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まめ知識カテゴリ: 食と健康

高齢者の食事について ~高齢者の心と体の変化を知って、食事を作りましょう~(2007年6月)

 

高齢者の食事について
~高齢者の心と体の変化を知って、食事を作りましょう~

茨城県栄養士会

管理栄養士  矢代あや子

 
 
 
 
日本人の平均寿命は80歳を超え、世界一の長寿国となっています。

健康状態や食事のとりかた、体のいろいろな働きにも個人差が見られます。寝たきりを防ぎ、いつまでも健康で自立した生活が過ごせるようにお年寄りの体の特徴をよく理解して、毎日の食事作りに努めましょう。

■ お年寄りの体の特徴
  1,消化液の分泌が低下する
    唾液の分泌が減ると糖質の消化が不十分となります。さらに、噛む力が低下することで、胃への負担も大きくなります。胃液の分泌が減ると、蛋白質や脂質の消化・吸収能力が低下して、消化不良や下痢の原因となってしまいます。
    食事のポイント
     

(1)

消化吸収の良い食品(脂身の少ない肉、豆腐、魚、乳製品、卵、芋類、葉菜類等)を、バランスよくとるようにする
      (2) 良く噛んでゆっくり食べる
      (3) 暴飲、暴食をさける
         
  2,腸の働きが悪くなる
    大腸の動きが悪くなり、便秘がちになります。その他、食べる量が少なくなる事による食物繊維の不足、運動不足、水分不足なども影響する事があります。
    食事のポイント
     

(1)

欠食をさけ、1日3食をバランスよくとるようにする
      (2) 朝、目覚めにコップ1杯の水を飲んで腸を刺激する
      (3) お茶や牛乳などの水分をたっぷりとる
      (4) 食物繊維の多い食品(押し麦、玄米、ごぼう、筍、かぼちゃ、大豆、納豆、芋、海藻、果物、きのこ、こんにゃく等)を多くとりいれる
         
  3,咀嚼力(噛む力)が低下し、飲み込む力(嚥下)が弱くなる
    自分の歯の数が少なくなったり、入れ歯(義歯)の調整がうまくいかないために、噛む力が弱くなってきます。口の中の筋肉の老化現象や、脳卒中や脳梗塞の後遺症等によって、飲み込みがうまくできなくなります。

硬い食べ物を嫌がり、あまり噛まずにすぐ食べられる食材を好んで選び、食事の内容も偏るために栄養不足になる心配があります。

    食事のポイント
     

(1)

食べやすい大きさに切り、軟らかくなるまでよく煮込む
      (2) 片栗粉や市販の増粘剤をつかってとろみをつける

口の中で、食べ物がまとまり、飲み込みやすくなります

      (3) ゼラチンや寒天を使って、ゼリーやムース状に固める
      (4) 飲み込みやすい姿勢を保つ

車椅子で食事を摂るときは、腰が不安定にならないようにクッション等を添えて体勢を整えましょう

         
  4,味覚が低下する
    舌の味覚細胞が減るために、味を感じにくくなります。いつもと同じ味付けなのに「甘い」と感じてついつい醤油などをかけすぎてしまうことがあります。特に塩味の感覚低下が著しく、塩分の取りすぎになってしまいがちです。
    食事のポイント
     

(1)

旬の新鮮な食材を選ぶ
      (2) 味の濃いおかずと薄いおかずを組み合わせて作る
      (3) 香味野菜(生姜・しそ・三つ葉・ミョウガ)柑橘類を使い、味覚に刺激を与える
      (4) 昆布や鰹節、干し椎茸などのだしをきかせる
         
  5,のどの渇きを感じにくくなり、脱水症状をおこしやすい
    加齢により、基礎代謝量が減少し体の中で作られる水分(代謝水)が少なくなります。食事量が減ったり、あまりのどの渇きを感じにくくなり充分な水分の摂取ができなくなってきます。
    食事のポイント
     

(1)

お年寄りの手の届くところにいつも水分を準備しておく
      (2) 食事には汁物や水分の多いおかずを1品とりいれる
      (3) 食事以外にもお茶の時間を設け、お茶や好みの水分を補給する
      (4) 水分がむせる場合は、とろみをつけたりゼリーにして摂取する
         

