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まめ知識カテゴリ: 筋肉・肥満

クロストレーニングのすすめ(2014年2月)

     
 
2月のテーマ:
「クロストレーニングのすすめ」

 クロストレーニングと言っても何?と思われるかもしれません。単純にいうと複数の種目の運動を行うトレーニングのことです。なぜそれがおすすめかということを今回は、ご紹介したいと思います。

 
     
体幹の筋肉を使うと故障が減る
 

 ランニングやテニス、ゴルフ等を趣味のスポーツとして楽しんでいらっしゃる方は多い事でしょう。でも、中高年の方でこうした趣味のスポーツに熱中すると、必ずといって起きるのが筋肉や関節などの故障です。よくあるのがランニングで起こす、脚や膝の故障。テニスでは、テニス肘。ゴルフではゴルフ肩というのが有名ですね。いずれも特定の箇所に負担のかかる動きを、関節や筋肉などが耐えられる限界を超えて繰り返した結果、故障を引き起こしてしまうことが多いとされています。

 スポーツ専門のトレーナーの中には、中高年になると特に体幹の筋肉が弱くなって、本来体幹から力を出すべきところを、身体の末端の筋肉を酷使するフォームになり、故障を引き起こす原因になっているという指摘をされる方もいます。

 例えば赤ちゃんがハイハイする姿を観察すると、体幹を使って動いている事がよくわかります。まだ、腕や脚に十分な力がないのに、思ったより活発に動き回るのは、体幹の筋肉を巧く使っているからです。人間は本来、本能的にこうした動きができるものなのですが、大人になって筋力がつき、その筋肉で動く事を覚えてしまうと体幹を使う事を忘れてしまうのです。使わなければ、筋肉は衰えていきますから、ますます体幹を使う動きをしなくなってしまいます。

   
一流選手は一般の人より筋肉が肥大していない?
 

 ゴルフやランニングを良くされている人で、脹脛(ふくらはぎ)の筋肉が異常に左右に張って、肥大している人を見かけますが、これは体幹を使う事を忘れてしまった人の典型的な筋肉の付き方です。本人は、よく運動をしているからだと自賛されていることも多いのですが、その運動で故障を引き起こすリスクが高まっているという自覚が必要です。筋肉の肥大は、運動による筋肉の破壊と超回復の結果だとされますので、身体の末端の一部の筋肉に過大な負荷がかかっている状態だということになるのです。

 一流の選手は意外に身体の末端の筋肉は肥大していないものです。例えば、マラソンの世界で驚異的なタイムを出し続けるアフリカの選手達の脹脛は、運動をしていない一般の大人の脹脛よりも細く引き締まって見えます。それでいて、あの驚異的なスピード。まさに体幹の筋肉のパワーによるもと考えざるをえません。

   
体幹の筋肉を目覚めさせるには
 

 さて、ではなぜクロストレーニングが良いかということになりますが、実は体幹の筋肉を目覚めさせて使えるようにするには、専門的なトレーニングメニューが必要になります。できれば体幹トレーニングを熟知したトレーナーの指導も受けたいところです。でも、現実的にはそれはなかなか難しいかもしれません。そこで、複数の運動を行なうクロストレーニングで、筋肉や関節への負担を分散しながら、健康に良い運動を継続的に行なうことをおすすめしたいわけです。

 例えばゴルフをした後に、プールで泳ぐ。そうすると疲労した脹脛の筋肉が、水泳のキックによる筋肉への刺激でほぐされ固くなった筋肉が柔らかくなります。これは、歩くという行為は足首を曲げた状態で脹脛の筋肉を使いますが、バタ足のキックは足首を伸ばしたまま主に太ももの筋肉を使って行なわれますから、隣接する脹脛にも豊富な血流がめぐり疲労物質を代謝させてくれるのです。

 泳ぎが苦手な人は、水中ウォーキングでも効果があります。胸を張って腕を振り、膝を前に突き出すように脚を運ぶように意識してください。水が身体の動きを制限して、体幹の筋肉も動員しないと前に進まないので、あるていど強制的に体幹の筋肉が目覚めさせてくれます。

 また、自転車を取り入れるのも良いでしょう。町乗り用のクロスバイクと呼ばれるスポーツ自転車でも良いと思いますが、慣れてきたらロードレーサーと呼ばれるペダルを靴に固定するビンディングを装備したスポーツ用の自転車にすると、さらに効果的です。ママチャリと言われる一般の自転車は、ペダルを上から下に踏みつけて、前に進みますが、脚をペダルに固定すると全く別の筋肉を使ってペダルを“回す”ことになるのです。

 最初は意識をしなければできないのですが、身体の後ろ側の筋肉、広背筋(背中の筋肉)や中臀筋、大臀筋(お尻の筋肉)、ハムストリング(太腿の裏側の筋肉)で、ペダルごと脚を上に引き上げるように力を入れ、踏み下ろすときに少しだけ力を入れて、脚の重さでベダルを押し下げるようにすると、奇麗なペダリングで長距離でも楽に走破できるようになります。

 身体の中心に近い大きな筋肉を動員して動くことで、疲労を防ぎながら身体に良い有酸素運動を長い時間続けることが可能になります。

 ただし、ロードレーサーと呼ばれる本格的な自転車は、メンテナンスや安全走行に関する知識も不可欠なので、家の近くの専門店で相談してから、手に入れるようにしてください。ヘルメットなどの身を守る装備のことや、道路での走り方は、専門的なスタッフに指導してもらうのが一番です。

   
クロストレーニングでアクティブな生活を
 

 クロストレーニングは、普段行っている好きな運動に、水泳やウォーキング、自転車などを組み合わることで、特定個所に負担をかけずに、筋肉や関節の故障を防ぎながら、長い年月のアクティブな生活を可能にする大切なトレーニング方法です。ぜひお試しください。

   

 

 

中高年に必要な筋力トレーニングとは(2013年4月)

 

     
 
4月のテーマ:
中高年に必要な筋力トレーニングとは

 冬の間はじっと家に閉じこもっていても、暖かくなると誰もが身体を動かしたくなるものです。中高年のマラソンやジョギングのブームもあり、身体に良いとされる有酸素運動を毎日のように行っている人も多いことでしょう。

この身体に良いとされる有酸素運動で鍛えられる筋肉は、遅筋繊維と呼ばれるものです。筋肉には、この他に瞬発的な動きに重要な役割を果たす速筋繊維と呼ばれるものがあります。では、中高年にとってこの速筋繊維を鍛えるようなトレーニングは必要ないのでしょうか。今回はこの筋肉トレーニングがテーマです。

 
     

 

