画像

まめ知識カテゴリ: 運動

成長期の子供が、スポーツでケガをしないための予防と対策(2013年5月)

 

     
 
5月のテーマ:
成長期の子供が、スポーツでケガをしないための予防と対策

 平成24年度から中学校で武道教育が必修となりました。学校が柔道、剣道、相撲の中からどれかを選択するというものですが、比較的用具の費用負担が少ない柔道を選択する学校が多かったようです。しかし、読売新聞社の調べによると昨年度は北海道だけで、12名の生徒が柔道の受け身などの練習中に骨折しています。

正しい受け身を身に付けておくことはたいへん役に立ちますが、成長期の子供の身体の特性を理解した指導でなければ、逆効果になってしまいます。とくに中学生ぐらいの年頃は、背丈が急激に伸びるため、骨折等の障害を起こしやすい時期でもあります。今回はこうしたスポーツ時のケガや障害について、その予防と対策についてご紹介します。

 
     

 

成長期の子供には特に注意を!
 

 強い外力によって突然起こる骨折などのケガと、繰り返される小さな損傷が積み重なって慢性的に発症する障害があります。この障害には、疲労骨折なども含まれます。運動による刺激が生理的な許容範囲であれば、筋肉や神経、血管などの器官は、発達しその運動への適応力が強化されていきます。しかし、この刺激の強度が生理的許容範囲を超えてしまうと、ケガや障害を起こすリスクが高まります。成長期はこの許容範囲が狭い時期にあたるため、よりケガや障害が発生しやすくなると考えられます。

個人差もありますが、平均的に女子が10歳前後、男子は12歳前後が年間における身長の伸びが最も大きな年齢です。身長の伸びが著しいということは、骨が折れやすいもろい時期でもあり、骨の成長に関係する骨端軟骨に起こる障害も多いのです。大きすぎる負荷や生理的許容範囲を超えた激しいトレーニングを続けると、この骨端軟骨がつぶれてしまう可能性があり、骨が十分に成長できなくなってしまうことも考えられます。骨端軟骨は成長軟骨とも言われ、手足の関節に近い所にあって骨の成長をつかさどっています。寝ている間に分泌される成長ホルモンやビタミンなどが影響して成長を促すという「寝る子は育つ」ということわざ通りの働きをする大切な器官なのです。

重い器具を利用したウェイトトレーニングも、この時期に行ってはいけない運動です。筋肉トレーニングは、第2次性徴期に入る16歳から17歳以降に行うなど、子供の運動には、保護者や指導者は十分に注意し、将来に障害を残さないように留意しなければなりません。

熱中症も含まれますが全国の学校における負傷のデータによると、平成22年度の負傷件数は約105万件で、児童・生徒数からみると約8%の発生率ということになります。負傷している箇所は、小学生では顔や頭、腕などに多く、中学生になると顔や頭よりも足腰の負傷が増え、高校生ではさらに足腰の負傷が増えていきます。これらの負傷が繰り返されると、スポーツ障害という故障を引き起こしてしまいます。

   
主なスポーツ障害
 
野球肩
 

 肩の傷害で多い肩関節の脱臼や亜脱臼は、高校生以上に見られるもので、中学生以下ではリトルリーグショルダーと呼ばれるピッチャーによく起こる肩痛があります。リトルリーグで使用する硬式ボールは重く、子供の柔らかい骨には負担が大き過ぎると考えられます。上腕部の肩関節に近い部位の骨端軟骨に障害が起こり、ひどい場合は骨端線難開を生じます。レントゲン写真で骨端部の開大が見られる場合は、数ヶ月の完全な安静が必要になる場合もあります。

水泳肩
 

 ストローク動作の繰り返しで、靭帯が骨をこするために痛みが出ます。早めの治療を行なえば、手術せずに問題なく治す事ができます。

野球肘
 

 投球により生じる肘の痛み全般をさします。ピッチャーに圧倒的に多いもので、全力で投げる事で肘に負担がかかり、骨、軟骨、靭帯に損傷が起こります。指導者は、肘関節の動きの悪い子供にはすぐに投球を禁止し、整形外科の診察を受けさせないと症状は悪化し選手生命を奪う事になるということを肝に銘じなければなりません。

オスグッド・シュラッテル病
 

 成長期に最も多い痛みで、飛び跳ねる動作を伴う激しい運動で膝の下の少し出っ張ったところに痛みを感じます。骨としてはとても弱い箇所なので、少し休んでも痛みが引かない場合は治療が必要になります。

   
予防に大切なのは
 

 スポーツ障害を予防するには、一人ひとりの発育状況を見極めた指導が行われることが大切です。筋力が不足していたり、柔軟性が低下している子供にとっては、運動そのものが負担になり疲労が蓄積して障害を起こす原因の一つとなってしまいます。

指導者は、子供の動きをよく観察し、痛みを訴えてくる前に問題に気づくようにするのが理想です。もちろん適切な治療と安静、ケガ直後のアイシングなども大切ですが、ケガの発生要因を前もって知っておくことが、特に成長期においてはスポーツでケガや障害を予防することにつながります。

   
   

 

中高年に必要な筋力トレーニングとは(2013年4月)

 

     
 
4月のテーマ:
中高年に必要な筋力トレーニングとは

 冬の間はじっと家に閉じこもっていても、暖かくなると誰もが身体を動かしたくなるものです。中高年のマラソンやジョギングのブームもあり、身体に良いとされる有酸素運動を毎日のように行っている人も多いことでしょう。

この身体に良いとされる有酸素運動で鍛えられる筋肉は、遅筋繊維と呼ばれるものです。筋肉には、この他に瞬発的な動きに重要な役割を果たす速筋繊維と呼ばれるものがあります。では、中高年にとってこの速筋繊維を鍛えるようなトレーニングは必要ないのでしょうか。今回はこの筋肉トレーニングがテーマです。

 
     

 

 

 Aさんは、三人のお子さんを持つお父さんです。上の二人のお子さんと公園で遊ぶのは楽しかったのに、三人目の時は身体がついていかなかったと言います。子供は、少しもじっとしていないもの。何かに興味を引かれると、急に飛び出してしまいます。Aさんは二人目までは余裕でそうした動きについていくことができたのに、少し年齢の離れた三人目のお子さんの動きには対応できなかったそうです。

あるとき、公園で走ってきた自転車に向かって飛び出した子どもを止めようと、急にダッシュしたAさんは、アキレス腱を断裂する大ケガをしてしまったのです。急に走り出したり、走っている方向を急に変える動きには、速筋繊維が主に使われます。この速筋繊維は、遅筋繊維に比べて加齢とともに萎縮し、なくなってしまう性質が強いものです。40歳を過ぎると筋肉の筋繊維数が減少し、筋繊維の消失現象が起こりますが、特に失われるのがこの速筋繊維なのです。Aさんは、普段健康のためにジョギングなどをしていたのですが、この速筋繊維がいつのまにか萎縮していて、急な動きで過度に負担のかかった筋繊維が切れてしまったのです。

