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まめ知識カテゴリ: 健康まめ知識

四十肩・五十肩。肩の痛みに 「冷え」は大敵!(2007年11月)

 

     
 
11月のテーマ:
四十肩・五十肩。肩の痛みに

「冷え」は大敵!

 秋から冬へ移り行き、特に朝晩には強い冷え込みを感じる季節になりました。風邪に気をつけるのはもちろんですが、「冷え」によって引き起こされる関節の痛みにも注意したい季節です。肩や膝など、関節の痛みには、日頃のストレッチ運動と患部の温めが効果的です。今回は肩の痛み、四十肩・五十肩についてお話しします。
 
     

 

 
四十肩・五十肩とは
 
  五十肩・四十肩というのは俗称で、正しくは肩関節周囲炎といいます。中高年に多い肩のトラブルということでこの名で呼ばれています。老化によって硬くなった肩関節の腱(肩の骨を引き上げる筋肉が骨とつながる部分)や関節包(関節をスムーズに動かすためのクッションの働きをする箇所)の炎症が原因となって痛みが起こり、これが悪化して肩が上がらなくなる状態を「五十肩・四十肩」といいます。重症の場合は肩腱板(けんけんばん)損傷といって腱が完全に切れてしまうこともあり、その場合は手術が必要になります。そのため、痛みが強い場合は早めに医師の診断を受けましょう。
 
肩こりと五十肩・四十肩の違いは
 

 普通の肩こりは、猫背など姿勢の悪さや緊張などによって肩や首の筋肉が疲労し、血液の循環が悪くなって肩に張りや痛みが起こる「筋肉疲労」の症状です。一方、五十肩・四十肩は「関節の炎症」が原因で、肩の腱の炎症、腱板の損傷や断裂によるものなどがあります。五十肩・四十肩になると腕をねじったり上げ下げすると肩に痛みが起こり、思うように動かせなくなります。そして、痛いからと動かさないでいると、肩関節が固まったようにほとんど動かなくなってしまうこともあるので、そうなる前に少しずつ関節を動かして柔らかくしていきましょう。

 
こんな人は要注意
 

 関節は老化につれ硬くなっていくもので、特に運動不足の人は注意が必要です。40代以下の方も、以下の項目に当てはまる場合は日頃から肩関節のストレッチを心がけましょう。

   
 
最近運動不足である
腕を真横に上げると肩が痛む
背中に手が届きにくい
親戚に五十肩・四十肩の人が多い
   
 

 肩関節は、動かす機会が少ないと固まって炎症を起こしやすくなります。肩を回すなどの簡単な動きでも、意識的に肩関節の運動をしていきましょう。

   
五十肩・四十肩の予防
 

 肩の関節は、動かす機会が少ないと硬くなって炎症を起こしやすくなります。予防のためには日頃のストレッチが大切です。下記に紹介するような簡単な体操を、痛くない範囲で無理せず行ってみましょう。一度にたくさん動かすよりも、1日に数回少しずつ、毎日繰り返すほうが効果的です。

   
 
アイロン体操
 

アイロンなど、持ちやすく程よい重さの物を痛む側の手に持ち、肩の力を抜いて楽に下げ、ゆっくりと左右前後に振ります。

壁押し体操
 

壁に向って両手をつき、両肩に均等に体重をゆっくりとかけていき、肩の関節を意識しながら動かします。

タオル体操
 

タオルや棒などの両端を1mくらいの間隔で背中側に持ち、痛みのないほうの手を上に持ち上げ、痛むほうの肩を腕ごと上部に誘導するようにゆっくり引き上げます。次に痛みのないほうの手を下方に引くようにして、痛みのある肩の関節を動かします。

   
痛みは冷やさず温めて
 

 肩の痛みを感じたときは、無理にストレッチなどの運動をせず、安静にすること。関節の痛みに冷えは大敵なので、冷却スプレーなどで冷やすのは逆効果です。熱いお湯に浸したタオルを絞ったものを患部に当てて温めたり、ぬるめのお風呂にゆっくりつかるなどして肩関節を温めましょう。

   
 

 冬場は特に、冷えによる関節のこわばりが気になる季節です。そして、肩の痛みには寝ている間の冷えも大敵。タオルなどを首に巻いて寝たり、市販の保温器具などを利用して寝ている間も肩の保温を心がけましょう。また、日中も、肩を冷やしやすい襟ぐりの開いた服などは避け、マフラーなどで肩と首周りを温かく保ちましょう。

 

 

 

備えあれば憂い無し、 過呼吸症候群の対策を知ろう。(2007年10月)

 

     
 
10月のテーマ:
備えあれば憂い無し、

過呼吸症候群の対策を知ろう。

 スポーツの秋。学校や職場、地域などで開催される運動会や各種スポーツ大会などに参加する機会も多い季節です。運動の後に呼吸が乱れるのは当たり前のことですが、特にマラソンや長距離走のあとには過呼吸症候群になってしまうこともあります。また、運動に関わらず、日常生活をしている上で突然発作的に起こることもある病気。いざというとき迅速に対応できるよう、過呼吸の仕組みと対応策について知っておきましょう。
 
     

 

 
過呼吸症候群とは
 
  過呼吸症候群は、突然息苦しさを感じ、動悸や頻脈、両手の指先や口の周りのしびれなどの発作が起こるものです。若い女性に多い病気ですが、子供や男性、高齢者にも起こることがあります。夜間に救急車で搬送される人の約30%が、この発作によるものだと言われていることからも、ある意味身近な病気のひとつと言えるでしょう。
過呼吸の起こる原因
 

