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健康まめ知識

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感染症への備えと予防(2014年11月)

 

図人類の歴史は、ウイルスとの戦いの歴史だとされます。一説によると美男や美女が異性にモテるのは、ウィルスに負けない免疫機能を持っている人が、左右シンメトリーな身体や美しい容姿を有するからだと言われます。美しい容姿を持つ人ほどウイルスに負けない健康な子孫を残す確率が高いので、自分の子孫を残そうという本能によって、そうした伴侶が求められるというわけです。

 

天然痘というウイルスによって、顔に痘痕(あばた)を残すということも一昔前までは珍しくありませんでした。歴史上の人物では、戦国大名の伊達政宗は天然痘で右目を失い独眼竜と呼ばれ、吉田松陰やモーツァルトにも痘痕があり、夏目漱石は痘痕のため自分の容姿に劣等感を抱いていたといいます。この天然痘を根絶させたのが「近代免疫学の父」ジェンナーが考え出した種痘法というワクチン療法でした。この天然痘に対するワクチンは改良されて世界中で使用され、ついに1980年には根絶が宣言されました。

 

しかし、人類は、毎年のように新たなウイルスの脅威にさらされ、今年猛威を振るうエボラ出血熱のように効果的なワクチンが未開発な病気も少なくありません。

 

今回は、こうした様々な感染症からできるだけ身を守るために心がけておくべきことを紹介します。

 

新型インフルエンザ

毎年寒い時期になると流行する季節性のインフルエンザの他に、遺伝子組み換えなどによって発生する新型インフルエンザというものがあります。これは本来、動物にしか感染しないインフルエンザの遺伝子が変異しヒトに感染するようになったものです。誰も免疫をもっていないので、感染が急激に拡大することもあります。過去には世界中で6億人も感染し、4000万人もが亡くなったスペインインフルエンザ(1918年)や死者200万人のアジアインフルエンザ(1957年)、死者100万人の香港インフルエンザなどがあります。

 

図これらは、それぞれ別の型の遺伝子のインフルエンザですが、1977年に流行したソ連インフルエンザは、1918年に流行したスペインインフルエンザと同じものです。このように、いったん終息してもまた流行するものや、さらに抗インフルエンザ薬の効かない遺伝子への変異が懸念される恐ろしいものもあります。

 

世界的な大流行(パンデミック)が怖れられている高病原性鳥インフルエンザもその一つです。鳥インフルエンザは、ニワトリやウズラ、アヒル、七面鳥など人間が飼育する家禽がもっているA型インフルエンザウイルスによる感染症で、ヒトの季節性のインフルエンザとは感染症法上で区別されています。このうち鳥に対する病原性の強いものが高病原性とされます。

 

この高病原性ウイルスのヒトへの感染は、家禽との濃厚な接触によっておこり、高病原性H5N1ウイルスの場合は、致死率が60%といわれる恐ろしいものです。このウイルスが突然変異によりヒトからヒトへ感染するようになることが最も懸念されているのです。

 

パンデミック時の備えをしよう

図こうした、ウイルスによるパンデミックが起こった場合、自衛手段としてもっとも有効なのは、なるべく外出を避け感染者との接触を極力減らすということになります。特に発生した直後は、医療体制や対処法などが確立されていないということを想定して、不要不急な外出を控えるということが必要になります。しかし、外出を控えるとすぐに日常生活に支障をきたすことになります。そうした場合に備え、必要最小限の備蓄をしておくことが大切です。何をどれぐらいというものについて、4人家族が2週間生活をするための備蓄品のリストが農林水産省のホームページで紹介されていますので参考にしてください。最低限必要になるカロリーから割り出した食材の量等が目安として紹介されています。

 

これらのいざという時の備えは、地震などの災害時にも同様に必要なものです。

下記は、その一部ですが、このような品目を表にして、在庫数や、保存期限などを一目で分かるようにしておくといざというときに大変役立ちます。

 

●衛生用品
  • 常備薬(胃薬、痛み止め、その他持病の処方薬など)
  • 絆創膏(大・小)
  • ガーゼ・コットン(減菌のものとそうでないもの)
  • 解熱鎮痛剤(アセトアミノフェンなど)
    ※薬の成分によっては、インフルエンザ脳症を助長する可能性があります。
     購入時に医師・薬剤師に確認のこと。
  • マスク、ゴム手袋(破れにくいもの)
  • 水枕・氷枕(頭や腋下の冷却用)
  • 漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)
  • 石けん、消毒用アルコール、うがい薬、体温計

 

●日用品
  • 懐中電灯
  • 乾電池
  • 手動式充電器
  • 携帯電話充電キット
  • 携帯ラジオ・携帯テレビ
  • カセットコンロ・ガスボンベ
  • トイレットペーパー
  • ティッシュペーパー
  • キッチン用ラップ
  • アルミホイル
  • 缶きり
  • 紙食器
  • ロウソク・マッチ
  • 洗剤(衣類・食器等)
  • シャンプー・リンス
  • ウェットティッシュ
    (アルコール含有とそうでないもの)
  • 生理用品
  • 紙おむつ
  • ビニール袋(汚染されたごみの密封に利用)

 

食糧(長期保存可能なもの)

【主食類】

  • 乾類面(そば、ソーメン、うどん等)

  • 切り餅

  • コーンフレーク・シリアル類

  • 乾パン

 

【その他】

  • 各種調味料
  • レトルト・フリーズドライ食品
  • 冷凍食品
    (家庭での保存温度ならびに停電に注意)
  • インスタント食品(ラーメンなど)
  • 缶詰
    (肉、魚、果物、野菜、豆、スープなど)

  • 菓子類(クッキー、キャンディーなど)

  • ミネラルウォーター

  • ペットボトルや缶入りの飲料

 

その他必要な食料(介護食、ベビーフード、粉ミルク、サプリメント、ペットフードなど)

 

予防-生活の中で気をつけたいこと
図外から帰ったら「手洗い」「うがい」をするということを日本人は子供の頃から躾けられていますが、海外では意外に「うがい」は一般的ではないようです。その効果の検証が十分されていないということがあるようですが、日本では神社にお参りするときに行う「手水」(てみず)が手や口を清める作法としてあるように美しい文化の一つとして継承したいものです。

 

ただ、ウイルス対策としては、手水のように水をかけただけでは役に立ちません。しっかり洗剤と流水を使って洗う必要があります。正しい方法は、やはり農林水産省のホームページでも紹介されています。

 

●正しい手の洗い方

  1. 流水で汚れを簡単に洗い流す。
  2. せっけんをつけて十分に泡立てる。
  3. 手のひらをあわせてよくこすり、次に手のひらと手の甲をあわせてよくこする。
  4. 両手を組むようにして指の間をよく洗いましょう。
  5. 爪の間も十分に洗う。
  6. 親指は、反対側の手でねじるようにして洗う。     
  7. 手首も忘れずに、反対側の手でねじるようにして洗う。     
  8. 洗った手が再び汚れないように、蛇口をせっけんで洗い流してから水を出し、流水でせっけんと汚れを十分に洗い流す。      
  9. 清潔な乾いたタオルなどで水気を拭きとる。