ジョギングを趣味にしている人に、「長く走るのは得意、フルマラソンもタイムは遅いけれども必ず完走します。でも速く走るのは苦しくて無理」という人は意外に多いものです。これは遅筋繊維が鍛えられていて持続力はあっても、速筋繊維は萎縮してしまって力がでない筋肉に変わっているからです。速筋繊維は、それを意識した筋力トレーニングを行わなければ、維持できないものなのです。

速筋繊維は中高年であってもトレーニングで強化することができます。最近の研究では、90歳を超えた高齢者でも負荷をかけた筋肉トレーニングで、筋力が高まることが実証されています。ただし、中高年の筋力トレーニングを、安全に効果的に行うには、きちんとした指導者のいる施設を利用したほうが良いでしょう。

   
中高年の筋力トレーニングはこの点に注意
 

 まず注意しなければならないのは、過度の血圧上昇です。息を止めて力を入れると血圧が上がって危険な状態になることがあります。息を止めて力むと収縮期の血圧が300mmHg、拡張期の血圧が200mmHgといった状態になることもあるからです。最近は、洋式便器の普及で少なくなったと言われる脳出血。昔は寒い時期に和式便器で踏ん張ったときに倒れるということがよくありました。息を止めて力むとこれと同じ状況を引き起こすことになります。

これは息を止めると胸腔内圧が上がって血流を阻害し、血圧を上げてしまうのが原因と考えられます。胸腔内圧を上げないようにするには、トレーニング時に、必ず息を吐きながら筋肉に負荷をかけること、これだけで血圧を上げすぎる危険を回避できるのです。

また、筋肉に負荷をかけるウェイトリフティングなどを習慣的に行っていると、一般の健常者と比較して動脈伸展性が低くなるという報告があります。この動脈伸展性が低下すると収縮期の血圧が上昇します。逆に、ジョギングなどの有酸素運動を日常的にしている人は動脈伸展性が高いと報告されています。

つまり、中高年の筋肉トレーニングはいざというときの瞬発力の維持には必要ですが、その筋力トレーニングで血圧を上げないようにするために、同時に有酸素運動を習慣化することが大切だということです。

   
トレーニング効果は、どのくらい続くのか
 

 こうしたトレーニングは少なくとも2ヶ月程度は継続しないと効果が現れてきません。しかし、風邪を引いたり、仕事が忙しくなったりといった理由でトレーニングを休み、そのまま止めてしまうことはないでしょうか。

そうした場合、トレーニング効果はどのくらい続くものかご存知ですか。有酸素トレーニングを行うと最大酸素摂取量が増加しますが、ある検証によるとトレーニングで増加した最大酸素摂取量は、3~4週間程でトレーニング前に戻るという結果が確認されました。このことから、トレーニングで増加した筋力も3~4週間で元に戻ると考えられます。これが高齢になるとさらに低下率が増加すると言われています。

やはり、「継続こそ力なり」で、継続する工夫こそが大切だということになります。春に始めた物事は長続きすると言われますが、さらに年齢と経験を重ねた中高年には、若い人にはない知恵と自分を知っているという強みがあります。どうすれば自分のモチベーションを楽しく維持できるか、己の性格に合った方法を探し出せるのか、必ず見つけることができるではないでしょうか。

飛び越せると思った水たまりが越えられなかったり、ちょっとしたつまずきで、身体が支えられずに転んでしまうなどということにならないように、筋肉トレーニングと有酸素運動、この二つをバランスよく日常生活に取り入れることができれば、あなたはよりアクティブに人生を楽しむことができるでしょう。

   
   

 

運動には最適の季節です。でも、気をつけなくてはいけないことも。(2012年10月)

 

     
 
10月のテーマ:
運動には最適の季節です。でも、気をつけなくてはいけないことも。

猛暑の夏も終わり、やっと秋らしい風が吹いてきました。あまりの暑さで、夏の間動かすことをしていなかった身体を、思う存分鍛えるのにはもってこいの季節です。しかし、その前にすこし自分の身体がどうなっているかを確認してみましょう。夏の間、油分や糖分、そして塩分の多い食べ物を摂り過ぎて、血圧が上がったり、太ったと感じてはいませんか?

生活習慣病の予備軍にならないためには、とにかく食事と運動は大切です。でも、やみくもにダイエットをしたり、いきなり負荷の高い運動をすると、思わぬ故障を起こしてしまうことにもなりかねません。良かれと思っても、立ち直るのに時間がかかってしまっては、せっかくの努力が水の泡です。そこで今回は、スポーツの秋に運動を始めるときに気をつけておきたい事を紹介します。

 
     

 

運動で身体を整えるために
 

1.十分な休養時間

2.効果的な栄養補給

3.必要なボディケア

運動を行うと、身体には負荷がかかり疲労が残ります。その疲労が身体にメッセージを送り、身体が回復するためのシステムを動かすことになります。そのバランスを上手にとっておかなければ、どこかに問題が発生してしまいます。運動で身体を鍛え、そして体調を整えるためにこの3項目を意識しておきましょう。

イラスト

 
1. 休養に関して
 

毎日続けて運動をするよりも、1日運動したら、2日から3日休んでまた運動をした方が、運動の効果が得られやすいという生理的な現象があります。休養をとらずに、あせって運動を毎日続けると、疲労が筋肉や関節に蓄積されて故障や怪我の原因になることも多々あります。特に、運動する習慣から離れて久しい人は、あせらずに疲労回復を待ってから運動しましょう。特に若い頃、運動部に所属して筋肉の痛みに耐えて頑張って強くなったという経験のある人は、どうしても無理をしがちです。身体に鞭打ち痛みに勝つことで、最大の運動効果を得られるという思い込みは危険です。