 

 

 

 

ますます重要視される学校給食の役割(2007年5月)

 

ますます重要視される学校給食の役割

社団法人 茨城県栄養士会

 
 
 
 

  「給食の用意ができました」

 
「お当番さん、ごくろうさまでした」

 
「それでは、いただきますをしましょう」

 
「いただきます」

 
4月に入学した小学1年生の学校給食が始まってから1か月余り。

 
ところが、あれあれ、

 
「ぼく、野菜はダメ」

 
「魚に骨があるよ」

 
「豆はきらい、わたし食べない」

 
と子どもたちの声。箸の持ち方もあやしいようです。ごはんや汁の食器を持たなかったり、おかずやごはんを一品ずつ食べ、食べ終わるとまた次のおかずを食べるという食べ方をし、全体をまんべんなく食べることができない子もいます。食事の様子は、まさに、家庭を写す鏡です。

 
学校給食は年間約200回実施されています。1年間の食事数にしてみれば6分の1にすぎないのですが、授業日に毎日実施される日常生活に欠くことにできない食事時間ですから、給食の時間の特性を生かした給食指導を実施することが可能です。学校給食は通常、授業日の昼の時間に繰り返し行われるものですから、この時間に繰り返し給食指導をすれば、児童生徒への望ましい食習慣の育成を図ることができることはもとより、準備・会食・後かたづけなど家庭生活では培われなくなりつつある生活体験の一連の実践活動の場ともなります。

 
毎日の学校給食における実践活動を通して正しい食事のあり方や望ましい食習慣の形成をはかり、将来にわたり健康で生活することができる児童生徒を育てることが学校給食に課せられた大きな役割です。

 

 

 

脂肪をためない食生活  ――メタボリックシンドロームにならないために(2007年4月)

 

脂肪をためない食生活
 ――メタボリックシンドロームにならないために

社団法人 茨城県栄養士会

 
 
 
 

1.メタボリックシンドロームとは?

メタボリックシンドローム

腹囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上を「要注意」と規定。これに下の2項目以上が該当する場合、「メタボリックシンドローム」と診断されます。

腹囲

男性:85cm以上

女性:90cm以上

+

1.血圧

収縮期血圧:130mmHg以上

かつ(または)

拡張期血圧:85mmhg以上

2.血清脂質

中性脂肪値:150mg/dl以上

かつ(または)

HDLコレステロール値:40mg/dl未満

3.血糖

空腹時血糖値:110mg/dl以上

 脂肪が体内に過剰に蓄積された状態が肥満です。

メタボリックシンドロームのベースとなるもので、特に内臓のまわりに肥満がたまる内臓脂肪型肥満(りんご型肥満)が問題なのです。

2.あなたは大丈夫?

◇ エネルギーとりすぎていませんか

「脂っこいもの」「甘い物」好き、外食はコンビニ食、ファーストフード、過度の飲酒はエネルギー過剰の原因となります。

◇ 不規則な食生活していませんか

「朝食抜き」など欠食が多いと、活動力低下や代謝が悪くなり、エネルギーを消費しにくくなります。

「夜遅くの食事」は栄養が吸収されやすく体脂肪の蓄積につながります。

3.食事のポイント

<一日三食、規則正しく、よくかんで>

◇ 一食ごとに主食、主菜、副菜でバランスよく

  • 主菜は魚、肉、玉子、大豆製品
  • 副菜は野菜中心、一日350g以上を植物繊維をたっぷりと・・・芋類、豆類、きのこ、海草もかかさずに

◇ 脂肪は質も考えて、一日大さじ1~2杯、植物油を中心に

  • 動物性脂肪(肉の脂身、バター、外食のカツなど)は体内でコレステロールをを蓄積します。

◇ 甘い菓子、飲料、アルコールは控えましょう

  • 中性脂肪の材料やインシュリンの作用にも影響があります。できることから、さあ実行、そして続けましょう。
 

 

 

旬の食材を食べよう!!(2007年3月)

 

旬の食材を食べよう!!