 

感染症が流行する寒いこの時期、当たり前の健康法ですが、正しい手洗いでウイルスの侵入を防ぐこと、暴飲暴食を避け、免疫機能を落とさないように睡眠と休息をしっかりとること、栄養バランスに留意し、軽い有酸素運動を習慣づけるなど、日々の正しい生活習慣に気を配り工夫して過ごしましょう。

 

中高年に人気の「ラジオ体操」(2014年10月)

 

イラスト今年の夏は異常な暑さが印象的でした。それに続く急激な気温の変化と天候の不順。気持ちの良い日本の秋の到来が待ち遠しいところでしたが、10月に入り、やっと身体を動かすにはちょうど良い季節がやってきました。

 

最近、中高年に何故か人気なのが「ラジオ体操」。子供の頃、夏休みにスタンプを押してもらうことが楽しみで、毎朝眠い目をこすりながら参加したあの「ラジオ体操」です。この2年あまりで関連本が10冊以上、中にはシリーズで数十万部も売れている本もあるようです。

 

今月の健康コラムは、この「ラジオ体操」の人気の秘密、その効用などについて紹介したいと思います。

 

「ラジオ体操」とは?

ラジオ体操という名の通り、ラジオ放送局が健康のための体操指導を行うというのが始まりです。1920年代からアメリカやドイツで放送されており、日本でも徒手体操を指導員の号令で行う番組がありました。

 

現代のラジオ体操の原型になるのは、アメリカの保険会社が健康増進のために始めたラジオ体操番組”Setting up exercise” だと言われます。

 

日本では、昭和天皇の即位を祝う事業としてラジオ体操が提案され、文部省に委嘱。国民健康体操の名称で天皇の御大典記念事業の一環として放送が始められたといいます。その後、全国放送として定着し今に至る「ラジオ体操」は当時の日本人の健康増進のためにスタートした、肝いりの番組だったわけです。子供の頃は、夏休みのイベント以外にも様々な機会に行っていたように思うのですが、いつのまにか、ストレッチや体幹トレーニングなど、新しいメソッドに比べ時代遅れの運動というイメージが定着した「ラジオ体操」。

 

それがなぜ復権したのでしょうか。

 

かつてのマイナスイメージはどこから?

イラスト「ラジオ体操」は、運動競技や日常生活をスタートする前の軽いウォーミングアップとして広く活用されていました。ところが「ストレッチ」が、1970年代後半スポーツの指導者などにより急速に広まり、まずアスリートの準備運動がこの新しい科学的なスポーツメソッドに取って代ったのです。

 

動きに反動をつけた「ラジオ体操」のような準備運動は、暖まっていない筋肉や関節に有害だといったことが、あらゆるスポーツシーンで語られました。学校のクラブ活動など、身近なところでも必ずそうした話題が出た程です。

 

こうした反動で弾むような動作で筋肉を伸ばす方法を「バリスティックストレッチ」(動的ストレッチ)と言い、現在「ストレッチ」呼ばれている「静的ストレッチ」と比べて、急激に伸ばされた筋肉が起こす「伸張反射」と呼ばれる防衛反応のために、かえって筋肉が反射的に収縮してしまうとされました。

 

こうしたマイナスの情報は、現在の「ラジオ体操」の盛り上がりの中では、あまり話題にはならないようです。現代では、「静的ストレッチ」、「動的ストレッチ」ともにそれぞれの良さがあるという認識が一般的です。どうやら、「静的ストレッチ」の優れた点を強調するために、ことさら「動的ストレッチ」が悪者にされたというのが真相なのかもしれません。いずれにしても現在では、「ストレッチ」を専門に教える教室などでも「静的ストレッチ」と「動的ストレッチ」、それぞれの良さが紹介されることが多いようです。

 

「ラジオ体操」の効果

イラストでは、「動的ストレッチ」でもある「ラジオ体操」のどこが現在の人気を呼んでいるのでしょうか。その理由のいつくかを挙げてみましょう。

 

まず、運動としての効果そのものよりも分かりやすい理由がいくつかあります。

 

一つは、「ストレッチ」(静的ストレッチ)や「ヨガ」、「ピラティス」、「リポーズ体操」、「フェルデンクライス」などと比べてエクササイズの動作が分かりやすいという点。子供の頃から慣れ親しんでいる「ラジオ体操」の動作は、特に中高年の方で知らない人はいらっしゃらないでしょう。

 

先生の指導を受けないと身体の動かし方が分からないとか、どこかの教室やスポーツ施設に通わなければならないということは、ありません。もちろん費用もかかりません。これも大きな要素でしょうか。毎日、決まった時間にラジオの前に居ればいいだけですから。

 

次に効果ですが、どれも簡単な分かりやすい動きで構成された「ラジオ体操」ですが、一通りこの運動を行うだけで、400以上の筋肉が刺激を受け活性化されるといいます。毎日ラジオの前で決まった時間に行うということも、生活のリズムを作ってくれます。筋力が刺激を受けて高まり、柔軟性も保てますし、血流が良くなって代謝も高まるといった生活習慣病を気にしなければいけない中高年にとって、とても良い効果を生むのです。

 

イラスト運動強度としても、ある程度のスピードで歩くウォーキングと同程度。体脂肪を燃焼させ、免疫力を高めて病気になりにくい体質にしてくれるちょうど良い強度ということになります。

 

さらに「ラジオ体操」は、姿勢を良くするという動きが多いのも大人向けと言えます。筋力や柔軟性の低下、あまり歩かない生活などは、背骨のゆがみや悪い姿勢を生む原因となりますが、良い姿勢をサポートする軽い運動はとても効果的です。

 

また一般的に「ラジオ体操」というと第一を指しますが、これは「子供からお年寄りの一般の人が行うことを目的」とし、第二は筋力の強化をポイントとした動きで、第一と比べて運動量も多くなっています。相当な運動効果があるということになりますので、通院やリハビリ中の方は、運動の可否を医師に相談してください。

 

身体をほぐすストレッチでバランスの良い身体に(2014年9月)

 

図

年齢とともに身体が硬くなってきた、そう感じる人は多いことでしょう。若い頃どんなに身体が柔らかくても、加齢とともに関節の稼働域は狭くなり、筋肉は弾力を失って硬くなってきます。

 

そこで必要になるのがストレッチ、つまり伸ばす運動です。しかし、ストレッチが具体的にどのような運動で、筋肉や関節にどのような効果をもたらすかということは、意外に知られていません。ストレッチを運動を専門的に行う前の準備運動だと思っている人も多いことでしょう。しかし、柔軟性は、日常生活を健康に営むためにもとても大切なものです。肩こりや腰痛、肉離れや腱の断裂を起こす原因の一つとなるのも柔軟性の欠如です。猛暑をしのいだ後に、少し身体を動かしたいという時期を迎え、そのスタートで思わぬ怪我をしないためにも、今回はストレッチについて紹介します。

 

