんな人は、うつの可能性がピロリ菌について
 
 一方、潰瘍はストレスが直接の因子ではなく、ピロリ菌こそが最大の原因であるとの説もあります。これまで、胃には強い酸があるため細菌は存在しないと考えられていましたが、1983年に胃の中から細菌が分離・培養され、その存在が確認されました。ピロリ菌は自らが作り出すアンモニアで胃酸を中和し、胃の中にすむことができる細菌で、様々な毒素を出すため、胃炎や潰瘍を引き起こします。

ピロリ菌の感染源についてはまだ解明中ですが、水や糞便を介して、口から感染するという説が今のところ有力なようです。これは衛生設備の整った先進国では感染の割合が低いことに比べ、発展途上国では多くの人がピロリ菌に感染していることから推測されています。日本では40代以降の人の約半数が保菌者であると言われ、発展途上国と同じくらいの感染率となっています。しかし、30代までの人では、他の先進国と同様低い感染率にとどまっているようです。

ピロリ菌こそが潰瘍の最大の原因であると考える説では、ストレスは潰瘍の誘因にはなりうるものの、ピロリ菌に感染していない人は例え大きなストレスがかかったとしても、潰瘍にはならないと言われます。これまで、潰瘍が再発を繰り返すのは、潰瘍自体は抗潰瘍薬で治すことができるものの、「潰瘍症」という体質までは治せないためだと考えられていました。しかし、ピロリ菌を除菌すれば抗潰瘍薬を服用しなくても、潰瘍は再発しないという研究結果が多く発表され、「潰瘍症」という体質に対して疑問の声もあがっています。

ピロリ菌の感染については血液検査、または内視鏡検査で簡単に分かり、尿や便から調べることもできます。除菌治療で一般的なのは抗生物質と胃酸分泌抑制薬を1週間服用する方法が一般的で、8割以上の人が除菌に成功すると言われています。除菌に成功すれば、以後胃炎や潰瘍の薬を飲み続ける必要がなくなると、その効果が注目されています。

 
一般的な治療
 

●何科に行けばいいか

胃潰瘍が心配な場合、まずは内科、消化器科、胃腸科へ行き、診断を受けましょう。胃X線検査で異常が発見されると、内視鏡検査で確認という手順が一般的で、これらで外科的治療が必要と判断されると、消化器外科へ転送されます。

●内科的治療

内科的治療では、攻撃因子である胃酸をおさえる胃酸分泌抑制剤と、防御因子を強める粘膜保護剤の服用が行われます。医師の指示を守り、処方された薬をきちんと服用すれば、ほとんどの症状が2~3週間で軽快します。ピロリ菌に感染している場合は、先にも述べたように抗生物質を併用して除菌をすると、再発はしないと言われています。しかし、ストレスの影響で潰瘍が治りにくい場合や、再発を繰り返す場合は、心療内科的治療を薦められることがあります。この場合、カウンセリングや自律訓練法を行ってストレスを軽減したり、抗不安剤や抗うつ剤などの薬物療法を行います。

 
 ストレス潰瘍になりやすい人の性格傾向として、几帳面、内向的、こり性、過剰適応(周囲に気を使いすぎる)、感情を表に出さない(自分の中に溜め込む)などが挙げられます。予防のためにも、お酒の飲みすぎや食べすぎ、タバコの吸いすぎに注意し、日頃の体調管理に気を配ることも大切ですが、自分なりのストレス解消法や悩みを話せる相談相手を見つけるなど、ストレスをためないような気配りも必要です。また、消化を助けるために食べ物はよく噛む、胃の調子が悪いときは刺激物(香辛料、アルコール、コーヒーなど)の摂取を控える、喫煙を控えるなど、胃の負担を減らしてあげることも大切。

胃の調子が悪いと、食欲がわかず、体も心も元気がなくなってしまいます。胃腸を大切にし、おいしく食べて、健康に暮らしましょう。

 

 

これって 5 月病? うつにご用心(2006年5月)

 

     
 
5月のテーマ:
これって 5 月病?

うつにご用心

 新しい年度が始まり、学校や職場、引越しなどで環境が変わった人も多いのではないでしょうか?新しい生活が始まってすぐは、新鮮な毎日を送り、疲れや忙しさもあまり気にならないものですが、徐々に慣れてきた 5 月、 6 月頃はストレスが心身の不調としてあらわれやすい時期です。これがいわゆる 5 月病。今回は慢性の 5 月病ともいうべき「うつ」についてのお話です。
 
     

 

うつってどんな病気?
 