社団法人 茨城県栄養士会

武石 愛子 
 
 
 

 最近、旬がなくなったといわれます。

ある時期にしか食べられなかった食材が、野菜作りの多様化、又、養殖・輸送・冷凍技術の発達で季節を問わず、いろいろな種類の食品が手に入り「旬」を感じられなくなった様な気がします。

しかし、野菜・果物・魚介も自然のものがある以上、旬があります。

1.旬って?

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旬とは、その食べものがいちばん多くとれる時期であり、いちばんおいしい時期でもあります。

そして、安価で栄養価が高くもっとも味のよい時期です。

旬の素材を食べることが、本当に健康で豊かな食卓といえます。

2.春の旬

ここで春の食材を紹介しましょう!!

春の旬やはり「旬」と言えば

野菜・果物でいえば路地ものが出回るとき。
   果物は食べごろがあり、完熟していなければ鮮度が良くても美味しさを味わえません。

価格でなく美味しい時期が基準です。

魚介類では、水揚げ量がピークを迎えたとき。
   
魚介類に関しては、美味と感じるのは、当然脂ののった時期、産卵期前の時です。

春に産卵するものは冬が旬、秋に産卵するものは、夏が旬と言えます。

3.春の食材「たけのこ」

竹の子春の旬といえばやはり「筍」ですね。

ここで「筍」について少し紹介します。

・栄養と健康物質

ビタミンC・B2とカリウムをわずかに含みます。

カリウムは体内のナトリウムを排泄してくれるので高血圧に効果があります。

又、食物繊維が多く便秘や大腸がん予防ができます。

・食べ方のヒント

わかめと一緒に煮る「若竹煮」や「木の芽和え」は春の訪れを告げる料理です。

先端の柔らかい部分は「筍ご飯」・柔らかい皮(姫皮)は「お吸い物」に。

「食べ合わせ」レシピ紹介

《五目スープ》 

食物繊維+油脂(ごま油)+水分(スープ)=便秘

食物繊維を摂って腸壁を刺激し大腸の運動を活発に!

油脂不足・水分不足も便秘の原因となるので、油脂・水分補給!

材料   作り方
・鶏肉 100g
(酒・醤油・生姜汁)
・木くらげ 5g
・春雨 15g
・筍 50g
・人参 1/3本
・白菜 2枚
・絹さや 20g
・ごま油 大2
・スープ 5カップ
・塩 大1/2
・醤油 小2
・コショウ 少々
  ① 鶏肉は細く切り、酒・醤油・生姜汁各小1/2で下味をつける。きくらげはもどし食べやすい大きさに切る。

② 春雨ははもどしてざく切りにする。

③ 鍋にごま油を熱し①と薄く切った筍、短冊切りした人参、ざく切りした白菜、絹さやを炒める。

④スープを加え煮立たせ、アクをとり②を加える。塩・醤油・コショウで調味する。

日本には美しい四季があります。

食べ物によって季節を感じるという食文化を大切にしましょう!!

 

 

 

知っていますか『食事バランスガイド』(2007年2月)

 

知っていますか『食事バランスガイド』

社団法人 茨城県栄養士会

 
 
 
 

最近目にするコマのデザイン

・・・食事バランスガイドっていったいなに?!

食事バランスガイド 「食事バランスガイド」は、望ましい食生活についてのメッセージを示した「食生活指針」を具体的な行動に結びつけるものとして、1日に「何を」「どれだけ」食べたらよいかの目安を分かりやすくイラストで示したものです。

 平成17年6月に策定されました。

 見る人にとって最も目につく上部より、十分な摂取が望まれる主食、副菜、主菜の順に並べ、果物と牛乳・乳製品については、同程度と考え、並列に表現されています。形状は、日本で古くから親しまれている「コマ」をイメージして描き、食事のバランスが悪くなると倒れてしまうということを表しています。また、コマが回転することは、運動することを連想させるということで、回転(運動)しないと安定しないということも、合わせて表現されています。

菓子・嗜好飲料:
食事の量の中でバランスを考えて適度にとる必要があること、一方で、食生活の中で楽しみとしてとられている現状があり、食事全体の中で量的なバランスを考えて適度に摂取する必要があることから、コマを回すためのヒモとして表現されています。