ストレッチを行い、筋肉を伸ばすことで身体に良い影響を及ぼすことがいくつかあります。筋肉が固まっていると血管が圧迫され、血液の循環が滞ることになります。また、固まった筋肉によって神経が圧迫されて痛みを生じることがあります。肩こりもそうです。さらに股関節などが固まって身体がスムーズに動かないと、日常生活でのものの上げ下げの際に、本来なら身体全体に分散される負担が腰の一カ所に集中して腰痛を起こすということもあるのです。

 

ストレッチにより筋肉のこわばりが取れると、圧迫されていた血管が拡張し血液循環がスムーズになります。血液の流れが良くなるとコリだけでなく冷え性なども緩和され、日常生活が快適になるのです。

 

図さらに精神的にも、ストレッチの気持ち良さがリラックス効果をもたらし、質のよい睡眠とストレスの軽減をもたらしてくれます。また、筋肉のコリによって悪くなった姿勢も良くなります。パソコン作業などのデスクワークを長時間行っていると、肩や背中、腰などの筋肉が硬くなります。さらに続けると太腿の裏側の筋肉が硬くなり、この筋肉が縮むことで骨盤が引っ張られて後傾し、猫背気味の悪い姿勢になってしまいます。

 

こうした誰もが陥りがちな悪い姿勢を正すためにも、ストレッチで筋肉の柔軟性を高めることが大切です。

 

筋肉が柔軟になる仕組み

筋肉をストレッチで伸ばしても、それで筋肉が伸びっぱなしになるわけではありません。筋肉が伸びやすくなるのです。これは、材質として筋肉が伸びやすくなるという面と、力が抜けていわゆる脱力して伸びやすくなるという2つの側面があります。ストレッチを行うことで、筋肉の組織がそれに対応して一時的に柔軟性が向上するのですが、続けていくことで一時的な柔軟性が本質的に伸びやすい筋肉へと変化していくと考えられています。

 

ストレッチはいつやるのが効果的か

図運動の前にストレッチをすると良いというイメージがありますが、筋肉は暖まった状態のほうがよく伸びます。また、運動の後に溜まった乳酸を上手く流す効果も期待できるので、運動をして十分身体が暖まった後、クールダウンの一環として行うと身体の柔軟性を高めることができます。

 

さらに特別な運動をしない人、肩こりや腰痛を緩和したいという人は、お風呂上がりが最適です。お風呂で十分に筋肉が暖まったところで、気持ち良く感じる程度に筋肉を伸ばしましょう。

 

専門的に部位別に分けたストレッチの種類は1000以上あると言われますが、その中からここでお風呂上がりに布団の上で行うのに適した簡単なストレッチを数種類紹介します。

 

①肩と胸のストレッチ

できるだけ背中を真っすぐにして両手を伸ばす(10秒から20秒静止)

 

②肩の横側のストレッチ

肩にある三角筋を伸ばすストレッチ。肩の位置を動かさないように腕をクロスさせる。

(左右とも10秒から20秒静止)

 

③首横側のストレッチ

手を軽く添えて頭を横に傾ける。力を入れずに行うこと。(左右とも10秒から20秒静止)

 

④太腿内側と首と背中のストレッチ

足首を持って、足の裏を合わせる。背筋を伸ばすことで、首と背中もストレッチ。つま先を両手で持つようにすると更に効果的。(左右とも10秒から20秒静止)

 

⑤腿の内側と肩のストレッチ

④の姿勢から両膝に手を置いてさらに腿をストレッチし、肩を交互に顔の前にもってくると肩もストレッチできる。

 

⑥腰のストレッチ

左膝を立て右ひじで左膝を押しながら腰をひねる。顔を後ろに向けるように。(左右とも10秒から20秒静止)

 

ストレッチはスポーツクラブや公共施設での講習会、書籍やDVDなどでも紹介されています。運動の得手不得手や、年齢等にも関係なく誰でも自分に合った強度で行えますから、気軽にチャレンジしてみると良いでしょう。 

 

 

 

夏の落とし穴「夏太り」にご注意!!(2014年8月)

 

図1

今年の夏は、冷夏になる、いや昨年と同じように猛暑になる等と予想が錯綜しています。今のところいきなり梅雨が明けたため、暑さが酷く身体にこたえるという人も多いことでしょう。そこでビール党ならビールが、それ以外の人には、酎ハイや冷たい清涼飲料がとても美味しく感じられる日々を送っていることでしょう。

しかし、冷たい飲み物が内臓脂肪を増やす原因の一つだということをご存知ですか。「コールドドリンク症候群」と名付けて注意を促す医師もいます。暑さも本番を迎える季節に誰もが陥る危険がある甘い罠ならぬ「冷たい罠」、さらにそれがもたらす内臓脂肪について今回は触れてみましょう。

 

 

誰もが陥りやすい「コールドドリンク症候群」

どこにいっても自動販売機のある風景。外国人が日本を訪れたときその多さに驚くと言います。その状況を治安の良さという側面で引き合いに出す人もいますが、これは「コールドドリンク症候群」に拍車をかけているのです。さらに、コンビニエンス・ストアに入れば、冷たく美味しい新製品の数々。家に帰っても、冷蔵庫を開ければ冷たい缶ビールや清涼飲料があなたを待ち受けています。暑さから逃れたい一心でそれらについ手が伸びてしまうのも仕方のないこと。確かに冷たいものを飲むと体温が下がり、一時的に暑さから逃れることができます。

 

しかし、飲料することによりお腹を冷やすと身体はその冷えから脂肪で内臓を包んで守ろうとするのです。最後の氷河期に順応した人類が、生き延びるために獲得したのが、こうした脂肪を蓄える能力だったといわれます。見方を変えれば、太りやすい人というのは、環境に順応する能力の高い人ということになるわけです。

 

 

貯蓄型の「中性脂肪」、やりくり上手の「脂肪酸」

図2脂肪とは一体何なのかを確認しておきましょう。体内には、脂肪酸、中性脂肪、コレステロール、リン脂質の4種類の脂肪があります。このうち中性脂肪と呼ばれるものが、肉の切り身で目にするあの白い脂身の部分です。皮下脂肪や内臓脂肪として蓄積される脂肪は、全て中性脂肪で、体内の脂肪の約90%を占めるとされています。この中性脂肪は、万が一に備えて貯蓄される脂肪の貯金です。しかし、度を越すと、肥満や健康を害する一因となります。

 

生きていくため一番に使われるエネルギーとして活用されているのが脂肪酸。中性脂肪と比べるとその割合は、ずっと少ないわけですが、やりくり上手の奥様のように出費をおさえて働いてくれるのです。また、脂肪酸は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり、不飽和脂肪酸には、オレイン酸、リノール酸、EPA(エイコサペンタエン酸)など身体に良い働きをするとされる脂肪酸などがあります。

 

コレステロールは、筋肉や血液の中にありリン脂質とともに細胞膜を構成したり性ホルモンを作る大切な役割があり、大人の体内には、100グラムから150グラム程あるとされています。結合するたんぱく質の比重によりLDLコレステロール(悪玉コレステロール)とHDLコレステロール(善玉コレステロール)に分けられます。コレステロール値というとこれらを合わせた総コレステロール値を指します。

