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痛い、かゆい…冬場の悩み「しもやけ」対策(2010年12月)

 

     
 
12月のテーマ:
痛い、かゆい…冬場の悩み「しもやけ」対策
 朝晩の冷え込みだけでなく、昼間の空気も冷たくなりすっかり冬模様になりました。指先がかじかんだり、足がしびれたり、身体の先端は特に寒さを感じやすい場所です。今回は、そんな場所に起こりやすい「しもやけ」についてのお話です。ひどくなると赤く腫れあがり、日常生活にも影響をきたすことがあるので、予防策をしっかり頭に入れて、しもやけ対策をしてください。
 
     

 

しもやけとは
 

 「しもやけ」は、主に冬におこる皮膚のトラブルで、手や指先、鼻、耳、足や足先に、かゆみや痛み等の炎症がおこるものです。最近では建物の気密性が高まったり、暖房設備が整ってきるので、昔に比べると少なくなっていますが、まだまだ冬になるとしもやけになってしまう人も多いようです。同じ環境下でもしもやけになる人とならない人がいるのは体質の違いですが、一般的に冷え性の人や貧血もちの人は血液循環が悪く、しもやけになりやすいと言われています。

しもやけ
   
しもやけの原因
 

 しもやけになりやすい人は、体質や遺伝も関係していると言われますが、一番の原因は気温が下がって血の流れが悪くなることにあります。手の指先や足のつま先など、血管が細い場所は特に、血流が悪くなりやすいため炎症が起こりしもやけになりやすいのです。温まるとしもやけがかゆくなるのは、血流の悪くなったしもやけの部分に急に血液が流れるためだと考えられています。

また、気温だけでなく湿度も関係すると言われ、昼と夜の気温差が激しく、さらに湿気が多い環境下で起こりやすいと言われています。さらに栄養不足、特にビタミンEの不足が大きく影響するようです。

   
しもやけの症状
 

 先にも紹介したように、しもやけは皮膚のトラブルで、患部にかゆみや痛み等の炎症が起こります。その重度にも個人差がありますが、最初はかゆみや軽度の腫れから始まり、ひどくなるにつれて腫れが赤く広範囲になり、さらに悪化すると腫れた皮膚が硬くなり、かさぶたやあかぎれ、ただれなどができてしまうこともあります。こうなると痛みやかゆみも耐え切れない程になってしまうので、早めの対策と治療を心がけましょう。

   
しもやけを防ぐには
 
手袋や靴下、帽子、耳あてなどで防寒対策をする
 

しもやけになりやすい指先や耳などは、なるべく冷たい空気に触れないようカバーしてあげましょう。

帽子と手袋
窮屈な靴や衣服は避ける
 

足元は元々血液の流れにくいものなので、窮屈な靴は更に血行を悪くしてしまいます。

濡れた手足はよく拭く
 

皮膚が濡れていると、表面温度が下がってしもやけになりやすくなります。ブーツは特にむれやすく、手袋をした指先もむれたり汗をかいていることがあるので注意しましょう。

水仕事にはゴム手袋を
 

食器洗いなどの水仕事は、長時間水に触れているので皮膚が乾燥する暇がなく、しもやけになったりしもやけを悪化させる原因となります。また、洗剤やお湯を使うと皮膚の油分がなくなり荒れやすくなるので、面倒でもゴム手袋をつけるようにしましょう。

お風呂でマッサージする
 

しもやけの最大の原因は血行不良なので、血液の流れを良くするためのマッサージも効果的です。入浴時や入浴後に、ふくらはぎから足先、二の腕から指先にかけて、なでるようにマッサージしてあげましょう。

お風呂でマッサージ
食事・栄養管理に注意する
 

身体を冷やすジュースや生野菜などの摂り過ぎに気をつけ、身体を温めてくれる鍋物や煮物などの温野菜、ビタミンEを多く含むバナナやアボカドなどの食品を積極的に摂りましょう。

 
 
しもやけの辛さは、なった人にしか分からないものです。自分で予防できない子どもや赤ちゃんには、ご家族が気をつけてあげましょう。特に赤ちゃんは汗をかきやすく、その汗が冷えてしもやけになりやすいものです。こまめに汗をふき、下着や靴下を取り替えてあげるようにしてください。大人も子どもも、身体の冷えを防ぐこと、そして栄養管理と体調管理が一番の予防策です。

 

 

冷え込む季節は「重ね着」を上手に活用!(2010年11月)

 

     
 
11月のテーマ:
冷え込む季節は「重ね着」を上手に活用!
 記録的な猛暑から一転、朝晩の冷え込みが厳しい季節になりました。真冬並みの寒さになる日もあるかと思えば、天気の良い日中は暖かかったり、お出かけの際の服装に悩んでしまうことも多いのではないでしょうか。急激な気温の変化は、風邪や体調を崩す原因となります。そこで今回は、重ね着を上手に使った体温調整についてアドバイスします。
 
     

 

重ね着のポイント
 
「空気の層」を意識しよう
 

 
体にぴったりとした衣服のほうが保温効果があると感じてしまいがちですが、実は体を締め付ける窮屈な衣服は、血行が悪くなり、冷え性の原因となるなど逆効果になってしまうことが多いのです。理想的な肌着や洋服は、「サイズにゆとりがあり、体と衣類の間に空気の層ができるもの」です。とはいえ、着膨れしてしまうのは動きづらく見た目も格好悪くなってしまいます。伸縮性に優れ、体の動きに合わせてほどよくフィットするものを選び、上手に重ね着をして暖かく過ごしましょう。

あせも
3つの「首」を温める
 

 
衣服で効果的に体を温めるポイントは、“3つの首”の保温、すなわち、首、手首、足首の保温です。首は、頭を支えているために筋肉が緊張していて血液の流れが悪くなりやすいものですが、マフラーやハイネックの肌着・洋服で首周りを温めると全身の血流が良くなります。手首、足首も同様で、いずれの部位も皮膚が薄いため、そこを温めると皮膚下を流れる血液も同時に温まり、その血が流れることで体全体が温まると考えられています。

あせも
「煙突効果」を上手に使う
 
  重ね着をすることで空気の層が作られると、体温で温まった空気は下から上へとあがっていき、襟元から出て行きます。これが「煙突効果」です。衣服の重ね着で温かく過ごす秘訣は、襟元から出て行こうとする、この温かい空気を出さないようにすること。しかし、襟元を安易にふさぐと湿気がこもってしまい、ムレることになります。これを解消するには、保温性と通気性を兼ねたシルクのスカーフやマフラーが最適です。スカーフは室内でも利用しやすいファッションアイテムなので、熱は出さずに適度に湿気を保ってくれるシルクを上手に活用してみましょう。
   