2. 効果的な栄養補給
 
自然界で生きる野生動物の食事をイメージすると分かりやすいものがあります。野生動物は、食べ物を煮たり焼いたりせず生で食べます。生息域に近い所にいるものを捕らえて食べます。そのとき、その場所にあるもの、いわゆる旬のものを食べているわけです。
 人間は、食べ物を安全に、そして美味しく食べるために、材料を煮炊きすることを覚えました。新鮮でない食物もこうすれば、食べる事ができるわけです。しかし、生の食材がもっている消化酵素は、加熱調理によって不活性化されるものもあります。つまり加熱調理した食べた物を消化するのには、自分の体内にある消化酵素を大量に使う事につながり体力を消耗します。たくさん食べ過ぎて「疲れた」と感じることはありませんか?それにはこのような理由があります。食後に横になると牛になると子供の頃に言われたりしたものですが、実は食事の後に身体を動かさずにじっとしていることは、消化を助けるためには大切なことなのです。そして身近なところで採れるできるだけ新鮮な食物を、火を使わずに調理することは身体に負担をかけずに効果的に栄養補給をすることにもなります。 イラスト
3. 必要なボディケア
  運動の激しさや個人によって異なりますが、運動が激しければ激しいほど必要性が高まります。放っておくと怪我や疲労が慢性的な障害へと悪化してしまうことにもなります。中高年の運動ということに限定すれば、疲労や痛みが運動後に強く残る場合は、それを我慢しないということが大切です。運動後に「ああ疲れた」と感じるときは運動強度、つまり身体にかかるストレスが大きい場合があります。さらに、運動後に2日も3日も疲労が残るようでは、明らかに運動強度が高すぎますので運動後のケアが必要です。運動した後に「ああ気持ちよかった」と終えられるようならば、自分で行うストレッチでも十分にケアできます。
 

イラスト

ストレッチで、筋肉を延ばしていくとその刺激で、コラーゲンを作る「繊維芽細胞」という特別な細胞が活性化され、古いコラーゲンを壊して新しいコラーゲンに置き換えてくれるといわれます。さらに、ストレッチにより血管の筋肉も柔らかくなり、動脈硬化が改善されるということが、最近の研究で分かってきています。

ただし、痛みが永く続く場合は、自分でなんとかしようとは思わず、早めに整形外科などの専門医に相談しましょう。

  以上のことに注意して、無理をせずにスポーツの秋をおおいに満喫しましょう。

 

サイレントキラー、高血圧とは何か(2012年8月)

 

     
 
8月のテーマ:
サイレントキラー、高血圧とは何か

高血圧は、突然致命的な症状をもたらすことがあります。しかし、そうなるまでまったく自覚症状がないことも多く、サイレントキラーと言われることがあります。血液には酸素や栄養素など、身体に必要な物質が溶け込んで、血管を経由して体中をくまなく巡って取り込まれていきます。血液は重力によって高いところから低いところには容易に流れますが、どうしても心臓より高い頭などには流れにくいわけです。そこで心臓は圧力をかけて血液を送り出します。この圧力が基準値より高い状態を高血圧と呼びます。

 
     

 

血圧はなぜ上がるか
 
イラスト

血圧は、心臓から排出される血液の量とその血液の流れに逆らう末梢血管の抵抗によって決定づけられています。心拍数は自律神経によってコントロールされますが、同時に血管の拡張と収縮もコントロールされています。交感神経が緊張すると、それに伴い心拍出量(心臓が1分間に送り出す血液量)が増えて末梢の血管は収縮し、血圧が上がることになります。逆に交感神経が弛緩すると、緊張とは逆の動きになり血圧は下がるといった具合に、交感神経は血圧と密接に関連しています。

また、もともとしなやかで弾力のある動脈が高い血圧を受け続けると、動脈の壁が傷ついて固くなります。これが動脈硬化で主に細い動脈で起こるため細動脈硬化と呼ばれます。血管の内部に酸化したコレステロールが蓄積されて起こる粥状硬化は比較的太い動脈で起こり、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こします。

   
血圧の正常値は?
 

血圧の値は心臓が収縮して血液を送り出すときに最も高くなり(最高血圧)、心臓が収縮した後、拡張するときに最も低く(最低血圧)なります。この最高血圧と最低血圧の国際的な基準による正常値が、収縮期(最高血圧)130mmHg未満、または拡張期(最低血圧)85mmHg未満といわれています。

血圧測定を自宅で行うと病院などで計るよりもリラックスしているため、より下がった測定結果がでる傾向にあります。そこで家庭血圧の正常な血圧値は、収縮期(最高血圧)125mmHg未満、または拡張期(最低血圧)80mmHg未満とされています。

イラスト
   
高血圧の二つのタイプ
 

明らかな原因があって高血圧になるタイプを「二次性高血圧」といい、原因を特定できないタイプを「本態性高血圧」といいます。日本人に多いのは「本態性高血圧」で、高血圧の約90%の方がこれにあたります。この「本態性高血圧」の発症にはいくつかの遺伝子が関係し、さらに高血圧の合併症として恐れられる脳卒中は、高血圧で脳卒中遺伝子のある人が発症するとされています。

高血圧は遺伝子の影響と生活習慣が複雑にからんで発症すると考えられ、二つの因子が関与する割合は同程度とされています。従って、高血圧の遺伝子があっても生活習慣を改善すれば、正常値を保つことが可能です。  また、特定の病気のせいで発症する「二次性高血圧」は、その原因となる主な病気として腎臓の異常によって起こる腎性高血圧、腎動脈の狭窄や閉塞で起こる「腎血管性高血圧」があります。

   
血圧はなぜ上がるか
 

血圧は、心臓から排出される血液の量とその血液の流れに逆らう末梢血管の抵抗によって決定づけられています。心拍数は自律神経によってコントロールされますが、同時に血管の拡張と収縮もコントロールしています。交感神経が緊張すると、それに伴い心拍出量(心臓が1分間に送り出す血液量)が増えて末梢の血管は収縮し、血圧が上がることになります。逆に交感神経が弛緩すると、緊張とは逆の動きになり血圧は下がるといった具合に、交感神経は血圧と密接に関連しています。

また、もともとしなやかで弾力のある動脈が高い血圧を受け続けると、動脈の壁が傷ついて固くなります。これが動脈硬化で主に細い動脈で起こるため細動脈硬化と呼ばれますが、血管の内部に酸化したコレステロールが蓄積されて起こる粥状硬化は比較的太い動脈で起こり、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こします。

   
改善したい生活習慣
  遺伝的な要因に、以下のような生活習慣が重なると高血圧のリスクが高まりますので注意しましょう。
 
塩分の過剰摂取
過食と肥満
アルコールの過剰摂取
タバコの喫煙
カルシウム、カリウムの摂取不足
ストレスと運動不足
   
本態性高血圧の二つのタイプ
 

本態性高血圧には、「パンパン型」と「ギュウギュウ型」という異なるタイプがあるといわれています。「パンパン型」は、血管が内側から膨らむことによって起こる高血圧で、一方「ギュウギュウ型」はホルモンの影響で外側からギュウっと圧迫されるために起こるといわれます。先にあげた塩分の過剰摂取が血圧に影響するのは「パンパン型」と呼ばれるタイプです。高血圧の70%がこの形だといわれます。

大切なのは高血圧になったら、まず医療機関で何らかの病気による二次性高血圧でないか、診断してもらうこと。正しい治療はそこから始まります。

   
生活習慣を見直し、まず無理のない生活改善を
 
イラスト

 運動不足を解消しようと、いきなり毎朝5キロ走ろうとか、それまでの生活にないものを急に計画するのは、かえって危険です。足や腰に故障を起こして新たな問題を抱えてしまうことにもなりかねません。電車通勤の人は、なるべく階段を利用するといった普段の心がけでできることから始めると良いでしょう。