 

リン脂質は、先ほど触れたように細胞膜の構成成分で、水に溶けない中性脂肪を水に馴染ませ血液中に存在できるようにする働きがあるとされています。

 

体内に存在する4種類の脂肪はいずれも人が生きていく上で大切な役割を担っています。問題はその量なのです。人類が飢餓の時代を生き延びるために獲得した資質が、飽食の時代を迎えて健康を阻害するシステムとなってしまっているのです。

 

脂肪の蓄積システム

図3それでは、そうした脂肪の蓄積が行われる時、体内でどのようなシステムが働いているのか紹介しましょう。ご存知のように食べ物が体内に入ると胃や腸で消化が行われ、さまざまな栄養が吸収されます。ごはんや麺類、パンなどの多く含まれる炭水化物は、体内でブドウ糖になり、肝臓から血液中に送り込まれます。これが身体のエネルギーとなるわけですが、このブドウ糖の量が多くなると膵臓からインスリンというホルモンが分泌され、インスリンはブドウ糖をエネルギーとして活用するために働きます。また、余ったブドウ糖を中性脂肪に変えて脂肪細胞に取り込む働きもします。

 

このエネルギーの活用と、貯蔵のバランスがとれているうちは、もちろん人は肥満になることはありません。過食や摂取したエネルギーに見合うだけの運動がなされない状態が続くと、貯蔵庫に脂肪が貯められていきます。身体は、そのうちやってくるかもしれない飢餓に対して生き延びるためのシステムとして中性脂肪に変えたエネルギーを蓄える訳です。これも、人によりますが、体脂肪率で25%まではそれほど問題ではなく、むしろ正常な機能が働いていると考えて良いでしょう。しかし、それを超えて過食や運動不足が続くとインスリンの効き目が悪くなる「インスリン抵抗性」を招き、体脂肪の蓄積が加速される事態になります。

 

大人であれば250億から300億の脂肪細胞が全身に分布しています。昔は、脂肪細胞の数は増えず、一つひとつの脂肪細胞が肥大化して肥満すると言われていましたが、その後の研究で脂肪の蓄積が進むと脂肪細胞も分裂をして、その数が増えるということが明らかになっています。一方で一つの脂肪細胞が米粒や小豆の大きさにまで肥大した例が見つかっています。これは肥満が進んだ結果、脂肪細胞が老化して細胞分裂の力を失い以上に肥大化してしまったものと考えられています。こうなるとそれを元に戻すのは大変。簡単には脂肪が落ちなくなってしまいます。

 

また、脂肪細胞が持つもう一つの大切な働きも失われてしまいます。これは、脂肪細胞が満腹中枢を刺激して過食を制御するためのレプチンというホルモンを出しているというのが近年の研究で分かってきたのですが、細胞の老化はこうした機能を阻害してしまうと考えられます。

 

内臓脂肪を減らす生活習慣の改善

体内に蓄えられる脂肪は、皮下脂肪と内臓脂肪とに分かれますが、生活習慣病のリスクを高めるのが内臓脂肪です。動脈硬化を促進し、血圧を上げ、狭心症や心筋梗塞、脳出血や脳梗塞など命に関わる重大な病気を引き起こす原因にもなるのです。また、インスリンの働きを妨げ高血糖状態を招き易くし、糖尿病を発症させる要因にもなると考えられます。

 

この問題の内臓脂肪を減らすには、どうしたら良いでしょうか。まず、内臓脂肪を溜め込みやすいといわれる生活習慣を見てみましょう。

 

図4[問題のある悪生活習慣]
 ①食事は必ず満腹になるまで食べる
 ②早食いでよくかまないで食べる
 ③朝食抜きが多く、夕食が遅い
 ④寝る前に何か食べる習慣がある
 ⑤宴会が多く、お酒を飲むと食べ過ぎてしまう
 ⑥冷たい飲み物をよく飲む
 ⑦揚げ物などが好きだ
 ⑧テレビを見ながらだらだら食べるのが好きだ
 ⑨運動するのが苦手だ

 

まずは、問題のある生活習慣をあらためるところからスタートしてください。

 

筋肉痛はなぜ起きるのか(2014年7月)

 

図

若い時と比べて筋肉痛が遅れてやってきた。これは身体が老化したサインと思われる人も多いはず。しかし筋肉痛の原因は、諸説ありまだハッキリとわかっているわけではありません。自分の筋力の許容範囲を超えた運動が、筋繊維や周辺の結合組織を傷つけ、その修復が行われるときに痛みを覚えるという説が有力なようですが、そうしたメカニズムについて完全に解明されているわけではありません。今回はこの筋肉痛に関して、取り上げてみたいと思います。

 

 

筋肉痛はなぜ起きるのか

筋肉痛は、「運動により筋肉繊維が傷ついて痛みを感じる」ものというイメージがありますが、実は痛みを感じる神経はこの筋繊維にはつながっていません。筋肉は筋繊維とそれを覆う形の筋膜とで出来上がっていますが、神経はこの筋膜に繋がっているのです。筋膜というのは、脳の司令で動かすことができない部分で、皆さんが自分の意志で動かすことができる筋肉というイメージとは異なる部分です。では、なぜ筋肉痛を感じるのでしょうか。

 

一つの説として、運動強度が一定の限界を超えると筋繊維が傷つき、それを修復しようと血液成分が働き始めたときに痛みを起こす刺激物質が生産され、それを筋膜を経て神経が感じ取ってしまうと言われています。加齢などで、血流が悪くなり、この刺激物質が生産されるところまで時間がかかった場合、痛みが発生するのも遅れることになります。これが、年齢とともに筋肉痛が遅れてやってくる原因の一つと考えることができるかもしれません。

 

また、筋肉痛は、筋肉を縮める動きより、筋肉を伸ばす動きを途中で止める運動によって引き起こされるといわれます。階段を上る動きより階段を下りるときに使われる脚の前面の筋肉の動きが痛みを引き起こします。階段を上るときは、脚の前面の筋肉が縮まり後ろの筋肉が伸びて身体を持ち上げます。反対に階段を下りるときには、脚の裏側の筋肉が縮み、脚の前面の筋肉が体重を支えるために伸びる途中で力が入ります。

 

登山などで経験される方も多いかもしれませんが、登りより下山の時に使った脚の前面や膝の周辺の筋肉が翌日から二日後にかけて痛みを感じるものです。

 

筋肉痛を治すには

図筋肉痛は、その痛む筋肉をこれ以上酷使するなというサイン、身体の防衛機能という側面もあります。まず、睡眠によって回復を図ることが大切で、特に筋肉の修復をするために大切な働きをする成長ホルモンが多く分泌される夜10時から朝の2時までの睡眠のゴールデンタイムと言われる時間帯はしっかりと寝るようにします。

 