下半身の保温について
 
冷え対策のポイントは、下半身を温めること
 

 衣服での寒さ対策といえばコートやジャンパーの利用ですが、上半身だけ温めるのは効果的な重ね着とはいえません。冷え対策のポイントは、下半身を温めることなのです。実は、冷えを感じる時は上半身よりも、お腹や下半身のほうが冷えているのです。体の中の血液は、重力のために約70パーセントが下半身に集中しているため、寒さ対策や冷え性の改善には、下半身を温めることが重要です。上半身に厚手のコートをはおるより、まずは下半身に気を配り、靴下やタイツ、腹巻などを使って温めるようにしましょう。

<下半身を保温するポイント>
「腰」を温める
 

 
寒さを敏感にキャッチする腰を温めると、脳が「あまり寒くないかな」と判断し、手足の血管を拡張して多くの血液を手足まで送ります。血流が良くなると熱も同時に伝わることになり、手足も温かくなります。女性は生理中、腹部に血液が集まって手足が冷たくなってしまいますが、腰を温めると手足が温まり、生理痛の予防にもなります。カイロを使ったり、腰まで覆う発熱素材のスパッツなどを上手に利用しましょう。

「お腹」を温める
 

 お腹は内臓に近く、お腹を冷やすということは、内臓を冷やすことと同じです。腸などが機能低下すると便秘や下痢の症状が出てきてしまいますし、また、女性の場合は生理痛、不妊症や生理不順などにもつながってしまいます。最近ではオシャレな腹巻も多く出回っているので、お腹周りの保温に活用しましょう。

「足」を温める
 

 足は、体の中でも血液の巡りがとても悪く、冷えやすい場所です。足先は、保温性のある靴下やタイツ、足首やふくらはぎを足首ウォーマーやレッグウォーマーなどで温めましょう。膝は痛みの出やすい箇所でもあるので、冷える前に保温性のあるタイツやサポーターなどで予防すると良いでしょう。また、ひざの裏は皮下脂肪が少なく、血管が皮膚の表面近くを通るため血液が冷やされやすい場所なので、ひざの裏を蒸しタオルなどで温めると足全体が温まります。

   
重ね着を上手に活用するテクニック
 

 重ね着の利点は、「暑ければ脱げる」ところです。そのため、気温差に合わせての脱ぎ着が難しい「肌着の重ね着」はNG。しかも、暖房などで汗をかいたまま濡れた肌着を身に着けていると、かえって体が冷えてしまいます。肌着、シャツ、セーター、コートと重ね着の基本を守って空気の層をつくり、室内や車内の温度に合わせて脱ぎ着しやすいファッションで過ごしましょう。

 
おススメの重ね着
 

 お腹を冷えから守るための腹巻や通気性のよい素材のタイツ、スパッツをズボンやスカートの下に身につけましょう。天然素材や発熱素材のものを身につけると良いです。また、熱伝導率が低く保温性が高い化学繊維は、吸湿性が低いので汗を吸わず中でムレてしまいます。このムレが冷えの元になってしまうので、シルク・綿・ウールなどの天然素材のものを選ぶようにしましょう。
<上手な重ね着のポイント>

1.暑いと感じたときや汗をかいたときに、脱ぎ着で調節できることを考える

2.「空気の移動をさせない」ことをイメージしながら重ね着の素材に気をつける

3.天然素材のものを利用して、同じ素材が重ならない工夫をする
<着膨れしないポイント>

1.吸湿発熱繊維のインナーを上下で着る

(※肌に直接触れるものはピッタリサイズのインナーで体温を逃がさないこと)

2.首、手、手首、足首に冷気が直接触れない様に、マフラー、帽子、手袋、靴下を使用する

3.コートやジャケットは、生地の織りが密でしっかりとしているもの、厚地の裏地が付いている物を選ぶ

   
 
最近では「ウォームビズ」という言葉もすっかり定着し、室内の暖房だけにたよる防寒対策は時代遅れになりました。保温性に優れた素材を使った衣類、中でも肌着の開発は目覚しく、近年では抗菌効果、ドライ効果、薄さ・軽さなど、様々な機能を併せ持つアイテムが次々と発売されています。これらの機能性下着も上手にとりいれ、オシャレに重ね着を楽しんでみてはいかがですか?

 

 

「タバコ」がもたらす害を考える(2010年10月)

 

     
 
10月のテーマ:
「タバコ」がもたらす害を考える
 今月から増税により値上がりする「タバコ」。値上げ率は1箱100円以上で過去最高と言われ、愛煙家からも「これを機に禁煙・減煙する」という声も聞かれます。その一方で「値上がり前にまとめ買いする」という動きも多く、今回の値上げが喫煙率の低下に繋がるかどうかは未知数。タバコが健康に良くないことは周知の事実ですが、今回は改めてタバコが及ぼす健康被害についてお話します。
 
     

 

なぜ喫煙は「身体に良くない」のか
 

 
喫煙による健康被害は、タバコの煙に含まれる有害物質によって引き起こされます。タバコの煙に含まれる4000種におよぶ化学物質のなかで、3大物質はタール、一酸化炭素(CO)、ニコチンです。例えばタールは発がん性が確認されている物質を含み、一酸化炭素はヘモグロビンによる組織への酸素運搬機能を妨げ、組織の酸素欠乏をもたらします。ニコチンは喫煙により約8秒で脳に達し快楽を伴う精神効果があり、タバコ依存の原因と考えられています。また、この他にも、ホルムアルデヒドやシアン化水素など、実に「200種以上」の有害性が確認されている物質が、タバコの煙の中には含まれているのです。

これらの有害物質は、主流煙(喫煙者がフィルターを通して吸う煙)よりも、副流煙(タバコの火のついた部分から立ち上る煙)のほうに高濃度で含まれており、喫煙者はもちろん、喫煙者の周囲にいる人の健康も脅かすといわれています。

あせも
 
喫煙がもたらす健康被害
 

 
喫煙は「百害あって一利なし」と言われますが、実際にどのような害があるのでしょうか。代表的なものを以下に挙げていきます。

<様々な病気の発病リスクを高める>
心血管疾患
 

 
喫煙は心筋梗塞、脳卒中、突然死、末梢血管障害といった「心血管疾患」の発生率を高めます。心血管疾患は生死に直接関わる重大なものが多く、喫煙習慣によって増加した死因には、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)、心筋変性、大動脈瘤、動脈硬化(下肢の動脈の慢性閉塞症等)、脳血栓、その他の脳血管障害があります。このことからも、喫煙習慣によって死亡リスクが増大することが分かります。