 

 Aさんは、三人のお子さんを持つお父さんです。上の二人のお子さんと公園で遊ぶのは楽しかったのに、三人目の時は身体がついていかなかったと言います。子供は、少しもじっとしていないもの。何かに興味を引かれると、急に飛び出してしまいます。Aさんは二人目までは余裕でそうした動きについていくことができたのに、少し年齢の離れた三人目のお子さんの動きには対応できなかったそうです。

あるとき、公園で走ってきた自転車に向かって飛び出した子どもを止めようと、急にダッシュしたAさんは、アキレス腱を断裂する大ケガをしてしまったのです。急に走り出したり、走っている方向を急に変える動きには、速筋繊維が主に使われます。この速筋繊維は、遅筋繊維に比べて加齢とともに萎縮し、なくなってしまう性質が強いものです。40歳を過ぎると筋肉の筋繊維数が減少し、筋繊維の消失現象が起こりますが、特に失われるのがこの速筋繊維なのです。Aさんは、普段健康のためにジョギングなどをしていたのですが、この速筋繊維がいつのまにか萎縮していて、急な動きで過度に負担のかかった筋繊維が切れてしまったのです。

ジョギングを趣味にしている人に、「長く走るのは得意、フルマラソンもタイムは遅いけれども必ず完走します。でも速く走るのは苦しくて無理」という人は意外に多いものです。これは遅筋繊維が鍛えられていて持続力はあっても、速筋繊維は萎縮してしまって力がでない筋肉に変わっているからです。速筋繊維は、それを意識した筋力トレーニングを行わなければ、維持できないものなのです。

速筋繊維は中高年であってもトレーニングで強化することができます。最近の研究では、90歳を超えた高齢者でも負荷をかけた筋肉トレーニングで、筋力が高まることが実証されています。ただし、中高年の筋力トレーニングを、安全に効果的に行うには、きちんとした指導者のいる施設を利用したほうが良いでしょう。

   
中高年の筋力トレーニングはこの点に注意
 

 まず注意しなければならないのは、過度の血圧上昇です。息を止めて力を入れると血圧が上がって危険な状態になることがあります。息を止めて力むと収縮期の血圧が300mmHg、拡張期の血圧が200mmHgといった状態になることもあるからです。最近は、洋式便器の普及で少なくなったと言われる脳出血。昔は寒い時期に和式便器で踏ん張ったときに倒れるということがよくありました。息を止めて力むとこれと同じ状況を引き起こすことになります。

これは息を止めると胸腔内圧が上がって血流を阻害し、血圧を上げてしまうのが原因と考えられます。胸腔内圧を上げないようにするには、トレーニング時に、必ず息を吐きながら筋肉に負荷をかけること、これだけで血圧を上げすぎる危険を回避できるのです。

また、筋肉に負荷をかけるウェイトリフティングなどを習慣的に行っていると、一般の健常者と比較して動脈伸展性が低くなるという報告があります。この動脈伸展性が低下すると収縮期の血圧が上昇します。逆に、ジョギングなどの有酸素運動を日常的にしている人は動脈伸展性が高いと報告されています。

つまり、中高年の筋肉トレーニングはいざというときの瞬発力の維持には必要ですが、その筋力トレーニングで血圧を上げないようにするために、同時に有酸素運動を習慣化することが大切だということです。

   
トレーニング効果は、どのくらい続くのか
 

 こうしたトレーニングは少なくとも2ヶ月程度は継続しないと効果が現れてきません。しかし、風邪を引いたり、仕事が忙しくなったりといった理由でトレーニングを休み、そのまま止めてしまうことはないでしょうか。

そうした場合、トレーニング効果はどのくらい続くものかご存知ですか。有酸素トレーニングを行うと最大酸素摂取量が増加しますが、ある検証によるとトレーニングで増加した最大酸素摂取量は、3~4週間程でトレーニング前に戻るという結果が確認されました。このことから、トレーニングで増加した筋力も3~4週間で元に戻ると考えられます。これが高齢になるとさらに低下率が増加すると言われています。

やはり、「継続こそ力なり」で、継続する工夫こそが大切だということになります。春に始めた物事は長続きすると言われますが、さらに年齢と経験を重ねた中高年には、若い人にはない知恵と自分を知っているという強みがあります。どうすれば自分のモチベーションを楽しく維持できるか、己の性格に合った方法を探し出せるのか、必ず見つけることができるではないでしょうか。

飛び越せると思った水たまりが越えられなかったり、ちょっとしたつまずきで、身体が支えられずに転んでしまうなどということにならないように、筋肉トレーニングと有酸素運動、この二つをバランスよく日常生活に取り入れることができれば、あなたはよりアクティブに人生を楽しむことができるでしょう。

   
   

 

夏太りしていませんか?(2012年9月)

 

     
 
9月のテーマ:
夏太りしていませんか?

一昔前は「夏やせ」に注意しようと言われましたが、猛暑が続く近年、気をつけなければならないのは「夏太り」のようです。日中だけでなく夜になっても汗だくになってしまう毎日。汗をかくと、運動をしたのと同じにエネルギーを消費しているような気になってしまいます。これが実は落とし穴です。体温を下げるための発汗はさほどエネルギーを使いません。汗をかいたことで夏バテを恐れ、脂っこいものばかりを食べ過ぎると、成人病のリスクのある内臓脂肪が増えてしまいます。

 
     

 

夏太りの原因とは
 
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夏太りには、いくつかの典型的な原因があります。一つは先にあげた発汗によるエネルギー消失を過大に意識しての過食。夏バテを予防しようと、土用の丑の日に鰻を食べる習慣が古くからあるように、鰻や焼き肉など、こってりした栄養価の高いものでスタミナをつけようと考えてしまいがちです。発汗で失いがちなビタミンB1を多く含む鰻や豚肉をとることは確かに大切ですが、油分の多い食物のとり過ぎは夏太りに直結します。高カロリーの食べ物が食卓にならぶことの少なかった時代はともかく、現代の夏バテは栄養不足より、冷たいものの飲み過ぎやクーラーによる冷え、ソーメンや冷やし中華などの麺類に偏った食事に原因がある場合が多いのです。

冷たい飲み物のとりすぎは、内蔵の働きを悪くするだけでなく、内蔵そのものを冷やすため、その冷えに対抗しようと身体は内蔵の周りに脂肪をつけて冷えから守ろうとします。夏太りの場合、皮下脂肪よりも内臓脂肪の増加が目立つのもこの身体の働きが関係しているといわれます。また麺類は、あまり噛むことをせずに食べられるので、噛むことによる満腹感が乏しく、ついつい食べ過ぎてしまう傾向にあります、ご存知のように麺類などの炭水化物は、とりすぎれば体脂肪として蓄積されます。しかも、炭水化物に偏った食事では、発汗で失ったビタミンやミネラルの補給が十分にできません。ビタミンやミネラルは脂肪の燃焼に不可欠なため、これが不足するとさらに体脂肪がエネルギーとして利用されずに身体に留まることになります。

