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とても大切な「腸の健康」(2013年2月)

 

     
 
2月のテーマ:
とても大切な「腸の健康」

 腸には、栄養となるものから有害な細菌まで、食事をすることで様々なものが入ってきます。その物質を判断して、体内に取り入れたり排泄する役割があります。その他にも、脳内の神経伝達物質として大切な役割を果たすセロトニンの95%を腸が作っているとされています。このようなことから、腸は第二の脳とも呼ばれたりします。緊張してお腹が痛くなったという経験のある方も多いと思いますが、これは脳の緊張が、ダイレクトに腸の活動に影響を与えるためで、脳との密接な関係があります。

さらに大切なのが、免疫機能。腸の粘膜の表面積は、人間の皮膚の約200倍もあるとされますが、外界に接している皮膚が、ウィルスや細菌などにさらされているように、腸は口から入る物によって、皮膚の約200倍もウィルスや細菌にさらされていることになるのです。栄養分を吸収しながら細菌やウィルスは体外に排出しなければならない腸は、その役割りを果たすために人間の身体の免疫システムの70%が集まっていると言われます。この大切な腸の健康について今回は、取り上げてみたいと思います。

 
     

 

日本人の腸の特徴と食べ物の関係
   日本人と欧米人で、決定的に違うのが腸の長さです。日本人の腸は、欧米人の1.5倍もの長さがあると言われます。その理由は、これまでの食生活の違いによるものです。野菜や穀物を主食としてきた日本人は、栄養分をできるだけ多く身体に取り込むために、長い腸が必要だったとされます。一方、欧米人は、腸内に長く留めると腐敗し有害物質の生じる肉類や脂肪分の摂取が多く、腸を短くして出来るだけ早く排泄しようとしたためだと考えられています。

腸の役割は、主に栄養分を吸収する小腸と、小腸で吸収しきれなかった食べ物のカスや水分を吸収する大腸とに分かれています。この小腸の長さは、約6メートル、大腸の長さは約1.5メートル。食べ物のカスは、大腸で吸収され、最後に残ったものが便として排泄されるのですが、便秘になるとこの便が腸内に長い時間留まり腐敗が進み、これが長い時間腸の粘膜に触れ続けるとガンなどを引き起こす可能性があります。
日本人の食生活が欧米化した結果、1950年から2000年までの50年間で、日本人の大腸がん患者が約10倍にもなりました。がん細胞は、正常な人でも毎日3000個から4000個は発生すると言われていますが、このほとんどが腸の粘膜で発生し、これを免疫細胞が攻撃し、排除するという作業を繰り返しているのです。この大切な腸を元気に保つために最も大切なのが、腸の中の細菌のバランス。腸内の細菌のバランスは、病気の予防だけでなく老化の防止などにも大切だということが分かってきました。

   

腸内環境が大切

   腸の中には100兆個もの細菌が住みついています。その種類は約500種類。みなさんも良く知っている「乳酸菌」に代表される「善玉菌」と呼ばれる菌、これに対して身体に悪さをするのが「悪玉菌」。そして腸内の環境によって「善玉菌」にも「悪玉菌」にもなるという「日和見菌」という3種類に分類されます。健康な人の腸内は、この「善玉菌」と「悪玉菌」のバランスがうまく保たれています。

それぞれの菌について、詳しく説明するとまず「善玉菌」とは、「乳酸菌」や「ビフィズス菌」などです。「善玉菌」は、腸内を酸性にして病原菌の増殖を防いだり、免疫力を高める働きをします。食べたものを消化吸収するときも、この「善玉菌」が手助けします。また、ビタミンを合成したり腸管運動を促進したりといった働きもあります。

「悪玉菌」とは、良く知られている「大腸菌」を筆頭に、「ウェルシェ菌」「バクテロイデス」「ユウベクテリウム」などが代表的なもの。腸内をアルカリ性にして腐敗させたり、発がん物質や有害な毒素を作り出したりといった悪さをはじめ、糞便・ガスを作り出し、下痢や便秘を引き起こします。

「日和見菌」は、食べ物の種類や体調によって、善玉にも悪玉にもなるというもの。ある「日和見菌」は、有益なビタミンを合成したり病原菌を防ぐ役割を果たす一方、腸内を腐敗させたり、発がん物質を作り出しといった有害な働きもするのです。

では、腸内で「善玉菌」の働きを良くし、「悪玉菌」の活動を抑制するにはどうしたらよいのでしょうか。

   
腸を元気にするには
   腸は毎日大活躍しているので元気にするには、やはりまず休ませてあげることが大切。年末、年始で暴飲・暴食したあとに七草粥を食べて腸を休めるという習慣が日本には昔からありました。飽食の現代、特に40代以上の方は、毎日それほど多くのカロリーを摂取し続ける必要はありません。腹八分目を目安に、多すぎる食事量を減らし、長年酷使してきた腸を大切にした食生活を目指しましょう。定期的に食事をお粥するのも良いでしょう。

また、寝る前に食べると、身体は休んでも腸は働き続けなければなりません。寝る直前の食事を控えることも大切です。そして、よく噛む事。消化の負担を減らし、唾液中の消化酵素を食べ物と良く混ぜ合わせるためにも、早食いを避け、一口でいつもの倍噛むようなつもりで、ゆっくりと食事を楽しみましょう。

   
腸を元気するための食事法
 
1. 脂肪の摂取を減らす、特に動物性脂肪の摂取を少なめに。

2. 主食は、玄米、胚芽米や麦ごはんや雑穀米に。

麺類は、うどんよりも、そばの方が食物繊維は豊富です。

3. 肉類は控えめにして、魚介類や納豆や豆腐などの大豆製品を中心に。
4. 野菜やきのこ、海藻、豆などの食物繊維の入った食物を積極的に摂る。
5. 甘いものは控えめにして、水分補給を十分にする。
6. ヨーグルトやオリゴ糖を食べる。

 

健康への第一歩は歯から(2013年1月)

 

     
 
1月のテーマ:
健康への第一歩は歯から

 市民合唱団で歌われている方に、練習はさぞ大変でしょうと訊ねたところ意外な答えが返ってきました。きついのは歌の練習ではなく、口臭だというのです。往々にして年齢層が高いため歯周病にかかっている人の割合が多いようです。歯周病からくる口臭を我慢しながら、声を合わせて練習をするのはきついと言うのです。日本人の約70%の人が歯周病にかかっているというデータがあります。歯を失う原因としても虫歯よりも歯周病の方が多いのですが、普段あまり自覚症状が無いために、歯周病のケアには無関心になりがち。しかし、気づかないうちに周囲の人には多大な迷惑をかけていることもあるのです。今回は、この歯周病について紹介します。

 
     

 

歯周病とは
   虫歯は、歯そのものが病気になってしまうものですが、歯周病は、歯を支えている組織が壊れていく病気です。その始まりは、歯の汚れ。歯垢と呼ばれる歯の表面についた食べ物のかすに細菌が繁殖したものが歯周病の原因となりますが、この細菌は、24時間汚れを放置すると繁殖してしまうと言われています。適切な歯磨きによって食べ物のかすを取り除いてしまえば、この細菌の繁殖は防げるのですが、不適切な歯磨きなどで、歯垢ができてしまうと、それから約2日ほどで、今度はもっとやっかいな歯石に変化してしまいます。歯石になってしまうと歯ブラシで取り除くのは難しいので、歯石になる前に取り除くことが大切です。