また、先ほども触れたように、筋肉痛は痛みを起こす刺激物質が関与していると考えられますので、この刺激物質を早く身体の外に出してしまうという方法が有効な手段ということになります。そのために必要なのが血流の確保。しかし、痛みが血流を阻害してしまうこともあるのです。

 

痛みを感じるとその部位の筋肉は、硬くなります。筋肉が硬くなるとそこに通う血管も圧迫されて血流が悪くなるのです。まずは、この筋肉を緩めることを考えましょう。

 

筋肉はある程度伸ばすことで、緩めることができます。無理をしない程度にストレッチを行います。できるだけゆっくりと伸ばしてください。反動を付けることは厳禁です。脚の前面が痛むのであれば、膝を折って足の土踏まずの部分にお尻を乗せるようにして伸ばします。痛むところを伸ばすのですから、少々辛いですが、我慢してゆっくりストレッチすると後で楽になります。同時に脚の裏側も伸ばしておきましょう。 

 

図運動した後、痛みが起きる前にストレッチを行う習慣をつけると、痛みを軽減することができます。また、運動前にウォーミングアップを十分にして、ストレッチも行うようにすれば、なお効果的です。

 

また、筋肉痛のときには、栄養補給も大切です。痛んだ筋肉を補修するためとタンパク質だけをとればよいというわけではありません。炭水化物や脂質も同時にバランス良く摂るようにしましょう。必要な炭水化物を摂らないと、身体は筋肉を分解してそこから栄養素を取り出そうとします。これでは痛んだ筋肉の修復どころではなくなってしまいます。

 

しっかりとした食事にとりかかるには時間がかかりますから、その前に栄養補助食品等を利用するというのも筋肉痛対策として効果的です。運動直後にアミノ酸を補給し、溜まった乳酸を分解するクエン酸が摂れるレモン、疲れていても喉を通り易いバナナなどを摂るというのも良いでしょう。

 

また、筋肉痛は痛むからとじっとしているより、ウォーキングなどの軽い運動を行った方が早く回復します。これも軽い運動が血行を改善してくれるからです。水泳や水中ウォーキングも効果的です。水中で動くことで適度に水が身体をマッサージしてくれるので、回復を早めてくれます。

 

筋肉痛を防ぐには

図筋肉痛は、運動不足の証明でもあります。毎週末に山に行っているような人は、登山での筋肉痛とは無縁です。同じ筋肉であれば日頃十分刺激を与えておけば筋肉痛になることはありません。しかし、そうした運動習慣があっても、新たなスポーツやフォームに挑戦して、それまであまり稼働させていなかった筋肉を動員するとやはり痛みは起こります。それでも運動習慣のある人は、比較的軽くて済むのです。これは、運動習慣によって血管や心臓の機能が正常に保たれ、全身の血流が良くなるという運動効果の現れです。

 

運動習慣のない人は、無理のないペースで歩くということが、基本になりますが、夏の暑い時間帯のウォーキングはオススメできません。できるだけ朝早い時間帯、涼しいうちに行いましょう。

熱中症の予防と対策(2014年6月)

イラスト

 

毎年この季節になると、必ず話題になる脱水症状や熱中症。近年では家の中にいても熱中症の危険があると言われています。昨年も猛暑日が続きました。特に幼児や、危険な症状を認識しにくい高齢者には注意が必要です。今回は、この脱水症状や熱中症の予防についてご紹介します。

 

 

人間のカラダは水でできている!?

人間の身体に占める水の割合はどのくらいなのかご存知ですか?実は胎児は身体の約90%が水でできています。新生児で約75%、子供で約70%、成人では約60~65%と言われ、これが老人になると50~55%にまで下がります。

 

これは、老化現象の一つで細胞内の水分の低下が原因とされています。また、成人になって水分の割合が低くなる原因の一つは、体脂肪率の増加にあります。そのため、女性の方が水分量の割合が低い傾向にあるとされます。

イラスト

 

この水分量がどれだけ、私たちの生存にとって大切かというと、体重の約2%の水分が失われただけで、喉や口が渇き食欲が減退するなどの不快感に襲われます。約6%が不足すると眠気や頭痛、脱力感が生じ、約10%が不足すると循環不全、腎不全、筋肉の痙攣などの症状を起こし、それ以上不足すると意識を失い、約20%が不足すると死に至ることになります。

 

私たちの身体の水分は、約100兆個もある細胞内に3分の2、残りは細胞と細胞の間にある細胞間液と血液中にあります。生命を維持するために大切な役割を果たしているわけです。

 

水分不足がもたらすさまざまな危険

炎天下のスポーツやイベントなどで、脱水症状を起こし倒れた人が病院に搬入されるというニュースが毎年聞かれます。本来人間がもっている体温調節機能が働かない状態になったときに、熱中症に陥ってしまいます。熱中症と総称される日射病や熱射病で死亡者がでる程深刻な状態になることもあります。

 

日射病は全身の倦怠感、吐き気、欠伸から始まって、酷くなると頭痛や意識障害まで引き起こします。炎天下で激しい運動などをしたときに、汗を大量にかいて身体の中の水分が不足すると心臓に戻る血液の量が減ってしまい、脱水状態に近づくと意識を失います。そのまま死亡することもあるのです。

 

また、熱射病とされるのは高温多湿の状況で長時間身体を動かしたとき、大量の汗とともに体内の塩分や水分が流失し、体温の調節が効かなくなって起こる症状です。温度を感じ取る力が衰え、高い室温に気付かない高齢者が、室内でこの熱射病の症状を起こすということもあるのです。

 

それ以外に、熱失神と呼ばれるのは、暑さで血管が拡張して血圧が下がり、めまいや失神が起こる状態。熱けいれんと呼ばれるのは、大量の発汗で汗とともに塩分が体外に流出し、血液中の塩分濃度が低くなっておこる筋肉のけいれん。熱疲労というのは、大量の発汗で脱水症状を起こし、倦怠感やめまい、頭痛、脱力感、吐き気などを起こすものです。

 

最高気温が30度を超えると、こうした症状の重くなる人が増え、さらに気温が上がると死亡者数も急激に増える傾向にあります。

 

熱中症を防ぐには

イラスト炎天下での長時間の活動は、避けてください。亜熱帯化が進んでいると言われる日本では、最近35度を超える気温になることもあります。ご存知のようにこの気温35度というのは、日差しを遮ったところで計る温度です。アスファルトなどの照り返しを受ける炎天下の道路などは、さらに高い温度になっているのです。

 

また、熱中症は気温が上がる10時から16時の間に多く発生していますが、幼児や高齢者は、これ以外の時間でも十分注意しましょう。服装も大切です。発汗性や吸湿性、通気性の良い素材の服を身に着け、屋外ではつばのある帽子を着用します。

 

暑い時間帯は、全国で電気の使用量が急激に増え、節電が望ましいとされますが、健康を害しては何もなりません。エアコンと扇風機、窓の開け閉めによる上手な換気などを心がけて熱中症を予防しましょう。特に幼児や高齢者には、保護者や周囲の人が十分配慮することが大切です。

 

