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まめ知識カテゴリ: 食事

高齢者の食事について ~高齢者の心と体の変化を知って、食事を作りましょう~(2007年6月)

 

高齢者の食事について
~高齢者の心と体の変化を知って、食事を作りましょう~

茨城県栄養士会

管理栄養士  矢代あや子

 
 
 
 
日本人の平均寿命は80歳を超え、世界一の長寿国となっています。

健康状態や食事のとりかた、体のいろいろな働きにも個人差が見られます。寝たきりを防ぎ、いつまでも健康で自立した生活が過ごせるようにお年寄りの体の特徴をよく理解して、毎日の食事作りに努めましょう。

■ お年寄りの体の特徴
  1,消化液の分泌が低下する
    唾液の分泌が減ると糖質の消化が不十分となります。さらに、噛む力が低下することで、胃への負担も大きくなります。胃液の分泌が減ると、蛋白質や脂質の消化・吸収能力が低下して、消化不良や下痢の原因となってしまいます。
    食事のポイント
     

(1)

消化吸収の良い食品(脂身の少ない肉、豆腐、魚、乳製品、卵、芋類、葉菜類等)を、バランスよくとるようにする
      (2) 良く噛んでゆっくり食べる
      (3) 暴飲、暴食をさける
         
  2,腸の働きが悪くなる
    大腸の動きが悪くなり、便秘がちになります。その他、食べる量が少なくなる事による食物繊維の不足、運動不足、水分不足なども影響する事があります。
    食事のポイント
     

(1)

欠食をさけ、1日3食をバランスよくとるようにする
      (2) 朝、目覚めにコップ1杯の水を飲んで腸を刺激する
      (3) お茶や牛乳などの水分をたっぷりとる
      (4) 食物繊維の多い食品(押し麦、玄米、ごぼう、筍、かぼちゃ、大豆、納豆、芋、海藻、果物、きのこ、こんにゃく等)を多くとりいれる
         
  3,咀嚼力(噛む力)が低下し、飲み込む力(嚥下)が弱くなる
    自分の歯の数が少なくなったり、入れ歯(義歯)の調整がうまくいかないために、噛む力が弱くなってきます。口の中の筋肉の老化現象や、脳卒中や脳梗塞の後遺症等によって、飲み込みがうまくできなくなります。

硬い食べ物を嫌がり、あまり噛まずにすぐ食べられる食材を好んで選び、食事の内容も偏るために栄養不足になる心配があります。

    食事のポイント
     

(1)

食べやすい大きさに切り、軟らかくなるまでよく煮込む
      (2) 片栗粉や市販の増粘剤をつかってとろみをつける

口の中で、食べ物がまとまり、飲み込みやすくなります

      (3) ゼラチンや寒天を使って、ゼリーやムース状に固める
      (4) 飲み込みやすい姿勢を保つ

車椅子で食事を摂るときは、腰が不安定にならないようにクッション等を添えて体勢を整えましょう

         
  4,味覚が低下する
    舌の味覚細胞が減るために、味を感じにくくなります。いつもと同じ味付けなのに「甘い」と感じてついつい醤油などをかけすぎてしまうことがあります。特に塩味の感覚低下が著しく、塩分の取りすぎになってしまいがちです。
    食事のポイント
     

(1)

旬の新鮮な食材を選ぶ
      (2) 味の濃いおかずと薄いおかずを組み合わせて作る
      (3) 香味野菜(生姜・しそ・三つ葉・ミョウガ)柑橘類を使い、味覚に刺激を与える
      (4) 昆布や鰹節、干し椎茸などのだしをきかせる
         
  5,のどの渇きを感じにくくなり、脱水症状をおこしやすい
    加齢により、基礎代謝量が減少し体の中で作られる水分(代謝水)が少なくなります。食事量が減ったり、あまりのどの渇きを感じにくくなり充分な水分の摂取ができなくなってきます。
    食事のポイント
     

(1)

お年寄りの手の届くところにいつも水分を準備しておく
      (2) 食事には汁物や水分の多いおかずを1品とりいれる
      (3) 食事以外にもお茶の時間を設け、お茶や好みの水分を補給する
      (4) 水分がむせる場合は、とろみをつけたりゼリーにして摂取する
         

 

 

 

 

ますます重要視される学校給食の役割(2007年5月)

 