発汗で失われるカリウムも夏太りに関係します。カリウムが不足すると身体に「むくみ」が生じやすくなるのです。暑いからといって冷たい飲み物を大量にとり、冷房の効いた部屋であまり動かない生活をしていれば、全身がむくんで短期間で体重の急増をもたらすことになります。

また、もともとしなやかで弾力のある動脈が高い血圧を受け続けると、動脈の壁が傷ついて固くなります。これが動脈硬化で主に細い動脈で起こるため細動脈硬化と呼ばれます。血管の内部に酸化したコレステロールが蓄積されて起こる粥状硬化は比較的太い動脈で起こり、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こします。

   
夏太りを解消するためには、適切な食べ物を腹八分目に
 

先にあげたように、冷たい麺類など炭水化物の過食には注意しましょう。水分補給も夕方以降は、冷たい飲み物を控え、できるだけ温かい飲み物をとるように心がけましょう。午前中は「身体から悪いものを排出する時間帯」といわれ、日が暮れると「身体に蓄える時間帯」になるとされます。水分は午前中に多めにとり、日が沈んだら少なめにすると「むくみ」対策に効果があります。

「むくみ」対策にオススメの食べ物は、きゅうり、冬瓜などのウリ科の野菜や、バナナなどのカリウムの豊富な果物。発汗とともに失いがちなビタミンB群(ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸など)も、脂肪の代謝には欠かせません。水溶性ですので、長時間水につけたり加熱しすぎる調理は避けることが大切です。これらの栄養素を多く含む食品は次のとおりですが、一度にたくさんとっても体外に排出されてしまいますので、できるだけ毎日の食事に上手に取り込むようにしてください。

○ビタミンB1

豚肉・うなぎ・たらこ・ナッツ類

○ビタミンB2

豚レバー・鶏レバー・牛レバー・うなぎ・牛乳

○ビタミンB6

かつお・まぐろ・牛レバー・さんま・バナナ

○ビタミンB12

牛レバー・鶏レバー・カキ・さんま・あさり・にしん

○ナイアシン

たらこ・かつお・レバー類・びんながまぐろ・落花生

○パントテン酸

レバー類・鶏もも肉・にじます・子持ちがれい・納豆

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良い睡眠で夏太りを解消する
 
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暑くて寝苦しい夜が続くと、睡眠不足になりがちです。だからといってクーラーに頼りすぎると、夏風邪をひいたりして体調を崩してしまうことがあります。寝苦しい夏の夜に十分な睡眠をとることは大変難しいものですが、睡眠時間が短いと肥満になりやすいという研究結果も報告されています。良い睡眠をとることは、夏バテや熱中症にならないための体調管理や、夏太り対策としても有効だと考えられます。

良く眠るためには、睡眠中の身体の温度が大切です。皮膚の温度(体表面の温度)が高く、深部体温(身体の内部の温度)が低いほど眠りに入りやすいということがわかっています。子育ての経験者はご存知だと思いますが、眠くなるとあかちゃんの手は温かくなります。これは、体表面から熱を放散して、身体の内部の温度を下げる働きによるものです。

深部体温を下げる方法には、寝る前にぬるま湯につかるのがおすすめです。あまり長時間入ってはいけませんが、手足の表面を温める程度にぬるま湯に入ると、手足の末梢血管が拡張して、表面からの放散熱が増え、深部体温を下げる効果がありあす。また、夕方に軽い運動をして皮膚から熱の放散をすると同じように深部体温を下げることができます。

深部体温を下げると良く眠れるというのは、昼間働いている脳の疲労を回復させるために、脳の温度を下げ休ませるためと考えられます。枕につけた頭の熱が気になってなかなか寝付けないとういう人は、頭を冷やすために枕を通気性の良いものに交換したり、枕用の保冷剤を利用するのも良いでしょう。

   

 

運動を始める前に「筋肉痛」を知ろう(2010年8月)

 

     
 
8月のテーマ:
運動を始める前に「筋肉痛」を知ろう
健康のためには身体を動かすことが大切なのは皆さんご存知の通りだと思います。とはいえ、日頃運動をしていない人が運動を始めるのはなかなか難しいもの。健康づくりやダイエットのために一念発起して運動を始めようとする方に、是非知っておいて欲しいのが今回お話する「筋肉痛」についてです。
 
     

 

筋肉痛とは
 

筋肉痛とは、その名の通り「筋肉に生じる痛み」のことで、多くの方が経験したことがあるものだと思います。特に、日頃から運動していない人が急に運動すると起こりやすいものです。

筋肉痛
 
筋肉痛のメカニズム
 

筋肉痛には「筋疲労」によるものと「筋損傷」によるものがあり、一般的なスポーツなどの筋疲労による筋肉痛のメカニズムは、肩こりとよく似ているといわれています。

筋肉痛が起こる原因は、以前は体内にたまった乳酸によるものと考えられていましたが、乳酸はエネルギー源として体内で再利用できるため、現在では乳酸だけが筋肉痛の原因であるとは考えにくいと言われています。

筋疲労による筋肉痛
 

筋疲労は運動して筋肉を使ったことによって引き起こされます。翌日に起こったり、2~3日してから痛む違いについては未だ解明されていませんが、激しい筋収縮により筋肉への酸素供給が間に合わなくなると、エネルギー源(ブドウ糖)が不完全燃焼を起こして体内に乳酸が残り「筋疲労による筋肉痛」が起こると考えられるのが一般的です。また、運動をすると筋肉がダメージを受け、それを修復する時に痛みが出るとの考えもあります。

筋損傷による筋肉痛
 

筋損傷による筋肉痛は、筋肉そのものが破損している時の痛みです。運動を行うと筋肉にはいつも以上に大きな負荷がかかり、筋肉を構成する筋線維やその周辺の組織に細かな傷ができることがあります。その傷を修復する過程で、カリウム、ヒスタミン、プロスタグランジンなどのさまざまな物質が関与し、これらが神経を刺激したり、炎症を引き起こしたりするため痛みを感じるとの説が有力です。

   
筋肉痛を防ぐには
 

運動習慣のない人がいきなり激しい運動を行うと、筋肉痛になりやすいものですが、普段から運動をしている人でも、筋肉に大きな負荷をかけると筋肉痛が起こります。また、急激な運動は筋肉痛ばかりか思わぬ事故やケガの原因にもなりうるので、それらを未然に防ぐためにも運動前の準備はしっかり行うようにしましょう。

 
運動前にはウォーミングアップを!
 