過呼吸を引き起こす誘引は、主にストレスや不安と言われ、元々何事に対しても不安を感じやすい性格の人に生じやすいようです。しかし性格や心理状況などに関係なく、運動などで過剰換気(息があらくなる)の状態になったことが誘因となる場合もあります。いずれの場合も、この過剰換気の状態のために血中の二酸化炭素が減り(排出され)すぎてしまうことが原因です。過呼吸状態になると、実際には血中酸素濃度は普段以上に高くなりますが、本人は息をしても空気が吸えないような感覚に陥ってしまい、さらに不安がつのって息が乱れ、息苦しさやしびれなどの症状が現れます。

過呼吸の症状
 

何らかのきっかけで突然息苦しさを感じ、動悸、頻脈、しびれ、胸や頭の痛み、めまいなどの発作を引き起こします。ひどいときには意識が朦朧としたり、全身が痙攣して意識を失うこともありますが、過呼吸が原因で死亡したり、後遺症を残した例はありません。過呼吸の状態で放置すると発作は数10分続きますが、通常は30分ほどで自然に軽快していきます。

過呼吸症候群の診断
 

先に述べたように、発作は30分ほどで自然に軽快するケースが多いので、病院に着く頃には発作が治まっていることも多くあります。過呼吸症候群かどうかの診断は、上記のような特徴的な症状の現れに加え、発作時の動脈血の酸素濃度と二酸化炭素濃度を検査することで容易につきます。少量の採血ですぐに診断でき、血液のPH値がアルカリ側に偏移している呼吸性アルカローシスであるかどうかを診断します。また、通常時でも意図的に速い呼吸を3分間続けさせて症状を誘発させる「過呼吸誘発テスト」を行う補助的な診断方法もあります。

 

 
過呼吸症候群になったときは
   
 
一般的な治療法
 

過呼吸の起こる原因は過剰な二酸化炭素の排出なので、紙袋などを口に当て、吐いた呼気を再度吸い込む「ペーパーバック法」と呼ばれる治療法が一般的です。この場合、袋を口にぴったり当てすぎると酸素不足になるため、口の部分に少し隙間を作っておくようにしましょう。

ペーパーバック法だけで治まらない場合
 

過呼吸のためパニック状態に陥ったり、不安が強いとペーパーバック法だけでは治まらない場合もあります。その場合は、医師の診断により抗不安薬など精神安定剤の処方を受けると効果的です。精神の安定が大切なので、周囲が過剰に心配して本人が余計に心を乱すことのないよう、冷静な対処を心がけましょう。

   
日常生活での注意点
 

過呼吸の発作は持続的な不安や不満、強い怒り、心理的緊張など気持ちが高揚した場合に生じやすく、寝不足や発熱などで症状が助長されることもあります。パニック障害の一症状としてみられる場合もあり、簡単に原因を特定できない場合も多いのですが、頻発するような場合は腹式呼吸や自律訓練法などのリラックス法を習得したり、発作の原因と考えられるストレスや不安を解決するための心理療法を行います。いずれの場合も、医師から詳しい説明を受け、病気に対する正しい知識を身につけることで不安は軽減され、発作も軽いものへと変化していくでしょう。

頭では理解していても、突然息苦しくなり呼吸が自由にできなくなると、特に初めての場合はやはりパニックを起こしてしまいがちです。そんな時は周囲の人の冷静な対処が一番なので、焦らず騒がず、本人の気持ちを落ち着かせるよう努めましょう。呼吸ができず窒息するわけではないということを理解しておくことで、落ち着いた対処ができるはずです。

 

 

 

健康は足元から。 外反母趾に気をつけよう!(2007年9月)

 

     
 
9月のテーマ:
健康は足元から。

外反母趾に気をつけよう!

 暑さも和らぎ、過ごしやすい季節になりました。運動の秋と言われるように、運動会やウォークラリーなど、秋は身体を動かす行事の多い季節でもあります。日頃の運動不足を解消しようと、これらの催しに張り切って参加する方も多いのではないでしょうか。この時、履きなれたスニーカーを履くのはもちろんですが、普段あまり気にしない「足の形」についても注意して見てみましょう。
 
     

 

外反母趾は現代病?
 
  外反母趾とは、平たく言うと足の親指の付け根の間接が外側を向いている状態のことで、通常痛みを伴う疾患です。一般的に、ハイヒールなどの靴が原因で起こると考えられていますが、実際にはハイヒールを履かない男性や、子供にも見られます。もちろんハイヒールに限らず、現代人は長時間靴を履いて過ごすことが増え、足が圧迫され続けていることもその要因のひとつではあります。しかし、それだけでなく道路面や床面が昔より硬くなったという環境の変化、そして何より足指の機能が低下して弱ってきたことがそもそもの原因だと言われています。
 
外反母趾の種類
    一口に外反母趾と言っても、その症状や程度には個人差があり、治療法もそれぞれです。「外反母趾かな」と心当たりのある方は、まずは以下に挙げた5つのタイプに当てはまるかどうか照らし合わせてみてください。

靭帯性外反母趾
 

足先の横幅(横のアーチ)を支えている横中足靭帯(中足関節)が伸びたり緩んだことで、親指が小指側に曲がってしまった状態。

仮骨性外反母趾
 

親指の付け根の骨だけが異常に出っ張り、付け根の部分が曲がったように見える状態。

混合性外反母趾
 

靭帯性外反母趾と仮骨性外反母趾が合併したもので、付け根の骨が出っ張ったうえに親指が内側に曲がっている状態。

ハンマートゥ性外反母趾
 

指がハンマーのように縮こまっていたり、上を向きすぎていて、指が地面に接地しない状態。先天的にこの状態の人に起こりやすいもの。

病変性外反母趾
 

リウマチやへバーデン結節などの病的要素や、事故、ケガが加わり著しい変形や脱臼を伴っている状態。

 