メタボリックシンドローム
 

 
近年注目されている「メタボ」ですが、その発生因子には過食や運動不足の他に喫煙習慣も含まれます。これは喫煙が脂質代謝や糖代謝に影響を与えるためで、これによってメタボリックシンドロームの発症リスクが高まるのです。また、メタボリックシンドロームでかつ喫煙している人は、脳梗塞や虚血性心疾患にかかるリスクが著しく高まり、さらに深刻な健康被害が懸念されます。

あせも
がん
 

 
「喫煙」イコール「肺がん」というイメージがありますが、実は肺以外の部位のがん発生にもタバコは影響します。喫煙習慣のある人とない人で発生率を比較すると、肺がん4.5倍、喉頭がん32.5倍、口腔・咽頭のがん3.0倍、膀胱がん1.6倍、食道がん2.2倍、胃がん1.4倍、膵がん1.6倍、肝がん3.1倍という調査結果も発表されており、そのリスクの大きさを表しています。

がん以外の肺疾患
 

 
喫煙は肺がん以外の肺疾患にも影響し、がん以外の肺疾患で最も多いのは、慢性気管支炎と肺気腫を含む慢性閉塞性肺疾患(COPD )です。

あせも
消化器疾患
 

 
喫煙は食道や胃、膵臓、肝臓等の消化器にも悪影響を及ぼします。喫煙が原因となる疾患、あるいは影響を与える消化器疾患には、胃潰瘍をはじめ、十二指腸潰瘍、膵炎、肝炎、歯周病(歯槽膿漏等)があります。

   
なぜ禁煙できないのか
 

 
では、このような健康被害があるのに、なぜタバコを吸う人がいるのでしょうか。その理由は、タバコに含まれるニコチンにあると考えられます。タバコの主成分であるニコチンは、自律神経のうち、副交感神経を刺激する薬物です。タバコを吸うと、ニコチンは煙に乗って肺に取り込まれ、血流にのって脳に達します。こうして脳の副交感神経系が刺激されると、血圧はやや下がり、呼吸は少し遅くなり、消化器系の活動が促進されます。同時に、休息の時のほっとした気分やくつろいだ気分がもたらされることから「タバコを吸うと落ち着く」「イライラするとタバコが吸いたくなる」といった状態になり、いわゆるタバコ(ニコチン)依存症になると考えられます。

ちなみに、ニコチン中毒と依存症を混同して認識しているケースが見られますが、「中毒」の場合は、タバコの誤飲などによってニコチンの持つ強い毒性が身体に害を及ぼすことを指し、「タバコがやめられない」「吸わないと我慢できない」などの状態は「ニコチン中毒」ではなく「依存症」となります。

あせも
   
 
このような健康被害だけでなく、例えば女性には特に気になる美容面では、喫煙によって「小じわが増える」「顔色が悪くなる」などの影響があると言われる他、経済的にも少なからぬ影響があるのは当然です。最近では禁煙・分煙の区域やお店が増えるなど、社会的にも禁煙を推奨する動きになっているのも、タバコの持つ害を考えれば納得のはず。愛煙者の方は、この機会に禁煙・減煙を考えてみてはいかがでしょうか。

 

 

セルフチェックで乳がんに備えよう(2010年9月)

 

     
 
9月のテーマ:
セルフチェックで乳がんに備えよう
 記録的な猛暑を記録した、今年の夏。熱中症で亡くなられた方もあり、改めて“身近に潜む危険”について考えさせられました。事故や罹患を未然に防ぐことは最も重要ですが、防げなかった場合は早期発見・早期対処が身を守る鍵となります。今回は、特に早期発見が重要とされる乳がんについてお話します。
 
     

 

乳がんとは
 

 
乳がんとは、その名のとおり乳房にできる癌のこと。女性がかかる癌の中で最も発症数が多く、統計によるとなんと日本人女性の18人に1人がかかると言われているほど“身近な”病気なのです。乳がんは、乳房のなかの母乳をつくるところ(小葉組織)や母乳を乳首まで運ぶ管(乳管組織)から発生する悪性腫瘍で、乳がんの約90%は乳管から発生する「乳管がん」です。

ちなみに、乳がんは女性特有の病気と思われがちですが、男性にも乳腺があるため、ごくまれに男性も乳がんを発症することがあります。ただし、男性の発症率は女性の200

300分の1程度と低く、やはり乳がんは女性特有の病気と言えるでしょう。また、年齢別にみた女性の乳がんの罹患率は30歳代から増加し始めて50歳前後にピークを迎え、その後は次第に減少します。30歳代未満の若い女性でも発症する可能性があり、乳がんにかかる人の数は乳がんで死亡する人の数の3倍以上という調査データも報告されています。

乳がんとは
 
乳がんになる原因とは
 

 
乳がんの発生と進行には、女性ホルモン(エストロゲン)が関係あると考えられています。近年の乳がん患者増加の背景には、食生活の欧米化にともなう体格の向上によって初潮から閉経までの期間、つまり女性ホルモンの影響を受ける期間が長くなったことが深く関係していると言われています。また、体外からのホルモンとして、経口避妊薬の使用や閉経後のホルモン補充療法などが一般的なものになったことが乳がんのリスクを高めているとも考えられます。

<乳がんのリスク要因がより高いと考えられる人>
 

・月経 初潮年齢が早い、または閉経年齢が遅い

・出産 初産が遅い、または出産歴がない

・授乳 授乳の経験がない

・体重 閉経後の急激な肥満になった場合

(※ただし、閉経前については肥満者のほうがリスクが低いというデータもあります)

・その他 避妊薬ピルやホルモン剤を常用している、飲酒習慣がある、一親等の乳がん家族歴があるなど

   
乳がんの症状
 

 
乳がんのできやすい部位は乳房の外側の上方が一番多く、ついで内側の上方、外側の下方、乳首付近、内側の下の順になります。乳がんの症状は「しこり」と思われがちですが、乳房のしこりがすべて乳がんというわけではなく、また、初期のころは「しこり」のような自覚症状がなく、痩せてくるなどの全身症状もありません。このように発見が遅れる傾向があるため、乳がん検診を受けて早期に乳がんを発見することが大切なのです。

乳がんは自分で発見できる数少ない癌です。早期発見は乳がんから身を守るための最も有効な手段なので、月1回(生理が終わった1週間後、閉経後の人は毎月10日など日にちを決めて)セルフチェックを習慣づけましょう。