また、不適切な歯磨き以外にも歯周病を引き起こしやすくなる原因があります。その一つが喫煙です。タバコに含まれているニコチンは、血管を収縮させる作用がああるので、血液の流れを悪くします。血行を悪くすると身体の抵抗力が低下し、細菌が繁殖しやすくなり、しかもニコチンと共に多くの有害物質が歯垢に混じって歯に付着したり、口内の環境を整える働きのある唾液の分泌量が減る原因にもなります。

唾液が少なくなるとドライマウスと呼ばれる口腔乾燥症の状態に陥ります。これは、水分の補給が十分でなかったり、口を開けて呼吸する口呼吸をしている人がなりやすい症状ですが、唾液は細菌の繁殖を押さえる免疫機能を持っているので、唾液量の低下は歯周病にもつながります。
 また、糖尿病を患うと身体の抵抗力が弱くなるので、歯周病を引き起こしやすくなります。恐ろしいのは、虫歯菌や歯槽膿漏の菌が抜歯などの際に、血中に紛れ込むと感染性心内膜炎という心臓病まで引き起こしてしまうことです。特に重度の歯槽膿漏の場合、口内にたくさんの細菌が存在するので、そのリスクが増大します。症状としては、熱が出たり、動悸が激しくなったりしますが、ひどい場合は弁膜が壊れ急性心不全を起こすこともあります。

   
歯周病の見分け方
  ●歯茎からの出血

歯ブラシをかけたとき、出血をするようであれば、まず初期の歯周病を疑います。出血を怖れて、出血部を避けてブラッシングしているとさらに歯周病が進行してしまいます。正しいブラッシングを続けても出血があるようなら、すぐに歯科医に相談してください。
●口臭

虫歯に食べかすが詰まって腐敗した臭いと歯周病の場合の口臭は違いますが、口臭はなかなか本人は気がつかないもの。歯周病の臭いの原因は、歯と歯茎の境に付着した細菌が歯に沿って根の方に侵入し、そこで繁殖して臭いを発します。周囲の人に注意されたらすぐに歯科医に相談してください。
●歯がグラグラする

歯周病が進行すると歯を支えている組織が壊れるので、歯がグラグラしてきます。しかし、相当ひどくなるまで気がつかない場合が多く、舌の先で触って動くのを感じるようになったときは、すでに手遅れです。
 初期の歯周病をチェックするには、親指と人差し指で歯をつまみ、ゆすってみて動きを感じるようでしたら要注意として、歯科医に相談しましょう。何かものを噛んだときにたよりない感じがしたときも危険な兆候です。

   
歯周病の治療
   歯周病の初期であれば、まず歯科医で溜まった歯石を取り除いて、ブラッシングを毎日丁寧におこなっていれば改善されていきます。その後は定期的に歯科医に歯石の除去をしてもらい歯周ポケットの深さなどをチェックし、加齢とともに増すリスクに対処するようにしましょう。

進行した歯周病で、歯槽膿漏になると治療もたいへんです。歯周病の進行で深くなった歯周ポケットからは、スケーリングという器具を使った治療だけでは奥深くの歯石が取り除けなくなります。そこで、歯茎を切開して奥深くの歯石や感染歯質を除去したり、溶けた骨を回復するための処置を行う歯周外科治療が必要になることもあります。

さらに歯周病が進行して、歯槽骨の大部分が溶けてしまい回復の見込みがない状態になると、他の歯や骨に悪影響を及ぼす恐れがあるため、抜歯しなければなりません。

高齢者が歯を失う原因として最も多いのは、この重度の歯槽膿漏によるものです。

   
歯周病の予防
   予防のために最も大切なのは、歯磨きです。しかし、単にブラッシングをすれば良いというものではありません。最近でもたまに見かけるのは、大きめの歯ブラシに歯磨き粉をたっぷり付けてゴシゴシと磨いている人。歯を磨いたという達成感はあるものの、歯や歯茎を傷つけるばかりで、歯垢の取り残しを生じてしまいます。歯垢を落とすためには、小ぶりな歯ブラシで最初は柔らかめのものを選んで、歯の一本一本に対して磨くというより細かく振動させて刺激を与えるようなイメージでブラッシングします。

歯ブラシの当て方は、歯と歯茎の間に歯ブラシを45度の角度であてて歯垢をかき出すバス法という基本的な磨き方と、歯に対して歯ブラシの全面を直角にあてて振動させるスクラッピング法などいくつかの方法があります。いずれも一度歯科医で指導を受けると理解しやすいでしょう。

前述したように、唾液は細菌の増殖を抑える働きがありますが、寝ている間は、分泌が減少します。つまり、寝ている間は菌が増殖しやすい状態にあるわけです。就寝前の歯磨きが重要なのは、そのためです。

そして、朝起きたときが、口内に最も細菌が増殖している状態になります。朝起きたらまず歯磨きをして、この細菌を体内に取り込まないようにします。
 以前は食後にすぐに歯を磨きましょうと言われていました。ところがこれが誤りだったことが分かってきました。食事をすると口内のPH値が酸性に傾きます。アルカリ性の歯の表面が、この酸によって侵されやすい状態にあるわけです。ここで歯磨きを行うと酸に溶かされた歯を削ってしまうことになります。

口内のPH値は、唾液が食後30分~1時間で中和してくれますから、歯ブラシで磨くのは、その後にしましょう。食後すぐは、水で口をすすぐ程度にしておき、唾液による歯の表面を補う再石灰化の作用の後に、歯ブラシを使うというのが正しい歯周病ケアとなります。

 

今年は過去最多の流行―マイコプラズマ肺炎(2011年12月)

 

     
 
12月のテーマ:
今年は過去最多の流行―マイコプラズマ肺炎

マイコプラズマ肺炎の患者が急増しており、今年は過去最多の水準で流行しています。最近では、天皇陛下や皇太子ご夫妻の長女、愛子さまもマイコプラズマ肺炎の感染の可能性があると報じられました。乾いた激しいせきが長く続くのが特徴で、主に飛沫で感染し、市販の薬は効かないため、専門家は注意と予防を呼び掛けています。

 
     

 

マイコプラズマ肺炎とは
 

「マイコプラズマ」とは肺炎を起こす病原菌の名前で、マイコプラズマ肺炎は、細菌の一種であるマイコプラズマによって起こる肺炎です。過去には4年ごとのオリンピックの開催年に流行していたため「オリンピック熱」とも呼ばれていましたが、最近はひんぱんに流行が見られるようになってきました。季節的には風邪の流行する初秋から冬に多発する傾向がみられます。マイコプラズマ肺炎は、肺炎球菌による肺炎とは異なる肺炎であるため“普通とは違う肺炎”という意味で「非定型肺炎」とも呼ばれます。潜伏期間は10日~14日ほどで子供や比較的若い人が多くかかり、風邪と似た症状で重症化することがあまりないため、見過ごされてしまいがちです。

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マイコプラズマ肺炎の症状
 

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マイコプラズマ肺炎の症状は、激しいせき、発熱、頭痛、倦怠(けんたい)感などです。たんの出ない乾いたせきが長く激しく続きます。、肺炎とともに、咽頭炎、気管支炎、耳痛をともなうこともあります。38度以上の高熱も伴いますが、重症化することはあまりありません。1~2週間くらいの通院と投薬で良くなることがほとんどです。ただまれに、心筋炎や髄膜炎などを併発することもありますので注意が必要です。