過食と肥満に関しては、興味深いデータがあります。肥満体質の人は、減量によって確実に減圧できるといわれます。それは1キロ減量すると血圧が4mmHg減圧できるというもの。5キロ減量できれば20mmHg血圧が下がるとされています。あせらずに半年、1年かけるつもりで体重を少しずつ落としましょう。

その他では、まずタバコ。これは無理であろうとなかろうと絶対にやめてください。タバコを一服吸うと血圧が20mmHg上がるとされています。ニコチンが体に入ると血管がギュッと収縮して血圧を押し上げるのです。副流煙によってタバコを吸わない人も同じ害を受けているということになります。

お酒は、ほどほどにしましょう。ほどほどの酒は血圧を下げるといわれていますが、飲み過ぎは逆に上がってしまいます。適量は、ビールなら500cc、日本酒は1合、焼酎なら水割り2杯。ワインならグラス2杯程度です。気にして欲しいのは、お酒のおつまみ。習慣でどうしても塩分の高いものを摂ってしまいがちになります。おすすめなのは食材そのものに減圧効果があるとされる枝豆。市販のものは塩分が多めなので、さっと茹でて塩抜きするぐらいで、塩加減も丁度良くなります。

 

ブームの中高年登山で気を付けたい健康のポイント(2012年7月)

 

     
 
7月のテーマ:
ブームの中高年登山で気を付けたい健康のポイント

3000メートル級の山々の残雪も消え、いよいよ本格的な夏山シーズン。ここ数年、中高年を中心とした登山愛好者は増える傾向にあるようです。夏に、登山デビューを予定している人も多いことでしょう。なぜ山に登るのかと聞かれて「そこに山があるから」と答えたイギリスの偉大な登山家マロリーは、果たしてエベレスト初登頂を成功させたのかという謎を残したまま、帰らぬ人となってしまいました。

なぜ山に登るのか、この同じ問いに「健康のため」と答える中高年登山者は多いのではないでしょうか。確かに多くの登山者は山で鋭気を養い、元気と健康を伴って下山してくることでしょう。しかし、一方で山岳遭難者数も増加しています。平成13年以降40歳以上の遭難者数は一貫して増加傾向にあり、全遭難者の8割り前後を占めているといわれます。登山も安全に長続きさせてこそ健康のためと言えます。そのためは日頃の身体作りは大切です。今回は山に行く前に知っておきたいいくつかのポイントを紹介します。

 
     

 

なぜ登山をすると健康になるのか
 
イラスト 長い上り坂を荷物を担いで数時間。目的地までの道のりは、特に中高年の身体に良いとされる有酸素運動の連続です。予定のルートをたどって目的地に到達するまで、水泳やジョギング、自転車といった他の有酸素運動と比べてはるかに長時間運動し続けることになります。

しかも、1000メートルを超える高度に達する登山であれば、マラソンランナーなどの一流選手が取り入れることで話題になる「高地トレーニング」と同じ条件下での運動になります。高地トレーニングは標高1000メートル以上の空気中の酸素の薄い環境で行い、身体が低酸素状態を回復しようとして、呼吸循環の機能を高めようとする働きを利用します。空気の薄い標高では、普通に呼吸していては苦しいので、より多くの酸素を効率よく取り入れられるよう呼吸機能が高まります。同時により多くの血液を全身に送り出せるよう循環機能も高まり、酸素を運ぶ赤血球やヘモグロビンも増産されます。この状態は平地に下りてもしばらくは保たれるため、運動競技で利用されるわけです。登山をすると疲れにくい身体になると感じるのは、この高地トレーニングの効果によるものと考えられます。

また、脳や心に及ぼす効果もあります。足元の岩や斜面に集中しながら無心にリズミカルに運動することで、悩みから開放されて心が健康になったと感じる人も多いことでしょう。美しい山々を望みながら稜線を歩く爽快感、楽しさは他では得難いものです。次の山行を心の支えに仕事を頑張ろうという人もいるに違いありません。

 
まず足元が大切
  こうした登山の優れた面は、事故もなく健康な身体で下山してきて初めて生かされるものです。登山の事故で最も多いのは、下り道での転倒、滑落、転落です。足腰の弱っている人がいきなり山に登れば疲労で下山中に怪我をしやすくなります。日頃運動をしていない人が運動のためとして、いきなり山に行くのは無謀と言う他ありません。まず準備として「足作り」をしましよう。
 

まず登山用の靴を用意します。専門店で足首まできちんと固定できるものを選んでください。山道で浮き石などを踏んだとき、石が動いて捻挫することを防ぎ、また堅い木の根や岩の先端を踏んでいけるので、疲労を軽減することができます。靴を手に入れたら、この靴でウォーキング。足と靴を馴染ませ、タウンシューズより重量のある靴で歩くため、足首などの小さな筋肉を鍛えられます。スクワットなどで大きな股の筋肉を鍛える前に、まず空荷で歩き小さな筋肉を鍛え、同時にストレッチで柔軟性を高めます。平地ではただの捻挫でも、山では遭難に繋がります。くれぐれも買ったばかりの靴でいきなり山に行くのは止めましょう。平地のように靴擦れで痛い思いをするだけでは済みません。

イラスト
  また、登山予定日の1ヶ月程前から、軽いジョギングなどを週3回程度行うようにすると山に入ったときに、登りをより楽しめるようになります。何人かのパーティで山に入ったときに一人だけ苦しくて下を向いてばかりいては、楽しさも半減してしまいます。
呼吸を楽に
 

 山道を登り始めて思うのは、登山は息切れのするスポーツだということでしょう。足の運びに呼吸を合わせるようにするとだいぶ楽になりますが、酸素の薄い山での呼吸を、胸郭を広げる胸式呼吸で行おうとすると大きな筋肉のエネルギーが必要になります。そこで、比較的少ないエネルギーで横隔膜を動かして呼吸する腹式呼吸を意識的に行うようにします。よく声楽の人が練習で行うように、息を吐きながら手の平でお腹を押し、息を吸いながらその手をお腹で押し出すように練習すると良いでしょう。仰向けになってお腹の上に重い辞書などを乗せ、それを呼吸と共に上下させるようにするとより効果的な練習ができます。

また、息を吸うときは鼻から。吐くときは少し口をすぼめるか唇の上下に少し力を入れて抵抗をつけながらゆっくり吐くようにします。こうすると吸気のとき山の冷たい空気が鼻の中で加湿・保温されて身体の負担が軽減されます。呼気のときは、肺に空気を残さずゆっくりと息を吐ききることができるので効率よく酸素を取り込むことができます。筋肉内が酸素不足になると乳酸がたまり筋肉疲労を促進します。薄い空気の中で少しでも上手に酸素を吸い身体の疲労を軽減することが、下りでの思わぬ事故を防ぐためにも大切です。