 
放っておくと怖い外反母趾
    発症の初期には窮屈な履物を履いて動いた時しか痛まないこともあり、「ただ親指が曲がっているだけ」と軽く捉えてしまう人も多いものですが、症状(変形)が進むと親指が人差し指の下に入り込んで底側に痛みを伴うタコを形成したりと、裸足でも痛みを感じるようになります。
 
外反母趾が引き起こす二次的障害
 

外反母趾になると、足の一部分に体重がかかったり、無理なねじれが生じて身体のバランスが崩れます。そして地面を踏みしめるべき足指に力が入らなくなり、不安定な歩き方になっていきます。この状態が続くと、身体のどこかに過剰な負担がかかることになり、膝や腰の痛み、肩こりや頭痛などの二次的な障害を引き起こす原因となります。

   
外反母趾を治療・予防するには
    外反母趾の治療には外科手術の方法もありますが、歩けないほどの痛みがない限りはその必要はないでしょう。治療・予防ともに、まずは身近なところから、履物への注意や足指の強化を心がけましょう。また、足にかかる負担を減らすため、体重を増やさないことや長時間の立位を避けることも大切です。
 
正しい姿勢で歩く
 

足の一部だけに負担をかけないよう、バランスの良い歩き方をしましょう。踵→足の裏全体の順に足底を地面につけ、足の指を使って地面を蹴るようにして前に進みます。大股気味に歩くのが理想的です。

履物選びの注意
 

日常生活で窮屈な靴を履かないこと。先端が広くて足のアーチ構造が無理なく保持できる履物を選びましょう。負担を減らすには、免震効果のある中敷などを利用するのも良いでしょう。

足指の運動をする
 

普段から足の親指を内側・外側に曲げたり、回したりする運動をしたり、足自体の筋肉を強化するよう心がけましょう。同時に、足裏のマッサージや足指のグーパー運動も習慣づけます。

  身体に原因不明の痛みがあるときは外反母趾を疑ってみろ」との意見もあるほど、足指の異常は身体全体に影響を及ぼすものです。靴だけが原因ではないと言っても、やはり窮屈な靴は立ち方・歩き方を不自然にし、足に無理な力を加えてしまいます。足の形に合った靴を選び、身体のバランスを足元から整えましょう。
 

 

 

夏バテを助長する現代生活。 冷やしすぎにご用心!(2007年8月)

 

     
 
8月のテーマ:
夏バテを助長する現代生活。

冷やしすぎにご用心!

 各地で真夏日が続き、今年の夏は例年にないほどの猛暑となりました。山場は過ぎた感がありますが、まだまだ暑さの続きそうな予感です。この暑さのせいで、熱中症も随分と話題になりましたが、こまめな水分補給だけでは防げないのが夏バテです。暑さからくる食欲不振や睡眠不足などその原因は様々ですが、体調管理に気をつけて夏場を元気に乗り切りましょう。
 
     

 

夏バテの原因はクーラー?
 
 夏バテを引き起こす一番の原因はもちろん暑さですが、そもそも恒温動物である人間は、ある程度の体温調節を行う機能が備わっているものです。しかし冷房のある現代の生活に慣れ、汗をかいて体温を調節する身体の働き自体が低下してしまっているそうです。これは「冷房病」と呼ばれる現代病のひとつで、冷房の利いた涼しい部屋と蒸し暑い屋外の温度差に身体がついていけず、自律神経の働きが損なわれてしまうというものです。
冷房病の症状
 

頭痛、肩こり、腹痛、神経痛、免疫力の低下、慢性的な疲労感やストレス感など

冷房病の予防
 

エアコンの設定温度だけでなく、外気との温度差に注意すること。5度以内が理想的と言われています。また、冷風を直接身体に当てないこと、足元を冷やしすぎないことも大切です。

能動汗腺衰退症とその予防
 

小さな頃から冷房の利いた部屋で生活してきたため、汗をかく汗腺の数自体が減少してしまうこと。発汗する習慣をつけるためにも、シャワーで済ませず半身浴で汗をかき、血行を良くしましょう。

 
夏を元気に過ごすコツ
 
生活リズムを安定させる
 

規則正しい生活は健康な身体づくりの第一歩。起床と就寝の時間、食事の時間をなるべく一定に保ちましょう。

冷房を上手に利用する
 

外気温との差は5度を目安に、室内を冷やしすぎないように。ドライ(除湿)運転を活用すると体感温度を下げられます。

寝つきをよくする工夫を
 

暑くて寝苦しいからといって、冷房をつけっぱなしにすると夏風邪や下痢の原因になります。タイマー運転を上手に利用し、就寝前の入浴やストレッチなどで安眠を誘う工夫を。

適度な運動をする
 

陽射しの強い日中は外出するのも億劫になりますが、朝夕の比較的涼しい時間帯にウォーキングする習慣をつけると食欲増進や寝つきを良くする効果も得られます。もちろん、運動中や運動後の水分補給は忘れずに。

 

 
夏バテ予防に効果的な食事
   どうしても食欲が落ちてしまう夏場。そうめんなどの口当たりのよいものばかり食べてしまいがちですが、バランスのとれた食事は暑さに負けない身体づくりの基本。卵、肉、魚など血や肉をつくる良質なタンパク質、消化のよい大豆食品や牛乳などの食品も忘れずに摂りましょう。
 
疲労回復を助ける有機酸
 

酢酸、クエン酸、リンゴ酸などの有機物質には、乳酸などの疲労物質を分解する作用があります。代表的な食材は梅干、レモン、醸造酢など。最近では水や炭酸で割って手軽に飲めるタイプの商品も出回っているので、水分補給とあわせて毎日意識的に採り入れてみてはいかがでしょうか。