 うつ病で特徴的なのは、「憂うつ感」「無気力・無関心」などの心の症状。うつ病とは、気分が落ち込み、これまで楽しんでいたことや好きだったものに興味がなくなり、楽しめなくなる病気なのです。それに加え、「疲れやすい」「眠れない」「頭痛がする」などちょっとした体の不調もうつが原因のことがあります。厚生労働省の報告によると、日本人の15人に1人はうつになる可能性があるといわれており、身近な病気としても注意が必要です。

最近ではテレビや雑誌などでうつが取り上げられるようになり、うつに対しての理解も進んできました。それでもまだ、病院に行かずにひとりで悩んでいたり、うつとは気付かずに落ち込んだ気持ちで日々過ごしている人も多いのが現状です。

「なんとなく気分が晴れない」「憂うつ感を感じる」などの心の症状もありますが、「疲れがとれない」「いつも疲れている気がする」「食欲がない」「眠れない」などの体の不調が前面に出る軽いうつは、本人もうつと気付きにくいものです。うつを正しく理解し、早めの対処ができるようにしましょう。

 
なぜうつになる?
 
  うつにかかるきっかけは人それぞれですが、ストレスが主な原因といわれています。例えば、仕事や受験の失敗、失恋、身近な人の死などのショックな出来事により気分が落ち込みます。普段であれば、これらのショックも時間と共に薄れ、心も回復していくものです。しかし、落ち込んだ気分がなかなか晴れずに大きなストレスを感じ続けた場合、気持ちが切り替えられず、うつ状態になってしまうことがあります。うつ状態をそのままにしておくと、自分のつらい気持ちを理解してもらえない→さらに気分が落ち込んでいくという悪循環に陥り、重度のうつへと進行してしまいます。そうなるまえに、まずは医師に相談しましょう。
 
こんな人は、うつの可能性が?
 
  「疲れやすい」「頭痛が続く」といった体の不調も、うつが原因の場合があります。特に、診察は受けたけど原因が分からない場合などは、注意が必要です。「調子が悪いな」と感じながらも、我慢すれば済んでしまう程度の場合は、本人も周囲の人もそれがうつであると気付きにくいものです。以下のような症状が2週間以上続くような場合は、うつを疑ってみましょう。

●うつの可能性があるこんな症状

・眠れない、または朝早く目が覚めてしまう

・体がだるい、疲れやすい

・何を食べてもおいしくない

・ときどきめまいがする

・息切れがする、息苦しさがある

・胃のもたれ、ムカつきを感じる

・食欲がない、最近急に痩せてきた

・頭痛がする

・微熱が続いている

・肩こりがひどい

・生理不順

・性欲が落ちた

・下痢、便秘など

また、他の病気が原因でうつになることもあります。糖尿病や高血圧症などの生活習慣病には高い頻度でうつが合併するとも言われ、うつによる変化を「病気で気分が落ち込んでいるせい」と見逃されてしまいがちなのも問題のひとつ。病気に関わらず、「おかしいな」と感じたら早めに医師へ相談しましょう。

●うつを伴いやすい体の病気

・糖尿病

・高血圧症

・狭心症

・心筋梗塞

・脳血管障害

・脳腫瘍

・老人性痴呆

・てんかん

・パーキンソン病

・甲状腺機能の亢進症または低下症

・更年期障害

・慢性間接リウマチ

・全身性エリテマトーデスなどの膠原病

・がん

・手術後

・血液透析

・インフルエンザ

・肝炎などのウイルス感染症など

 
医療機関ではこんな対処をしてくれます
 
  うつは脳内の神経伝達物質の活性が低下するために起こると考えられていることから、うつの治療は薬物療法や心理的治療を行います。抗うつ剤を処方された場合は、医師の指示にきちんと従い、自己判断で薬の量を変えたり服用をやめたりしないこと。そして、心身ともに充分な休息を心がけましょう。病院での治療を早期に受けるとこで、一般的には半年から1年ほどで回復するといわれています。治療のポイントは、焦らず気長に取り組むこと。治療には健康保険も適用され、保険証から会社など周囲の人へ「うつで病院に通っている」ということが知られることもないので、安心して通いましょう。
 
「心の風邪」とも呼ばれるうつ病は、その名のとおり風邪と同じく誰にでもかかる可能性がある身近な病気です。まじめで完全主義な人ほどストレスを感じ、うつになりやすいといわれています。うつを防ぐには、まずは自分を知ること。「無理しているな」と感じたら、肩の力を抜き、マイペースを心がけて。失敗しても必要以上に自分を責めず、頑張り過ぎないことが大切です。

 

 

新生活の始まり。朝食を摂って元気な1日を!(2006年4月)

 

     
 
4月のテーマ:
新生活の始まり。朝食を摂って元気な1日を!
 4月。新年度、新学期のスタートです。新たな生活が始まった人はもちろん、環境に特別何も変わりがないという人でも、4月は「新しい始まりの季節」ではないでしょうか?

1日の始まりは朝。元気な1日を過ごすために、今回は「きちんと朝ごはんのススメ」についてのお話です。

 
     

 

朝ごはんは、なぜ大切か?
 