水やお茶は食事の中で欠かせないものであるが、料理等にも水は多く使用されていることから、具体的な量を示すというよりは、象徴的なイメージとして軸で表されています。

フードガイド(図表)
(イラストをクリックすると拡大します)

フードガイドの区分:

主食、主菜、副菜、果物、牛乳・乳製品の5つの料理区分を基本としています。
各料理区分の量的な基準及び数え方:
各料理区分毎に、1日にとる料理の組合せとおおよその量を表しています。
単位:
「1つ(SV:)」と表記されます。(SVというのはサービングの略であり、各料理について1回当たりの標準的な量を大まかに示します)(イラストをクリックすると拡大します)
具体的活用例
「食事バランスガイド」を使って、あなたも食事のバランスをチェックしてみましょう!!

チェックはこちらから→ 内閣府「政府公報オンライン」

 

 今後ファミリーレストランなどの飲食店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等の食品産業における活用を通じた普及活用、地域(健康づくり教室など)や職場を通じた普及活用として利用されていきます。みなさんも是非活用して健康づくりに役立ててください

 

 

 

障害のある子どもの食生活(2007年1月)

 

障害のある子どもの食生活

社団法人 茨城県栄養士会

茨城キリスト教大学

医学博士・管理栄養士

大和田 浩子

 
 
 
 

(1)障害のある子どもの摂食機能

 「食べること(摂食)」、「飲み込むこと(嚥下)」は人の最も基本的な欲求です。これらは、生命維持の原点ですが、生まれもっている体の機能ではなく、成長とともに学習によって身につけていくものです。しかし、知的発達障害や運動障害をもつ子どもの多くは、十分な学習ができないために摂食・嚥下機能の発達が遅れたり、発達が途中で停止したりします。

(2)摂食機能に応じた食物形態と食事介助

image 障害のある子どもの摂食機能を改善するためには、健常な子どもの発達過程との違いをよく理解したうえで、発達を促すような食物形態や介助方法を実践していくことが大切です。専門の医師・歯科医師による摂食・嚥下機能の診断を受け、専門家による指導のもとで、個々に合った食物形態や訓練の方針を決めるのがよいでしょう。適切な食物形態と食事介助が行われると、障害のある子どもの発達を促すことができます。

1)適切な食物形態

 
基本的には、摂食機能に応じて健常な子どもの離乳食の形態と同じように変化させていきます。柔らかくしたり、トロミをつけたりして食べやすくします。また、固さや形を適切に変化させながら摂食・嚥下機能の訓練をし、発達を促します。月齢や年齢で区切るのではなく、各々の子どもの発達段階がどこにあるのかを観察し、子どもにあったペースで進めていきましょう。

2)適切な食事介助

  食事介助を始める前に、個々の子どもの障害の程度、摂食・嚥下機能の発達過程を把握しておくことが大切です。それによって、より円滑な介助をすることができます。

〔介助の際の留意点〕

(1)食物の認識

 
食べるという行為は、食べ物を見たり、匂いを嗅いだり、食べる前から始まります。介助をする際にも、障害のある子どもがどのような食物かを認識できるように、言葉をかけましょう。

(2)摂食の姿勢

  食事の時に、安定した姿勢がとれるかどうかが摂食機能を左右します。嚥下時に容易に食べ物を咽頭に運べる軽度の子どもでは、体の角度は床面に対して45°~90°を目安とします。ただし、首が座っていない場合には、45°くらいの方が介助がしやすくなります。一方、嚥下時に自力で食べ物を咽頭に運べない重度の子どもでは、体の角度は床面に対して15°~45°を目安とします。これが誤嚥を起こしにくい角度となります。

障害のある子どもの食事は、時間がかかるものです。長時間疲れずに食事がとれるように、しっかり姿勢を支えてあげることが大切です。ゆっくりと食事ができるよう介助者も介助しやすい位置で椅子に座りましょう。

(3)適切な自助具・食器

 手づかみ食べは、持つ、つかむ、といった手の機能の発達を促し、目との協調運動の学習にもなります。十分に手づかみ食べを行ってから、スプーンを使用するようにします。そして、スプーンに使い慣れてから、フォークや箸に移行するようにします。