エネルギーの代謝をよくするビタミンB群
 

糖質を代謝してエネルギーに変える「ビタミンB1」や、消化を助けて糖質を燃焼させる「ビタミンB2」、神経の働きや脳の機能を正常に保つ「ビタミンB12」など、ビタミンB群は栄養バランスを整える強力な助っ人。以下に挙げた代表的な食材を積極的に摂りましょう。
<ビタミンB1>

豚肉、ニラ、枝豆、うなぎ、ゴマ、玄米など
<ビタミンB2>

うなぎ、レバー、魚、ブロッコリー、パセリなど
<ビタミンB6>

レバー、魚(赤身)、玄米など
<ビタミンB12>

レバー、貝類(アサリ、牡蠣、シジミなど)、魚など

利尿効果のある野菜
 

キュウリなどの夏野菜に含まれるイスクエルシトリは体内の余分な水分を排出し、熱を下げてくれる働きがあります。キュウリのほか、スイカ、トマト、苦瓜(ゴーヤ)など。

食欲を増進させる香辛料
 

香りと刺激で食欲を増進してくれるスパイスや香味野菜。夏の人気メニュー・カレーに代表されるように、香辛料の利いた食事は食欲増進にぴったりです。また、ニンニク、青じそ、みょうが、ショウガ、ワサビ、ネギなどの香味野菜も食欲を刺激してくれます。

   
 夏場の体調管理に水分補給が大切とはいっても、冷たいものや甘いジュースの摂り過ぎは胃腸の働きを妨げたり、血糖値を上げて空腹感をなくし、食欲不振を引き起こすこともあります。また、ビールなどのアルコールは水分を排出する利尿作用があるため、かえって水分不足になることも。水分補給にはミネラルウォーターやスポーツドリンクを、そして栄養と睡眠をじ充分にとって、夏バテしらずの身体を作りましょう!
 

 

 

ビールの季節にご用心。ビール腹=メタボリックシンドローム!?(2007年7月)

 

     
 
7月のテーマ:
ビールの季節にご用心。ビール腹=メタボリックシンドローム!?
 梅雨が明けたらいよいよ夏本番、よく冷えた生ビールのおいしい季節です。中年男性に多い、お腹まわりを中心に恰幅のいい体型を「ビール腹」と称したものですが、ここ最近はもっぱら「メタボ」なお腹と呼ばれるようになりました。今回は、成人病をはじめとする様々な病気の危険因子である内臓脂肪の蓄積、いわゆる「メタボリックシンドローム」についてお話します。
 
     

 

メタボリックシンドロームとは?
 
 メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の蓄積によりインスリン抵抗性(インスリンの働きの低下)が起こり、糖代謝異常、脂質代謝異常、高血圧などの動脈硬化の危険因子が一個人に集積している状態を指します。高コレステロールに匹敵する強力な危険因子として、近年世界的に注目されています。
 
 
メタボリックシンドロームの診断基準
 

メタボリックシンドロームの診断は、必須条件である内臓脂肪の蓄積を『ウエスト径』で判定し、成人男性なら85cm以上、女性なら90cm以上を基準値*としています。さらに、血圧や血清脂質、血糖値の3つの基準値のうち、2つ以上を満たすと「メタボリックシンドローム」と診断されます。

各項目の基準値はこちらの表で確認してください↓

「食と健康」脂肪をためない食生活―メタボリックシンドロームにならないために―
https://imc.or.jp/column/syoku0704.html

*ウエスト径:男性85cm以上、女性90cm以上は、内臓脂肪面積100cm2以上に相当するとの判断ですが、正確な内臓脂肪蓄積の診断には腹部CT検査により内臓脂肪量を測定することが望まれます。

メタボリックの改善には、ウエスト径の5%減を目標に!
 
メタボリックシンドロームの治療は、糖尿病や高血圧、高脂血症などの病態を個々に治療するのではなく、共通の基盤である内臓脂肪を減少させることがポイントです。内臓脂肪は皮下脂肪に比べて減少するのが速いため、少しの減量で削減効果が期待できます。

そこで、現在のウエスト径、もしくは体重の5%減を目標に、内臓脂肪の削減に努めましょう

 
ウエスト径を減らすポイント
食事は腹八分、間食はしない
 

バランスのよい食事と、食べ過ぎないこと。総摂取カロリーを減らすよう努めましょう。

料理の味付けは薄味で
 

濃い味付けは塩分の摂り過ぎだけでなく、食欲を増進させて食べすぎを招きます。

繊維質の多い緑黄色野菜をよく食べる
 

内臓脂肪が蓄積している人の食生活には、緑黄色野菜の摂取が少ないという特徴があります。バランスを整えるためにも、野菜を積極的に摂りましょう。

適度な運動をする
 

摂取エネルギーを控えるとともに、適度な運動は内臓脂肪を減少させる有効な手段です。一般の肥満治療と同じく習慣的に継続させることが大切なので、徒歩での移動を心がけるなど、日常生活から変えて行きましょう。

お酒は控えめに
 

ビールのおいしい季節ですが、ビールだけでなくアルコールは総じて脂肪に変わりやすいもの。おつまみも高カロリー、濃い味のものが多くなりがちなので、飲みすぎ・食べすぎには注意しましょう。

タバコも控える
 

内臓脂肪型肥満の人には、喫煙者の割合が多いという特徴もあります。喫煙は動脈硬化性疾患の危険性をいっそう高めるので、禁煙に努めましょう。

   
 
  厚生労働省の平成16年国民健康・栄養調査によると、40~74歳において、男性の2人に1人、女性の5人に1人がメタボリックシンドロームか、その予備群であることが報告されました。また、子供にもその輪は広がっており、約10人に1人が肥満児であるといわれ、子供の肥満の約7割は成人肥満に移行するともいわれています。