<乳がんのセルフチェックの方法>
 

 
上半身裸になり、両腕を下げて鏡の前に立ち、左右の乳房や乳首の形を覚える。

両腕を上げ、正面、側面、斜めを鏡に映して「乳房のどこかにくぼみやひきつれがないか」「乳首がへこんだり、湿疹のようなただれができていないか」をチェックする。

あおむけに寝て、乳房が垂れずに胸の上に平均に広がるよう、肩の下に座布団などを敷く。

左右の乳房それぞれの、内側半分を調べる。調べる方の乳房がある側の腕を頭の後方に上げ、逆の手の指の腹で軽く圧迫しながらまんべんなく触れる。

※指先でつまむようにして触ると、異常がなくてもしこりのように感じるため、必ず指の腹で行うこと。

左右の乳房それぞれの、外側半分を調べる。調べる方の乳房がある側の腕を自然な位置に下げ、同じように逆の手の指の腹で軽く圧迫しながらまんべんなく触れる。

最後にわきの下に手を入れ、しこりがないか確かめる。

左右の乳首を軽くつまみ、母乳を絞り出すようにして、血液のような異常な液が出ないか調べる。

乳がんのセルフチェック
   
 
毎月のセルフチェックを習慣づけることで、自分の乳房の普段の状態が分かるようになり、異常を早く見つけられるようになります。そして少しでも異常があったらすぐに専門医の診察を受けるのはもちろん、乳がん検診や定期健診も必ず受けるよう心がけてください。どんな病気にも言えることですが、「私は大丈夫」という油断は禁物です!

 

 

運動を始める前に「筋肉痛」を知ろう(2010年8月)

 

     
 
8月のテーマ:
運動を始める前に「筋肉痛」を知ろう
健康のためには身体を動かすことが大切なのは皆さんご存知の通りだと思います。とはいえ、日頃運動をしていない人が運動を始めるのはなかなか難しいもの。健康づくりやダイエットのために一念発起して運動を始めようとする方に、是非知っておいて欲しいのが今回お話する「筋肉痛」についてです。
 
     

 

筋肉痛とは
 

筋肉痛とは、その名の通り「筋肉に生じる痛み」のことで、多くの方が経験したことがあるものだと思います。特に、日頃から運動していない人が急に運動すると起こりやすいものです。

筋肉痛
 
筋肉痛のメカニズム
 

筋肉痛には「筋疲労」によるものと「筋損傷」によるものがあり、一般的なスポーツなどの筋疲労による筋肉痛のメカニズムは、肩こりとよく似ているといわれています。

筋肉痛が起こる原因は、以前は体内にたまった乳酸によるものと考えられていましたが、乳酸はエネルギー源として体内で再利用できるため、現在では乳酸だけが筋肉痛の原因であるとは考えにくいと言われています。

筋疲労による筋肉痛
 

筋疲労は運動して筋肉を使ったことによって引き起こされます。翌日に起こったり、2~3日してから痛む違いについては未だ解明されていませんが、激しい筋収縮により筋肉への酸素供給が間に合わなくなると、エネルギー源(ブドウ糖)が不完全燃焼を起こして体内に乳酸が残り「筋疲労による筋肉痛」が起こると考えられるのが一般的です。また、運動をすると筋肉がダメージを受け、それを修復する時に痛みが出るとの考えもあります。

筋損傷による筋肉痛
 

筋損傷による筋肉痛は、筋肉そのものが破損している時の痛みです。運動を行うと筋肉にはいつも以上に大きな負荷がかかり、筋肉を構成する筋線維やその周辺の組織に細かな傷ができることがあります。その傷を修復する過程で、カリウム、ヒスタミン、プロスタグランジンなどのさまざまな物質が関与し、これらが神経を刺激したり、炎症を引き起こしたりするため痛みを感じるとの説が有力です。

   
筋肉痛を防ぐには
 

運動習慣のない人がいきなり激しい運動を行うと、筋肉痛になりやすいものですが、普段から運動をしている人でも、筋肉に大きな負荷をかけると筋肉痛が起こります。また、急激な運動は筋肉痛ばかりか思わぬ事故やケガの原因にもなりうるので、それらを未然に防ぐためにも運動前の準備はしっかり行うようにしましょう。

 
運動前にはウォーミングアップを!
 

運動前には軽めのジョギングなどで体を温め、ストレッチで身体をほぐしましょう。天候や気温などによってウォーミングアップにかける時間は変わりますが、体を動かして汗ばむ程度を目安に10分~20分行いましょう。

軽めのジョギング
筋肉痛になりやすい運動とは
 

ちなみに、運動の内容によって、筋肉痛になりやすいもの、なりにくいものがあります。例えば、腕を曲げて重いものを引き寄せる動作(コンセントリック収縮)と、腕を伸ばしながら負荷に対抗する動作(エキセントリック収縮)では、腕を伸ばしながら対抗する動作のほうがより筋肉痛になりやすいのです。このことを頭において、どんな動作なら筋肉痛になりにくいのかを考えて運動内容を選ぶのもひとつの手です。

   
筋肉痛をやわらげるには
 

筋肉痛を少しでも軽減させるためには、運動後のクールダウンが第一です。体内にある疲労物質を早く取り除くためには血流を良くすることが大切なので、5分~10分程度の軽いウォーキングの後、15分~30分ほど時間をかけて全身をゆっくりとストレッチするようにしましょう。

ただし、筋肉を伸ばすことでひどい痛みを感じる場合は、筋線維にダメージを受けている可能性が高いため、氷などで患部を十分に冷やします。気持ちよく伸ばせる状態であれば、そのままストレッチを続けましょう。

筋肉痛
 
アイシングの方法
 

痛みがひどい場合は、炎症をおさえるためにアイシングを行いましょう。アイシングの時間は、冷たさを感じなくなるまで15分~20分程度が目安です。氷を使用すると0度以下には冷えないため、凍傷の心配はありません。アイスノンを使う場合は、タオルなどで巻いて直接皮膚に当てないようにします。

 
 
筋肉痛を避けるには、やはり普段から身体を動かす習慣をつけておくことが大切です。また、バランスの良い食生活も筋肉痛の防止に役立つと言われているので、疲労回復に効果のあるとされるビタミンB郡や、身体の調子を整えるミネラルなどを摂ると良いでしょう。せっかく張り切って運動したのに、筋肉痛で辛い思いをすることのないよう、身体を上手にメンテナンスしてあげてくださいね。

 

 

アウトドアの天敵、「虫刺され」の予防と対策(2010年7月)

 

     
 