ますます重要視される学校給食の役割

社団法人 茨城県栄養士会

 
 
 
 

  「給食の用意ができました」

 
「お当番さん、ごくろうさまでした」

 
「それでは、いただきますをしましょう」

 
「いただきます」

 
4月に入学した小学1年生の学校給食が始まってから1か月余り。

 
ところが、あれあれ、

 
「ぼく、野菜はダメ」

 
「魚に骨があるよ」

 
「豆はきらい、わたし食べない」

 
と子どもたちの声。箸の持ち方もあやしいようです。ごはんや汁の食器を持たなかったり、おかずやごはんを一品ずつ食べ、食べ終わるとまた次のおかずを食べるという食べ方をし、全体をまんべんなく食べることができない子もいます。食事の様子は、まさに、家庭を写す鏡です。

 
学校給食は年間約200回実施されています。1年間の食事数にしてみれば6分の1にすぎないのですが、授業日に毎日実施される日常生活に欠くことにできない食事時間ですから、給食の時間の特性を生かした給食指導を実施することが可能です。学校給食は通常、授業日の昼の時間に繰り返し行われるものですから、この時間に繰り返し給食指導をすれば、児童生徒への望ましい食習慣の育成を図ることができることはもとより、準備・会食・後かたづけなど家庭生活では培われなくなりつつある生活体験の一連の実践活動の場ともなります。

 
毎日の学校給食における実践活動を通して正しい食事のあり方や望ましい食習慣の形成をはかり、将来にわたり健康で生活することができる児童生徒を育てることが学校給食に課せられた大きな役割です。

 

 

 

バランスのとれた食事で、毎日の健康を!(2007年4月)

 

     
 
4月のテーマ:
バランスのとれた食事で、毎日の健康を!
 進学、就職、転勤などなど、この4月から新しい生活が始まったという方も多いのではないでしょうか。新しい生活に乱れてしまったリズムも、そろそろ慣れてきた頃だと思います。そこで、今回は生活のリズムの見直しとあわせて「食生活」のリズム(バランス)について考えてみましょう。
 
     

 

まずは意識的に『一汁三菜』の食卓を
 

バランスのとれた理想的な食事の基本は『一汁三菜』と言われますが、これはご飯(主食)・汁もの・3種類のおかずを表し、昔から日本の食卓に取り入れられていた考え方。この『一汁三菜』の食事はたくさんの食材を使うので、自然と栄養のバランスがよくなります。
image●主食

主食となるのはご飯やパン、麺類などの炭水化物。忙しい朝は手軽なトースト、昼はさっぱり手早く食べられるお蕎麦など、状況や好みに応じて選ぶことができますが、基本はやっぱりご飯です。ご飯は太ると思われがちですが、糖質やたんぱく質、食物繊維を多く含み、パンより腹もちがいいので、一食毎をしっかり食べることで間食を防止できます。また、まぜご飯や丼ものなどにすれば、それだけでおかず1品分と考えることができます。

●汁もの

ご飯といえばお味噌汁ですが、具沢山の豚汁やけんちん汁、野菜たっぷりのミネストローネなど、工夫次第でこちらもおかずの1品とあわせることができます。お鍋でイチから作るとなると意外と手間のかかるスープ類も、お湯を注ぐだけのカップスープや野菜ジュースなどを利用すれば手軽に取り入れられますね。

●おかず

「3菜」といっても、これはもちろん目安の数字。目玉焼きや納豆1パックでも立派な1品になりますし、例えば肉野菜炒めや筑前煮など、1品で色々な食材を摂ることのできるボリュームたっぷりのおかずなら2品分と考えることもできます。おかずの品数を多くすればそれだけ色々な栄養素を摂ることができますが、言い換えれば1品に使う食材を増やせば品数を無理に多くする必要はありません。あまり堅苦しく考えず、冷凍食品やお惣菜なども利用しながら上手に「手抜き」するのも『一汁三菜』の食卓を毎日続けるコツです。

●果物

『朝の果物は金』という言葉を聞いたことがありますか?果物に多く含まれる糖分(果糖)は体に吸収されやすく、睡眠中に失われたエネルギーを効率よく摂取するのにぴったりの食材としてこう呼ばれているのです。逆に『昼は銀、夜は銅』とも言われますが、これは実は間違いとの説も。果物は甘い=糖分が高いから夜中に食べると太るというイメージがあるようですが、カロリー自体は野菜より低いものが多いのです。不足しがちな食物繊維も補うことができるため、朝に限らず1日100g(りんご約1個分)を目標に食べると良いでしょう。