肥満や生活習慣病、どんなケースでも、やはり一番はバランスの取れた食事と適度な運動、つまり生活習慣の改善がポイントです。夏場はアイスやジュースなど糖質の摂取が増えたり、食欲がないために栄養バランスが偏りがちな季節。いつもより更に注意して、ビール腹をスリムにしていきましょう。

 

 

 

しなやか血管で、動脈硬化を予防しよう!(2007年6月)

 

     
 
6月のテーマ:
しなやか血管で、動脈硬化を予防しよう!
 梅雨入りを向かえ、季節はいよいよ夏の始まりを告げています。猛暑を予感させる毎日の気温に、早くも夏バテ気味という方も多いのではないでしょうか。しかし、本格的な夏を迎える前の今だからこそ、猛暑を乗り切る体力を養っておきたいもの。毎日の健康を保つためにも、私たちの体の隅々にまで栄養や酸素を届けてくれる「血管」の健康を考えてみましょう。
 
     

 

動脈硬化とは?
 
 動脈は内膜・内弾性板・中膜・外膜で構成されており、心臓が押し出した血液が流れるために弾力性と柔軟性を備えたゴムホースのような管になっています。しかし、古くなり硬くなった輪ゴムを伸ばすと切れてしまうように、動脈も弾力性や柔軟性を失うと硬くなってしまいます。

血管の中にはLDLコレステロール(悪玉コレステロール)、HDLコレステロール(善玉コレステロール)、中性脂肪、脂肪酸などさまざまな物質が流れていますが、LDLコレステロールや中性脂肪などの物質は、水垢やサビのように動脈の内部に沈着して血管を狭くします。こうしていわゆる「ドロドロ血液」によって管が狭くなったり、弾力性が失われた状態を動脈硬化といいます。

 
動脈硬化の種類
 
 細い動脈や太い動脈など動脈にも色々な種類がありますが、それぞれの血管に起きやすい動脈硬化にも特徴があります。
 
細動脈硬化
 

脳や腎臓の中などの細い動脈に起きやすい。喫煙(ニコチンの影響)などによって末端の細い動脈が収縮刺激を受け続けることで次第に柔軟性がなくなり、血管が硬くなることで起きる。詰まったり(梗塞)、血管壁全体が破裂して出血したりする。

アテローム(粥状)硬化
 

大動脈や脳動脈、冠動脈などの比較的太い動脈に起きる。動脈の内壁にコレステロールなどのドロドロ(粥状)の物質が沈着して血管が狭くなるために起きる。

メンケルベルグ型(中膜)硬化
  大動脈や下肢の動脈、頚部の動脈に起きやすい。動脈の中膜にカルシウムが溜まって硬くなり、中膜がもろくなることで起き、血管壁がやぶれることもある。
動脈硬化が引き起こす、怖い病気
 
 血管の内部は目に見えないため、動脈硬化は自覚症状がなく進行します。その上、心臓病や脳血管障害など様々な病気を引き起こす要因となる危険な疾患です。
 
動脈硬化が原因となる心疾患
 

狭心症や心筋梗塞など

動脈硬化が原因となる脳血管疾患
 

脳梗塞、脳出血など

動脈硬化の原因と予防
 
 動脈硬化は加齢とともに進行する、いわゆる老化現象のひとつですが、たとえ同じ年齢でも血管の状態には個人差があり、遺伝などの要因のほかに「生活習慣」が大きく影響すると言われています。例えばコレステロールの過剰摂取、肥満、高血圧や高脂血症、運動不足など、動脈硬化の危険因子は実にさまざまです。これらを予防するためには、やはり生活習慣の改善が第一です。以下の項目を参考に、しなやかな血管を保って動脈硬化を予防しましょう。
 
動物性脂肪の摂り過ぎに注意する
血圧を上昇させるため塩分は控えめに
HDLコレステロール(善玉コレステロール)を増やすために

適度な運動を心がける

喫煙は血管を収縮させ、傷つけるため、禁煙に努める
   また、動脈硬化は他の多くの病気と同じく早期発見が鍵です。健康診断で血圧、総コレステロール、中性脂肪、肥満度、HDLコレステロールの値などを検査し、動脈の健康度をこまめにチェックしていきましょう。
 
   知らないうちに進行し、様々な病気を引き起こす原因にもなる動脈硬化。しかもその危険因子は上に挙げたように多くの種類があります。しかし、裏を返せばこれらの危険因子は健康な体づくりの大敵と同じもの。「ヒトは血管とともに老いる」という言葉を胸に刻み、健康な血管を保つよう生活習慣を改善していきましょう。

 

 

健康のバロメーター「うんち」を知ろう!(2007年5月)

 

     
 
5月のテーマ:
健康のバロメーター「うんち」を知ろう!
 ぽかぽかと春らしい陽気…というより、真夏のように蒸し暑かったり急に冷え込んだりと不安定なお天気が続いていますね。日中の暖かさに、つい薄着で出かけたら夕方冷え込んで風邪をひいてしまった、なんて方もいるのではないでしょうか。気候が不安定だと、体調も崩れがちです。今回は、体内の健康状態を知る一番身近な方法「便」について考えてみましょう。
 
     

 

まずは「うんち」をチェック!
 