適切な自助具や食器を使うと、摂食がしやすくなり、食事を楽しむことができます。握る力の弱い子どもは、軽くて太い柄のスプーン(a)を使うとよいでしょう。握る力がなかったり、指が変形してスプーンやフォークの柄を握れない子どもは、ホルダーに手を通すだけで使えるスプーンやフォーク(b)使うとよいでしょう。箸が自由にあやつれない子どもは、箸の握る側にバネを付けた力を入れなくても握れる箸(c)を使うとよいでしょう。その他、こぼれにくく、持ちやすく工夫されたコップ、すべり止めやすくいやすい形の皿なども必要に応じて利用しましょう。

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(4)感覚過敏

  重度の障害のある子どもは、顔、口唇、口腔内に感覚過敏が発生しやすく、硬直が全身に及ぶこともあり、食べ物の摂取が難しくなります。そのため、食べられる場合でも、スプーンができるだけ口唇に触れないように、注意深く介助することが大切です。

(5)食事はコミュニケーション

  待っているのに食べ物を口に運んでもらえなかったり、せっかちに口に押し込まれたり、思うように食べさせてもらえないと、食事が苦痛になります。介助者からの一方通行にならないように、信頼関係のなかで楽しい食事環境をつくりましょう。

(6)食後の口腔ケア

食後には必ず口腔ケアを行いましょう。

 

 

 

子どもの食物アレルギーと食物除去について(2006年12月)

 

子どもの食物アレルギーと食物除去について

社団法人 茨城県栄養士会

管理栄養士 内山 真理

 
 
 
 

 食物アレルギーと診断されても、一般的には、小学校に入るまでにはほとんどの子が食物制限を必要としなくなります。特に食物アレルギーによるアトピー性皮膚炎は3歳以降は急速に減少するといわれています。

実際、卵アレルギーでも3歳を過ぎると食べ過ぎなければ、症状がでない子どもが多いとも聞いています。

しかし、いつかは治るのだからといって、原因食物を食べ続けていると、なかなか症状が良くならないのも真実です。

食物除去を行う場合は、

 主治医の判断に従って必要最低限の制限を必要期間のみ行うのが原則です。決してお母さんの自己判断で行わないで下さい。

 検査と食物日誌から食物アレルギーと診断されたら、ある一定期間は食物除去を行います。

その間、代替食物について医師から十分な説明をうけ、食物日誌をつけながら栄養バランスに気をくばり、食物除去を続けることが大切です。

特に、乳児では市販のベビーフードは控え、食物内容がわかる手づくり離乳食にし、必要に応じて新たな食材を追加しながら食物除去を続けます。

幼児の場合は、食べ物を制限することによる精神的ストレスを念頭において食物制限をしなければなりません。

食べ物を制限することによって、一時的に症状が良くなっても、食べられないストレスが強くなると、さらに症状が悪化してしまうことがあります。

食べることによって多少症状が悪くなっても、得られる満足感が勝るなら多少は食べてもよいなど、ケース・バイ・ケースの対応を主治医とよく相談しましょう。

★ 食物除去の注意点

 
食物除去療法によって症状がどんなに改善しても、心身の発育障害があっては何の意味もありません。 食物アレルギーで食物除去をする場合も厳しい食物制限は行なわず、必要最低限の食物制限をするのが最近の除去食療法の考えです。

除去食療法のポイント

お母さんが一人で悩まない

医師と二人三脚で除去食内容を考え、必要以上の制限をしない。

代替タンパクあっての除去食療法

代替食品を使って、成長、栄養障害を起さないようにする。

スキンケア、環境整備をきちんと行う

たとえ食物除去中でも、スキンケアと環境整備が重要。

重症の場合は完全除去療法を行う

アナフィラキーショックを起こしたことのある食品に関しては、徹底的な除去を行う。

定期的に発育、発達をチェックする

特に、乳幼児期の成長障害は大人になっても、その障害が残ることがある乳児では1ヵ月ごとに身長、体重を測定し、母子健康手帳についている発育に記入して発育の遅れがないように気をつける。幼児期では急速な変化はないため3ヵ月毎にチェック。体重の増加不良があった場合は食物除去をゆるめる必要がある。特に、身長の伸びが悪い時は要注意。身長の増加不良が認められた場合は即座に除去食療法を中止。