毎食『一汁三菜』の食事は難しいという人は、例えば時間のある夕食だけでも、品数を多めに『量より質』の食卓を心がけましょう

 
理想的な食生活の指針は『食事バランスガイド』にあり
 

image飲食店やスーパーマーケットなどで、いろいろなメニューのイラストがちりばめられた「コマ」のデザインを見かけたことがありますか?これは『食事バランスガイド』と呼ばれるもので、一日に「何を」「どれだけ」食べるとバランスのとれた食生活になるかという目安を表しています。きちんと3食とっていても、栄養素が偏っていてはバランスのとれた食生活とは言えません。まずは1週間、バランスガイドに沿って食生活をチェックしてみましょう。

※詳しくはコチラのページを→

知っていますか『食事バランスガイド

 
朝昼晩、きちんと3食を
   3食のうち、「朝ごはん」が一番大切というのは皆さんよくご存知のことだと思います。確かに、寝ている間に下がった体温を上げ、これから始まる1日の活動のエネルギー源を補給するために朝食はとても大切。朝は忙しく、つい朝ごはんを抜いてしまうという人も多いと思いますが、少し早起きしてでも是非食べて欲しいものです。また、休日など、朝食をお昼ご飯と一緒に「ブランチ」として済ませる人もいますが、やはりなるべく1日3食を守って欲しいところ。遅めの朝食なら量を少なく、また昼食の時間をその分少し遅めにするなどして、毎日3食を心がけましょう。
 
 
 毎食バランスのとれた食事を摂るのは大変という人も、まずは1日1回『一汁三菜』の食事を心がけるところから始めましょう。そうすれば、毎日とは言わなくても週単位でバランスのとれた食生活になっていきます。そしてバランスのとれた食事に加え、食事のときはできるだけ「じっくり味わって」食べることも大切。おいしさを感じる器官は、舌よりも目といわれます。新聞やテレビを見ながらの食事や、見るからに寂しい食卓では食事のおいしさ、楽しさは感じられませんよね。また、目で見て、鼻で嗅いだ食べ物の情報が脳に伝達されると唾液が出て、消化を助けてくれます。1日1食、家族そろって『一汁三菜』の食卓を囲んでみませんか?

 

 

脂肪をためない食生活  ――メタボリックシンドロームにならないために(2007年4月)

 

脂肪をためない食生活
 ――メタボリックシンドロームにならないために

社団法人 茨城県栄養士会

 
 
 
 

1.メタボリックシンドロームとは?

メタボリックシンドローム

腹囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上を「要注意」と規定。これに下の2項目以上が該当する場合、「メタボリックシンドローム」と診断されます。

腹囲

男性:85cm以上

女性:90cm以上

+

1.血圧

収縮期血圧:130mmHg以上

かつ(または)

拡張期血圧:85mmhg以上

2.血清脂質

中性脂肪値:150mg/dl以上

かつ(または)

HDLコレステロール値:40mg/dl未満

3.血糖

空腹時血糖値:110mg/dl以上

 脂肪が体内に過剰に蓄積された状態が肥満です。

メタボリックシンドロームのベースとなるもので、特に内臓のまわりに肥満がたまる内臓脂肪型肥満(りんご型肥満)が問題なのです。

2.あなたは大丈夫?

◇ エネルギーとりすぎていませんか

「脂っこいもの」「甘い物」好き、外食はコンビニ食、ファーストフード、過度の飲酒はエネルギー過剰の原因となります。

◇ 不規則な食生活していませんか

「朝食抜き」など欠食が多いと、活動力低下や代謝が悪くなり、エネルギーを消費しにくくなります。

「夜遅くの食事」は栄養が吸収されやすく体脂肪の蓄積につながります。

3.食事のポイント

<一日三食、規則正しく、よくかんで>

◇ 一食ごとに主食、主菜、副菜でバランスよく

  • 主菜は魚、肉、玉子、大豆製品
  • 副菜は野菜中心、一日350g以上を植物繊維をたっぷりと・・・芋類、豆類、きのこ、海草もかかさずに

◇ 脂肪は質も考えて、一日大さじ1~2杯、植物油を中心に

  • 動物性脂肪(肉の脂身、バター、外食のカツなど)は体内でコレステロールをを蓄積します。

◇ 甘い菓子、飲料、アルコールは控えましょう

  • 中性脂肪の材料やインシュリンの作用にも影響があります。できることから、さあ実行、そして続けましょう。
 

 

 

旬の食材を食べよう!!(2007年3月)

 

旬の食材を食べよう!!