自分のペースをつかむ
  自分のペースで歩きなさいと言われても、どのぐらいの早さが自分のペースなのかわからないという人も多いでしょう。目安になるのは心拍数です。アスリートが健康体を取り戻すためのエアロビック理論で知られるアメリカのマフェトン博士は、180公式という分かりやすい心拍数管理方法を提唱しています。

180から自分の年齢を引いた数を1分間の最大心拍数とし、そこから10を引いた心拍数との間で運動を行えば、最も身体に負担が少なく効率的な有酸素運動ができるというものです。例えば50歳なら180から50を引いた数、130拍を最大心拍数として、それから10を引いた120拍との間となります。日常的に運動習慣のない人は、そこからさらに10を引いた心拍数をターゲットとします。ときどき立ち止まって首か手首で15秒間脈を計り、それを4倍すると良いでしょう。ほとんどの場合、オーバーペースであることに気付くと思います。

 

山のルールとして、細い山道でのすれ違いは、登りの人を優先させて、下りの人は脇に避けて道を譲るという美風があります。このとき下山の人が立ち止まって待っていてくれていると、申し訳ない気持ちが先に立って、それまで良いペースで歩いていたところを無理に頑張って登ってしまい、呼吸を乱してしまうことになりがちです。

そこは正直に「辛いので、お先にどうぞ」と声をかけて、下山者に道を譲るのが大人の対応というものでしょう。

イラスト

 

水泳で体脂肪を燃焼させて健康的な体に(2012年5月)

 

     
 
5月のテーマ:
水泳で体脂肪を燃焼させて健康的な体に

オリンピック・イヤーの今年は、メダルの期待がかかる水泳選手の華麗な泳ぎを目にすることも多いはず。水泳で鍛えられた逆三角形の体型に憧れて、スイミングスクールに通い始める方もいらっしゃるのではないでしょうか。また、露出の多くなる夏までに体型をスリムにしたいと、これからの時期プール人口は急激に増えるようです。そこで今回は、水泳で健康的に痩せるためのポイントをご紹介しましょう。

 
     

 

  水泳の健康効果
   

水中での運動は、陸上とは違った効果が期待できます。まず、水の浮力を利用することで、局所的な身体の負担を避けることができるということ。健康のためにと、いきなりランニングを始めて膝や足に故障を起こしてしまうことがありますが、水泳はこうした危険が少ないといえます。身体にかかる水圧もマッサージ効果をもたらし、全身の血行を良くしてくれますので、疲労回復や肩こりの改善を実感する人も多いことでしょう。何よりも水泳は脂肪を燃焼するために効果的な有酸素運動とされています。しかし期待に反し、水泳を始めてもちっとも痩せないと挫折してしまう人が多いのも事実です。

イラスト

     
  有酸素運動とは
    運動には、大きく分けて短距離をダッシュするような無酸素運動と、長距離をジョギングするような有酸素運動があります。無酸素運動ではグリコーゲンが主に使われ、有酸素運動ではまず血液中の脂肪が使われ、やがて内臓脂肪や皮下脂肪も消費します。脂肪を落として痩せるためには、この有酸素運動が効果的なのですが、水泳でこの有酸素運動を長く続けるというのが意外と難しいのです。向こう側に泳ぎついたところで息が上がって、心臓もドキドキ。数回往復するともう苦しくなってしばらくは泳ぎ出すこともできない。これは、もう立派な無酸素運動の領域です。これを繰り返すのは、インターバルトレーニングと同じ状態で、とても脂肪の効率的な燃焼は望めません。
     
  心拍数を上げないで泳ぐ
    無酸素運動にならないように泳ぐには、心拍数を上げないで泳ぐ必要があります。しかし、心拍数を上げないようにゆっくり泳ぐのにはかなりの練習が必要です。ゆっくり泳げるようになるまでは、25メートル泳いだら次は心拍数を元に戻すよう、25メートルを歩いて戻ってくるようにしましょう。大抵のプールでは泳ぐコースと歩くコースが隣接されていますから、コースロープをくぐりながら泳ぎと歩きを交互に続けます。これを20分以上続ければ、体脂肪の燃焼が期待できます。
     
  ウオーミングアップが大切
   
イラスト 体脂肪はリパーゼという脂肪分解酵素によって分解されて初めて燃焼されます。このリパーゼが働く適温は、体温が1~2度上がった状態だとされます。そこで脂肪を効率よく燃やすには、プールに入る前に、エアロバイクやマシントレーニングで身体を温めておくというのも良いでしょう。さらに長時間泳いでいると、次第に水が冷たく感じられてきます。そうしたときは一時休んで採暖室で暖まり、体温を汗ばむ程度に上げてから水中に戻るようにします。運動を一時休んでも脂肪は燃え続けますので、冷たい水を我慢して、運動強度を上げるより、脂肪燃焼には効果的です。
     
  力まない、足を使わない泳ぎが「痩せる」コツ
    同じ水泳でも、背泳のように身体の外側に向かって伸びやかに運動するような動きは痩せやすく、クロールで水をかくときに最後のプッシュで力むような泳ぎでは痩せにくいといわれます。また、キックをすると身体の中で最も大きな脚の筋肉を使うことになるので、心拍数が上がり、長く泳ぎ続けることが難しくなります。クロールで泳ぐときは、腕で一回水をかいたら一回キックする2ビートで泳ぐと良いでしょう。
     
  水分補給は忘れずに
   
温水プールでは、自分でも分からないうちに汗をかいています。水分補給をせずに、採暖室とプールを往復しながら泳いでいると、血液の濃度が上がって血管や心臓に負担をかけることになりますので、水分補給は必ず行ってください。 イラスト
     
  水泳を続けるコツ
    水泳は、一人でもできるスポーツなので、どうしても一人で泳いでしまいがち。なんとなくクロールと平泳ぎさえできれば満足していまいますが、続けたいのであれば、大人向けのスイミングスクールに入ることもひとつです。自分で泳いでいる姿を自分で見ることができない水泳は、誰かに客観的なアドバイスをしてもらうことがとても大切です。フォームを矯正して楽に泳げるようになるとその楽しさは倍増します。水泳仲間ができれば、情報を交換したり、刺激し合ったりして充実したスイミングライフを送ることができます。マスターズ水泳大会への参加など、きっと楽しい思い出になることでしょう。

 

新しい年の始まりは、準備運動から!(2011年1月)

 

     
 