熱中症の対処

イラスト先ほど紹介した「熱けいれん」の場合は、けいれんしている箇所を軽く伸ばし、マッサージをします。また、「熱疲労」の場合は、心臓よりも足を高くして仰向けに涼しいところに寝かせます。スポーツ飲料を少しずつ飲ませましょう。

 

「熱射病」の場合は、身体の下に当て物などをして、上半身をすこし立てて涼しいところに寝かせ身体を冷やします。首や、脇の下、足の付け根などにビニール袋に氷水を入れたものをあてます。身体の表面を冷やすことが大切です。

 

また、熱中症が重篤な状態で意識がはっきりしないような場合は、すぐに救急車を呼びます。車が到着するまで、吐いた場合に気管を詰まらせてないように、涼しいところに横向きに寝かせます。
熱中症は、回復したと思っても一度病院で診察してもらうようにしましょう。

高血圧は日本人にとって大きな健康リスク(2014年5月)

 

イラスト毎年5月17日は高血圧の日とされていることをご存知ですか?
日本高血圧学会と日本高血圧協会は、第30回日本高血圧学会総会において、毎年5月17日を「高血圧の日」と制定することを宣言し、日本記念日協会により認定登録されました。今月はこの高血圧についてとりあげます。

 

 

降圧薬治療を開始すべきか

日本高血圧学会は、2014年の「高血圧治療ガイドライン」を公表しました。これによると、高血圧の診断基準(降圧薬治療開始基準)は、従来の「収縮期140mmHg以上、拡張期90mmHg以上」という数値を維持しながら「若年・中年高血圧」の血圧を下げる努力目標を、この診断基準と統一しました。同様に後期高齢者(75歳以上)は「収縮期150mmHg以上、拡張期90mmHg以上」とされ、以前の基準より若干緩和されたのですが、この高血圧治療ガイドラインを超えている人の割合が50代になると女性が50%を超え、男性では70%近くと言われています。多くの人が、数値では高血圧と診断されながら、降圧薬治療を開始しようか、それともそれ以外の方法でなんとかならないかと思案しているのではないでしょうか。今回はそうした悩みをお持ちの方のために情報をご紹介します。

 

高血圧になる原因とは

イラスト血圧が高くなる原因は、遺伝的な要素、肥満によるもの、運動不足によるもの、塩分の高い食生活や喫煙、飲酒の習慣などがあげられますが、普段あまり意識していなくともストレスが要因となることもあります。また、糖尿病や腎臓病などの病気が原因で血圧が高いという場合もあります。

 

最初にあげた遺伝的な要素としては、国立国際医療研究センター研究所の加藤規弘・遺伝子診断治療開発研究部長らの研究グループが「東アジア人を対象に、高血圧に関する大規模全ゲノム関連解析を行い、新規のもの5つを含む計13の遺伝子座を同定した」と発表しました。5万人以上の東アジア人の全遺伝情報を解析し、高血圧に関連する13種類の遺伝子を特定したとし、このうちの5種類は白人ではみつかっていないということです。 

 

イラスト日本人は高血圧になりやすいといわれますが、その要因の一つが遺伝子にあったわけです。この高血圧が日本人に最も多かった時期が、1960年代前半で、この時期をピークに下がる傾向にあるとされています。これは、1955年に高血圧の治療を受けている人が人口10万人に対して61人しかいなかったのに、1975年には475人になり、降圧薬を飲む人が増えたということからです。

 

厚生労働省の「健康日本21」における試算によれば、国民の血圧が平均2mmHg下がれば、脳卒中による死亡者は約1万人減り、新たに日常生活活動が低下する人の発生も3,500人減ることが見込まれています。また、循環器疾患全体では2万人の死亡が防げるとしています。高血圧を下げることがどれだけ大切かわかりますね。

 

高血圧は何歳から増え始めるのか

厚生労働省が平成18年に行った国民健康・栄養調査によると30歳以上の40~50%が高血圧で、やはり年齢とともに上がる傾向にありました。高血圧の人が約50%を超えるのは、男性で50代(59.2%)、女性では60代(57.6%)。70歳以上になると、男性では約71.4%が、女性では約73.1%が高血圧だとされています。高血圧がいかに重要な医療問題となっているかわかりませんか。日本人の最大の健康リスクは高血圧にあるという指摘もあるほどです。ところが、そうした問題をなかなか自分のこととして捉えて医療機関に相談しないという人が、相変わらず多いのが現状です。

 

日本高血圧協会と日本高血圧学会は、高血圧啓発キャンペーン「ウデをまくろう、ニッポン!」を実施。今年の高血圧啓発のテーマを“減塩”と“医師相談”として日本高血圧週間5月9日~17日を中心に、高血圧の危険性や減塩・医師への相談の重要性などについて啓蒙活動を行っています。血圧が高めだという認識がある人は、まず食生活を見直し、医師に相談するようにしてください。

 

軽い運動で高血圧に対処

イラストまた同時に降圧効果のある運動もお勧めします。運動療法は薬物療法や食事療法とともに高血圧治療に有効だとされています。また、体を動かすことで、心肺機能を高め、血液もサラサラにしてくれるので、心筋梗塞や動脈硬化予防にも役立ちます。

 

運動の降圧効果は、どれくらいかというと、高血圧患者が定期的に軽く汗ばむ程度の運動を週3回、1回30分以上行うと収縮期血圧20mmHg以上、拡張期血圧10mmHg以上の低下が見られた患者が 半数以上いたという研究事例もあります。ここでいう汗ばむ程度の運動というのは、ウォーキングやサイクリング、水泳など有酸素運動をさしますが、肥満や足の関節に痛みがあるという人の場合、水中ウォーキングや水中エアロビクス運動などプールで行うものが良いでしょう。

 

高齢者を対象にした研究では、ストレッチと筋肉運動のプログラム30分を月2回、3ヶ月間行ったところ、収縮期が10mmHg程度低下したというものがあります。
以上のようなことから、高血圧に対処し健康を維持するためにも、身体に無理をかけない運動を続ける習慣をつけるようにしましょう。

 

新年度のスタートで健康をそこなわないためのコツ(2014年4月)

 

イラスト4月は、進学や就職、転勤など、新生活に適応するために何かとストレスの多い時期。何事にでも意欲的に取り組むのは素晴らしいことです。しかし、頑張り過ぎてしまうという人もいるでしょう。新しい環境にすんなり適応できる人はよいのですが、物事はなかなか上手く行かない場合も多いものです。俗にいう五月病に取りつかれてしまい、何やら疲れを感じてやる気を失ったりする人もいるのではないでしょうか。

今回は、新年度のスタートで健康をそこなわないためのコツを紹介したいと思います。

 

頑張りすぎないことが大切

異なった環境に適応することが得意な人と、苦手な人がいると思いますが、これは仕方のないことです。新しい環境が仕事場である場合は、頑張らざるを得ないと考えるのは当然かもしれません。しかし、新しい環境に自分を合わせるのが苦手な人は、無理は禁物です。ストレスレベルが許容範囲を超えてしまうと、様々な症状や病気を引き起こすことがあります。