社団法人 茨城県栄養士会

武石 愛子 
 
 
 

 最近、旬がなくなったといわれます。

ある時期にしか食べられなかった食材が、野菜作りの多様化、又、養殖・輸送・冷凍技術の発達で季節を問わず、いろいろな種類の食品が手に入り「旬」を感じられなくなった様な気がします。

しかし、野菜・果物・魚介も自然のものがある以上、旬があります。

1.旬って?

img 
旬とは、その食べものがいちばん多くとれる時期であり、いちばんおいしい時期でもあります。

そして、安価で栄養価が高くもっとも味のよい時期です。

旬の素材を食べることが、本当に健康で豊かな食卓といえます。

2.春の旬

ここで春の食材を紹介しましょう!!

春の旬やはり「旬」と言えば

野菜・果物でいえば路地ものが出回るとき。
   果物は食べごろがあり、完熟していなければ鮮度が良くても美味しさを味わえません。

価格でなく美味しい時期が基準です。

魚介類では、水揚げ量がピークを迎えたとき。
   
魚介類に関しては、美味と感じるのは、当然脂ののった時期、産卵期前の時です。

春に産卵するものは冬が旬、秋に産卵するものは、夏が旬と言えます。

3.春の食材「たけのこ」

竹の子春の旬といえばやはり「筍」ですね。

ここで「筍」について少し紹介します。

・栄養と健康物質

ビタミンC・B2とカリウムをわずかに含みます。

カリウムは体内のナトリウムを排泄してくれるので高血圧に効果があります。

又、食物繊維が多く便秘や大腸がん予防ができます。

・食べ方のヒント

わかめと一緒に煮る「若竹煮」や「木の芽和え」は春の訪れを告げる料理です。

先端の柔らかい部分は「筍ご飯」・柔らかい皮(姫皮)は「お吸い物」に。

「食べ合わせ」レシピ紹介

《五目スープ》 

食物繊維+油脂(ごま油)+水分(スープ)=便秘

食物繊維を摂って腸壁を刺激し大腸の運動を活発に!

油脂不足・水分不足も便秘の原因となるので、油脂・水分補給!

材料   作り方
・鶏肉 100g
(酒・醤油・生姜汁)
・木くらげ 5g
・春雨 15g
・筍 50g
・人参 1/3本
・白菜 2枚
・絹さや 20g
・ごま油 大2
・スープ 5カップ
・塩 大1/2
・醤油 小2
・コショウ 少々
  ① 鶏肉は細く切り、酒・醤油・生姜汁各小1/2で下味をつける。きくらげはもどし食べやすい大きさに切る。

② 春雨ははもどしてざく切りにする。

③ 鍋にごま油を熱し①と薄く切った筍、短冊切りした人参、ざく切りした白菜、絹さやを炒める。

④スープを加え煮立たせ、アクをとり②を加える。塩・醤油・コショウで調味する。

日本には美しい四季があります。

食べ物によって季節を感じるという食文化を大切にしましょう!!

 

 

 

知っていますか『食事バランスガイド』(2007年2月)

 

知っていますか『食事バランスガイド』

社団法人 茨城県栄養士会

 
 
 
 

最近目にするコマのデザイン

・・・食事バランスガイドっていったいなに?!

食事バランスガイド 「食事バランスガイド」は、望ましい食生活についてのメッセージを示した「食生活指針」を具体的な行動に結びつけるものとして、1日に「何を」「どれだけ」食べたらよいかの目安を分かりやすくイラストで示したものです。

 平成17年6月に策定されました。

 見る人にとって最も目につく上部より、十分な摂取が望まれる主食、副菜、主菜の順に並べ、果物と牛乳・乳製品については、同程度と考え、並列に表現されています。形状は、日本で古くから親しまれている「コマ」をイメージして描き、食事のバランスが悪くなると倒れてしまうということを表しています。また、コマが回転することは、運動することを連想させるということで、回転(運動)しないと安定しないということも、合わせて表現されています。