 理想的な便の例えとして、よく「バナナのようなうんち」が良いとされます。これは便の色、固さ、量、そして形(状態)を表しています。以下のチェック項目をよく覚えて、今日の排便後に自分の便を観察してみてください。

●便の色
ben 便の色は腸内細菌のバランスによって変化します。ビフィズス菌たっぷりの健康的な腸内活動を表すのは、白みがかった黄色の赤ちゃんの便ですが、成人がこんな便を出すのは無理な話。食事の内容によっても左右されますが、基本は茶色がかった黄色で、黄色に近いほど「いい便」と言えます。

黒っぽい便:悪玉菌が腸内に増えている証拠。胃や十二指腸、小腸などに潰瘍や腫瘍ができて出血している可能性もあります。

灰色の便:脂肪分の摂りすぎ、肝臓、すい臓、胆のうに異常がある可能性があります。

赤い便:大腸の出血や痔、大腸がんの可能性があります。

上記のような色の便が出る場合、それが一時的なものであれば、食べ物の色素や服用している薬の影響であったりして特に問題はありません。しかし、長期にわたってこのような便が出る場合は、体の器官に異常がある疑いがあるので注意が必要です。

●便のにおい

便の悪臭のもとは、腸内の悪玉菌。便はくさいものだと決め付けがちですが、腸内環境のよい人の便は、実はそれほどくさくないものです。悪臭のきつい便が出る人は、悪玉菌が大繁殖して有害物質を発生している可能性があるので、食事や生活習慣を見直しましょう。また、肉類などのたんぱく質を腸内細菌が分解する際にきつい臭いを出す物質を生産するため、肉類中心のいわゆる欧米型の食生活を送っていると便のにおいがきつくなる傾向があります。

●便の固さと形

便の形状は、便に含まれる水分量によって変わります。健康な便は通常70~80%の水分を含むとされ、まさにバナナの実のような固さと形でスムーズに排便されます。これより水分量が少なくなるとコロコロとしたウサギの糞のような形になりますが、これは便秘の人に多いタイプ。逆に形をとどめないほどゆるい水状の便は下痢の状態です。ちなみに「健康な便は水に浮く」という話を聞いたことがあるかもしれませんが、これは食物繊維をたっぷり摂ると繊維質が多く密度の軽い便が出る、という説に基づくようです。しかし繊維質の多い食事を続けても便の比重には変化がなかったという研究結果もあるため、便が沈むからといって特別気にすることはないようです。

●便の量

排便の量は当然食事の量に影響を受けますし、イモ類や豆類など食物繊維の多い食品をたっぷり摂ると便の量も多くなります。一回の便の目安は150g程度とされ、目で見てバナナ1本半~2本分くらいの便が出ていればおおむね理想的な量の排便といえるでしょう。

 
腸内環境を整えて、快便生活を!
 

 
腸内環境を左右するのは、腸内細菌のバランス。腸内には500から1,000種類にも及ぶ細菌が存在するといわれ、その中でも乳酸菌などの善玉菌が多い弱酸性の腸内環境が健康な状態。しかし、食生活や生活習慣、ストレスなどで腸内細菌のバランスが崩れると、クロストリジウムなどの悪玉菌が増えてしまいます。悪玉菌が優勢になると腸内はアルカリ性に傾き、腸の働きが鈍くなります。それが便秘の原因となり、さらにその留まった便が悪玉菌の餌となり、腸内は悪玉菌の温床へ…と悪循環を始めます。そうなると、悪玉菌が発生する有害物質が腸壁から吸収され、血液にのって全身へ運ばれ、いろいろな病気やトラブルを引き起こす原因となります。便秘が続くと肌荒れや頭痛などの症状が出るのはこのためです。

悪玉菌は発がん性物質を作り出し大腸がんなどを誘発する原因にもなるので、たかが便秘と侮らず、規則正しい生活、食物繊維の多い食事、そしてたっぷりと水分補給を心がけて早めに解消しましょう。また、ビフィズス菌などの乳酸菌は乳酸や酢酸を出して腸に刺激を与え、運動を活発にして排便を促して便秘になるのを防いでくれるので、ヨーグルトなどの乳製品も積極的にとりましょう。

 
 大腸は、さまざまな病気の発信源といわれます。その腸内を正常な状態に保つことが、健康な体づくりの秘訣。その腸内の様子を知ることのできる便は、まさに健康のバロメーターです。最初は少し抵抗があるかもしれませんが、その貴重な「情報源」を水に流す前に、毎回観察する習慣をつけていきましょう。

 

 

バランスのとれた食事で、毎日の健康を!(2007年4月)

 

     
 
4月のテーマ:
バランスのとれた食事で、毎日の健康を!
 進学、就職、転勤などなど、この4月から新しい生活が始まったという方も多いのではないでしょうか。新しい生活に乱れてしまったリズムも、そろそろ慣れてきた頃だと思います。そこで、今回は生活のリズムの見直しとあわせて「食生活」のリズム(バランス)について考えてみましょう。
 
     

 

まずは意識的に『一汁三菜』の食卓を
 

バランスのとれた理想的な食事の基本は『一汁三菜』と言われますが、これはご飯(主食)・汁もの・3種類のおかずを表し、昔から日本の食卓に取り入れられていた考え方。この『一汁三菜』の食事はたくさんの食材を使うので、自然と栄養のバランスがよくなります。
image●主食

主食となるのはご飯やパン、麺類などの炭水化物。忙しい朝は手軽なトースト、昼はさっぱり手早く食べられるお蕎麦など、状況や好みに応じて選ぶことができますが、基本はやっぱりご飯です。ご飯は太ると思われがちですが、糖質やたんぱく質、食物繊維を多く含み、パンより腹もちがいいので、一食毎をしっかり食べることで間食を防止できます。また、まぜご飯や丼ものなどにすれば、それだけでおかず1品分と考えることができます。

●汁もの

ご飯といえばお味噌汁ですが、具沢山の豚汁やけんちん汁、野菜たっぷりのミネストローネなど、工夫次第でこちらもおかずの1品とあわせることができます。お鍋でイチから作るとなると意外と手間のかかるスープ類も、お湯を注ぐだけのカップスープや野菜ジュースなどを利用すれば手軽に取り入れられますね。