 

その一つが副腎疲労です。朝起きられない程の疲労を感じ、出勤することさえできなくなってしまうことがあります。実は副腎はコルチゾールというストレスに対処するためのホルモンを分泌している大切な臓器なのですが、睡眠不足に加えて糖分やカフェインの摂り過ぎや、感染症などの要因が長く続くとそのストレスに耐えられる限度を超えて副腎疲労を引き起こしてしまいます。

 

最初は自覚症状のないままストレスに対処するコルチゾールの分泌量が増え、そのまま対処のピークに達してもストレスが減らないと副腎が機能低下を起こし、分泌するコルチゾールの量も減って行きます。するとコルチゾールによる身体の修復と調整が間に合わなくなって、様々な身体の不調を感じるようになります。女性の場合は、月経が止まることもあります。

 

イラスト疲れた身体をコーヒーで無理に覚醒させる習慣のある人は要注意。また疲れた時にカフェイン含有量の多いチョコレートを食べると、このカフェインが副腎を刺激してコルチゾールの分泌を促すため、自分を鞭打つ習慣がついてしまいます。結果的にはそれが副腎を疲労させてしまうのです。

 

もし、疲れきって動けないという状況の場合は、医師による診察が必要になります。そうなるまえに、無理は控えて毎日の生活で、食生活を改善し睡眠時間をたっぷりとるなどして疲労回復に努めましょう。カフェインの摂取量を徐々に減らして行くことも大切です。

 

新年度は運動習慣を身に付けるチャンス 

イラスト新しいチャレンジとして、少々増えすぎてしまった体脂肪を落とすことも兼ねてスポーツに取組む人もいると思います。適度な汗をかく運動は、様々な健康効果をもたらしてくれますが、実は副腎のストレスも軽減してくれるのです。副腎から分泌されるコルチゾールは体内に蓄積された重金属が酸化して体内で炎症を起こした場合、対処のために使われます。この水銀などの重金属は、皆さんの大好きなマグロなど大型魚を食べるとそこに多く含まれているのですが、副腎を疲労させる原因の一つになってしまうのです。

 

しかし、この重金属は軽い有酸素運動による発汗や入浴で汗とともに体外に排出することができます。適度な運動習慣を身に付けると、結果的にストレスに強い身体を獲得できるというわけです。
汗をかく運動が身体に良いからといって、普段運動習慣の無い人や、新年度に久しぶりに運動を再開しようという人がいきなり激しい運動をしてはいけません。激しい運動は、筋肉の炎症をもたらし、ここでもコルチゾールが大量に動員されることになるからです。何事も無理は禁物です。

 

今からでもできる最新の花粉症対策(2014年3月)

     
 
3月のテーマ:
今からでもできる最新の花粉症対策

 日本人の4人に1人が花粉症だといわれています。毎日の花粉情報に一喜一憂している人も多いことでしょう。花粉の心配の少ない雨の日が待ち遠しいという声も聞きます。ご存知のように、花粉症とはスギやヒノキなどの花粉が飛ぶ季節にだけ症状がある季節性アレルギー性鼻炎のことですが、鼻だけでなく眼のかゆみや涙、充血が伴ったり、皮膚やのどのかゆみ、下痢症状なども伴うことがあります。この時期は、長年花粉症に悩まされている人にとって憂鬱な時期。春が四季の中で一番好きだったのに、嫌いになったという人もいることでしょう。
 今月は、こうした不快な症状を緩和する方法を紹介します。

 
     
花粉症のメカニズム
 

 今年初めて花粉症になったという人もいることでしょう。この10年の花粉飛散量の平均は、それ以前の10年間の平均と比べて2倍以上になっているというデータがあります。初めて花粉症を発症する年齢も、子供から高齢者まであらゆる年代に見られ、もうこの歳だから花粉症にはならずに済んだと安心することもできないのです。そうした人のためにも、その発症メカニズムをあらためて紹介します。

 
その1
 

 スギやヒノキなどの花粉が、目や鼻から人体に入ってくると、私たちの身体はそれが有害な侵入者かどうか判断します。

その2
 

 身体にとって有害なので排除すると判断した場合、この侵入者に反応する物質を作る仕組みが働きます。リンパ球が働いて作り出すこの物質をlgE抗体と呼びます。

その3
 

 抗体ができた後で、再び花粉が体内に入ってくると、鼻や目の粘膜にある肥満細胞の表面にある抗体と結合します。
(ちなみにこの肥満細胞とは、太ることとは関係がなく、顕微鏡でのぞくと膨れて見える様子が肥満を想像させるので名付けられたもので、顆粒細胞と呼ばれることもあります。)

その4
 

 すると肥満細胞からヒスタミンなどの化学物質が分泌されて、花粉をできるだけ体外に洗い流そうとします。
くしゃみで吹き飛ばそうとしたり、鼻水や涙で洗い流そうとしたり、逆に鼻づまりを起こして中に入り込むことを防ごうとするわけです。

   
初期療法を行えば比較的楽に花粉症の時期を乗り越えられる
 

 悪化してから病院に行くよりも、症状の軽いうちに治療を受けるとそのシーズンを通して花粉症の症状を軽くすることが可能です。毎年花粉症で苦しんでいる人は、できれば花粉の飛び始める前に病院に行きましょう。

今月は、もう花粉の飛散が始まっています。関東地方は2月中旬には飛び始めますから、来年は、1月中に病院に行くと効果的な初期療法が受けられるということを覚えておきましょう。花粉症の発症を遅らせたり、飛散量の多い時期の症状を軽くすることができ、薬の量や使用回数を少なくすることもできます。

   
自分でできるケアも知っておきましょう
 

 花粉症を悪化させて苦しまないためには、早めに診察を受けることが大切ですが、症状を軽くするために自分でできるケアもありますので、それをご紹介します。

 
その1
「外出するときは帽子、マスク、花粉症対策用の眼鏡などを装着する」
 

 花粉を身体に取り入れないように、マスクで鼻と口を覆い、髪の毛への付着も帽子などで極力防ぎ、最近デザイン性も向上した花粉症対策用の眼鏡などで目からの花粉の侵入を防ぎます。市販されているほとんどのマスクは吸気に際して95%以上花粉を除去するとされています。ただ、マスクは花粉が付くと目詰まりしますから、できるだけ頻繁に取り替えるようにします。安いマスクを毎日使い捨てにすると経済的で、衛生的だとされています。

その2
「外出から帰ったら、できだけ身体についている花粉を落としてから入室する。」
 

 髪の毛や、衣服には外出中にたくさんの花粉が付着しています。花粉症でない人は、無頓着になりがちですが、家族に花粉症で苦しんでいる人がいる場合、できるだけ玄関に入る前に埃を払うように全身から花粉を振り落として、家に持ち込む花粉の量を減らしましょう。

その3
「洗濯物は室内干しにする」
 

 これも、花粉症対策には大切なポイントです。花粉症で苦しみながら、平気で洗濯物を外に干している人もいるようですが、洗濯物の乾き具合よりも花粉を家に取り込まないようにすることの方が大切です。