1月のテーマ:
新しい年の始まりは、準備運動から!
2011年、新しい年が始まりました。「一年の計は元旦にあり」と言いますが、皆さんも今年の目標はたてましたか?さて、毎日の生活や人生設計に目標は大切ですが、健康づくりにも目標の設定は欠かせません。ただし、目標達成のためにはしっかりした計画づくりと準備がポイント。そこで今回は、準備運動についてお話します。
 
     

 

ウォーミングアップの大切さ
 

ウォーミングアップとは、読んで字のごとく体を温めることで、筋肉を温めて柔軟性をよくする準備運動のことです。身体を動かすことは健康づくりのために欠かせませんが、突然激しい運動をすると、筋肉や心肺機能などに大きなダメージを与えてしまうことがあります。特に、普段運動をしていない人や、気温の低い冬場には「ウォーミングアップ」がとても大切です。

しもやけ
   
ウォーミングアップの目的
 
運動に適した動きの準備
 

ウォーミングアップのストレッチを行うと、体温や筋肉の温度が上昇し、筋肉の柔軟性がよくなります。そして、さまざまな関節の可動域(関節の動く範囲)を高めることができます。柔軟性や関節の可動域を高めることで、運動向きの動作を行いやすくなります。

身体への負担やケガの予防
 

本格的に身体を動かす前に、あらかじめウォーミングアップで身体に軽い負荷をかけておくことで、運動中の事故やケガを予防する効果が期待できます。突然激しい運動をすると、心肺機能や筋肉に大きなダメージを与えてしまうことがあるので、運動前には必ず準備運動を行いましょう。

運動するための心の準備
 

肉体的な準備も大切ですが、運動するための「心の準備」も忘れずに!ウォーミングアップを行うことで血液中のアドレナリン量が増え、「これから運動するぞ」という心の準備が整って、より意欲的に取り組めるようになりますよ。

   
ウォーミングアップのやり方
 

準備運動のやり方や内容は、季節や気温、普段の運動習慣などによって違います。例えば、気温の高い夏場なら軽く身体を動かすだけでも筋肉が温まりますが、気温の低い冬場は筋肉も冷えて硬くなっています。そこで、まずは軽くジョギングをするなどして、少し身体を温めてからストレッチをするといった「準備運動のための準備」も必要になってきます。運動前の状態に応じてアレンジしながら、体を動かして汗ばむ程度を目安に10分~20分の準備運動を行いましょう。

   
万能ウォーミングアップ
 
1. 腕を前後に振る
 

肩を中心に、大きく円を描くように前後に腕を振ります。肩関節から腕を動かすイメージで、リズミカルに10回程度行います。左右対称に行うだけではなく、左腕は前、右腕は後ろといった非対称な動きも取り入れるとより効果的です。

2. 腕を左右に振る
 

出来るだけ腕を遠くに伸ばすイメージで、両腕を外側に開いたり、交差させたりしながら10回程度行います。大きく肩を回すのもよいでしょう。

腕を左右に振る
3. 足を前後に振る
  サッカーボールを蹴るようなイメージで、軽くリズミカルに足を前後に10回程度振って太ももの筋肉を伸ばします。身体の軸がブレないように注意しながら行いましょう。
4. 足を左右に振る
 

今度は、足を左右に10回程度振ります。壁などを使って身体を支え、骨盤がずれないように意識するとうまく振ることができます。

5. 上体ひねり
 

背中を壁などに向けた状態で、左右の手が同じ位置についているか確認して行います。骨盤をできるだけ動かさないで、背中から胸を大きくひねる動作をゆっくりと10回程度繰り返しましょう。ひねった時に左右差がある場合は、柔軟性の低い方をプラス3回程度行ってください。

6. 側屈
 

頭を頭上に組んで、骨盤が動かないように注意しながら上体を大きく左右に10回程度曲げます。体幹の横の部分が伸ばされます。

側屈
 
 
健康維持のためのジョギングやダイエットなど、「今年こそは…!」と意気込んで始めるのはいいことですが、ケガをしては台無しです。特に、運動習慣のない人がいきなり激しい運動を行うと、筋肉痛になるだけでなく、筋肉の腱や靭帯などいろんな部位を痛めるリスクが高くなります。運動前の準備はしっかり行い、楽しく身体を動かしましょう。

 

 

運動を始める前に「筋肉痛」を知ろう(2010年8月)

 

     
 
8月のテーマ:
運動を始める前に「筋肉痛」を知ろう
健康のためには身体を動かすことが大切なのは皆さんご存知の通りだと思います。とはいえ、日頃運動をしていない人が運動を始めるのはなかなか難しいもの。健康づくりやダイエットのために一念発起して運動を始めようとする方に、是非知っておいて欲しいのが今回お話する「筋肉痛」についてです。
 
     

 

筋肉痛とは
 

筋肉痛とは、その名の通り「筋肉に生じる痛み」のことで、多くの方が経験したことがあるものだと思います。特に、日頃から運動していない人が急に運動すると起こりやすいものです。

筋肉痛
 
筋肉痛のメカニズム
 

筋肉痛には「筋疲労」によるものと「筋損傷」によるものがあり、一般的なスポーツなどの筋疲労による筋肉痛のメカニズムは、肩こりとよく似ているといわれています。

筋肉痛が起こる原因は、以前は体内にたまった乳酸によるものと考えられていましたが、乳酸はエネルギー源として体内で再利用できるため、現在では乳酸だけが筋肉痛の原因であるとは考えにくいと言われています。

筋疲労による筋肉痛
 

筋疲労は運動して筋肉を使ったことによって引き起こされます。翌日に起こったり、2~3日してから痛む違いについては未だ解明されていませんが、激しい筋収縮により筋肉への酸素供給が間に合わなくなると、エネルギー源(ブドウ糖)が不完全燃焼を起こして体内に乳酸が残り「筋疲労による筋肉痛」が起こると考えられるのが一般的です。また、運動をすると筋肉がダメージを受け、それを修復する時に痛みが出るとの考えもあります。

筋損傷による筋肉痛
 

筋損傷による筋肉痛は、筋肉そのものが破損している時の痛みです。運動を行うと筋肉にはいつも以上に大きな負荷がかかり、筋肉を構成する筋線維やその周辺の組織に細かな傷ができることがあります。その傷を修復する過程で、カリウム、ヒスタミン、プロスタグランジンなどのさまざまな物質が関与し、これらが神経を刺激したり、炎症を引き起こしたりするため痛みを感じるとの説が有力です。

   
筋肉痛を防ぐには
 

運動習慣のない人がいきなり激しい運動を行うと、筋肉痛になりやすいものですが、普段から運動をしている人でも、筋肉に大きな負荷をかけると筋肉痛が起こります。また、急激な運動は筋肉痛ばかりか思わぬ事故やケガの原因にもなりうるので、それらを未然に防ぐためにも運動前の準備はしっかり行うようにしましょう。

 
運動前にはウォーミングアップを!
 