●おかず

「3菜」といっても、これはもちろん目安の数字。目玉焼きや納豆1パックでも立派な1品になりますし、例えば肉野菜炒めや筑前煮など、1品で色々な食材を摂ることのできるボリュームたっぷりのおかずなら2品分と考えることもできます。おかずの品数を多くすればそれだけ色々な栄養素を摂ることができますが、言い換えれば1品に使う食材を増やせば品数を無理に多くする必要はありません。あまり堅苦しく考えず、冷凍食品やお惣菜なども利用しながら上手に「手抜き」するのも『一汁三菜』の食卓を毎日続けるコツです。

●果物

『朝の果物は金』という言葉を聞いたことがありますか?果物に多く含まれる糖分(果糖)は体に吸収されやすく、睡眠中に失われたエネルギーを効率よく摂取するのにぴったりの食材としてこう呼ばれているのです。逆に『昼は銀、夜は銅』とも言われますが、これは実は間違いとの説も。果物は甘い=糖分が高いから夜中に食べると太るというイメージがあるようですが、カロリー自体は野菜より低いものが多いのです。不足しがちな食物繊維も補うことができるため、朝に限らず1日100g(りんご約1個分)を目標に食べると良いでしょう。

毎食『一汁三菜』の食事は難しいという人は、例えば時間のある夕食だけでも、品数を多めに『量より質』の食卓を心がけましょう

 
理想的な食生活の指針は『食事バランスガイド』にあり
 

image飲食店やスーパーマーケットなどで、いろいろなメニューのイラストがちりばめられた「コマ」のデザインを見かけたことがありますか?これは『食事バランスガイド』と呼ばれるもので、一日に「何を」「どれだけ」食べるとバランスのとれた食生活になるかという目安を表しています。きちんと3食とっていても、栄養素が偏っていてはバランスのとれた食生活とは言えません。まずは1週間、バランスガイドに沿って食生活をチェックしてみましょう。

※詳しくはコチラのページを→

知っていますか『食事バランスガイド

 
朝昼晩、きちんと3食を
   3食のうち、「朝ごはん」が一番大切というのは皆さんよくご存知のことだと思います。確かに、寝ている間に下がった体温を上げ、これから始まる1日の活動のエネルギー源を補給するために朝食はとても大切。朝は忙しく、つい朝ごはんを抜いてしまうという人も多いと思いますが、少し早起きしてでも是非食べて欲しいものです。また、休日など、朝食をお昼ご飯と一緒に「ブランチ」として済ませる人もいますが、やはりなるべく1日3食を守って欲しいところ。遅めの朝食なら量を少なく、また昼食の時間をその分少し遅めにするなどして、毎日3食を心がけましょう。
 
 
 毎食バランスのとれた食事を摂るのは大変という人も、まずは1日1回『一汁三菜』の食事を心がけるところから始めましょう。そうすれば、毎日とは言わなくても週単位でバランスのとれた食生活になっていきます。そしてバランスのとれた食事に加え、食事のときはできるだけ「じっくり味わって」食べることも大切。おいしさを感じる器官は、舌よりも目といわれます。新聞やテレビを見ながらの食事や、見るからに寂しい食卓では食事のおいしさ、楽しさは感じられませんよね。また、目で見て、鼻で嗅いだ食べ物の情報が脳に伝達されると唾液が出て、消化を助けてくれます。1日1食、家族そろって『一汁三菜』の食卓を囲んでみませんか?

 

 

イライラ、憂鬱… 女性の悩み・更年期障害(2007年3月)

 

     
 
3月のテーマ:
イライラ、憂鬱… 女性の悩み・更年期障害
 まだまだ冷え込む晩もありますが、日中の陽射しは暖かく、随分と春めいてきました。花粉の悩みを除けば、なんとなく気持ちもウキウキする季節です。しかし、季節に関係なくイライラしてしまいがちなのが女性の更年期。今回は更年期障害についてお話します。
 
     

 

更年期障害とは
 

Images人間の身体構造と生理機能において人生における大きな転換期となるのが、子供から成人になる思春期と、成熟期から老年期へと向かう更年期。更年期とは、生殖期(性成熟期)と非生殖期の間の移行期を指し、女性の卵巣機能が衰退し始めて消失する時期にあたります。卵巣機能の消失とはつまり閉経のことで、閉経前後における女性ホルモン(エストロゲン)の減少が主な原因となって起こる様々な症状を、一般的に更年期障害と呼びます。

エストロゲンは40歳頃から減少し始めると言われ、閉経後も数年間は分泌されます。更年期障害には大きく分けて2つの発現時期があり、エストロゲンの低下に伴い急速に発現する早発症状と、閉経後数年から10年以上してから発現する遅発症状とがあります。ちなみに、日本人の自然閉経の平均年齢は51歳で、45歳から56歳が閉経の正常範囲とされています。

 
更年期障害の主な症状
 

更年期障害の代表的な症状にあげられるのが、のぼせ(hot flash)、ほてりで、エストロゲンの欠乏により脳の自律神経調節中枢の機能が変化するために起こると考えられています。突然熱感が起こって体から顔や手足へと広がり、発汗や動悸を伴うことが多くあります。また、エストロゲンの低下による中枢神経の機能変化、閉経による女性としての喪失感などによって不眠やうつ症状といった精神的な症状が起こることもあります。

エストロゲンの低下は他にも様々な症状を引き起こし、膀胱および周辺の筋肉低下による頻尿や失禁をはじめ、骨粗しょう症や高脂血症、動脈硬化などの病気を引き起こすことも。また、閉経後(老人性)膣炎による粘膜の萎縮や分泌物の減少によって、膣前庭の灼熱感、掻痒感、乾燥感および性交痛が出現し、性欲も減退します。