その4
「外出から帰ったら、洗顔し、市販の人工涙液などで目を洗う」
 

 目の周辺についた花粉は、洗顔で落とします。ただし、水道水で目を洗うと目を痛める可能性もあるので、目を洗うときは市販の人工涙液などを使うようにします。

その5
「鼻を生理食塩水で洗う」
 

 鼻を洗う簡単な器具と生理食塩水を用意し、外出から帰ったときなどに洗浄すると、鼻の中に入った花粉を洗い流すことができ、症状を軽くすることができます。ただし、洗い過ぎると悪影響がでる場合がありますので注意しましょう。

その6
「部屋の中を乾燥させない」
 

 花粉症の症状に苦しんでいるときは、とくに目や鼻の粘膜が乾燥に弱くなっています。加湿器等を使って、室内の保湿を心がけましょう。3月はまだ寒い時期。特にエアコンなどで室内を温める場合、室内の空気は乾燥しがちなので保湿を心がけることが大切です。

   
 

 これからの季節、花粉症の方にとってはつらい時期ですので、早めに準備をするなど花粉とのつきあい方を工夫するとともに、花粉症ではない方も家や会社などに、できるだけ花粉を持ち込まないよう配慮をしてはいかがでしょうか。

   

 

クロストレーニングのすすめ(2014年2月)

     
 
2月のテーマ:
「クロストレーニングのすすめ」

 クロストレーニングと言っても何?と思われるかもしれません。単純にいうと複数の種目の運動を行うトレーニングのことです。なぜそれがおすすめかということを今回は、ご紹介したいと思います。

 
     
体幹の筋肉を使うと故障が減る
 

 ランニングやテニス、ゴルフ等を趣味のスポーツとして楽しんでいらっしゃる方は多い事でしょう。でも、中高年の方でこうした趣味のスポーツに熱中すると、必ずといって起きるのが筋肉や関節などの故障です。よくあるのがランニングで起こす、脚や膝の故障。テニスでは、テニス肘。ゴルフではゴルフ肩というのが有名ですね。いずれも特定の箇所に負担のかかる動きを、関節や筋肉などが耐えられる限界を超えて繰り返した結果、故障を引き起こしてしまうことが多いとされています。

 スポーツ専門のトレーナーの中には、中高年になると特に体幹の筋肉が弱くなって、本来体幹から力を出すべきところを、身体の末端の筋肉を酷使するフォームになり、故障を引き起こす原因になっているという指摘をされる方もいます。

 例えば赤ちゃんがハイハイする姿を観察すると、体幹を使って動いている事がよくわかります。まだ、腕や脚に十分な力がないのに、思ったより活発に動き回るのは、体幹の筋肉を巧く使っているからです。人間は本来、本能的にこうした動きができるものなのですが、大人になって筋力がつき、その筋肉で動く事を覚えてしまうと体幹を使う事を忘れてしまうのです。使わなければ、筋肉は衰えていきますから、ますます体幹を使う動きをしなくなってしまいます。

   
一流選手は一般の人より筋肉が肥大していない?
 

 ゴルフやランニングを良くされている人で、脹脛(ふくらはぎ)の筋肉が異常に左右に張って、肥大している人を見かけますが、これは体幹を使う事を忘れてしまった人の典型的な筋肉の付き方です。本人は、よく運動をしているからだと自賛されていることも多いのですが、その運動で故障を引き起こすリスクが高まっているという自覚が必要です。筋肉の肥大は、運動による筋肉の破壊と超回復の結果だとされますので、身体の末端の一部の筋肉に過大な負荷がかかっている状態だということになるのです。

 一流の選手は意外に身体の末端の筋肉は肥大していないものです。例えば、マラソンの世界で驚異的なタイムを出し続けるアフリカの選手達の脹脛は、運動をしていない一般の大人の脹脛よりも細く引き締まって見えます。それでいて、あの驚異的なスピード。まさに体幹の筋肉のパワーによるもと考えざるをえません。

   
体幹の筋肉を目覚めさせるには
 

 さて、ではなぜクロストレーニングが良いかということになりますが、実は体幹の筋肉を目覚めさせて使えるようにするには、専門的なトレーニングメニューが必要になります。できれば体幹トレーニングを熟知したトレーナーの指導も受けたいところです。でも、現実的にはそれはなかなか難しいかもしれません。そこで、複数の運動を行なうクロストレーニングで、筋肉や関節への負担を分散しながら、健康に良い運動を継続的に行なうことをおすすめしたいわけです。

 例えばゴルフをした後に、プールで泳ぐ。そうすると疲労した脹脛の筋肉が、水泳のキックによる筋肉への刺激でほぐされ固くなった筋肉が柔らかくなります。これは、歩くという行為は足首を曲げた状態で脹脛の筋肉を使いますが、バタ足のキックは足首を伸ばしたまま主に太ももの筋肉を使って行なわれますから、隣接する脹脛にも豊富な血流がめぐり疲労物質を代謝させてくれるのです。

 泳ぎが苦手な人は、水中ウォーキングでも効果があります。胸を張って腕を振り、膝を前に突き出すように脚を運ぶように意識してください。水が身体の動きを制限して、体幹の筋肉も動員しないと前に進まないので、あるていど強制的に体幹の筋肉が目覚めさせてくれます。

 また、自転車を取り入れるのも良いでしょう。町乗り用のクロスバイクと呼ばれるスポーツ自転車でも良いと思いますが、慣れてきたらロードレーサーと呼ばれるペダルを靴に固定するビンディングを装備したスポーツ用の自転車にすると、さらに効果的です。ママチャリと言われる一般の自転車は、ペダルを上から下に踏みつけて、前に進みますが、脚をペダルに固定すると全く別の筋肉を使ってペダルを“回す”ことになるのです。

 最初は意識をしなければできないのですが、身体の後ろ側の筋肉、広背筋(背中の筋肉)や中臀筋、大臀筋(お尻の筋肉)、ハムストリング(太腿の裏側の筋肉)で、ペダルごと脚を上に引き上げるように力を入れ、踏み下ろすときに少しだけ力を入れて、脚の重さでベダルを押し下げるようにすると、奇麗なペダリングで長距離でも楽に走破できるようになります。

 身体の中心に近い大きな筋肉を動員して動くことで、疲労を防ぎながら身体に良い有酸素運動を長い時間続けることが可能になります。

 ただし、ロードレーサーと呼ばれる本格的な自転車は、メンテナンスや安全走行に関する知識も不可欠なので、家の近くの専門店で相談してから、手に入れるようにしてください。ヘルメットなどの身を守る装備のことや、道路での走り方は、専門的なスタッフに指導してもらうのが一番です。

   
クロストレーニングでアクティブな生活を
 

 クロストレーニングは、普段行っている好きな運動に、水泳やウォーキング、自転車などを組み合わることで、特定個所に負担をかけずに、筋肉や関節の故障を防ぎながら、長い年月のアクティブな生活を可能にする大切なトレーニング方法です。ぜひお試しください。