運動前には軽めのジョギングなどで体を温め、ストレッチで身体をほぐしましょう。天候や気温などによってウォーミングアップにかける時間は変わりますが、体を動かして汗ばむ程度を目安に10分~20分行いましょう。

軽めのジョギング
筋肉痛になりやすい運動とは
 

ちなみに、運動の内容によって、筋肉痛になりやすいもの、なりにくいものがあります。例えば、腕を曲げて重いものを引き寄せる動作(コンセントリック収縮)と、腕を伸ばしながら負荷に対抗する動作(エキセントリック収縮)では、腕を伸ばしながら対抗する動作のほうがより筋肉痛になりやすいのです。このことを頭において、どんな動作なら筋肉痛になりにくいのかを考えて運動内容を選ぶのもひとつの手です。

   
筋肉痛をやわらげるには
 

筋肉痛を少しでも軽減させるためには、運動後のクールダウンが第一です。体内にある疲労物質を早く取り除くためには血流を良くすることが大切なので、5分~10分程度の軽いウォーキングの後、15分~30分ほど時間をかけて全身をゆっくりとストレッチするようにしましょう。

ただし、筋肉を伸ばすことでひどい痛みを感じる場合は、筋線維にダメージを受けている可能性が高いため、氷などで患部を十分に冷やします。気持ちよく伸ばせる状態であれば、そのままストレッチを続けましょう。

筋肉痛
 
アイシングの方法
 

痛みがひどい場合は、炎症をおさえるためにアイシングを行いましょう。アイシングの時間は、冷たさを感じなくなるまで15分~20分程度が目安です。氷を使用すると0度以下には冷えないため、凍傷の心配はありません。アイスノンを使う場合は、タオルなどで巻いて直接皮膚に当てないようにします。

 
 
筋肉痛を避けるには、やはり普段から身体を動かす習慣をつけておくことが大切です。また、バランスの良い食生活も筋肉痛の防止に役立つと言われているので、疲労回復に効果のあるとされるビタミンB郡や、身体の調子を整えるミネラルなどを摂ると良いでしょう。せっかく張り切って運動したのに、筋肉痛で辛い思いをすることのないよう、身体を上手にメンテナンスしてあげてくださいね。

 

 

足の健康は靴選びから。足に合った靴で、ウォーキングに出かけよう!(2008年10月)

 

     
 
10月のテーマ:
足の健康は靴選びから。足に合った靴で、ウォーキングに出かけよう!
 季節は秋、過ごしやすい季節になりました。「食欲の秋」「実りの秋」と言われるように、秋は食べ物がおいしく、ついつい食べ過ぎてしまうこともあるのでご用心!運動するにも快適な季節です。このコーナーでも何度か紹介してきた「ウォーキング」を始めるにもぴったりのタイミング。この時、気をつけて欲しいのが「靴選び」。足に合わない靴は、思わぬトラブルの原因にもなるので軽視できません。今回は、正しい靴選びのポイントについてお話します。
 
     

 

足に合わない靴が引き起こすトラブル
 
 私たちの全体重を支える足は、歩行や運度をするだけでなく、血液の循環にも重要な役割を担っています。足にはなんと28個もの骨があり、これらの骨と、じん帯、筋肉、毛細血管で構成されていますが、歩行運動によって毛細血管を収縮して、ポンプのように血液の循環を助けてくれています。足が「第二の心臓」と呼ばれるのはこのためで、全身に血液を送る心臓の大切なサポート役として活躍しているのです。
そしてこのポンプ運動を助ける重要な部位が、歩行を助ける「土踏まず」です。土踏まずは一般的に知られる内側のアーチ状の部分(内アーチ)だけでなく、足の外側にある外アーチ、親指の付け根から小指の付け根にかけてある横アーチの3つがあります。この3つのアーチが、体重や衝撃を分散する天然のクッションの役割を果たしてくれるため、人間が長い時間二足歩行をすることが可能になったのです。この土踏まずのアーチ構造が崩れてしまうことで起こる、様々な足のトラブルを紹介します。
 
外反母趾
外反母趾は、足の親指の形が変形して小指に向かって曲がっている状態。親指の付け根が外側に飛び出して見えるため、この名前がついています。逆に、小指が親指側に向かって曲がってしまい、指の付け根が外側に張り出した状態を「内反小趾」といい、どちらも放っておくと痛みが出てきたり、ひどい場合は脱臼したような状態になることもあります。
開帳足
外反母趾になる一番の原因とも言われる足の変形が「開帳足」。じん帯や筋肉などの結合組織が低下し、横アーチが機能しなくなることで足の指の付け根部分の骨(中足骨)が横に開いてしまう状態です。足が幅広に変形し、柔らかい状態のため「こんにゃく足」とも呼ばれます。一番の原因は筋肉の低下で、運動不足の人や、足が疲れやすい立ち仕事の人に多いトラブルです。
ハンマートゥ
足の指が折れ曲がったままの状態になっているもので、間接の背が靴にあたるため、摩擦でタコができたり、指の腹に魚の目ができたりします。サイズの合わない靴を履いているのが大きな原因で、足指の長い人にも起こりやすいトラブルです。小さい靴や先端の細い靴を履くことで、靴の中で指が折れ曲がってしまい、その状態が長く続くとハンマートゥになってしまいます。
へん平足
足の裏に土踏まずのない状態で、アーチがつぶれ、足の裏全体が地面にくっついている足のトラブルです。幼児の足は足裏全体に脂肪がついているため土踏まずがなくて当たり前ですが、一般的に8歳前後で形成される土踏まずのアーチができていない状態がへん平足です。へん平足になると歩きづらく、足への負担が大きくなるため疲れやすくなります。
   
足の変形から起こる身体のトラブルと、予防のための正しい靴選び
 
 足のトラブルは、足自体の痛みやゆがみだけでなく、身体全体にも影響を及ぼします。例えば、歩き方に変な癖がついたために膝を痛めたり、腰が痛くなったり、さらには肩や首などのコリの原因にもなります。O脚やX脚などの関節の変形も、もとを正せば足のバランスの悪さに大きな原因が。また、土踏まずがしっかり機能しないことで足裏全体が圧迫され、血行不良からむくみや冷えなどの症状が引き起こされたり…と、足の変形は実に様々なトラブルの因子となります。
 土踏まずがしっかり形成されない大きな原因は、歩行(運動)不足による筋肉の低下。遺伝的な原因もありますが、ほとんどは生活の中で改善していけるものです。よく言われるのは裸足で砂場などを歩いて足裏を刺激するという方法ですが、一年中裸足で過ごすわけにはいきません。そこで、普段履いている靴を見直してみましょう。  
靴選びのポイント
  • 靴の中敷の、土踏まず(特に中アーチ)部分が盛り上がっているもの