●早発症状

のぼせ、ほてり、発汗異常、動悸、めまい、うつ状態、イライラ感、不眠、頭痛、手足のしびれ、蟻走感(皮膚を蟻が這っているような感覚)など

●遅発症状

性交痛、閉経後(老人性)膣炎、尿道炎、失禁、皮膚萎縮、肥満、腰痛、肩こり、骨粗しょう症、骨量減少症、動脈硬化など

 
更年期障害の診断と治療
   更年期障害の診断は、上に挙げたような自覚症状に加え、血中のエストラジオール濃度、LH(黄体化ホルモン)やFSH(卵胞刺激ホルモン)の上昇を測定することで行い、主な治療はエストロゲンを補充する女性ホルモン補充治療です。また、精神症状に対しては精神安定剤や漢方療法が用いられることもあります。

一般的に、更年期障害は「身体がほてる」「イライラする」など、“我慢すれば過ごせる”ものとして捉えられがちですが、女性ホルモンの減少によって起こる骨粗しょう症や動脈硬化などの深刻な病気との関連が注目されるようになり、治療に関しても見直されてきました。

 
 
 女性にとっての更年期は、ホルモンなどによる身体的な変化に加え、心理的、精神的にも大きな変動のある時期です。女性としての喪失感や、子供の成長によって母親としての存在意義が薄れることへの孤独感、夫や自身の定年や老後に対する不安など、様々な環境の変化によってうつ状態が助長されることも。しかし、体力や性的能力の衰えに対して知性や情緒の面では円熟する時期でもあります。「我慢すれば過ぎる」「恥ずかしい」と悩むよりも、診断と適切な治療を受けて心身ともに快適に過ごせるようにしていきましょう。

 

 

抜け毛が気になる、コレって薄毛のサイン?(2007年2月)

 

     
 
2月のテーマ:
抜け毛が気になる、コレって薄毛のサイン?
 暦の上では春になりました。暖冬ということもあり、今年の花粉飛散は早めに始まるとの予報も出ているので、花粉症の方はマスクなどの対策をしてでかけましょう。さて、今回は「髪」をテーマにお話します。男性だけでなく、女性にも増えてきた薄毛の悩み。その原因や予防策について解説していきます。
 
     

 

薄毛の定義としくみ
 

Images 薄毛とは、髪が生えかわるたびに細くなり、頭髪にコシやハリがなくなって全体や一部的にボリュームがなくなってくる状態のことで、頭髪の量のことを指す言葉ではありません。つまり、髪の生える密度自体は変わらなくても、頭髪が細くなることで量が減ったように見えることも多いのです。

髪の毛には、生えかわる周期(ヘアサイクル)というものがあります。生えた髪の毛が、おおよそ2~7年ほどの成長期のあと、2,3週間ほどの移行期を経て、3,4ヶ月の休止期に入ると抜け落ち、そして3,4ヶ月後にまた成長期になり、毛が生えはじめるというものです。成長期に入って伸び始めた毛は、細い毛から始まりだんだん太くなってきますが、このとき、普通の太さの毛の中に短く細い成長期初期の状態の毛が多く見られるようになってくると薄毛のサイン。これは成長期が短縮したために起こるもので、毛が伸びたり太く成長する前に、移行期や休止期になってしまうのです。さらに進行すると、ヘアサイクルがどんどん短くなって休止期が長くなり、やがて毛包(毛を作る組織)自体が消失していきます。そこからは毛が生えなくなるため、密度が薄くなっていくのです。

 
男性の薄毛と女性の薄毛
   薄毛になる原因は、一般的に男性ホルモンの影響が大きいとされますが、全身の体毛を比べると分かるように、本来男性ホルモンは毛包を大きくしたり、毛を太くしたり、成長期の期間を長くする作用があるものです。その男性ホルモンが何故頭髪に関してはマイナスに働くのか、その原因はよく分かっていませんが、精巣機能をなくした男子は薄毛にならないという調査結果も報告されています。

男性の薄毛に多いのは、生え際が後退したり、つむじや頭頂部周辺が薄くなってくるタイプですが、女性に多いのは頭頂部分のみ薄くなってくるタイプです。薄毛に悩む女性が増えたのは、ヘアカラーやパーマをする人が増えたこと、過剰なシャンプーなどがその大きな原因のひとつと言われているので、若いうちから注意が必要です。

 
円形脱毛症について
   徐々に進行する薄毛とは違い、突然発症するのが円形脱毛症です。頭髪が円形もしくは楕円形に抜けてしまうもので、ひげや眉毛が抜けてしまう場合もあります。そのメカニズムについては解明されていませんが、なんらかのストレスがきっかけとなるケースが多いようです。脱毛箇所の範囲はほんの豆粒ほどのものから500円玉大のものまで様々で、多くの場合かゆみなども起こらないため、気付かないうちに進行していることも多いものです。気付いたことが余計ストレスとなり、脱毛を進行させてしまうこともあるようですが、一般的には自然に回復する症状でもあります。かゆみや腫れを伴う場合などは、皮膚科など医師に相談しましょう。
 
 
 薄毛は遺伝すると言われますが、薄毛そのものが遺伝するというより薄毛になりやすい体質を受け継いでいると言ったほうが正しいでしょう。ストレスや生活習慣なども薄毛の原因と思われていますす。しかし、実際には毛根に充分な栄養が行き渡らないことで毛髪の成長が妨げられることのほうが大きいようです。そこで、注意したいのは頭皮の健康。過剰なシャンプーは頭皮を乾燥させ、毛根を弱めてしまいますし、すすぎ残しもよくありません。生活習慣の乱れや喫煙なども血管を収縮させて栄養の流れを妨げるのでご注意を。育毛剤などを使用する場合も、頭皮を清潔に保った上で使いましょう。