   
マイコプラズマ肺炎の原因
 

マイコプラズマ肺炎の原因になる「マイコプラズマ」とは、マイコプラズマ・ニューモニエという、ウイルスと細菌の中間ほどの大きさの微生物の名称です。細菌濾過器を通過し、細胞壁が無いために、呼吸器系のウィルスで唯一ヒトに対して病原性があるという特徴があります。主に「飛沫感染」で、くしゃみやせきで飛び散った飛沫を吸い込んでしまうと感染します。インフルエンザのような広い地域での流行ではなく、狭い地域・集団での流行するのが一つの特徴です。幼稚園、保育所、学校などで流行することが多いので、流行している時期に子どもにせきや発熱などの症状がみられたら、早めに呼吸器科や小児科を受診してください。

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マイコプラズマ肺炎の治療と予防
 

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マイコプラズマ肺炎は予防ワクチンがなく、通常用いられる抗生物質では効き目が無いため、マクロライド系の抗生物質で治療を行います。有効な治療法は通院して十分な睡眠と休養を取ることが一番の治療です。

予防は外出後は必ず手洗いとうがいをしましょう。マスクの着用も有効です。子供が幼稚園や学校で感染してくる例が多いので、特にこの季節はお子さんの感染防止を心掛けてください。

 

高齢者以外も気をつけたい「骨粗しょう症」(2012年12月)

 

     
 
12月のテーマ:
高齢者以外も気をつけたい「骨粗しょう症」

 「骨粗しょう症」と聞くと、老人の病気だと思う人が多いかもしれません。しかし、普段から日常的に運動をしている働き盛りの人でも、ある一定の条件下では、「骨粗しょう症」を発生する可能性があります。

今年50歳になるAさんは、学生時代は登山に夢中になり、30代では自転車競技、40代ではマスターズ水泳大会に出場するほど水泳にのめり込むスポーツ愛好家で、健康には自信満々でした。ところがある日、路地から急に出てきた車をよけようとして身体を捻ったときに、股関節に痛みを感じ、その後あまりの痛みに耐えかねて整形外科で診断してもらうと、大腿骨の最も太い骨が亀裂骨折を起こしていたのです。

医者によると高齢者が「骨粗しょう症」が原因で起こす大腿骨頸部の骨折と同様だとのこと。Aさんは日頃運動もして健康なはずの自分が高齢者と同じ症状だと言われて驚いてしまいました。なぜこんなことが起きるのでしょう。

今回は、他人事ではない「骨粗しょう症」について、その発生原因と予防法について紹介します。

 
     

 

「骨粗しょう症」とは
   骨は、カルシウムやコラーゲンなどの繊維によって構成されていますが、この構成比は変わらなくても絶対量が不足し、骨の微細構造が劣化した状態を「骨粗しょう症」といいます。初期の症状は、背骨や腰の痛みを感じる程度ですが、進行すると骨がつぶれてきて背中や腰が丸くなってきます。

骨密度の基準値は、骨密度がピークを迎える20歳から44歳までの間の平均値を取り、その基準値から80%以下を「骨減少域」、70%以下を「骨粗しょう症」と判断します。男女ともに生理現象として、自然に骨量は減少してきますが、女性は閉経を境に減少量が増加し、60歳代で約3割、80歳代では約6割の人が発症すると言われています。

一般的に「骨粗しょう症」の原因、または危険因子とされるものは、加齢、性別、早期の閉経、やせた体格、薬物による影響、運動不足、カルシウム摂取不足、ビタミンDの摂取不足、喫煙、アルコールの過剰摂取、偏食等があげられます。

しかし、Aさんの場合は、多少アルコール摂取量が多いという程度でこうした例にはあてはまりませんでした。もう少し、要因について掘り下げてみましょう。

   
代謝による骨量の低下
   様々な栄養素は、身体の中に取り込まれ、必要な箇所で利用された後、不要となったものは排泄されるという「代謝」が行われます。カルシウムも同様で、身体に取り込まれ硬い骨としての役割を果たし、また身体の外に排出されることを「カルシウム代謝」といいます。このカルシウム代謝が激しいスポーツやある種の薬物により過剰に促進されることがあります。良く知られる薬剤でステロイドというホルモン剤もこれにあたります。ステロイドは抗炎症剤として効果的な薬ですが、その利用には注意が必要で、常用すると1年程で骨量が著しく減少するとされています。どうしてもステロイドを使わなければならない場合、カルシウムとビタミンDを補給して副作用を押さえる必要があります。

また、骨折してギプスで固定すると1日に1~2%の筋力低下とともに骨量の低下も起こります。宇宙飛行士が無重力の環境で、1日あたり200mgのカルシウムが骨から失われるというのも骨に刺激を与えないという同様の要因からと考えられます。初期の宇宙飛行士は、このため地球に帰還すると筋力と骨量の低下でまず立って歩けないという状況になっていました。骨に刺激のない無重力の環境では、身体が骨のカルシウムを不要なものとして、代謝してしまったわけです。

逆に、骨に加重による力が加わるとその骨はストレスで変形します。変形の割合が一定の範囲を超えたとき、骨はそのストレスに負けまいとして骨量を増やします。骨の量が増えてそのストレスによる変形の割合が一定範囲内に収まるまで、骨は強くなり続けるという性質があるのです。
 これにあてはめると、Aさんは、あまり骨に体重や重力での刺激のない水泳を、それも激しいトレーニングメニューで何年も続けた結果、代謝により骨量を減らしてしまったということも考えられます。日常、歩く距離より泳ぐ距離の方が長いというオリンピック選手のような生活は、一方で骨量の低下に気をつけなければならないかもしれません。骨量を保つためには、水泳だけでなくウォーキングや軽いジョギングで骨に刺激を与える運動の併用が必要だということになります。同時にカルシウムだけでなく、タンパク質やビタミンDなどを含んだ食べ物を積極的に摂るようにすることが大切です。

   
転んで骨を折らないために
   高齢者の約3割が年間に1回以上転倒を経験するというデータがあります。その数%が骨折を起こしていると考えられ、その2割以上が、大腿骨頸部骨折だとされます。

Aさんは、幸い50歳という比較的若い年齢だったため、1ヶ月安静にし、食事と投薬で骨は元通りに回復しましたが、高齢者の場合、治療に時間がかかる場合もあり、そのまま寝たきりになってしまうケースも少なくありません。

「骨粗しょう症」の予防のためには、骨量を増やす目的ばかりでなく、できるだけ転倒しないような身体作りも大切になってきます。転倒は、バランスを崩したときに起こりますので、バランスを保つための反射神経に連動する筋力をつけましょう。

   
正しいスクワット
   どこでも簡単にできるスクワットで、身体の重量を十分に支えることができる筋力を養います。

肩幅より少し広く足を開き、足先を外側に開いて立ちます。手を腰か太ももに置いて、息を吸いながらお尻を突き出すようにして太ももが床と平行になるようにしゃがみます。大切なのはこのとき背筋を伸ばしておこなうこと。息を吐きながらゆっくりと立ち上がり、膝が伸びきらないところで止まって、またしゃがみます。