運動前には軽めのジョギングなどで体を温め、ストレッチで身体をほぐしましょう。天候や気温などによってウォーミングアップにかける時間は変わりますが、体を動かして汗ばむ程度を目安に10分~20分行いましょう。

軽めのジョギング
筋肉痛になりやすい運動とは
 

ちなみに、運動の内容によって、筋肉痛になりやすいもの、なりにくいものがあります。例えば、腕を曲げて重いものを引き寄せる動作(コンセントリック収縮)と、腕を伸ばしながら負荷に対抗する動作(エキセントリック収縮)では、腕を伸ばしながら対抗する動作のほうがより筋肉痛になりやすいのです。このことを頭において、どんな動作なら筋肉痛になりにくいのかを考えて運動内容を選ぶのもひとつの手です。

   
筋肉痛をやわらげるには
 

筋肉痛を少しでも軽減させるためには、運動後のクールダウンが第一です。体内にある疲労物質を早く取り除くためには血流を良くすることが大切なので、5分~10分程度の軽いウォーキングの後、15分~30分ほど時間をかけて全身をゆっくりとストレッチするようにしましょう。

ただし、筋肉を伸ばすことでひどい痛みを感じる場合は、筋線維にダメージを受けている可能性が高いため、氷などで患部を十分に冷やします。気持ちよく伸ばせる状態であれば、そのままストレッチを続けましょう。

筋肉痛
 
アイシングの方法
 

痛みがひどい場合は、炎症をおさえるためにアイシングを行いましょう。アイシングの時間は、冷たさを感じなくなるまで15分~20分程度が目安です。氷を使用すると0度以下には冷えないため、凍傷の心配はありません。アイスノンを使う場合は、タオルなどで巻いて直接皮膚に当てないようにします。

 
 
筋肉痛を避けるには、やはり普段から身体を動かす習慣をつけておくことが大切です。また、バランスの良い食生活も筋肉痛の防止に役立つと言われているので、疲労回復に効果のあるとされるビタミンB郡や、身体の調子を整えるミネラルなどを摂ると良いでしょう。せっかく張り切って運動したのに、筋肉痛で辛い思いをすることのないよう、身体を上手にメンテナンスしてあげてくださいね。

 

 

冬場に増える腰の痛みは、正しい「姿勢」で予防しよう(2009年11月)

 

     
 
11月のテーマ:
冬場に増える腰の痛みは、正しい「姿勢」で予防しよう
 寒さが厳しい季節になってきました。身体が冷えると、血行が悪くなり筋肉が収縮してしまうため、関節などの痛みが出やすくなります。日本人の多くが抱える腰の痛みにも寒さや冷えは大敵。筋肉が収縮して固くなっている状態で急激な負荷が加わるといわゆるぎっくり腰になりやすいので、冬場は特に注意が必要です。ぎっくり腰に限らず、腰痛は脊柱(せきちゅう)のS字カーブが崩れることで生じます。脊柱を支える腹筋や背筋をしっかり鍛えると共に、普段の生活から「姿勢」を正しく保つことが大切です。
 
     

 

腰痛の原因と症状
   ひと口に「腰痛」と言ってもさまざまな症状があり、その種類には以下のようなものがあります。

椎間板(ついかんばん)ヘルニア

年齢による骨や筋肉の変化、スポーツなどによる負荷がきっかけで、椎間板の中身がとびだして神経根(しんけいこん)や脊髄(せきずい)を圧迫し、腰の痛みや足のしびれを引き起こします。手術が必要なこともありますが、軽度の場合は姿勢や動作に気をつければ自然に治ることもあります。

 
ぎっくり腰

中腰で重いものを持ったりしたときなど、急に腰が痛くなり動けなくなった状態を、一般的に「ぎっくり腰」といいます。また、軽い腰痛や、原因がはっきりしない腰痛などを総称して、いわゆる「腰痛症」といいます。

 
腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)

比較的高齢者に多い疾患で、脊柱管内が狭くなり、神経を刺激して起こります。初期は腰から足に痛みやしびれが発生して歩きづらくなるものの少し休むとまた歩けるという間歇跛行(かんけつはこう)という症状が出て、しだいに一度に歩ける距離も短くなってきます。

 
筋・筋膜性腰痛

スポーツの後や長時間同じ姿勢でいたときなどに、腰背筋に負担がかかることで起こる症状です。

 
腰椎分離(ようついぶんり)・すべり症

激しいスポーツなどで腰椎の一部の骨が断裂したものが腰椎分離症で、分離した腰椎が前方にズレたものが腰椎すべり症です。

 
変形性腰椎症(へんけいせいようついしょう)

椎間板内の水分が減少することでクッションの役割が低下し、椎体が刺激を受けて骨棘(とげ状の骨)が出てきます。これが神経を刺激し痛みやしびれを引き起こすケースです。40代半ば以上の人に多くみられる症状です。

 
骨粗しょう症(こつそしょうしょう)

骨の密度が減少し、もろくなって起こる「骨粗しょう症」によって腰が痛むケースで、ある程度以上の負担がかかると圧迫骨折を起こすこともあります。高齢の女性に多くみられます。

 
ぎっくり腰や腰痛を予防するには
 
 腰痛には、姿勢や生活習慣、運動やケガなどによる骨の変形や筋肉疲労、内臓疾患、精神的なものなどさまざまな要因があり、専門医の治療が必要な場合もありますが、骨や筋肉などの整形外科的要因から生ずる腰痛は、以下のように普段の姿勢や動作に注意すれば予防・もしくは症状を緩和できます。
物を持ち上げるときは前かがみで持ち上げず、しゃがんで腰を伸ばし、下半身の力を使って持ち上げる。
高い所から物をとるときは、背伸びせずに踏み台を使う。
長時間立ち仕事をする場合は、片足を台にのせ、前屈姿勢になるのを防いで腰への負担を減らす。
長時間運転する際は、シートを立て、腰をまっすぐな姿勢に保つ。また、1時間ごとに車外で軽い運動をするのも効果的です。
長時間デスクワークをする際は、足を組み、時どき左右の足を交互に組みかえるようにして腰が前に傾くのを防ぐ。
高いヒールの靴は腰を前に傾けてしまい悪影響があるため、ヒール高は3cm以内に。
きつい下着を着けていると血行が悪くなるため、身体に跡の残るようなサイズのものは使用しない。
ベッドや布団は柔らかすぎると腰とお尻が沈み、また、硬すぎると腰椎の前彎がなくなり腰に負担がかかるため、脊柱のS字カーブが維持される硬さのものを使用する。
   