7月のテーマ:
アウトドアの天敵、「虫刺され」の予防と対策
 夏を迎え、子供たちにとっては夏休みが待ち遠しい季節になりました。キャンプやバーベキュー、海へ山へとアウトドアレジャーに出かける機会も多い季節です。炎天下で遊びまわるため熱中症や日焼けなどの対策も大切ですが、もうひとつ覚えておきたいのが「虫」対策。刺されるとかゆいだけでなく、ときにはショック症状を起こす場合もあるので、お出かけ前にご一読ください。
 
     

 

虫刺されとは
 

 
虫刺されは、節足動物による虫刺症の俗称で、刺咬(しこう)症とも言います。ハチや蚊、ブヨ、ダニ、ノミなどの虫に刺された部分の皮膚が赤くなり、かゆみや痛みを感じる状態のことを指し、腫れたり大きな水泡ができることもあります。蚊に刺された経験は誰でもあると思いますが、同じ虫に刺されても虫刺されの反応(症状)は人によって異なります。また、体質や虫の種類によってはアレルギー反応を起こして危険な状態におちいることもあり、刺された虫の種類によって対処法が違うため、正しい対処法を知っておくことが大切です。

虫刺され
<虫の種類と虫刺されの症状&対処法>
 

 
虫刺されの中でも最も馴染み深いもので、刺されると一過性のかゆみを伴った紅斑や発赤を起こします。血を吸う際に皮膚を突き刺して唾液を注入するため、この唾液がアレルギー反応を引き起こした結果、血管拡張などによってかゆみが起こるとされています。処置としては市販のかゆみ止めや虫刺されの薬を塗るのが一般的ですが、まずは刺された部分を石鹸でよく洗うだけでも症状の軽減が期待できます。また、かゆくて掻いてしまうと傷がついたり二次感染を起こしてしまうこともあるので、なるべく掻かないように注意し、我慢できないときは冷たいおしぼりなどをあてておくとかゆみが抑えられます。

蚊

 

ハチ
 

 
蚊やダニ・ノミなどに比べ、ハチに刺されると激しい痛みが起こったり、赤く腫れあがるのが大きな特徴です。ハチの種類にもよりますが、刺されたら傷口を水で洗い流して毒を出し、針が残っている場合は消毒した毛抜きなどで抜き取りましょう。ハチによる虫刺されの症状は、ハチの毒による直接作用で起こるものと、毒に対するアレルギー反応の2種類があり、アレルギー反応の症状には特に注意が必要です。これは「アナフィラキシーショック」と呼ばれるもので、過去にハチに刺されたことのある人に現れます。吐き気や発熱、血圧低下、ひどいときには意識消失や呼吸困難などの症状を引き起こすこともあり、スズメバチに刺されて毎年のように死亡者が出ているほど危険なものなので、特に注意が必要です。アナフィラキシーショックは刺されて短時間で起こることが多いので、刺されたあとに少しでも異変があれば急いで医師の診断を受けましょう。また、ハチに刺された場合は抗ヒスタミン剤の入った軟膏が有効とされていますが、過信せず、腫れや痛みがひどい場合も直ちに病院へ行きましょう。このとき、刺したハチの死骸があるとより正しく迅速な診断に役立ちます。

ハチ
ダニ・ノミ
 

 
ダニやノミの虫刺されは、赤く腫れたり、かゆみを伴う赤い斑点が出ることが多く、掻きむしってしまうと血が出たり化膿してしまうおそれがあるので、かかないようにするのが第一です。刺された(噛まれた)時にはまず、市販の痒み止め軟膏を塗って様子をみますが、幼児の場合はひどくなることが多いので、ダニに噛まれた様子があれば、念のため診察を受けると良いでしょう。また、ダニは皮膚に長期間食い込んで吸血を続けることもありますが、見つけた場合は無理にはがすと頭部がもげて体内に残り、化膿してしまうこともあるので、こちらの場合も医師の診察を受けましょう。また、吸血されなくても喘息などのアレルギー反応を引き起こすことがあるので、日頃から駆除に気をつけることが大切です。

ダニ・ノミ
   
虫刺されを防ぐポイント
 

 
まずは、肌の露出を抑えることが一番です。暑くてもなるべく長袖長ズボンの服装で、サンダル履きは避けるなど足元にも注意しましょう。首筋にタオルを巻いておくのも良いでしょう。虫除けスプレーや蚊取り線香などを利用するのもおすすめです。また、ハチは黒い色を好む傾向があると言われているので、襲われた際は黒髪や目を狙ってくることがあります。ただし、基本的に一定の距離以上に近づかなければ襲ってくることは少ないので、ハチが飛んでいる場所や巣の近くに不用意に近づかないことで危険はある程度避けられます。万が一襲われた場合は、振り払ったりせずに、姿勢を低くして頭(黒い部分)を隠し、立ち去るまでじっとしているようにしましょう。

虫刺されを防ぐ
   
 
蚊やハチのほかにも、毛虫やムカデなど、人を「刺す」虫はたくさんいます。刺されてかゆいだけならまだしも、前述したようにひどい腫れや痛みなど、思わぬ悪化が起こることもあるので、とにかく患部を掻かないよう注意し、異常が見られた場合には早めに皮膚科など専門医を受診しましょう。

 

 

蒸し暑い季節、「あせも」に気をつけよう!(2010年6月)

 

     
 
6月のテーマ:
蒸し暑い季節、「あせも」に気をつけよう!
 梅雨に入り、ますます湿度が高く蒸し暑い季節になりました。地域によっては真夏日を記録したところもあり、早くも夏バテを経験している方もいるのではないでしょうか。さて、蒸し暑い夏にはどうしても「汗」をかくもの。ただでさえ不快指数の高い季節に汗でじっとりするのは気持ちの良いものではありませんが、発汗は体温調節に欠かせない働きです。今回は、この「汗」が原因で起こる「汗疹(あせも)」についてお話します。
 
     

 

あせもとは
 

 
あせもは、汗を多量にかいたあとに現れる皮膚トラブルのひとつで、汗管(汗のでる管)にかき過ぎた汗とほこりなどが詰まり、汗がきちんと出ないために軽い炎症を起こしたもの。主に小児が発祥することが多く、これは子供が大人と比べて汗をかきやすいことと、汗を出す能力(コントロールする機能)が未発達なためと言われています。また、大人でも発熱性疾患や多汗症の人、厨房や工場内など長時間高温になる環境で働いている人が発症することもあり、冬場でも暖房や厚着などで汗を多量にかくと起こることがあります。