膝を伸ばしきると膝の負担が大きくなるのと筋肉に対するトレーニング効果が少なくなるので、必ず膝を伸ばしきらずに続けてゆっくりしゃがみます。これを無理のない回数行い、毎日継続するようにしましょう。

 

禁煙のすすめ。(2012年11月)

 

     
 
11月のテーマ:
禁煙のすすめ。

 健康増進法によって、分煙をとり入れる飲食店が増えています。ある飲食店の店長さんによると入店したお客様の顔を見るだけで、喫煙者かどうかすぐに分かるといいます。どんなところで? と問うと全体の印象で分かるといいます。接客業は毎日たくさんの人の顔を見続けているので、瞬間的にその人の好みや性格を読み取る勘が身につくのかもしれません。

しかし、長く喫煙を続けている人は勘の良い人ばかりか、誰にでも分かるような特徴が現れてくるものです。スモーカーズフェイスといいますが、喫煙を続けていると皮膚のハリがなくなり、目尻や口周りなどにしわが増え、いわゆる老け顔になってきます。さらに歯がヤニによって着色され、口臭の発生や白髪、脱毛も起きてきます。

初対面の人は、第一印象が大切だといわれます。この印象が決まるのに6秒から7秒。仕事などでは最初に好感を持たれないと次はないとまでいわれます。この第一印象の決めては顔、表情だそうです。喫煙によるスモーカーズフェイスで、人生の大きな損失を被る事になるかもしれません。そうなる前に禁煙をしたいという人に今回は、禁煙の方法をご紹介します。

 
     

 

ニコチン依存症の人の禁煙法
   ニコチンの身体的依存の人は、喫煙が途絶えてニコチンの血中濃度が下がってくると、集中力が低下し、イライラするようになります。さらに頭痛、倦怠感、肩こりや歯が浮くという症状を起こす人もいます。一般的に禁煙後2~3日目が最もつらい症状となり、1週間程で軽くなってきます。この時期に、我慢できなくなって禁煙に失敗するという経験を繰り返す人も多いことでしょう。タバコがやめられないということが、意志が弱い証拠だと思い込んでしまったりする人もいますが、実はタバコには麻薬にも劣らない強い依存性があるのです。麻薬依存への対処は、治療の対象になることはよく知られています。しかし、タバコも同様だと考えた方が、禁煙の近道になるのです。

タバコをやめるために、徐々に吸う本数を減らしたり、低ニコチンの銘柄に変えても、なかなかうまくいかないのはこの強い依存性のためです。タバコの本数を減らしたり、低ニコチンの銘柄に変えた場合でも、一本のタバコをより深く吸い込んだり、根元まで吸う事で結果としてニコチンの摂取量があまり変わらないばかりか、喫煙間隔を空けることでタバコがより美味しく感じられ、依存を強くしてしまう可能性もあります。

こうした強い依存症の場合、ニコチンを喫煙以外の方法で身体に取り入れ、ニコチンの量を徐々に減らしていくという方法があります。ニコチン代替療法と呼ばれるもので、ニコチンガムやニコチンパッチというものが一般的に使われています。次にそれぞれについてご紹介します。

 
ニコチンガム
 

 ニコチンガムはガムのように噛むとニコチンが口の粘膜から吸収されるもので、タバコを20本以上吸っていた人は、一日にこのガムを6~9個用います。一つを15分程度かけてゆっくり噛むとニコチンが体内にゆっくりと吸収されます。ガムの個数を徐々に減らしていって最終的にニコチンの摂取がなくても、禁断症状があらわれないように身体をコントロールして、禁煙を行います。ガムにはタバコをやめた口寂しさを紛らわせてくれるという利点もあります。

ニコチンパッチ
   ニコチンパッチは、一日一枚ニコチンの入ったパッチを皮膚に貼ってニコチンを皮膚から吸収させるというものです。気をつけなければいけないのは、この治療を行っているときに、タバコを吸うと大量のニコチンを接種する事になり、中毒症状を起こす危険があります。そのため現在薬局では、処方箋がないと買えないようになっています。

その他の方法

 

 肌が弱いためにニコチンパッチが使用できない場合は、禁煙によるイライラを軽減するとともに、タバコを美味しく感じさせない効果のあるニコチンを含まない飲み薬を飲むという方法もあります。1日2回食後に服用します。飲み始めの一週間はタバコを吸いながら服用し、8日目から禁煙を開始するというもので、タバコが心底嫌いになる効果が期待できます。服用期間は12週間となっています。

このように禁煙を本気で行いたいというのであれば、禁煙外来で適切な治療と指導を受けるというのが、もっとも成功率の高い方法です。治療には健康保険が適用されます。ただし、以下の4つの要件を満たしていると医師が診断した場合に限られます。

◇ニコチン依存症を診断するテストで5点以上の評価を受ける。

◇1日の平均喫煙本数に、これまでの喫煙年数を掛けたものが200を超える。

◇1ヶ月以内に禁煙を始めたいと思っている。

◇禁煙治療を受ける事に文書で同意する。

また、以前健康保険で禁煙治療を受けた人は、前回の治療の初回診察日から1年以上経過していない場合は、自由診療になります。

   
   禁煙すると人は太ります。タバコは大人のオシャブリと言った人がいますが、確かに口寂しくてついつい間食をしてしまったりして、カロリーオーバーになりがちです。人によっては、まるで舌の薄皮が何枚も剥がれるようにそれまで感じなかった味が分かるようになり、食べ物がとても美味しく感じられるようになったりするようです。でもそれは、幸せなことではないでしょうか。一時的に体重が増えたとしても、今度は運動で息切れがしないようになります。適度な運動を楽しむことで、健康な身体を手に入れるチャンスが増えるわけですから、禁煙の向こうには今まで感じた事のなかった幸せが待っているかもしれません。

 

運動には最適の季節です。でも、気をつけなくてはいけないことも。(2012年10月)

 

     
 
10月のテーマ:
運動には最適の季節です。でも、気をつけなくてはいけないことも。

猛暑の夏も終わり、やっと秋らしい風が吹いてきました。あまりの暑さで、夏の間動かすことをしていなかった身体を、思う存分鍛えるのにはもってこいの季節です。しかし、その前にすこし自分の身体がどうなっているかを確認してみましょう。夏の間、油分や糖分、そして塩分の多い食べ物を摂り過ぎて、血圧が上がったり、太ったと感じてはいませんか?