腰痛になったときは
 
 腰に痛みを感じたら、マッサージなどを行うよりもまずは休ませましょう。軽度の腰痛なら、腰を支える腰サポーターの使用も有効です。また、痛みがひどい場合は自己判断せず、速やかに医師の診察を受けるようにしましょう。

腰を休ませるには、腰に負担のかかる姿勢や動きを避けることが大切です。

腰をくの字にして、横向きに寝る
お腹の下に座布団を入れてうつぶせに寝る
足の下に座布団を入れてあおむけに寝る

などの姿勢で安静にしましょう。

ぎっくり腰など急に生じた腰痛は、冷やすことで痛みを和らげることができますが、痛みが増すような場合は中止してください。また、長時間の冷やし過ぎは回復を遅らせるおそれがあるので注意が必要です。

   腰痛はそれだけでも辛いものですが、深刻な病気を示唆する危険信号の場合もあります。長期間痛みが続く、腰だけでなく足にも痺れが出る、排泄が困難になるなどの症状が出た場合は、早めに医師の診断を受けるようにしてください。

 

 

四十肩・五十肩。肩の痛みに 「冷え」は大敵!(2007年11月)

 

     
 
11月のテーマ:
四十肩・五十肩。肩の痛みに

「冷え」は大敵!

 秋から冬へ移り行き、特に朝晩には強い冷え込みを感じる季節になりました。風邪に気をつけるのはもちろんですが、「冷え」によって引き起こされる関節の痛みにも注意したい季節です。肩や膝など、関節の痛みには、日頃のストレッチ運動と患部の温めが効果的です。今回は肩の痛み、四十肩・五十肩についてお話しします。
 
     

 

 
四十肩・五十肩とは
 
  五十肩・四十肩というのは俗称で、正しくは肩関節周囲炎といいます。中高年に多い肩のトラブルということでこの名で呼ばれています。老化によって硬くなった肩関節の腱(肩の骨を引き上げる筋肉が骨とつながる部分)や関節包(関節をスムーズに動かすためのクッションの働きをする箇所)の炎症が原因となって痛みが起こり、これが悪化して肩が上がらなくなる状態を「五十肩・四十肩」といいます。重症の場合は肩腱板(けんけんばん)損傷といって腱が完全に切れてしまうこともあり、その場合は手術が必要になります。そのため、痛みが強い場合は早めに医師の診断を受けましょう。
 
肩こりと五十肩・四十肩の違いは
 

 普通の肩こりは、猫背など姿勢の悪さや緊張などによって肩や首の筋肉が疲労し、血液の循環が悪くなって肩に張りや痛みが起こる「筋肉疲労」の症状です。一方、五十肩・四十肩は「関節の炎症」が原因で、肩の腱の炎症、腱板の損傷や断裂によるものなどがあります。五十肩・四十肩になると腕をねじったり上げ下げすると肩に痛みが起こり、思うように動かせなくなります。そして、痛いからと動かさないでいると、肩関節が固まったようにほとんど動かなくなってしまうこともあるので、そうなる前に少しずつ関節を動かして柔らかくしていきましょう。

 
こんな人は要注意
 

 関節は老化につれ硬くなっていくもので、特に運動不足の人は注意が必要です。40代以下の方も、以下の項目に当てはまる場合は日頃から肩関節のストレッチを心がけましょう。

   
 
最近運動不足である
腕を真横に上げると肩が痛む
背中に手が届きにくい
親戚に五十肩・四十肩の人が多い
   
 

 肩関節は、動かす機会が少ないと固まって炎症を起こしやすくなります。肩を回すなどの簡単な動きでも、意識的に肩関節の運動をしていきましょう。

   
五十肩・四十肩の予防
 

 肩の関節は、動かす機会が少ないと硬くなって炎症を起こしやすくなります。予防のためには日頃のストレッチが大切です。下記に紹介するような簡単な体操を、痛くない範囲で無理せず行ってみましょう。一度にたくさん動かすよりも、1日に数回少しずつ、毎日繰り返すほうが効果的です。

   
 
アイロン体操
 

アイロンなど、持ちやすく程よい重さの物を痛む側の手に持ち、肩の力を抜いて楽に下げ、ゆっくりと左右前後に振ります。

壁押し体操
 

壁に向って両手をつき、両肩に均等に体重をゆっくりとかけていき、肩の関節を意識しながら動かします。

タオル体操
 

タオルや棒などの両端を1mくらいの間隔で背中側に持ち、痛みのないほうの手を上に持ち上げ、痛むほうの肩を腕ごと上部に誘導するようにゆっくり引き上げます。次に痛みのないほうの手を下方に引くようにして、痛みのある肩の関節を動かします。

   
痛みは冷やさず温めて
 

 肩の痛みを感じたときは、無理にストレッチなどの運動をせず、安静にすること。関節の痛みに冷えは大敵なので、冷却スプレーなどで冷やすのは逆効果です。熱いお湯に浸したタオルを絞ったものを患部に当てて温めたり、ぬるめのお風呂にゆっくりつかるなどして肩関節を温めましょう。

   
 

 冬場は特に、冷えによる関節のこわばりが気になる季節です。そして、肩の痛みには寝ている間の冷えも大敵。タオルなどを首に巻いて寝たり、市販の保温器具などを利用して寝ている間も肩の保温を心がけましょう。また、日中も、肩を冷やしやすい襟ぐりの開いた服などは避け、マフラーなどで肩と首周りを温かく保ちましょう。

 

 

 

ビールの季節にご用心。ビール腹=メタボリックシンドローム!?(2007年7月)

 

     
 
7月のテーマ:
ビールの季節にご用心。ビール腹=メタボリックシンドローム!?
 梅雨が明けたらいよいよ夏本番、よく冷えた生ビールのおいしい季節です。中年男性に多い、お腹まわりを中心に恰幅のいい体型を「ビール腹」と称したものですが、ここ最近はもっぱら「メタボ」なお腹と呼ばれるようになりました。今回は、成人病をはじめとする様々な病気の危険因子である内臓脂肪の蓄積、いわゆる「メタボリックシンドローム」についてお話します。
 
     

 

メタボリックシンドロームとは?
 
 メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の蓄積によりインスリン抵抗性(インスリンの働きの低下)が起こり、糖代謝異常、脂質代謝異常、高血圧などの動脈硬化の危険因子が一個人に集積している状態を指します。高コレステロールに匹敵する強力な危険因子として、近年世界的に注目されています。
 
 
メタボリックシンドロームの診断基準
 

メタボリックシンドロームの診断は、必須条件である内臓脂肪の蓄積を『ウエスト径』で判定し、成人男性なら85cm以上、女性なら90cm以上を基準値*としています。さらに、血圧や血清脂質、血糖値の3つの基準値のうち、2つ以上を満たすと「メタボリックシンドローム」と診断されます。

各項目の基準値はこちらの表で確認してください↓

「食と健康」脂肪をためない食生活―メタボリックシンドロームにならないために―
https://imc.or.jp/column/syoku0704.html

*ウエスト径:男性85cm以上、女性90cm以上は、内臓脂肪面積100cm2以上に相当するとの判断ですが、正確な内臓脂肪蓄積の診断には腹部CT検査により内臓脂肪量を測定することが望まれます。

メタボリックの改善には、ウエスト径の5%減を目標に!
 
メタボリックシンドロームの治療は、糖尿病や高血圧、高脂血症などの病態を個々に治療するのではなく、共通の基盤である内臓脂肪を減少させることがポイントです。内臓脂肪は皮下脂肪に比べて減少するのが速いため、少しの減量で削減効果が期待できます。

そこで、現在のウエスト径、もしくは体重の5%減を目標に、内臓脂肪の削減に努めましょう

 
ウエスト径を減らすポイント
食事は腹八分、間食はしない
 

バランスのよい食事と、食べ過ぎないこと。総摂取カロリーを減らすよう努めましょう。

料理の味付けは薄味で
 

濃い味付けは塩分の摂り過ぎだけでなく、食欲を増進させて食べすぎを招きます。

繊維質の多い緑黄色野菜をよく食べる
 

内臓脂肪が蓄積している人の食生活には、緑黄色野菜の摂取が少ないという特徴があります。バランスを整えるためにも、野菜を積極的に摂りましょう。

適度な運動をする
 

摂取エネルギーを控えるとともに、適度な運動は内臓脂肪を減少させる有効な手段です。一般の肥満治療と同じく習慣的に継続させることが大切なので、徒歩での移動を心がけるなど、日常生活から変えて行きましょう。

お酒は控えめに
 

ビールのおいしい季節ですが、ビールだけでなくアルコールは総じて脂肪に変わりやすいもの。おつまみも高カロリー、濃い味のものが多くなりがちなので、飲みすぎ・食べすぎには注意しましょう。

タバコも控える
 

内臓脂肪型肥満の人には、喫煙者の割合が多いという特徴もあります。喫煙は動脈硬化性疾患の危険性をいっそう高めるので、禁煙に努めましょう。

   
 
  厚生労働省の平成16年国民健康・栄養調査によると、40~74歳において、男性の2人に1人、女性の5人に1人がメタボリックシンドロームか、その予備群であることが報告されました。また、子供にもその輪は広がっており、約10人に1人が肥満児であるといわれ、子供の肥満の約7割は成人肥満に移行するともいわれています。

肥満や生活習慣病、どんなケースでも、やはり一番はバランスの取れた食事と適度な運動、つまり生活習慣の改善がポイントです。夏場はアイスやジュースなど糖質の摂取が増えたり、食欲がないために栄養バランスが偏りがちな季節。いつもより更に注意して、ビール腹をスリムにしていきましょう。

 

 

 

脂肪をためない食生活  ――メタボリックシンドロームにならないために(2007年4月)

 

脂肪をためない食生活
 ――メタボリックシンドロームにならないために

社団法人 茨城県栄養士会

 
 
 
 

1.メタボリックシンドロームとは?

メタボリックシンドローム

腹囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上を「要注意」と規定。これに下の2項目以上が該当する場合、「メタボリックシンドローム」と診断されます。

腹囲

男性:85cm以上

女性:90cm以上

+

1.血圧

収縮期血圧:130mmHg以上

かつ(または)

拡張期血圧:85mmhg以上

2.血清脂質

中性脂肪値:150mg/dl以上

かつ(または)

HDLコレステロール値:40mg/dl未満

3.血糖

空腹時血糖値:110mg/dl以上

 脂肪が体内に過剰に蓄積された状態が肥満です。

メタボリックシンドロームのベースとなるもので、特に内臓のまわりに肥満がたまる内臓脂肪型肥満(りんご型肥満)が問題なのです。

2.あなたは大丈夫?

◇ エネルギーとりすぎていませんか

「脂っこいもの」「甘い物」好き、外食はコンビニ食、ファーストフード、過度の飲酒はエネルギー過剰の原因となります。

◇ 不規則な食生活していませんか

「朝食抜き」など欠食が多いと、活動力低下や代謝が悪くなり、エネルギーを消費しにくくなります。

「夜遅くの食事」は栄養が吸収されやすく体脂肪の蓄積につながります。

3.食事のポイント

<一日三食、規則正しく、よくかんで>

◇ 一食ごとに主食、主菜、副菜でバランスよく

  • 主菜は魚、肉、玉子、大豆製品
  • 副菜は野菜中心、一日350g以上を植物繊維をたっぷりと・・・芋類、豆類、きのこ、海草もかかさずに

◇ 脂肪は質も考えて、一日大さじ1~2杯、植物油を中心に

  • 動物性脂肪(肉の脂身、バター、外食のカツなど)は体内でコレステロールをを蓄積します。

◇ 甘い菓子、飲料、アルコールは控えましょう

  • 中性脂肪の材料やインシュリンの作用にも影響があります。できることから、さあ実行、そして続けましょう。
 

 

 

食欲の秋。 正しい知識で健康的にダイエット!(2005年10月)

 

     
 
10月のテーマ:
食欲の秋。

正しい知識で健康的にダイエット!