あせも
<あせもの種類と特徴>
水晶様(すいしょうよう)汗疹
  皮膚表面の角層で汗管がふさがり、直径1~3mm程度の小さな水疱(すいほう)が多発しますが、かゆみや痛みなどの症状は特にありません。
紅色(こうしょく)汗疹
  表皮有棘層(ひょうひゆうきょくそう)で汗管がふさがることで起こり、赤い丘疹(きゅうしん)が多発し、軽いかゆみやチクチクした軽い痛みを伴うことがあります。
深在性(しんざいせい)汗疹
  真皮内で汗管がふさがってしまうのが原因で起こり、熱帯地方や高温の環境で長時間作業に従事している人のように、繰り返し高温にさらされると現れます。深在性汗疹の発疹がある部位では汗が出なくなります。
 
あせもの治療について
 

 
あせもの初診は、なるべく皮膚科や皮膚泌尿器科にかかりましょう。水晶様汗疹の場合は特別な治療を行わなくても自然に治ることが多く、紅色汗疹はステロイドクリームの外用のみの治療が、深在性汗疹の場合も高温多湿の環境を避けて自然治癒を待つことがほとんどです。

ただし、かゆみのために掻きすぎてしまうと、化膿菌の感染を受けると「あせものより」と呼ばれる汗腺膿瘍を起こしてしまうこともあります。このように汗疹に細菌感染が加わっている場合は、抗菌薬の感受性検査や組織検査を行い、抗生剤の全身投与や膿を切開して取り除く治療が必要になるケースもあります。

あせもの治療
   
あせもは予防が大切
 

 
あせもは、基本的に症状の軽いものは汗をよくふき取った上で少量のベビーパウダーを使うだけで治りますが、治療について知るよりも、まずは予防を意識しましょう。そのためには、何よりも「汗をかき過ぎない」環境づくりが一番です。厚着をし過ぎないように気をつけ、肌にあたる衣類は汗を吸いやすい素材のもので、皮膚との摩擦が起こりにくい柔らかい生地のものを選ぶようにしましょう。

また、皮膚を清潔に保つのも大切なポイントなので、汗をかいたらこまめにふきとるようにし、可能であれば早めにシャワーを浴びて汗を洗い流しましょう。すでにあせもができている場合の入浴は、患部への刺激を抑えるために、ごしごし洗わないようにし、泡立てた石鹸を手につけてやさしく洗い、ぬるめのお湯を使うと良いでしょう。

汗をかきやすく、自分で室内温度の調整などを行えない小児に対しては特に注意が必要です。上記の予防に加え、就寝時には汗をかきやすい首の後ろに水枕をあてるなどの工夫をするとより効果的です。

あせも予防
   
 
あせもが起こる原因は「汗」ですが、汗をかかないよう冷房の効いた部屋でずっと過ごしていると、体温の調節を行う自律神経に支障をきたしてしまうこともありますし、やはり「夏は汗をかく」という前提での対策が自然な考え。汗をかいたまま放っておくのは気分的にも気持ちの良いものではないので、普段から涼しく清潔な衣類を身につけ、汗をかいたら早めにシャワーを浴びて着替えるようにして気持ちよく過ごしましょう!

 

 

梅雨に備えて「カビ」対策をしよう!(2010年5月)

 

     
 
5月のテーマ:
梅雨に備えて「カビ」対策をしよう!
 初夏を迎え、ようやく上着や暖房器具を片付けても安心な気温になりました。暖かいどころか汗ばむほど暑い日もあり、少し早めに衣替えをしてクールビズを始めている企業もあるようです。今年は特に不安定なお天気が続き、爽やかな初夏というよりも降雨で湿気が高く、蒸し暑い初夏の印象ですが、これから梅雨を迎えると更に湿気や不快指数が上がるのは必至。そこで今回は、湿気が引き起こす「カビ」の弊害と、その予防策についてお話します。
 
     

 

「カビ」の正体と害について
 

 
カビは地球上に4~6万種類が存在していると言われ、「胞子」→「発芽」→「菌糸」→「胞子」のサイクルを繰り返しながら繁殖していきます。家庭内で見られるカビは約10~20種類で、畳や押入れなどに繁殖するコウジカビやススカビ、青カビ、浴室や押入れなどに繁殖するクロカワカビなどがあります。カビは温度20~30度・湿度65%以上で発生し、15度以上・湿度75%以上で繁殖しやすくなるため、梅雨時はカビの成長に一番適した環境となり、その数は冬の5~6倍に増えるとも言われています。

カビ

<カビの繁殖条件>

カビは温度・湿度・栄養・酸素の条件がそろうと繁殖をはじめます。特に、「温度15度以上、湿度75%以上」の環境になると繁殖が活発化するため、これからの時期は要注意です。さらに、家の中にはカビの栄養分となる食品や、ホコリ、石けんカスなどが豊富にあるため、大量繁殖の危険があります。

<カビが健康に及ぼす害>

繁殖したカビは空気中に菌糸や胞子をばらまき、これらを体内に吸い込んでしまうと抵抗力の弱い人は内臓にカビが生える内臓真菌症や肺炎にかかったり、アレルギーなど様々な健康被害が起こることもあります。

カビ過敏症や肺炎(夏型過敏性肺炎)

起床時に鼻水、咳、くしゃみ、微熱が出る

健常者は過度の心配は不要ですが、免疫力が落ちている人は要注意。肺炎を放置すれば肺が繊維化して呼吸困難を起こすこともあるので、風邪でもないのに、朝鼻水が出る、くしゃみが出る、咳が出る、熱がある等のアレルギー症状がある時はカビの除去に努め、呼吸器科を受診しましょう。夏型過敏性肺炎の場合はカビや真菌の胞子(トリコスポロン)が原因の場合があり、免疫力に関係なく遺伝的な体質で反応の度合いが違うため、血液検査でトリコスポロンの抗体を測定することをお薦めします。

副鼻腔真菌症

鼻水、鼻づまり、頬の痛み等の症状が出る

カビ(アスペルギルス等)が鼻の奥の副鼻腔に住み着き、起こる症状。通常は初期症状以上に悪化はしませんが、糖尿病等で免疫力の弱い人は症状が悪化することも。鼻水が片側だけ出てなかなか治らないときは耳鼻科を受診しましょう。

アスペルギルス症

咳やタンなどの症状が出る

免疫機能が低下している人がカビを吸い込んで起きる事が多い。健常者でも極度のストレスや寝不足などで抵抗力が落ちると感染してしまう恐れがあり、感染が分かりにくいという問題があります。肺や気管に感染すると点滴治療が必要となります。