菓子・嗜好飲料:
食事の量の中でバランスを考えて適度にとる必要があること、一方で、食生活の中で楽しみとしてとられている現状があり、食事全体の中で量的なバランスを考えて適度に摂取する必要があることから、コマを回すためのヒモとして表現されています。

水やお茶は食事の中で欠かせないものであるが、料理等にも水は多く使用されていることから、具体的な量を示すというよりは、象徴的なイメージとして軸で表されています。

フードガイド(図表)
(イラストをクリックすると拡大します)

フードガイドの区分:

主食、主菜、副菜、果物、牛乳・乳製品の5つの料理区分を基本としています。
各料理区分の量的な基準及び数え方:
各料理区分毎に、1日にとる料理の組合せとおおよその量を表しています。
単位:
「1つ(SV:)」と表記されます。(SVというのはサービングの略であり、各料理について1回当たりの標準的な量を大まかに示します)(イラストをクリックすると拡大します)
具体的活用例
「食事バランスガイド」を使って、あなたも食事のバランスをチェックしてみましょう!!

チェックはこちらから→ 内閣府「政府公報オンライン」

 

 今後ファミリーレストランなどの飲食店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等の食品産業における活用を通じた普及活用、地域(健康づくり教室など)や職場を通じた普及活用として利用されていきます。みなさんも是非活用して健康づくりに役立ててください

 

 

 

障害のある子どもの食生活(2007年1月)

 

障害のある子どもの食生活

社団法人 茨城県栄養士会

茨城キリスト教大学

医学博士・管理栄養士

大和田 浩子

 
 
 
 

(1)障害のある子どもの摂食機能

 「食べること(摂食)」、「飲み込むこと(嚥下)」は人の最も基本的な欲求です。これらは、生命維持の原点ですが、生まれもっている体の機能ではなく、成長とともに学習によって身につけていくものです。しかし、知的発達障害や運動障害をもつ子どもの多くは、十分な学習ができないために摂食・嚥下機能の発達が遅れたり、発達が途中で停止したりします。

(2)摂食機能に応じた食物形態と食事介助

image 障害のある子どもの摂食機能を改善するためには、健常な子どもの発達過程との違いをよく理解したうえで、発達を促すような食物形態や介助方法を実践していくことが大切です。専門の医師・歯科医師による摂食・嚥下機能の診断を受け、専門家による指導のもとで、個々に合った食物形態や訓練の方針を決めるのがよいでしょう。適切な食物形態と食事介助が行われると、障害のある子どもの発達を促すことができます。

1)適切な食物形態

 
基本的には、摂食機能に応じて健常な子どもの離乳食の形態と同じように変化させていきます。柔らかくしたり、トロミをつけたりして食べやすくします。また、固さや形を適切に変化させながら摂食・嚥下機能の訓練をし、発達を促します。月齢や年齢で区切るのではなく、各々の子どもの発達段階がどこにあるのかを観察し、子どもにあったペースで進めていきましょう。

2)適切な食事介助

  食事介助を始める前に、個々の子どもの障害の程度、摂食・嚥下機能の発達過程を把握しておくことが大切です。それによって、より円滑な介助をすることができます。

〔介助の際の留意点〕

(1)食物の認識

 
食べるという行為は、食べ物を見たり、匂いを嗅いだり、食べる前から始まります。介助をする際にも、障害のある子どもがどのような食物かを認識できるように、言葉をかけましょう。

(2)摂食の姿勢

  食事の時に、安定した姿勢がとれるかどうかが摂食機能を左右します。嚥下時に容易に食べ物を咽頭に運べる軽度の子どもでは、体の角度は床面に対して45°~90°を目安とします。ただし、首が座っていない場合には、45°くらいの方が介助がしやすくなります。一方、嚥下時に自力で食べ物を咽頭に運べない重度の子どもでは、体の角度は床面に対して15°~45°を目安とします。これが誤嚥を起こしにくい角度となります。

障害のある子どもの食事は、時間がかかるものです。長時間疲れずに食事がとれるように、しっかり姿勢を支えてあげることが大切です。ゆっくりと食事ができるよう介助者も介助しやすい位置で椅子に座りましょう。

(3)適切な自助具・食器

 手づかみ食べは、持つ、つかむ、といった手の機能の発達を促し、目との協調運動の学習にもなります。十分に手づかみ食べを行ってから、スプーンを使用するようにします。そして、スプーンに使い慣れてから、フォークや箸に移行するようにします。