生活習慣病の予備軍にならないためには、とにかく食事と運動は大切です。でも、やみくもにダイエットをしたり、いきなり負荷の高い運動をすると、思わぬ故障を起こしてしまうことにもなりかねません。良かれと思っても、立ち直るのに時間がかかってしまっては、せっかくの努力が水の泡です。そこで今回は、スポーツの秋に運動を始めるときに気をつけておきたい事を紹介します。

 
     

 

運動で身体を整えるために
 

1.十分な休養時間

2.効果的な栄養補給

3.必要なボディケア

運動を行うと、身体には負荷がかかり疲労が残ります。その疲労が身体にメッセージを送り、身体が回復するためのシステムを動かすことになります。そのバランスを上手にとっておかなければ、どこかに問題が発生してしまいます。運動で身体を鍛え、そして体調を整えるためにこの3項目を意識しておきましょう。

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1. 休養に関して
 

毎日続けて運動をするよりも、1日運動したら、2日から3日休んでまた運動をした方が、運動の効果が得られやすいという生理的な現象があります。休養をとらずに、あせって運動を毎日続けると、疲労が筋肉や関節に蓄積されて故障や怪我の原因になることも多々あります。特に、運動する習慣から離れて久しい人は、あせらずに疲労回復を待ってから運動しましょう。特に若い頃、運動部に所属して筋肉の痛みに耐えて頑張って強くなったという経験のある人は、どうしても無理をしがちです。身体に鞭打ち痛みに勝つことで、最大の運動効果を得られるという思い込みは危険です。

2. 効果的な栄養補給
 
自然界で生きる野生動物の食事をイメージすると分かりやすいものがあります。野生動物は、食べ物を煮たり焼いたりせず生で食べます。生息域に近い所にいるものを捕らえて食べます。そのとき、その場所にあるもの、いわゆる旬のものを食べているわけです。
 人間は、食べ物を安全に、そして美味しく食べるために、材料を煮炊きすることを覚えました。新鮮でない食物もこうすれば、食べる事ができるわけです。しかし、生の食材がもっている消化酵素は、加熱調理によって不活性化されるものもあります。つまり加熱調理した食べた物を消化するのには、自分の体内にある消化酵素を大量に使う事につながり体力を消耗します。たくさん食べ過ぎて「疲れた」と感じることはありませんか?それにはこのような理由があります。食後に横になると牛になると子供の頃に言われたりしたものですが、実は食事の後に身体を動かさずにじっとしていることは、消化を助けるためには大切なことなのです。そして身近なところで採れるできるだけ新鮮な食物を、火を使わずに調理することは身体に負担をかけずに効果的に栄養補給をすることにもなります。 イラスト
3. 必要なボディケア
  運動の激しさや個人によって異なりますが、運動が激しければ激しいほど必要性が高まります。放っておくと怪我や疲労が慢性的な障害へと悪化してしまうことにもなります。中高年の運動ということに限定すれば、疲労や痛みが運動後に強く残る場合は、それを我慢しないということが大切です。運動後に「ああ疲れた」と感じるときは運動強度、つまり身体にかかるストレスが大きい場合があります。さらに、運動後に2日も3日も疲労が残るようでは、明らかに運動強度が高すぎますので運動後のケアが必要です。運動した後に「ああ気持ちよかった」と終えられるようならば、自分で行うストレッチでも十分にケアできます。
 

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ストレッチで、筋肉を延ばしていくとその刺激で、コラーゲンを作る「繊維芽細胞」という特別な細胞が活性化され、古いコラーゲンを壊して新しいコラーゲンに置き換えてくれるといわれます。さらに、ストレッチにより血管の筋肉も柔らかくなり、動脈硬化が改善されるということが、最近の研究で分かってきています。

ただし、痛みが永く続く場合は、自分でなんとかしようとは思わず、早めに整形外科などの専門医に相談しましょう。

  以上のことに注意して、無理をせずにスポーツの秋をおおいに満喫しましょう。

 

夏太りしていませんか?(2012年9月)

 

     
 
9月のテーマ:
夏太りしていませんか?

一昔前は「夏やせ」に注意しようと言われましたが、猛暑が続く近年、気をつけなければならないのは「夏太り」のようです。日中だけでなく夜になっても汗だくになってしまう毎日。汗をかくと、運動をしたのと同じにエネルギーを消費しているような気になってしまいます。これが実は落とし穴です。体温を下げるための発汗はさほどエネルギーを使いません。汗をかいたことで夏バテを恐れ、脂っこいものばかりを食べ過ぎると、成人病のリスクのある内臓脂肪が増えてしまいます。

 
     

 

夏太りの原因とは
 
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夏太りには、いくつかの典型的な原因があります。一つは先にあげた発汗によるエネルギー消失を過大に意識しての過食。夏バテを予防しようと、土用の丑の日に鰻を食べる習慣が古くからあるように、鰻や焼き肉など、こってりした栄養価の高いものでスタミナをつけようと考えてしまいがちです。発汗で失いがちなビタミンB1を多く含む鰻や豚肉をとることは確かに大切ですが、油分の多い食物のとり過ぎは夏太りに直結します。高カロリーの食べ物が食卓にならぶことの少なかった時代はともかく、現代の夏バテは栄養不足より、冷たいものの飲み過ぎやクーラーによる冷え、ソーメンや冷やし中華などの麺類に偏った食事に原因がある場合が多いのです。

冷たい飲み物のとりすぎは、内蔵の働きを悪くするだけでなく、内蔵そのものを冷やすため、その冷えに対抗しようと身体は内蔵の周りに脂肪をつけて冷えから守ろうとします。夏太りの場合、皮下脂肪よりも内臓脂肪の増加が目立つのもこの身体の働きが関係しているといわれます。また麺類は、あまり噛むことをせずに食べられるので、噛むことによる満腹感が乏しく、ついつい食べ過ぎてしまう傾向にあります、ご存知のように麺類などの炭水化物は、とりすぎれば体脂肪として蓄積されます。しかも、炭水化物に偏った食事では、発汗で失ったビタミンやミネラルの補給が十分にできません。ビタミンやミネラルは脂肪の燃焼に不可欠なため、これが不足するとさらに体脂肪がエネルギーとして利用されずに身体に留まることになります。

発汗で失われるカリウムも夏太りに関係します。カリウムが不足すると身体に「むくみ」が生じやすくなるのです。暑いからといって冷たい飲み物を大量にとり、冷房の効いた部屋であまり動かない生活をしていれば、全身がむくんで短期間で体重の急増をもたらすことになります。

また、もともとしなやかで弾力のある動脈が高い血圧を受け続けると、動脈の壁が傷ついて固くなります。これが動脈硬化で主に細い動脈で起こるため細動脈硬化と呼ばれます。血管の内部に酸化したコレステロールが蓄積されて起こる粥状硬化は比較的太い動脈で起こり、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こします。

   
夏太りを解消するためには、適切な食べ物を腹八分目に
 

先にあげたように、冷たい麺類など炭水化物の過食には注意しましょう。水分補給も夕方以降は、冷たい飲み物を控え、できるだけ温かい飲み物をとるように心がけましょう。午前中は「身体から悪いものを排出する時間帯」といわれ、日が暮れると「身体に蓄える時間帯」になるとされます。水分は午前中に多めにとり、日が沈んだら少なめにすると「むくみ」対策に効果があります。

「むくみ」対策にオススメの食べ物は、きゅうり、冬瓜などのウリ科の野菜や、バナナなどのカリウムの豊富な果物。発汗とともに失いがちなビタミンB群(ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸など)も、脂肪の代謝には欠かせません。水溶性ですので、長時間水につけたり加熱しすぎる調理は避けることが大切です。これらの栄養素を多く含む食品は次のとおりですが、一度にたくさんとっても体外に排出されてしまいますので、できるだけ毎日の食事に上手に取り込むようにしてください。