勝手に除去食を始めたり、中止しない

除去食療法は食物アレルギーの療法の一つなので、自己判断は禁物。

★食物アレルギーと給食について

 食物制限のために皆と同じ給食が食べられないということは、子どもにとって大きな心理的負担になります。

食物制限のある場合は、食物アレルギーについて、園や学校側の理解と協力が不可欠です。同級生には担任から理解と協力が得られるよう説明してもらいます。

除去給食を行う場合は、

「人には色々な悩みや苦手なことがあります。○△さんは皆と同じ給食が食べたいのだけれど、お医者さんから食べてはいけないといわれている食べ物があります。本当は全部食べたくても少ししか食べられないことをわかってあげましょう。」

除去給食が不可能な場合は弁当持参となりますが、その場合は

「しばらくの間、お弁当で頑張ると、きっと皆と同じ給食が食べられるようになるので応援しましょう。」などと学校の先生に説明していただくとよいでしょう。

お弁当の場合は、あらかじめ給食の献立表をみて、給食と似た内容の除去食弁当を持たせる気配りをすることも大切です。

しかし、食物アレルギーは5~6歳になるとかなり症状が軽くなり、多少なら食べても症状がでないこともあります。

多くは、牛乳だけが飲めない場合や、特定の食物だけを食べなければよい場合がほとんどです。

残す必要があることを前もって皆に理解しておいてもらえば、給食を食べることができます。

しかし、そばアレルギーの子は命に関わることがあるので、そば給食の日には弁当を持参しましょう。

 

 

 

風邪の予防と食生活(2006年11月)

 

風邪の予防と食生活

社団法人 茨城県栄養士会

 
 
 
 

 かぜは、いろいろな病気の中でも私たちが一番かかりやすい病気です。かぜを予防するためには、十分な睡眠と栄養バランスのとれた食事を心がけることが大切です。

1.かぜを予防するために大切なこと

(1)  日ごろから栄養、運動、休養のバランスを心がけましょう。

体の抵抗力が低くなると、かぜにかかりやすくなってしまいます。特に寝不足が続いたり、食事をぬいたりした時には要注意です。

うがいimage
(2)  戸外から帰ったら、必ずうがい、手洗いを忘れずに。

うがいやていねいな手洗いは、体の中にかぜのウイルスが入ってくるのを防いでくれます。習慣づけをしましょう。

(3)  室内の温度と湿度を適度に保つ。

冬の快適温度は21から23℃、湿度50%前後です。暖房した部屋は、まめに換気をしたり、湿度が低くならないように上手にコントロールしましょう。

2.食生活のポイント

(1) たんぱく質を十分に補う

たんぱく質は、寒さに対する抵抗力を強めます。それから、私たちの体内にかぜのウイルスが入った時に、それを退治してくれる成分が白血球の中に含まれています。この成分は、たんぱく質からつくられているのでかぜを予防するためには、魚や肉、卵、牛乳、大豆製品などを十分のとることが大切です。

(2) 脂肪も不足しないように

脂肪は体の皮膚や口、のどの粘膜を丈夫にして、かぜのウイルスに対する抵抗力を高めます。また、少しの量でたくさんのエネルギーを出すので体を暖かくします。そのほかにも、ビタミンAやビタミンEの働きをよくしてくれます。

(3) ビタミンの補給も忘れずに

ビタミンAやビタミンCは、かぜのウイルスに対する抵抗力を強くする働きがあります。野菜サラダ、さつま芋、ほうれん草、にんじん、みかんなどの野菜やくだものをいつも食べるように心がけましょう。

もし、かぜをひいてしまった時には、暖かくして早めに体を休ませましょう。(保温・安静・睡眠)食事は、「消化によい食材を使って体が温まるもの」を食べて、発汗を促すことが大切です。

 

 

 

今年の検診結果は いかがでしたか?(2006年10月)

 

今年の検診結果は いかがでしたか?