適切な自助具や食器を使うと、摂食がしやすくなり、食事を楽しむことができます。握る力の弱い子どもは、軽くて太い柄のスプーン(a)を使うとよいでしょう。握る力がなかったり、指が変形してスプーンやフォークの柄を握れない子どもは、ホルダーに手を通すだけで使えるスプーンやフォーク(b)使うとよいでしょう。箸が自由にあやつれない子どもは、箸の握る側にバネを付けた力を入れなくても握れる箸(c)を使うとよいでしょう。その他、こぼれにくく、持ちやすく工夫されたコップ、すべり止めやすくいやすい形の皿なども必要に応じて利用しましょう。

image

(4)感覚過敏

  重度の障害のある子どもは、顔、口唇、口腔内に感覚過敏が発生しやすく、硬直が全身に及ぶこともあり、食べ物の摂取が難しくなります。そのため、食べられる場合でも、スプーンができるだけ口唇に触れないように、注意深く介助することが大切です。

(5)食事はコミュニケーション

  待っているのに食べ物を口に運んでもらえなかったり、せっかちに口に押し込まれたり、思うように食べさせてもらえないと、食事が苦痛になります。介助者からの一方通行にならないように、信頼関係のなかで楽しい食事環境をつくりましょう。

(6)食後の口腔ケア

食後には必ず口腔ケアを行いましょう。

 

 

 

子どもの食物アレルギーと食物除去について(2006年12月)

 

子どもの食物アレルギーと食物除去について

社団法人 茨城県栄養士会

管理栄養士 内山 真理

 
 
 
 

 食物アレルギーと診断されても、一般的には、小学校に入るまでにはほとんどの子が食物制限を必要としなくなります。特に食物アレルギーによるアトピー性皮膚炎は3歳以降は急速に減少するといわれています。

実際、卵アレルギーでも3歳を過ぎると食べ過ぎなければ、症状がでない子どもが多いとも聞いています。

しかし、いつかは治るのだからといって、原因食物を食べ続けていると、なかなか症状が良くならないのも真実です。

食物除去を行う場合は、

 主治医の判断に従って必要最低限の制限を必要期間のみ行うのが原則です。決してお母さんの自己判断で行わないで下さい。

 検査と食物日誌から食物アレルギーと診断されたら、ある一定期間は食物除去を行います。

その間、代替食物について医師から十分な説明をうけ、食物日誌をつけながら栄養バランスに気をくばり、食物除去を続けることが大切です。

特に、乳児では市販のベビーフードは控え、食物内容がわかる手づくり離乳食にし、必要に応じて新たな食材を追加しながら食物除去を続けます。

幼児の場合は、食べ物を制限することによる精神的ストレスを念頭において食物制限をしなければなりません。

食べ物を制限することによって、一時的に症状が良くなっても、食べられないストレスが強くなると、さらに症状が悪化してしまうことがあります。

食べることによって多少症状が悪くなっても、得られる満足感が勝るなら多少は食べてもよいなど、ケース・バイ・ケースの対応を主治医とよく相談しましょう。

★ 食物除去の注意点

 
食物除去療法によって症状がどんなに改善しても、心身の発育障害があっては何の意味もありません。 食物アレルギーで食物除去をする場合も厳しい食物制限は行なわず、必要最低限の食物制限をするのが最近の除去食療法の考えです。

除去食療法のポイント

お母さんが一人で悩まない

医師と二人三脚で除去食内容を考え、必要以上の制限をしない。

代替タンパクあっての除去食療法

代替食品を使って、成長、栄養障害を起さないようにする。

スキンケア、環境整備をきちんと行う

たとえ食物除去中でも、スキンケアと環境整備が重要。

重症の場合は完全除去療法を行う

アナフィラキーショックを起こしたことのある食品に関しては、徹底的な除去を行う。

定期的に発育、発達をチェックする

特に、乳幼児期の成長障害は大人になっても、その障害が残ることがある乳児では1ヵ月ごとに身長、体重を測定し、母子健康手帳についている発育に記入して発育の遅れがないように気をつける。幼児期では急速な変化はないため3ヵ月毎にチェック。体重の増加不良があった場合は食物除去をゆるめる必要がある。特に、身長の伸びが悪い時は要注意。身長の増加不良が認められた場合は即座に除去食療法を中止。