 この他アレルギー性の鼻炎や皮膚炎、気管支喘息、水虫やタムシなど、カビが発症の一因となる病気は意外と多く、注意が必要です。

 
「カビ」の発生・繁殖を防ぐには
 

 
前述したように、カビは20~30度・湿度65%以上で発生し、15度以上・湿度75%以上で繁殖しやすくなります。そのため、カビの発生と繁殖を防ぐには室内の温度と湿度の管理がポイントとなります。

換気
風通しをよくする
  雨が降っていない限り窓を開けて空気を通すようにし、換気扇や扇風機で空気を循環させてよどみをなくします。押入には物を詰め込まないようにし、簀の子などを使用して風を通す、湿気取りを使う、ふすまなどを少し開けておくなどの工夫を。また、家具や家電と壁の間にも湿気がこもりやすいため、隙間を広く取る配置を心がけましょう。

窓を開けて換気をするときの注意点
雨の日は窓を開けない(湿気を呼び込むことになります)
窓は2箇所以上開ける(風が家の中を通り、空気の流れがうまれます)
窓は全開にしない(少しだけ開けるほうが空気の流れがよくなり効率的)
除湿機やエアコンを活用する
  エアコンで室温を下げたり、除湿機能を使って湿度を下げることも大変有効です。ただし、フィルターの掃除をこまめにしておかないと、内部に繁殖したカビの胞子を部屋中撒き散らすことになってしますので月に一度はお掃除しましょう。エアコンを運転する前は送風運転を行ってカビ胞子をとばし、スイッチを切る前も送風運転でエアコン内部をよく乾燥させるよう習慣づけましょう。
室内干しに注意する
  洗濯物を室内に干すと、それだけで室内の湿度が10%以上も上がると言われています。梅雨時期は外に干すのは難しいかもしれませんが、乾燥機を利用するなどして室内干しは極力避けましょう。また、室内干しをする際は居間などの換気をしにくい場所は避け、台所や浴室など換気扇のある場所に干すのもひとつのポイントです。
浴室もしっかり防カビ対策
  浴室は、カビが最も繁殖しやすい場所です。入浴後は、栄養分となる石けんカスや垢などを高温のシャワーで洗い流し、その後、冷水に切り替えて水蒸気が壁や天井に付くのを防ぎます。仕上げにタオルなどで室内の水分を軽くふき取り、窓を開けたり換気扇を回したりして湿気を室外へ逃がしましょう。ただし、浴室と隣接する部屋に湿気が行かないよう、浴室のドアを閉めることを忘れずに!
   
 
カビを発生・繁殖させないためには除湿と、こまめな掃除で清潔な環境を保つことが第一です。ただし、すでにカビが発生している場合に掃除機を使うと胞子を撒き散らすことになるのでご注意を!ちなみに、「カビ」として目に見えているのは、成長した菌糸に胞子がついた状態であり、胞子はすでに室内に充満している恐れがあります。わずかでもカビを見つけたら、すぐに対策をはじめましょう!

 

 

正しい生活リズムで「気象病」を予防しよう!(2010年4月)

 

     
 
4月のテーマ:
正しい生活リズムで「気象病」を予防しよう!
 新年度が始まり季節はすっかり「春」ですが、真冬並みに冷え込むことも多く、まだまだ上着が手放せない気候が続いています。そうかと思えば突然真夏のような暑さになる日もあり、この急激な気温の変化のせいで体調を崩す方が増えているようです。昨今の異常気象が農作物に与える影響が問題になっていますが、実は私たちの健康にとっても「寒い春」は大問題。そこで今回は、気候と健康の関係についてお話します
 
     

 

「気象病」とは
 

 気象が短時間のうちに変動するのにともなって起こる病気や、一定の気象条件下で症状が悪化したり、発作が誘発されたりする一連の病気を「気象病」といいます。このような、気象の諸条件から影響をうける病気には、気管支ぜん息(ぜん息発作)やリウマチ・神経痛などがあります。これらの病気の出現は、例えば「急激な冷え込みで膝が痛む」など、ある気象条件下で起こりやすいことはご存知の通り。ことに、気象条件に急激な変化をおこしやすい前線(寒冷前線など)の通過という条件が大きな影響を及ぼすと言われており、これらの病気の発作は、いずれも前線通過の前後に比べて”通過時”に起こりやすいと発表されています。

また、病気の発作が起こらなくても、「身体がだるい」「頭が痛い」などの不調が起こるケースが多く、これらの症状も「気象病」のひとつと言えます。

<原因>

どのような気象変化が人体に影響を与えているのかという、気象病を引き起こすメカニズムの解明については諸説ありますが、代表的な説は次のとおりです。

前線の接近(低気圧の接近)による減圧

減圧によって体内にヒスタミンまたはヒスタミン様物質が動員され、体内の水分が貯留し、平滑筋の収縮、血管の透過性、炎症反応が増強するため、気象病が誘発されるとする説。

自律神経への影響

気象変化が自律神経に影響を与えるため、最初は副交感神経の感受性が亢進(こうしん)、ついで交感神経の感受性が亢進するとする説。

ストレス

気象の変化をストレスとして考え、下垂体前葉、副腎(ふくじん)皮質系が作動するため起こるとの説。

 基本的に身体に最も強い影響力を及ぼすのは「気温」ですが、「湿度」も比較的影響力が大きいとされ、たとえば不快指数の算出においては、気温と湿度の寄与率は10対2の割合と推測されています。また、気温・湿度環境が同じでも、風と日射量の有無・多少でも影響度が異なり、「雨が降ると古傷が痛む」というケースが実際にあるように、降雨やこれをもたらす気圧配置も影響要素であると言えます。

 
「適応」のメカニズムについて
 

 それでは、気象環境の変化という刺激に対して、私たちの身体はどのように対応しているのでしょうか。エアコンや防寒着などの物理的な対応策以前に、私たちには生命活動を維持するために最も適合した体制を自らの内部に形成していくメカニズムが備わっています。この、気象環境の変化に生理的に対応する過程は「適応」や「順応」と呼ばれています。

「馴化(acclimation)」

寒冷馴化や暑熱馴化など単一の気象要素の変化に対する適応

「順応(acclimatization)」

季節順応や高高度(山地など低圧・低酸素・寒冷な環境)順応のように自然の気候変化に対する適応

 このように、本来私たちの身体は気象の変化に対して自然と「適応」する能力が備わっているものですが、気象の変化が急激なあまり対応できない場合に「気象病」が起こると考えられています。

 