社団法人 茨城県栄養士会

管理栄養士 井出 理美
 
 
 

10月に入り、いよいよ秋本番です。秋といたら、やっぱり“食欲の秋”です。

ここ茨城は、肥沃な土壌に恵まれ、おいしい農産物がたくさん収穫されます。

サツマイモ、栗、りんご、柿、ぶどう・・・等ついつい食べ過ぎてしまいがちですね。

でも、同じ量食べるにしてもちょっとしたコツ・工夫を知っているだけで健康的な食生活が送れます。

1.ところで、今年の健診結果はいかがでしたか?

すべてが正常だった方は、これからもストレスをためずにバランスの良い食生活を心がけてください。

血液データがいくつかひっかかってしまった黄信号の方に、今回は特にお話したいと思います。
血圧、コレステロール、中性脂肪、血糖値等が少し高かった方、是非ここでしっかり意識してほしいと思います。これは、体の内部を数値で表した大切なあなたのデータです。今、あなたの体が“SOS”をだしていると理解してください。

食事の仕方、運動の有無によって、数年後データが青信号になるか、赤信号になるか、ちょうどその移行期にいるということです。

2.メタボリックシンドロームをご存知ですか?

心筋梗塞、脳梗塞などの虚血性心疾患、脳血管疾患等を発症する危険性を高める複合型リスク症候群のことをいいます。

    メタボリックシンドロームの診断基準

 将来、心筋梗塞、脳梗塞などの虚血性心疾患、脳血管疾患等を発症するリスクを低くするためにも、是非、食事療法、運動療法を取り入れましょう。どうしてもデータが芳しくない時は、最後の手段として薬物療法を考えましょう。

食事療法については、お近くのかかりつけ医・市町村の管理栄養士にどうぞご相談ください。また、運動療法については、手軽なウォーキングをお勧めします。でも、中には、腰や膝が痛くて出来ないという方もいらっしゃると思います。そこで、家の中で手軽に筋力トレーニングが出来るチューブ体操という方法もあります。無理なく自分に合った運動を、継続的に実践してみてください。

今後も、毎年忘れずに健診を受けて、健康的な生活をお過ごしください。

 

 

 

水には味がある! お水の話し(2006年9月)

 

水には味がある! お水の話し

社団法人 茨城県栄養士会

栄養士 小林麻衣子
 
 
 

人体の60%は水でできているといわれています。水がなければ人間は生きていけません。それほどい人間にとって、大切な命の源『水』。しかし昨今社会の都市化・工業化進み、水の汚染が心配されています。そんなこともあってか世は『水』ブーム。コンビニやスーパーの飲料水コーナーを覗いて、「最近、水が増えたなあ」と感じる方も多いはず!輸入品から国産品まで種々様々の水が売られている『水(ミネラルウォーター)』ブームの中身を覗くと共に身近過ぎる『水』について考えてみませんか?

1.人体の60%は水。水なしで人間は生きられない。

人間の体内で水の占める割合は、新生児で約80%、成人でも約60%とも言われています。水分が失われると脱水症状が現れ、15~20%を失うと生命の危機があるといいますから、私達の体にとって、水は非常に重要なものとも言えます。

2.水分補給のタイミング

成人が1日に必要な水分は2.000~2.500ml。このうち飲料水として摂りいれるのは800~1.300mlと言われています。

≪上手に水分補給をするには?≫

≪朝1杯の水を習慣に≫

寝ている間に汗をかき、水分が奪われしまうため、朝起きて水分を摂取しないでいると、どろどろとした血液が詰まって脳梗塞の発作を起こしてしまう可能性が高くなるからです。また朝起きぬけにコップ1杯の冷たい水を飲むと、腸が刺激され便秘解消にもなります。

≪1日1リットルを目標に≫

1度にがぶ飲みしても意味が無い1回200ml程度を何度かに分けて摂取すると摂取しやすい。1日のサイクルとしては・・・

朝目覚め1杯 午前10時1杯 午前3時1杯 入浴後1杯 就寝前1杯

≪乾く前に飲む≫

喉が渇いたからといってガブ飲みするのは避けましょう。汗をかいた
後の身体は、水分だけでなくミネラル分も失われています

水分だけ大量に共給すると、体液中のミネラル濃度が薄くなって
しまいます。まずは『喉が渇いた』と思う前に積極的に
水分を補給するよう心かけましょう。

≪入浴前・後は必ず補給≫

お風呂に入るとたくさんの汗をかきます。

十分な水分補給をしてから入浴しましょう。

また、入浴後は皮膚がふやけているので水分があるように思いますが、やはりたくさんの汗をかいています。入浴後も十分な水分補給を心がけましょう。

3.『おいしい水』とは?