○ビタミンB1

豚肉・うなぎ・たらこ・ナッツ類

○ビタミンB2

豚レバー・鶏レバー・牛レバー・うなぎ・牛乳

○ビタミンB6

かつお・まぐろ・牛レバー・さんま・バナナ

○ビタミンB12

牛レバー・鶏レバー・カキ・さんま・あさり・にしん

○ナイアシン

たらこ・かつお・レバー類・びんながまぐろ・落花生

○パントテン酸

レバー類・鶏もも肉・にじます・子持ちがれい・納豆

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良い睡眠で夏太りを解消する
 
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暑くて寝苦しい夜が続くと、睡眠不足になりがちです。だからといってクーラーに頼りすぎると、夏風邪をひいたりして体調を崩してしまうことがあります。寝苦しい夏の夜に十分な睡眠をとることは大変難しいものですが、睡眠時間が短いと肥満になりやすいという研究結果も報告されています。良い睡眠をとることは、夏バテや熱中症にならないための体調管理や、夏太り対策としても有効だと考えられます。

良く眠るためには、睡眠中の身体の温度が大切です。皮膚の温度(体表面の温度)が高く、深部体温(身体の内部の温度)が低いほど眠りに入りやすいということがわかっています。子育ての経験者はご存知だと思いますが、眠くなるとあかちゃんの手は温かくなります。これは、体表面から熱を放散して、身体の内部の温度を下げる働きによるものです。

深部体温を下げる方法には、寝る前にぬるま湯につかるのがおすすめです。あまり長時間入ってはいけませんが、手足の表面を温める程度にぬるま湯に入ると、手足の末梢血管が拡張して、表面からの放散熱が増え、深部体温を下げる効果がありあす。また、夕方に軽い運動をして皮膚から熱の放散をすると同じように深部体温を下げることができます。

深部体温を下げると良く眠れるというのは、昼間働いている脳の疲労を回復させるために、脳の温度を下げ休ませるためと考えられます。枕につけた頭の熱が気になってなかなか寝付けないとういう人は、頭を冷やすために枕を通気性の良いものに交換したり、枕用の保冷剤を利用するのも良いでしょう。

   

 

サイレントキラー、高血圧とは何か(2012年8月)

 

     
 
8月のテーマ:
サイレントキラー、高血圧とは何か

高血圧は、突然致命的な症状をもたらすことがあります。しかし、そうなるまでまったく自覚症状がないことも多く、サイレントキラーと言われることがあります。血液には酸素や栄養素など、身体に必要な物質が溶け込んで、血管を経由して体中をくまなく巡って取り込まれていきます。血液は重力によって高いところから低いところには容易に流れますが、どうしても心臓より高い頭などには流れにくいわけです。そこで心臓は圧力をかけて血液を送り出します。この圧力が基準値より高い状態を高血圧と呼びます。

 
     

 

血圧はなぜ上がるか
 
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血圧は、心臓から排出される血液の量とその血液の流れに逆らう末梢血管の抵抗によって決定づけられています。心拍数は自律神経によってコントロールされますが、同時に血管の拡張と収縮もコントロールされています。交感神経が緊張すると、それに伴い心拍出量(心臓が1分間に送り出す血液量)が増えて末梢の血管は収縮し、血圧が上がることになります。逆に交感神経が弛緩すると、緊張とは逆の動きになり血圧は下がるといった具合に、交感神経は血圧と密接に関連しています。

また、もともとしなやかで弾力のある動脈が高い血圧を受け続けると、動脈の壁が傷ついて固くなります。これが動脈硬化で主に細い動脈で起こるため細動脈硬化と呼ばれます。血管の内部に酸化したコレステロールが蓄積されて起こる粥状硬化は比較的太い動脈で起こり、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こします。

   
血圧の正常値は?
 

血圧の値は心臓が収縮して血液を送り出すときに最も高くなり(最高血圧)、心臓が収縮した後、拡張するときに最も低く(最低血圧)なります。この最高血圧と最低血圧の国際的な基準による正常値が、収縮期(最高血圧)130mmHg未満、または拡張期(最低血圧)85mmHg未満といわれています。

血圧測定を自宅で行うと病院などで計るよりもリラックスしているため、より下がった測定結果がでる傾向にあります。そこで家庭血圧の正常な血圧値は、収縮期(最高血圧)125mmHg未満、または拡張期(最低血圧)80mmHg未満とされています。

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高血圧の二つのタイプ
 

明らかな原因があって高血圧になるタイプを「二次性高血圧」といい、原因を特定できないタイプを「本態性高血圧」といいます。日本人に多いのは「本態性高血圧」で、高血圧の約90%の方がこれにあたります。この「本態性高血圧」の発症にはいくつかの遺伝子が関係し、さらに高血圧の合併症として恐れられる脳卒中は、高血圧で脳卒中遺伝子のある人が発症するとされています。

高血圧は遺伝子の影響と生活習慣が複雑にからんで発症すると考えられ、二つの因子が関与する割合は同程度とされています。従って、高血圧の遺伝子があっても生活習慣を改善すれば、正常値を保つことが可能です。  また、特定の病気のせいで発症する「二次性高血圧」は、その原因となる主な病気として腎臓の異常によって起こる腎性高血圧、腎動脈の狭窄や閉塞で起こる「腎血管性高血圧」があります。

   
血圧はなぜ上がるか
 

血圧は、心臓から排出される血液の量とその血液の流れに逆らう末梢血管の抵抗によって決定づけられています。心拍数は自律神経によってコントロールされますが、同時に血管の拡張と収縮もコントロールしています。交感神経が緊張すると、それに伴い心拍出量(心臓が1分間に送り出す血液量)が増えて末梢の血管は収縮し、血圧が上がることになります。逆に交感神経が弛緩すると、緊張とは逆の動きになり血圧は下がるといった具合に、交感神経は血圧と密接に関連しています。

また、もともとしなやかで弾力のある動脈が高い血圧を受け続けると、動脈の壁が傷ついて固くなります。これが動脈硬化で主に細い動脈で起こるため細動脈硬化と呼ばれますが、血管の内部に酸化したコレステロールが蓄積されて起こる粥状硬化は比較的太い動脈で起こり、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こします。

   
改善したい生活習慣
  遺伝的な要因に、以下のような生活習慣が重なると高血圧のリスクが高まりますので注意しましょう。
 
塩分の過剰摂取
過食と肥満
アルコールの過剰摂取
タバコの喫煙
カルシウム、カリウムの摂取不足
ストレスと運動不足
   
本態性高血圧の二つのタイプ
 

本態性高血圧には、「パンパン型」と「ギュウギュウ型」という異なるタイプがあるといわれています。「パンパン型」は、血管が内側から膨らむことによって起こる高血圧で、一方「ギュウギュウ型」はホルモンの影響で外側からギュウっと圧迫されるために起こるといわれます。先にあげた塩分の過剰摂取が血圧に影響するのは「パンパン型」と呼ばれるタイプです。高血圧の70%がこの形だといわれます。

大切なのは高血圧になったら、まず医療機関で何らかの病気による二次性高血圧でないか、診断してもらうこと。正しい治療はそこから始まります。

   
生活習慣を見直し、まず無理のない生活改善を
 
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 運動不足を解消しようと、いきなり毎朝5キロ走ろうとか、それまでの生活にないものを急に計画するのは、かえって危険です。足や腰に故障を起こして新たな問題を抱えてしまうことにもなりかねません。電車通勤の人は、なるべく階段を利用するといった普段の心がけでできることから始めると良いでしょう。

過食と肥満に関しては、興味深いデータがあります。肥満体質の人は、減量によって確実に減圧できるといわれます。それは1キロ減量すると血圧が4mmHg減圧できるというもの。5キロ減量できれば20mmHg血圧が下がるとされています。あせらずに半年、1年かけるつもりで体重を少しずつ落としましょう。