食事 人間の体は、1日の24時間を1サイクルとして、体を構成する組織や臓器がリズムを保って活動しています。そのリズムの基となるのは太陽の光で、その明るさや暗さが脳の中枢神経を刺激し、活動を弱めたり強めたりして体の働きを調節するのです。また、食事を摂ることも神経系を刺激する作用があり、血液中の栄養成分の濃度を高めて、組織や内臓の働きを活発にします。

●朝ごはんを食べないと…

全身の組織や内臓の働きは起床した直後に活発になるわけではありません。体温は低く、脳の働きも不十分な状態です。この状態のまま、体をあまり動かすことなく食事もとらずに、仕事や勉強など日中の活動を始めると、脳も体も栄養不足で十分に働きません。このままでは集中力を欠いたまま午前中を過ごすことになってしまいます。

●朝ごはんを食べると

それに対し、起床してから体を動かして筋肉を刺激し、血液の流れや胃腸の働きを活発にして、食欲をあげてから朝ごはんを食べるとどうでしょう。体温と血糖が上がり、脳と体はリズムにのって働き始めます。そうすると仕事や勉強にも集中でき、朝から気持ちよく過ごすことができるのです。

 
朝食抜きの原因とは?
 
不振  さて、朝ごはんが大切なことは分かっていても、忙しい現代人はなかなか朝ごはんを食べられないという実態があります。あるアンケート調査では、独身でひとり暮らしの女性の場合、朝食を毎日きちんと摂ると答えた人はなんと全体の半数以下という結果でした。

では、なぜ朝ごはんが食べられないのでしょうか?その原因と対策を、以下にご紹介します。

●朝は食欲がない

1日のリズムでいえば、本来、朝は1日のうちで一番お腹が空く時間のはずです。前日午後8時に夕食を摂ったとして、睡眠、起床と翌朝7時までは約11時間。お菓子や夜食を食べた場合は別として、ほぼ半日もの間、体に栄養が入っていないことになります。こういうリズムで生活を送っている人は、朝お腹が空いた状態で目覚めることができるでしょう。

これに対して、夕食が遅い人、寝る前にお菓子や夜食を食べる人は、朝あまり食欲がわかないのは当然ですね。また、就寝時間が遅すぎるのも、夜中に食べてしまう原因のひとつ。睡眠不足だと食欲刺激ホルモンが増え、食欲抑制ホルモンが減るという現象が起こります。つまり夜更かしすればするほど余分に食べてしまい、翌朝は体があまり食事を欲しない状態になってしまうのです。だからといって朝食を抜くと、昼食までの時間が空きすぎるので、体はエネルギーを蓄えようとして、食べたものが脂肪に変わりやすくなり、皮下脂肪のつきやすい体質になってしまいます。

●ダイエット中なのでなるべく食べたくない

これが間違った考えというのは、すでに多くの皆さんがご存知でしょう。上にも書いたように、朝食を抜くと脂肪のつきやすい体質になるため、朝食を抜くことはダイエットには逆効果になります。毎朝きちんと朝食を摂ることで体のリズムが正常になり、消化や代謝の働きが整うので、ダイエットにも良い傾向が出てきます。また、食事を摂ることは腸を刺激するため、排便のリズムも整います。

●ギリギリまで寝ていたい

朝ごはんを食べる時間がもったいなくて、それならその分寝ていたい…という声も多く聞きます。しかし10分長く寝ても、朝ごはんを食べなくては体はすっきりと目覚めず、午前中をぼーっと過ごすことになります。かえって時間がもったいないと思いませんか?

それならば、いつもより少し早く起きて、朝食をとることが効率的だと考え方を変えてみましょう。また、目覚めてすぐに朝食を摂ろうとせず、朝の準備などをして体を少し動かしてから朝食を摂るようにしましょう。それによって胃腸をはじめとする体の組織が働き出し、空腹感がおきて、朝ごはんをおいしく食べることができるのです。

●朝食を準備する時間がない

これも上の「ギリギリまで寝ていたい」派と同じような意見です。確かに、朝は何かと忙しく、時間がないもの。だからといって朝ごはんを犠牲にするのはよくありません。晩ご飯やお弁当のおかずを多めに作って、朝食用に残しておいたり、温めるだけでたべられるように前の晩から用意しておくなど対策はいくらでもあります。「朝は食欲がない」という人も、ヨーグルトや果物、シリアル、スープなど、手軽に食べられるものから始め、少し早起きして朝食を食べる習慣をつけていきましょう。

 
朝食をきちんととることは、体の健康だけでなく心の健康にも関わってきます。朝食を抜くと、集中力が低下するだけでなく、体調不良で元気が出ない、なんとなく体がだるい、エネルギー不足で貧血気味、空腹によるイライラ感など、脳と体に様々な悪影響を及ぼします。 子供の場合も同じで、朝食を食べる習慣のない家庭で育つと、朝から元気が出ない、学校に行く気力がない、という状態になってしまい、体の成長ばかりか心の成長まで妨げてしまう恐れがあります。「食育」という言葉をよく耳にしますが、子供の成長にも朝ごはんは大切なのです。 夜食・夜更かしを控え、少し早起きする生活を徐々に習慣づけていくと体のリズムも整い、生活習慣病の予防にも役立ちます。気持ちのよい1日の始まりは、おいしい朝ごはんから。朝ごはんをきちんと食べて、健康的な毎日を送りましょう。