本来水は水は無味無臭なものです。雨水を調べてみても、蒸留水に近くミネラル成分をほとんど含んでいません。雨水が地球に降った後に、いろんな地質層や岩石層の狭い隙間に浸み込んでいって、いろいろなミネラル成分(カルシウム・マグネシウム)を溶かし込みます。

水に味があるというのは、飲み水が純粋なH2Oでなく、鉱物分などを溶かし込んでいるからなのです。

さらに水には硬度があります。

水には軟水と硬水があり水に含まれているミネラル成分によって分けられます。

この硬度は水の味を決める大きな要素の一つなのです。

≪おいしい水とはどのような水?≫

「おいしい水」を決定づけるのは、とても難しいこと。味は個人的嗜好もあり一概には決めることはできません。ここでは「あなたの好み」に合いそうな水探しのヒントをご紹介します。

水質項目
おいしい水の要件
おいしさの違いは?
蒸留残留物 30~200mg/l 主にミネラルの含有量を示す。量が多いと苦味・渋味が増し、適度に含まれるとこくのある、まろやかな味がする。
硬   度 10~100mg/l 硬度の低い水は「くせ」がない。高いと「くせ」があるため、人によって好き嫌いが出る。カルシウムに比べ、マグネシウムの多い水は苦味をます。
遊離炭酸 3~30mg/l 水にさわやかな味を与えが、多いと刺激が強くなる
水   温 最高20℃以下 水は冷すことによっておいしく飲める。

4.『硬い水』と『軟らかい水』

水はミネラル分が多く含まれると水の味は硬く感じられ、少ないと軟らかかく感じられます。
『硬度』とは水に含まれるカルシュウムとマグネシウムの量を測定したものです。

◆軟水

1リットル中100mg以下のもの。味はまろやか。

ミネラル分は少なめ。日本産のミネラルウォーター

はほとんどこれにあたります。

◆硬水

1リットル中301mg以上のもの。

口当たりにはややクセがありますが、ミネラル補給には効果的です。

◆中硬水

1リットル中101mg以上300以下のもの。

違和感のない味わいで、ミネラル補給も同時にできます。

海外産ミネラルウォーターではエビアンなどがこのタイプです

◆超硬水

1リットル中1000mg以上のもの。

コントレックスはこのタイプです。

一般的に硬い水は口に含むと引き締まった味がします。一方軟らかい水は口の中でやさしく広がります。

5.『ミネラルウォーター』の効能

6.ミネラルウォーター使い分け術

 
緑茶
紅茶
地域
日本
欧州
軟水
まろやか
香りが薄い
硬水
渋みが出る
香りが良く出る
硬度50以下

(軟水)

野菜煮物・炊飯・和風のだし・緑茶
硬度50~100

(中程度の軟水)

料理・コーヒー・紅茶
硬度170前後

(硬水)

ウイスキー水割り・洋風だし・肉の煮込みやアク抜き
硬水300

(非常な硬水)

食欲増進の効果があるので食前酒の代わりに
硬度600を超える水

(更に非常な硬水)

便秘対策・スポーツ後のミネラル補給など

一口に『水』といっても、軟水・硬水・炭酸水など、様々な種類があり、それぞれの性質と、体に及ぼす効能も違います。私達にとっては、本当に日常的な飲み物。だからこそ『たかが水』など思わずに、関心を深めることにより楽しく、用途や利用目的によってミネラル成分や硬度を確認してから購入してみてはいかがでしょうか?きっとあなた好みの『水(ミネラルウォーター)』が見つかるかもしれませんね。