 徐々に肌寒くなり、道行く人々の服装にも重ね着が目立ってきました。真夏のように露出度の高い格好をすることは減りましたが、食欲の秋と考えるとやはり気になるのが「太る」という言葉。特に世の多くの女性や、中年太りの気になるお父さん達にとって「ダイエット」は常に気になる話題ではないでしょうか。今回は肥満とダイエットについて取り上げ、ただ痩せるのではなく健康的に、効果的に、身体を「引き締める」方法についてご紹介します。
 
     

 

「肥満」のメカニズム
 
肥満とは、その人の標準体重より重いということではなく、体脂肪が過剰に蓄積した状態のことをいいます。下に肥満のタイプをいくつかの分類に分けて挙げますので、自分のタイプと問題点、適したダイエット法をチェックしてみましょう。
体型による分類
 

見た目で判断する、一番分かりやすい分類。脂肪の多くついている部分で判断します。
1.内臓脂肪型(リンゴ型)

多くが「上半身肥満」で、腹部の内臓に脂肪がたまり、弾力のあるタイプ。「ビール腹」ともいわれるいわゆる中年太りの体型で、男性に多く見られるタイプです。肥満による合併症を起こしやすいタイプでもあり、運動による減量が効果的です。

内臓脂肪型は生活習慣病と関わりが深く、高血圧、脳卒中、糖尿病、虚血性心疾患などのリスクファクターとなりますが、運動による減量で効果が出やすいので、日ごろから積極的に身体を動かすように心がけると良いでしょう。

2.皮下脂肪型(洋梨型)

多くが「下半身肥満」で、腕や足、お尻などの皮下に脂肪がたまり、ぶよぶよしたタイプ。日本女性の典型的な体型とも言われ、女性に多く見られる体型です。

女性は年齢と共に脂肪のつく場所に変化が見られることが多く、20代後半ころまではお尻や太ももについていた脂肪が、30歳を過ぎたあたりからウエストやお腹まわりにつきやすくなり、更に皮膚のハリがなくなることや筋力の減退、重力の関係でお尻が垂れ下がってきます。肥満による合併症を起こす心配はあまりありませんが、美容の面からも余分な脂肪をためないこと、適度な筋肉を維持することは大切です。

脂肪細胞からみた分類
 

1.脂肪細胞肥大型

脂肪細胞のサイズが大きくなる肥満で、痩せると脂肪細胞のサイズが小さくなります。成人期以降に多く見られ、内臓脂肪型に多い肥満のタイプです。

2.脂肪細胞増殖型

脂肪細胞の数が増え、痩せても脂肪細胞の数は減りません。乳児期や思春期に多く見られ、皮下脂肪型に多い肥満のタイプです。

脂肪細胞は見た目には分かりにくいため、肥満になった時期で判断しましょう。注意すべきなのは、一度増えた脂肪細胞は小さくはなってもなくなることはないということ。思春期頃までにすでに肥満で、それ以降に太るという、脂肪細胞肥大型と増殖型のふたつのタイプを併せ持った肥満は、重度の肥満症に陥りやすくなるので注意が必要です。
肥満の弊害
 
「肥満は万病のもと」とも言われ、肥満になると多くの器官に異常を起こし、合併症にかかる危険性が高くなります。
循環器系では
 

循環血液量、心拍数が増加して「高血圧」「心疾患」を引き起こします

呼吸器系では
 

脂肪が呼吸の妨げとなって、一時期話題となった「睡眠時間無呼吸症候群」の原因となります

骨格系では
  重い体重が負担となって「腰痛」などを引き起こします。
内分泌、代謝系では
  インスリンの感受性が低下して「糖尿病」に、血中脂肪が増加して「高脂血症」に、尿酸が増加して「痛風」に、卵巣機能障害により「無月経」「過少月経」になるなどの弊害が心配されます。
このほか「脂肪肝」や「胆石症」などの誘引因子にもなり得、健康な生活を送るためにも過度の肥満は大敵ということが分かります。
目的をもったダイエットを
  さて、肥満のメカニズムと弊害について紹介したところで、いよいよダイエットについてお話ししましょう。

まず、最初にはっきりさせておきたいのがなぜ「痩せたい」のか、ということです。ひとことでダイエットといってもその動機はさまざま。「きれいになりたい」「健康を維持したい」「昔の服が着られるようになりたい」などなど。しかし、いつの間にか体重を減らすことだけに集中してしまうケースが多く見られるのです。

 
きれいになるためには「シェイプアップ」
 

たとえばきれいになりたくてダイエットを始めたとしましょう。しかし努力の甲斐あって体重は減ったのに、お腹や足のお肉は残ったままで、なんだかしまりがないという人。それは本来の「きれいになりたい」=「体重を落としてシェイプアップしたい」という目的のうち「シェイプアップ」に失敗してしまったのだということになります。

体重が減ったのは食事制限などのダイエットによるもので、落ちた体重の内わけは筋肉や骨の減少に過ぎない場合が多いのです。

体重だけにとらわれたダイエットは間違い!
 

ダイエット=体重を減らすという考えになってしまい、毎日体重計にのって体重を測ることに集中すると、筋肉の重量が見えなくなってしまいます。筋肉は脂肪より密度が高く、重いものだということを常に覚えておいてください。美しく痩せる、シェイプアップするためには筋肉は不可欠のもの。筋力トレーニングや運動をしながらダイエットすると、筋肉がつくため体重が減らなかったり、逆に増えることもありますが、それを「リバウンドだ」「ダイエットに失敗した」と判断しないでください。

体重以外にダイエットの進み具合を目で確かめるには、毎日鏡を見たり、気になる部分のサイズをはかってメモしておいたり、定期的に全身の写真を撮るなどして体型の変化を視覚的にとらえる方法が良いでしょう。

ダイエットの成功は筋肉にあり
  体重が減っても、お肉が残っているように見えるのは、脂肪を支える筋肉が衰えたせいです。筋肉がないと骨の少ない、お腹などの柔らかい部分の脂肪が重力でたるんだ状態になってしまうのです。たるんでしまった部分の脂肪は、食事制限などで摂取カロリーを減らしても減ることはありません。そこを引き締めるためには、筋肉を鍛えて脂肪を持ち上げるしか方法はないのです。筋肉を増強することは基礎代謝の向上にも役立つので、いずれにしてもダイエットには大切なことなのです。

ちなみに、筋肉をつくる栄養素は肉類、魚類、豆類、乳製品、卵に多く含まれるたんぱく質。これらの食品を意識的に摂り、筋肉量を効果的に増やしましょう。また、脂質が気になるときは低脂肪の食品(赤身の肉、ささみ、白身魚、低脂肪乳、豆腐などの豆製品)を選ぶとよいでしょう。

自己分析で、正しいダイエットを
 
肥満度を測定しよう
 

ダイエットを始める前に、まずは自己分析。自分の肥満度や体脂肪を計り、自分に必要なダイエットを知ることからはじめましょう。

肥満度チェックの目安となるBMI(Body Mass Index)指数の測定

BMI=体重(kg)÷身長(m)2

BMIの標準値は、18.5~25で、理想数値は22です。つまり身長(m)2×22が理想体重(kg)となります。数値が25以上だと生活習慣病のリスクが高いといえるので、BMI値が25を超える人は注意しましょう。また、18.5を下回る場合は標準体重より少ないということになるので、体重を減らすダイエットが本当に必要なのかどうか、もう一度考えてみてください。体重は軽いのにたるみが気になる場合は、先にも述べたとおり、筋肉を鍛えてシェイプアップすることをお勧めします。