その他では、まずタバコ。これは無理であろうとなかろうと絶対にやめてください。タバコを一服吸うと血圧が20mmHg上がるとされています。ニコチンが体に入ると血管がギュッと収縮して血圧を押し上げるのです。副流煙によってタバコを吸わない人も同じ害を受けているということになります。

お酒は、ほどほどにしましょう。ほどほどの酒は血圧を下げるといわれていますが、飲み過ぎは逆に上がってしまいます。適量は、ビールなら500cc、日本酒は1合、焼酎なら水割り2杯。ワインならグラス2杯程度です。気にして欲しいのは、お酒のおつまみ。習慣でどうしても塩分の高いものを摂ってしまいがちになります。おすすめなのは食材そのものに減圧効果があるとされる枝豆。市販のものは塩分が多めなので、さっと茹でて塩抜きするぐらいで、塩加減も丁度良くなります。

 

ブームの中高年登山で気を付けたい健康のポイント(2012年7月)

 

     
 
7月のテーマ:
ブームの中高年登山で気を付けたい健康のポイント

3000メートル級の山々の残雪も消え、いよいよ本格的な夏山シーズン。ここ数年、中高年を中心とした登山愛好者は増える傾向にあるようです。夏に、登山デビューを予定している人も多いことでしょう。なぜ山に登るのかと聞かれて「そこに山があるから」と答えたイギリスの偉大な登山家マロリーは、果たしてエベレスト初登頂を成功させたのかという謎を残したまま、帰らぬ人となってしまいました。

なぜ山に登るのか、この同じ問いに「健康のため」と答える中高年登山者は多いのではないでしょうか。確かに多くの登山者は山で鋭気を養い、元気と健康を伴って下山してくることでしょう。しかし、一方で山岳遭難者数も増加しています。平成13年以降40歳以上の遭難者数は一貫して増加傾向にあり、全遭難者の8割り前後を占めているといわれます。登山も安全に長続きさせてこそ健康のためと言えます。そのためは日頃の身体作りは大切です。今回は山に行く前に知っておきたいいくつかのポイントを紹介します。

 
     

 

なぜ登山をすると健康になるのか
 
イラスト 長い上り坂を荷物を担いで数時間。目的地までの道のりは、特に中高年の身体に良いとされる有酸素運動の連続です。予定のルートをたどって目的地に到達するまで、水泳やジョギング、自転車といった他の有酸素運動と比べてはるかに長時間運動し続けることになります。

しかも、1000メートルを超える高度に達する登山であれば、マラソンランナーなどの一流選手が取り入れることで話題になる「高地トレーニング」と同じ条件下での運動になります。高地トレーニングは標高1000メートル以上の空気中の酸素の薄い環境で行い、身体が低酸素状態を回復しようとして、呼吸循環の機能を高めようとする働きを利用します。空気の薄い標高では、普通に呼吸していては苦しいので、より多くの酸素を効率よく取り入れられるよう呼吸機能が高まります。同時により多くの血液を全身に送り出せるよう循環機能も高まり、酸素を運ぶ赤血球やヘモグロビンも増産されます。この状態は平地に下りてもしばらくは保たれるため、運動競技で利用されるわけです。登山をすると疲れにくい身体になると感じるのは、この高地トレーニングの効果によるものと考えられます。

また、脳や心に及ぼす効果もあります。足元の岩や斜面に集中しながら無心にリズミカルに運動することで、悩みから開放されて心が健康になったと感じる人も多いことでしょう。美しい山々を望みながら稜線を歩く爽快感、楽しさは他では得難いものです。次の山行を心の支えに仕事を頑張ろうという人もいるに違いありません。

 
まず足元が大切
  こうした登山の優れた面は、事故もなく健康な身体で下山してきて初めて生かされるものです。登山の事故で最も多いのは、下り道での転倒、滑落、転落です。足腰の弱っている人がいきなり山に登れば疲労で下山中に怪我をしやすくなります。日頃運動をしていない人が運動のためとして、いきなり山に行くのは無謀と言う他ありません。まず準備として「足作り」をしましよう。
 

まず登山用の靴を用意します。専門店で足首まできちんと固定できるものを選んでください。山道で浮き石などを踏んだとき、石が動いて捻挫することを防ぎ、また堅い木の根や岩の先端を踏んでいけるので、疲労を軽減することができます。靴を手に入れたら、この靴でウォーキング。足と靴を馴染ませ、タウンシューズより重量のある靴で歩くため、足首などの小さな筋肉を鍛えられます。スクワットなどで大きな股の筋肉を鍛える前に、まず空荷で歩き小さな筋肉を鍛え、同時にストレッチで柔軟性を高めます。平地ではただの捻挫でも、山では遭難に繋がります。くれぐれも買ったばかりの靴でいきなり山に行くのは止めましょう。平地のように靴擦れで痛い思いをするだけでは済みません。

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  また、登山予定日の1ヶ月程前から、軽いジョギングなどを週3回程度行うようにすると山に入ったときに、登りをより楽しめるようになります。何人かのパーティで山に入ったときに一人だけ苦しくて下を向いてばかりいては、楽しさも半減してしまいます。
呼吸を楽に
 

 山道を登り始めて思うのは、登山は息切れのするスポーツだということでしょう。足の運びに呼吸を合わせるようにするとだいぶ楽になりますが、酸素の薄い山での呼吸を、胸郭を広げる胸式呼吸で行おうとすると大きな筋肉のエネルギーが必要になります。そこで、比較的少ないエネルギーで横隔膜を動かして呼吸する腹式呼吸を意識的に行うようにします。よく声楽の人が練習で行うように、息を吐きながら手の平でお腹を押し、息を吸いながらその手をお腹で押し出すように練習すると良いでしょう。仰向けになってお腹の上に重い辞書などを乗せ、それを呼吸と共に上下させるようにするとより効果的な練習ができます。

また、息を吸うときは鼻から。吐くときは少し口をすぼめるか唇の上下に少し力を入れて抵抗をつけながらゆっくり吐くようにします。こうすると吸気のとき山の冷たい空気が鼻の中で加湿・保温されて身体の負担が軽減されます。呼気のときは、肺に空気を残さずゆっくりと息を吐ききることができるので効率よく酸素を取り込むことができます。筋肉内が酸素不足になると乳酸がたまり筋肉疲労を促進します。薄い空気の中で少しでも上手に酸素を吸い身体の疲労を軽減することが、下りでの思わぬ事故を防ぐためにも大切です。

自分のペースをつかむ
  自分のペースで歩きなさいと言われても、どのぐらいの早さが自分のペースなのかわからないという人も多いでしょう。目安になるのは心拍数です。アスリートが健康体を取り戻すためのエアロビック理論で知られるアメリカのマフェトン博士は、180公式という分かりやすい心拍数管理方法を提唱しています。

180から自分の年齢を引いた数を1分間の最大心拍数とし、そこから10を引いた心拍数との間で運動を行えば、最も身体に負担が少なく効率的な有酸素運動ができるというものです。例えば50歳なら180から50を引いた数、130拍を最大心拍数として、それから10を引いた120拍との間となります。日常的に運動習慣のない人は、そこからさらに10を引いた心拍数をターゲットとします。ときどき立ち止まって首か手首で15秒間脈を計り、それを4倍すると良いでしょう。ほとんどの場合、オーバーペースであることに気付くと思います。

 

山のルールとして、細い山道でのすれ違いは、登りの人を優先させて、下りの人は脇に避けて道を譲るという美風があります。このとき下山の人が立ち止まって待っていてくれていると、申し訳ない気持ちが先に立って、それまで良いペースで歩いていたところを無理に頑張って登ってしまい、呼吸を乱してしまうことになりがちです。

そこは正直に「辛いので、お先にどうぞ」と声をかけて、下山者に道を譲るのが大人の対応というものでしょう。

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身体の臭い、気になりませんか?(2012年6月)

 

     
 
6月のテーマ:
身体の臭い、気になりませんか?