「体内時計」を正しく機能させよう
 

 このように、本来私たちの身体は気象の変化に対して自然と「適応」する能力が備わっているものですが、気象の変化が急激なあまり対応できない場合に「気象病」が起こると考えられています。しかし、残念ながら気象環境の変化を緩やかにする、ということは私たちには不可能です。そこで、気象病を予防・軽減させるには、自分自身の「適応力」をしっかりと働かせることが大切になってきます。 もともと私たちの身体の機能は、1年を通しての気候の変化はもちろん、毎日の昼夜サイクル(地球の自転)と歩調が合うようにできており、光の中での「活動」と、闇の中での「休息」のために、すべての機能を調整し、発揮しています。これを「体内時計」と呼び、ほぼ昼夜サイクルの時間(25時間)を刻みながら、身体の多くの機能に、活動と休息のリズムを与えています。 昼夜サイクルと一致した生活をしている限り、体内時計も太陽の光によって毎日きちんと調整され、リズムも乱れることはありませんが、昼夜サイクルを無視した生活(徹夜や夜更かし朝寝坊など)をすると、体内時計の調子が狂い始め、一日ごとの生活リズムも崩れていきます。すると、からだの機能もバラバラとなり、結局、体調(健康)を損ねてしまうのです。そうならないためには、ともかく毎朝、窓のカーテンを開け、太陽の光をしっかり浴びて、体内時計をリセットすることが大切です。

   
 
身体の「適応力」をしっかり働かせるためには、やはり健康が第一です。なんとなく体調がすぐれない、頭や肩が重いなど、身体の不調を感じている方は、まずは体内時計を正しく合わせて身体の機能を高めるよう気をつけてみてください。

 

 

あなたの「いびき」、大丈夫ですか?(2010年3月)

 

     
 
3月のテーマ:
あなたの「いびき」、大丈夫ですか?
 三寒四温を繰り返し、ようやく春めいた日が続くようになってきました。当センターのある茨城県水戸市でも、偕楽園の梅が見ごろを迎え、春の訪れを感じることができます。さて、暖かくなってくると日中の眠気が気になるもの。また、「春眠あかつきを覚えず」と言われるように、過ごしやすい春の夜の睡眠は気持ちよく、ついつい寝過してしまうこともあるものです。今回は、その睡眠に深い関係のある「いびき」についてのお話です。
 
     

 

激しい「いびき」をかく人は、要注意!
 

いびきは「睡眠時に起こる異常な呼吸音」と定義され、発生源は上あごの奥にある粘膜が、睡眠中の呼吸に伴って過剰に振動するために起こります。いびきの原因は、主に「気道の狭窄」によるものなので、長期間いびきが続くと換気低下が起こり、呼吸機能、ひいては血液循環機能に影響が出てきます。眠っている間のことなので本人には自覚がないものですが、大きないびきは周囲の迷惑となるだけではなく、健康面にも影響があるので注意が必要です。

また、「大きないびきをかいている」と指摘された人は、「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」の疑いもあります。5年前にJR西日本の福知山線脱線事故の原因となったことで広く知られるようになった病気ですが、主な症状である「いびき」や「昼間の強い眠気・居眠り」、「熟眠感がない」などに心当たりのある方は、内科や呼吸器科、耳鼻咽喉科などでの受診をおすすめします。

 

頭痛
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
 
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、10秒以上の呼吸停止を一晩に30回以上、あるいは睡眠1時間あたり5回以上繰り返す状態のことで、閉塞型と中枢型の2つのタイプに大別されます。SASの大多数は閉塞型で、これは睡眠中に空気の通り道である上気道が塞がることにより呼吸が障害されて起こります。

<主な症状>

睡眠中の呼吸停止 大きないびきをかく
熟眠感がない 何度も目が覚める
夜間ひん尿 起床時に頭痛がする
胸焼け 日中の強い眠気・居眠り
集中力低下・疲労感 勃起不全・ED
抑うつ    

<原因>

睡眠時の無呼吸状態は、多くの場合、空気の通り道である気道が、部分的あるいは完全に閉鎖してしまうことによって起こります(閉塞型睡眠時無呼吸症候群)。肥満体の人や顎が小さい人などに多く、これらの人は、もともと気道が狭い構造になっている上に、睡眠中には咽頭の筋肉や舌が緩むため、さらに気道が狭くなって閉じてしまうことが原因です。

 

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の弊害について
 
SASの症状、および合併症は、以下の2つによって引き起こされます。
睡眠中に無呼吸が起こるたびに脳波上の覚醒反応が起こり、深い睡眠を得ることができない。
無呼吸により、肺における酸素の取り込みと二酸化炭素の排出が一時的に停止してしまうため、血液中の酸素不足や炭酸ガスの排出不全が反復され、各種臓器に悪影響を生じる。
この2つが原因となり、覚醒後に熟睡感がなかったり、日中の動悸や冷汗、激しい眠気・居眠りが多くなります。また、血液中の酸素濃度の低下により、心肥大や心不全、高血圧、不整脈、脳障害を合併する可能性もあり、大変危険な病気であることがわかります。
予防と治療について
 
SASの治療には、口腔内装具(マウスピース)を装着しての睡眠や、鼻閉の改善手術、扁桃腺の摘出・軟口蓋形成術などがあります。ただし、無計画な手術はかえって症状を悪化させることもあるため、これらの治療には正しい原因の把握が重要です。治療の際は、必ず専門医に受診するようにしましょう。

また、家庭においての治療や予防には自己管理が必要です。

頭痛
肥満の予防
  肥満は首のまわりに贅肉がつき、のどの内側も狭くなるためにいびきをかきやすくなります。
側臥位睡眠
  仰臥位(仰向け)の睡眠は重力の影響により上気道が閉塞しやすくなります。側臥位(横向き)に寝ることで口蓋垂(こうがいすい)周囲の気道閉塞が軽減するため、SASの発生を抑える効果が期待できます。
アルコール制限
  アルコールは筋肉の緊張低下を起こすため、気道が狭くなりやすくなります。禁酒とまではいかなくても、節酒を心がけることも大切です。
いびき予防絆創膏
  鼻づまりが原因の場合に有効なことが多い対処法で、鼻孔を広げることを目的とした絆創膏を鼻に張って就寝します。

 

たかが「いびき」とあなどってしまいそうですが、米国の調査ではSASのない人と比較して死亡率が3~5倍も高いことがわかっています。また、うたた寝や眠気による交通事故や業務能力の低下など、日常生活にも支障をきたす恐れがあるので、いびきチェックを行うか、専門医に受診して気道狭窄の有無を調べてみましょう。