    ただ平べったいものより、土踏まずのアーチ部分を支えてくれるためバランスが整います。

  • 足先が窮屈でなく、かつ余裕がありすぎてもいないもの

    窮屈な靴は足の変形を引き起こしますが、大きすぎる靴も、無意識に指をくの字に曲げて踏ん張ってしまうため、指が曲がるハンマートゥなどの原因となります。

  • 足にしっかりとフィットするもの

    紐靴など、細かい調整のできる靴がベストです。脱ぎ履きがしづらいと、紐を緩めたままで履く方も多いようですが、足をしっかり包んでフィットする靴を意識して選びましょう。

子供靴の選び方
  • 成長に合わせ、サイズの合った靴を選ぶこと

    靴に足を入れたとき、かかとをぴったりつけて指先に8mmから10mm程度の余裕があるサイズを目安に。

  • かかと周りがしっかりと固定されるもの

    かかとが左右にずれてしまうと、歩き方に変な癖がついてしまいます。かかと周りにホールド力のある靴を選びましょう。

  • 土踏まずを支えるパッドがあるもの

    市販の靴にはパッド入りのものが少ないため、購入後に足に合った補正パッドを取り付けると良いでしょう。

  • 足を甲から足首でしっかり固定できるもの

    紐靴やマジックタイプの靴で、足にしっかりフィットする動きやすいものを選びましょう。

   
  身体の健康は、足の健康から。普段からよく歩くことはもちろん、足に合った靴選びも心がけましょう。いくら歩いても、サイズや形の合わない靴を履いて、足を不自然な状態に押し込めたままでは却ってトラブルの原因となってしまいます。この機会に、普段履いている靴を見直して、サイズや形、中敷までチェックしてみましょう。足にあった靴は歩きやすく、ウォーキングをより快適にできるようになりますよ。

 

 

プールに行こう!水中ウォーキングのススメ(2008年8月)

 

     
 
8月のテーマ:
プールに行こう!水中ウォーキングのススメ
 いよいよ夏本番。蒸し暑い日が続き、クーラーのきいた部屋でゴロゴロ夏休み…というご家族も多いのではないでしょうか。こんなに暑いのに外で身体を動かすなんてとても無理!と思うのももっともですが、夏バテしやすい季節だからこそ、身体を動かして食事もしっかり摂りたいものです。暑いからといって家の中でゴロゴロして冷たいものばかり飲んでいては、余計に身体がだるくなって悪循環です。そこで今回は夏にぴったりの運動法・水中ウォーキングについてお話します。
 
     

 

泳ぐだけがプールじゃない!?
 
 夏のレジャースポーツの定番といえば、海やプールでの水遊びです。学校の授業以来、プールから足が遠のいているという方も多いかもしれませんが、ご存知の通り水泳は効率よくエネルギーが消費できるスポーツです。泳ぐのは苦手という方も、ご心配なく。水中で歩いたり体操をしたりして身体を動かすだけでも、実は結構いい運動になるんです。水中でのエクササイズは、水の抵抗があるためどうしてもゆっくりとした動きになりますが、その運動効果は床の上で激しい運動をしたときにひけをとらないほど高いという説も。陸上での運動と水中での運動は、条件がまったく異なるため明確に「どちらがいい」とは言えませんが、同じ酸素消費量の運動を行う場合、水中で行ったほうが脈拍数が少ないというデータがあります。つまり、水中での運動は少ない脈拍数で陸上より多くのカロリーが消費できるのです。
   
水中ウォーキングの方法
   水中でのウォーキングは、先にお話したとおり、水の抵抗があるため陸上と同じ姿勢・ペースでは行えません。正しい姿勢で行うことで運動効果も上がるので、ただ前に進むのではなく、足や腕の動かし方にも注意して歩きましょう。また、プール遊びを楽しんでいる他の人迷惑にならないよう、周りの状況にも気を配って行うことが大切です。

ウォーキングの姿勢
 

胸を張り、頭のてっぺんを真上に引っ張り上げるようなイメージでまっすぐ立ちます。前に進むときは下腹部を引き締めながら骨盤を少し前に出すようにして、できるだけ頭が揺れないよう水平な視線を保ち、まっすぐ前を見ながら進みます。速く歩く必要はないので、前かがみになったり上体を反らせたりせず、垂直の姿勢を意識しながら行いましょう。手足はなるべく大きく動かし、ゆっくり水をかくようにして進みます。

足の動きは、かかとから底に着地するようにして、つま先で身体を押し出すように重心を移動させます。プールの底をすべるようなイメージで前に進み、身体を上下動させるのではなく、水平に進むような姿勢で行いましょう。

 

   
アクアビクスの方法
   ここでは水中で行うエアロビクスを「アクアビクス」と総称しますが、これも基本的に陸上で行うエアロビクスとは違う運動になります。陸上でのエクササイズを水中で同じように行おうとしても動きづらいだけで、高い運動効果は得られません。水の抵抗や浮力を上手に利用して、水中に適した運動を行いましょう。プールによってはアクアビクスなどの教室を行っているところもあるので、自己流で始めるよりも、まずは教室で正しい方法を学ぶのも良いでしょう。

アクアビクスの姿勢
 

プールの深さにもよりますが、水面が胸のあたりまである深さがベストです。手のひらと手首は自然に伸ばした状態で、腕全体で水の抵抗を受け止めるように動かします。腕の動きや角度で水の抵抗を調整し、指を広げないよう、強くゆっくりとした動作で水を大きくかくように動かします。

   
プールに入るときの注意
 
プールに入る前に
 

陸上でのエクササイズと同じく、水中での運動もウォーミングアップが大切です。水中での事故を防止するためにも、まずは陸上でストレッチを。空腹時や満腹時にプールに入るのは避け、プールに入る前や休憩中の喫煙も避けてください。公共の場を利用するマナーとして、身体を清潔にして、水泳キャップの着用が義務付けられていないプールでもなるべく着用するようにしましょう。

プールからあがるとき
 

ウォーミングアップと同じく、クールダウンも大切です。泳いだ後や運動を終えたあとはすぐにプールサイドに上がらず、そのまま水中でクールダウンして、脈拍が平常脈に落ち着いてから上がりましょう。

   
 

水中で行うエクササイズは、「重力」の面でも陸上での運動と大きく異なります。肥満気味の方など、陸上では膝などに負担がかかりすぎてしまう人でも水中では浮力で体重が軽くなるため、少ない負担で運動が行えます。腰のあたりまで浸かることのできる深さがあれば、水面から出た上体の重さだけを支えるだけで動けるので、腰や膝を痛めている人でも比較的安全に運動できるという利点もあります。「運動するぞ!」と気負って出かけるのではなく、水に涼を求めるくらいの軽い気持ちで出かけるだけでまずはOKです。暑いひこそ、プールで身体を動かしてみませんか?