勝手に除去食を始めたり、中止しない

除去食療法は食物アレルギーの療法の一つなので、自己判断は禁物。

★食物アレルギーと給食について

 食物制限のために皆と同じ給食が食べられないということは、子どもにとって大きな心理的負担になります。

食物制限のある場合は、食物アレルギーについて、園や学校側の理解と協力が不可欠です。同級生には担任から理解と協力が得られるよう説明してもらいます。

除去給食を行う場合は、

「人には色々な悩みや苦手なことがあります。○△さんは皆と同じ給食が食べたいのだけれど、お医者さんから食べてはいけないといわれている食べ物があります。本当は全部食べたくても少ししか食べられないことをわかってあげましょう。」

除去給食が不可能な場合は弁当持参となりますが、その場合は

「しばらくの間、お弁当で頑張ると、きっと皆と同じ給食が食べられるようになるので応援しましょう。」などと学校の先生に説明していただくとよいでしょう。

お弁当の場合は、あらかじめ給食の献立表をみて、給食と似た内容の除去食弁当を持たせる気配りをすることも大切です。

しかし、食物アレルギーは5~6歳になるとかなり症状が軽くなり、多少なら食べても症状がでないこともあります。

多くは、牛乳だけが飲めない場合や、特定の食物だけを食べなければよい場合がほとんどです。

残す必要があることを前もって皆に理解しておいてもらえば、給食を食べることができます。

しかし、そばアレルギーの子は命に関わることがあるので、そば給食の日には弁当を持参しましょう。

 

 

 

風邪の予防と食生活(2006年11月)

 

風邪の予防と食生活

社団法人 茨城県栄養士会

 
 
 
 

 かぜは、いろいろな病気の中でも私たちが一番かかりやすい病気です。かぜを予防するためには、十分な睡眠と栄養バランスのとれた食事を心がけることが大切です。

1.かぜを予防するために大切なこと

(1)  日ごろから栄養、運動、休養のバランスを心がけましょう。

体の抵抗力が低くなると、かぜにかかりやすくなってしまいます。特に寝不足が続いたり、食事をぬいたりした時には要注意です。

うがいimage
(2)  戸外から帰ったら、必ずうがい、手洗いを忘れずに。

うがいやていねいな手洗いは、体の中にかぜのウイルスが入ってくるのを防いでくれます。習慣づけをしましょう。

(3)  室内の温度と湿度を適度に保つ。

冬の快適温度は21から23℃、湿度50%前後です。暖房した部屋は、まめに換気をしたり、湿度が低くならないように上手にコントロールしましょう。

2.食生活のポイント

(1) たんぱく質を十分に補う

たんぱく質は、寒さに対する抵抗力を強めます。それから、私たちの体内にかぜのウイルスが入った時に、それを退治してくれる成分が白血球の中に含まれています。この成分は、たんぱく質からつくられているのでかぜを予防するためには、魚や肉、卵、牛乳、大豆製品などを十分のとることが大切です。

(2) 脂肪も不足しないように

脂肪は体の皮膚や口、のどの粘膜を丈夫にして、かぜのウイルスに対する抵抗力を高めます。また、少しの量でたくさんのエネルギーを出すので体を暖かくします。そのほかにも、ビタミンAやビタミンEの働きをよくしてくれます。

(3) ビタミンの補給も忘れずに

ビタミンAやビタミンCは、かぜのウイルスに対する抵抗力を強くする働きがあります。野菜サラダ、さつま芋、ほうれん草、にんじん、みかんなどの野菜やくだものをいつも食べるように心がけましょう。

もし、かぜをひいてしまった時には、暖かくして早めに体を休ませましょう。(保温・安静・睡眠)食事は、「消化によい食材を使って体が温まるもの」を食べて、発汗を促すことが大切です。

 

 

 

食欲の秋到来!美食家は痛風になりやすい?(2006年10月)

 

     
 
10月のテーマ:
食欲の秋到来!美食家は痛風になりやすい?
 食欲の秋。暑さも過ぎ、食べ物がおいしい季節です。「うまい肴をつまみにお酒を飲むのが何よりの楽しみ」という人もいるかと思いますが、そんな人は特に注意して欲しいのが痛風という病気。「オヤジの病気」のイメージが強い痛風ですが、若い男性にも意外と多いもので、全国に数十万人の患者がいるといわれる病気です。今回は、あのレオナルド・ダ・ヴィンチも苦しめられたという「痛風」についてお話します。
 
     

 

痛風ってどんな病気?
 