体脂肪を測定しよう
 

ヒトの身体は水、骨、筋肉、脂肪で構成されています。体脂肪率とは全体重に占める脂肪の割合で、この数値からも自分の肥満度を知ることができます。測定機は手軽に使えるものが出回っているので、ダイエットを始めるのならば一台用意してみましょう。

  男性 女性
適正 10.0~24.9% 15.0~29.9%
少し太り気味 25.0~29.9% 30.0~34.9%
肥満 30.0%以上 35.0%以上
(IMC基準)

体脂肪率は、一日のうちでも変動します。正しく測るために、朝・夕食前、入浴後など、なるべく同じ条件、同じ時間帯で測定する習慣をつけましょう。

BMI値と体脂肪率を測定し、自分の理想の体重を知ることでダイエットの目安としてください。

健康的なダイエット目標の目安は、1ヶ月で3kg程度、肥満の方で5kgまでといわれています。食事を抜いたり、同じ食品だけを食べ続ける単品ダイエットは、身体に必要な栄養素が足りなくなり、身体に負担をかけるので危険です。ダイエット中こそ3食を規則正しくとり、貧血、骨粗しょう症、便秘など無理な食事制限で起こりやすい弊害に気をつけましょう。ドカ食いをやめて摂取カロリーを減らすこと、運動でカロリーを消費し、筋力をつけること、これを頭に置いて、健康的に美しくダイエットしましょう!

 

 

スポーツの秋到来! 筋肉痛の予防とアフターケア(2005年9月)

 

     
 
9月のテーマ:
スポーツの秋到来!

筋肉痛の予防とアフターケア

 暦の上ではすっかり秋となり、子どもの運動会や会社のスポーツ大会などに参加する機会もあることでしょう。普段から身体を動かしてる人ならまだしも、日頃は運動しないのにここぞとばかりに張り切って参加する、となると心配なのが筋肉痛。今回は筋肉痛の仕組みと予防、対処法についてご紹介します。
 
     

 

筋肉痛のおこる仕組み
 
【筋肉痛になる原因は、主として下の2つ】

筋疲労によるもの
 

 激しい筋収縮により、筋肉への酸素供給が間に合わなくなる。するとエネルギー源となるブドウ糖が不完全燃焼を起こし、代謝産物(乳酸)が残ってしまう。この乳酸が筋肉中に蓄積することにより痛みを生じる。

筋損傷によるもの
 

 普段使わない筋肉を急に使うなどすると、筋繊維が損傷し、炎症を起こしてしまう。この炎症が痛みを生じる。ちなみに、運動によって起こる筋肉痛は前者の場合がほとんど。また、大きな力を出すほど、長時間運動するほど筋肉痛になりやすく、「筋肉に力を入れた状態で、その筋肉が引き伸ばされる」運動が最も筋肉痛になりやすいと言われます。

これは、筋肉は本来「縮んで力を出す」つくりになっているため、階段を下るときのように「力をだしながら筋肉をゆるめる」運動をすると筋肉が傷つきやすくなるから。階段を上るときより下るときのほうが筋肉痛になりやすいという実験結果も出ています。

2日後の筋肉痛は老化のシルシ?
 
 歳をとると筋肉痛が遅れて出てくるといいますが、これは筋肉の衰えによるもの。筋肉痛は運動直後に起こるものと1~2日後に起こるものがあり、それぞれ以下のような特徴があります。
運動直後
 

 筋原繊維(筋繊維のもと)の損傷による。早期解消し、痛みがあるうちも軽い運動は問題なし。

1~2日後
 

 運動の際、極度の筋緊張が起こったため。ひどいものだと痛みと腫れを伴い、治りにくい。内出血していたりへこんでいる場合は肉離れを起こしていると考えられるため、動かさないように。

そもそも痛みというのは体の防御反応で、生きるために必要な感覚。筋肉痛も例外ではなく、遅れて起こる遅発性筋肉痛は、筋肉に何らかの異常が起こっている危険信号とも考えられます。1週間以上も筋肉痛が取れないような場合は、動脈硬化が原因となっている疑いもあるので病院で循環器系の検査を受けることを勧めます。

筋肉痛のアフターケア
 
基本は「温-冷-温」
 

 痛み=冷やすと考えがちですが、筋肉痛の場合は温めるケアが適しています。「冷やす」のは主に炎症を抑え、痛みを(一時的に)軽くする等の効果があると考えられているので、痛みのひどいときは冷やし、あとは温めるのがいいでしょう。

1.運動後、痛みが出ない間は温めておく。

2.痛みが発生したら、痛みが峠を越すか横ばいになるまでは冷やす。

3.痛みが良くなりはじめたら(まだ痛みがあっても)温める。

「温める」のは筋肉組織の血液の循環を促進し、筋肉痛を直すリサイクル全般を早める働きをします。ただし、炎症の進行中は、温めると炎症を促進してしまうので、一時的に痛みが激しくなることもあります。

お風呂やサウナ、マッサージ、軽い運動をする、などは血液の循環を促進するので主に「温」の効果があります。入浴する際は38~40度のぬるめのお湯にゆっくり入るのが効果的です。

運動後にはクール・ダウン
 

 激しい運動後は急に寝たり休んだりせず、軽いランニングでクール・ダウンし、血液の循環を急激に落とさないようにしましょう。そのあと力を入れた腕や足などの筋肉を重点的にストレッチングし、この2段階を踏んでから休息します。この時先に紹介したように入浴などで身体を温めて血液の循環をよくするとさらに効果的です。(※最初から痛みのある場合は除く)

筋肉痛の予防策
 
 筋肉痛の予防には日ごろからジョギングなどで筋肉を鍛えておくのが理想的な方法、とは言ってもなかなかできないもの。普段運動不足だったり筋力に自信のない人は、運動前にストレッチングすることで運動後の筋肉痛の軽減をめざしましょう。

ストレッチのやり方は、運動前に日ごろ使っていない筋肉を十分に伸ばすこと。筋肉を温め、血流を良くする効果があります。呼吸しながら20秒ほどゆっくりと筋肉を伸ばと良いでしょう。

運動前後の十分なストレッチングと、運動後のクール・ダウンでだいぶ軽減できる筋肉痛。しかし日頃から運動して身体をならしておくのがやっぱり一番。季節はスポーツの秋、涼しくなりジョギングやウォーキングにも最適な季節です。今度の休みは少し時間を取って、街路樹の紅葉を眺めながらウォーキングなんていかがですか?