もうすぐジメジメした梅雨の季節がやってきます。この時期、気温や湿度の上昇と共に、通勤や通学時の電車内、職場やエレベーターなどの閉ざされた空間で気になりだすのが、身体から発せられる様々な臭いです。臭いといっても口臭、汗の臭い、頭の臭い、加齢臭など様々な種類があります。中には病気が原因で発生する臭いもありますので、気をつけなければなりません。今回は、様々な臭いの原因と、その対策を紹介します。

 
     

 

身体の臭いはなぜ発生するのか
 

体臭は身体の色々なところから発生しますが、「HLA」という遺伝子が関わっているため個人差もあります。発生する部位も「口」「脇の下」「頭」「生殖器」「足」「耳」など様々です。一般的に体臭と呼ばれるものは「汗」をかくことで発生します。人の皮膚には皮脂を分泌する穴と、汗を分泌する穴があります。さらに汗を出す穴には「エクリン腺」と「アポクリン腺」があります。「エクリン腺」は気化熱によって体温の調節をするためのもので、汗にはもともとは臭いはありませんが、皮脂や垢、雑菌などと混ざると臭いを発生します。「アポクリン腺」のほうは、脇の下や乳輪、外陰部などの部位にあり、汗自体に臭いがあります。

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病気が原因で発生する体臭
 

糖尿病や胃潰瘍、慢性胃炎、蓄膿症、慢性気管支炎などの影響で口臭が発生する場合があります。本人には自覚症状がない場合もありますので、ご注意ください。また、歯周病や虫歯などによる口臭は、治療が必要になります。臭いは病気のサインでもありますので、口臭が気になったり、他の人に指摘されたときは専門医による検診をお勧めします。

頭皮臭・頭髪臭
 

頭皮臭の原因としてまずあげられるのが「フケ」。フケは頭皮の角質細胞が新陳代謝によってはがれ落ちたものに皮脂の分解酸化物が一緒になったもの。本来ほとんど臭いがないのですが、「湿性フケ」になったり、頭皮にピツロスポルムという細菌が繁殖すると皮膚炎を起こしやすくなり、強い臭いが発生します。頭髪の臭いは、髪の毛の性質上周囲の臭い物質を吸収しやすいので、ニンニク料理や焼き肉などで煙を吸着して臭います。タバコの充満する職場などでも髪の毛に不快な臭いがついてしまうことがります。刺激の少ないシャンプーを選んで洗髪しましょう。また、皮膚炎が疑われる場合は、皮膚科の検診をお勧めします。

ワキガ臭
  ワキガは先に述べた「アポクリン腺」から分泌される「脂肪、鉄分、色素、蛍光物質、尿素、アンモニア」が皮膚表面の細菌によって分解されて発生するものです。ワキガ体質とされるのは「アポクリン腺」を多くもった人です。ただし、汗くさい状態とワキガは異なります。この体質の人は一般的に次のような特徴をもっているとされます。

1.耳垢が柔らかい 2.シャツの脇の下が黄ばむ 3.脇の毛が多い 4.親がワキガ体質 5.脇の下によく汗をかく

 

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このワキガによる体臭を予防するには、まず清潔にすること。薬用の殺菌効果のある石けんを使って身体を洗い、シャツなどの下に吸湿性のあるTシャツや脇パッドなどを付け汗を吸収するようにします。また、市販の汗拭きシートなどを使ってこまめに汗を拭き取るようにすると良いでしょう。殺菌効果のある制汗スプレーなども効果的です。食事は、脂肪の多い肉類をさけ、脂肪分の少ない魚や野菜を多く摂るようにしましょう。
加齢臭
 

2000年の12月に女性の体臭成分の研究の過程で高齢者の体臭の原因の一つとして「ノネナール」が発見されました。この臭いは、発見者の土師博士らにより、加齢により体臭も変化するという概念を示す「加齢臭」と名付けられ、この10年で誰もが知る名前となったのです。統計学上、ノネナールの産生量は、閉経後の女性の方が、同世代の男性よりも多いとされます。しかし、加齢臭というと中高年男性というイメージになるのは、食生活やストレス、飲酒や喫煙、運動不足などが悪臭を強くする一因となっているからです。加齢臭の発生をできるだけ予防するためには、健康的な生活習慣を身に付けることが何よりも大切です。次に加齢臭の予防法をご紹介します。

   
食生活は和食を心がける
 

日本人はもともと西欧人に比べて体臭は強くないとされてきました。しかし食生活が欧米化し、乳製品や肉を大量に摂取するようになり、体臭が発生しやすい体質になっていると考えられます。腸が西欧人に比べて長く植物繊維の多い食べ物を消化する能力の高い日本人は、加齢臭の原因を増やさないために、和食を中心とした食生活を意識したほうが良いでしょう。

   
ストレス対策は、軽い運動でリラックス
 

ストレスを感じると活性酸素が発生し、同時に過酸化脂肪が増加します。加齢臭の原因となるノネナールは、過酸化脂肪とパルミトオレイン酸という脂肪酸が結びついてできるため、ストレスは加齢臭を強くする原因となります。日頃自分なりのストレス発散を心がけましょう。運動でストレスを発散させるためには、強度の高い運動は避け、リラックスしてできるジョギングやウォーキング、サイクリングなどがお勧め。

   
飲酒や喫煙と悪臭の関係
 

適度に嗜めばリラックス効果のある飲酒も、仕事上の付き合いなどで量を過ごせばストレスを生み、悪臭のもとになります。アルコールやタバコの喫煙は体内に活性酸素を生み、その過程で加齢臭の原因となる過酸化脂質を作り出します。また、タバコには大量のニコチンとともに活性酸素が入っているので、吸うだけで多くの活性酸素を体内に取り入れてしまうことになります。この大量の活性酸素は体内のビタミンCやビタミンEを破壊し、悪臭を生む原因となります。まず喫煙の習慣を絶ち、アルコールは適度に飲むようにしましょう。

   
女性と加齢臭
 

もともと加齢臭は、女性の体臭成分の研究から発見されたもので男性だけのものではありません。男性と同じように40歳代、人によっては30歳代から発生すると言われています。女性はもともと女性ホルモンが分泌されることでその発生が抑制されています。ところが閉経後は女性ホルモンが減り加齢臭を発生させやすくなります。また、女性ホルモンが減るとそれを補おうとして脂肪がつきやすくなり、栄養を摂りすぎて内臓脂肪が付きすぎると分解された内臓脂肪は遊離脂肪酸に変化します。この遊離脂肪酸が蓄積されると皮脂腺や汗として分泌され、それが酸化し加齢臭の原因となります。内臓脂肪を増やしすぎないように、日頃から軽い運動で適性体重を目指しましょう。

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