「風が吹いただけで痛い」ほど足の関節が痛む病気、として知られる痛風。ある日突然足の親指の付け根が腫れ、立ち上がれないほどの痛みが発作的に起こります。この発作はたいていの場合1週間ほどで治まりますが、半年から1年の期間を経てまた同じような痛みが起こり、繰り返すうちに足首や膝の関節まで広がってくるように。怖いのは、この痛みと併行して内臓が侵されていくこと。間接の強烈な痛みだけでなく、腎臓などの内臓にも障害が起こってしまう病気と覚えておきましょう。

 
痛風の原因
 

痛風の原因となるのは尿酸という物質で、人間の体の中に必ず一定量あるものです。この尿酸値が何らかの原因で上昇し、蓄積していくと、ナトリウムと塩を作り結晶になります。その尿酸塩の結晶が間接の内面に沈着してしまうのが、痛風発作の原因。尿酸塩は間接以外の部分にも溜まり、特に腎臓には溜まりやすいので痛風の人は腎機能にも注意が必要です。

●痛風にかかりやすいのは男性

痛風患者のほとんどは男性。100人の患者のうち、女性は1、2名ほどしかいないほど男性に多い病気です。その理由は血液中の尿酸濃度(血清尿酸値)の違いにあり、一般的に男性よりも女性のほうが尿酸値が低いもの。女性ホルモンには腎臓からの尿酸の排泄を促す働きがあるためですが、閉経後に女性ホルモンの分泌が減ると尿酸値も少しずつ上昇するので、おおむね50歳以上の年代では男女の尿酸値の差は縮まってきます。

 
痛風を防ぐには
 
痛風を防ぐには、尿酸値を下げることが大切。それには尿酸のもとになるプリン体という物質を減らすのが第一です。

●尿酸値を上昇させる要因

・食生活

「美味しいものにはプリン体が多い」と言われていましたが、厳密な制限は難しいため、最近では痛風患者に対しての食品制限はそれほどされなくなっています。ただし、肥満度が高いほど尿酸値も上がるため、食事の総量を減らすことは大切です。

・遺伝

痛風患者の約2割は、父親や叔父、従兄弟に痛風もちがいます。痛風には遺伝的な体質が関連するので、親類に痛風患者がいる人は注意が必要です。

・アルコール

アルコールを飲むと尿酸値は一時的に上昇します。特にビールにはプリン体が多く含まれるので、痛風には大敵。焼酎やウイスキーなどの蒸留酒にはあまり含まれませんが、アルコールが代謝するときに尿酸値が上がるため、アルコール自体好ましくありません。

・ストレス

様々な病気の原因となるストレス。ストレスや激しい運動は尿酸値を上昇させる原因となります。

・他の病気の影響

腎機能の低下や、血液の病気などによって尿酸値が上がることも。悪性腫瘍が原因で高尿酸血症になることもあるので、注意が必要です。

●尿酸値を下げるには

尿酸値を下げるため日常生活で注意するポイントに、以下のようなものがあります。

・肥満を解消する

摂取カロリーの総量を制限すること、そして標準体重をキープすること。多品目を少しずつ、ゆっくり噛んで食べるよう心がけましょう。

・アルコールを控える

多量の飲酒は避け、特にビールを控えましょう。休肝日をつくるのは、肝臓を含め他の臓器にも良いことです。

・水分を十分とる

尿が1日2リットル以上になるのが理想。そのため、毎日2リットル以上の水分をとるようにしましょう。

・軽い運動をする

激しすぎる運動は尿酸値を上昇させてしまいますが、ウォーキングなどの有酸素運動ならOK。痛風患者に多い高血圧などの合併症にも効果的です。

 
痛風発作が起こった場合は、患部を冷やし、間接を安静にしましょう。痛み止めの内服薬は発作を悪化させることもあるので服用を避け、早めに医師の診断を受けること。

ダイエットと同じく厳しい食事制限を続けることは難しいものですが、日常生活での注意ポイントを守ることが大切。痛風は「尿酸が溜まっているから注意しろ」という身体からのサインと考えましょう。