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運動を始める前に「筋肉痛」を知ろう(2010年8月)

 

     
 
8月のテーマ:
運動を始める前に「筋肉痛」を知ろう
健康のためには身体を動かすことが大切なのは皆さんご存知の通りだと思います。とはいえ、日頃運動をしていない人が運動を始めるのはなかなか難しいもの。健康づくりやダイエットのために一念発起して運動を始めようとする方に、是非知っておいて欲しいのが今回お話する「筋肉痛」についてです。
 
     

 

筋肉痛とは
 

筋肉痛とは、その名の通り「筋肉に生じる痛み」のことで、多くの方が経験したことがあるものだと思います。特に、日頃から運動していない人が急に運動すると起こりやすいものです。

筋肉痛
 
筋肉痛のメカニズム
 

筋肉痛には「筋疲労」によるものと「筋損傷」によるものがあり、一般的なスポーツなどの筋疲労による筋肉痛のメカニズムは、肩こりとよく似ているといわれています。

筋肉痛が起こる原因は、以前は体内にたまった乳酸によるものと考えられていましたが、乳酸はエネルギー源として体内で再利用できるため、現在では乳酸だけが筋肉痛の原因であるとは考えにくいと言われています。

筋疲労による筋肉痛
 

筋疲労は運動して筋肉を使ったことによって引き起こされます。翌日に起こったり、2~3日してから痛む違いについては未だ解明されていませんが、激しい筋収縮により筋肉への酸素供給が間に合わなくなると、エネルギー源(ブドウ糖)が不完全燃焼を起こして体内に乳酸が残り「筋疲労による筋肉痛」が起こると考えられるのが一般的です。また、運動をすると筋肉がダメージを受け、それを修復する時に痛みが出るとの考えもあります。

筋損傷による筋肉痛
 

筋損傷による筋肉痛は、筋肉そのものが破損している時の痛みです。運動を行うと筋肉にはいつも以上に大きな負荷がかかり、筋肉を構成する筋線維やその周辺の組織に細かな傷ができることがあります。その傷を修復する過程で、カリウム、ヒスタミン、プロスタグランジンなどのさまざまな物質が関与し、これらが神経を刺激したり、炎症を引き起こしたりするため痛みを感じるとの説が有力です。

   
筋肉痛を防ぐには
 

運動習慣のない人がいきなり激しい運動を行うと、筋肉痛になりやすいものですが、普段から運動をしている人でも、筋肉に大きな負荷をかけると筋肉痛が起こります。また、急激な運動は筋肉痛ばかりか思わぬ事故やケガの原因にもなりうるので、それらを未然に防ぐためにも運動前の準備はしっかり行うようにしましょう。

 
運動前にはウォーミングアップを!
 

運動前には軽めのジョギングなどで体を温め、ストレッチで身体をほぐしましょう。天候や気温などによってウォーミングアップにかける時間は変わりますが、体を動かして汗ばむ程度を目安に10分~20分行いましょう。

軽めのジョギング
筋肉痛になりやすい運動とは
 

ちなみに、運動の内容によって、筋肉痛になりやすいもの、なりにくいものがあります。例えば、腕を曲げて重いものを引き寄せる動作(コンセントリック収縮)と、腕を伸ばしながら負荷に対抗する動作(エキセントリック収縮)では、腕を伸ばしながら対抗する動作のほうがより筋肉痛になりやすいのです。このことを頭において、どんな動作なら筋肉痛になりにくいのかを考えて運動内容を選ぶのもひとつの手です。

   
筋肉痛をやわらげるには
 

筋肉痛を少しでも軽減させるためには、運動後のクールダウンが第一です。体内にある疲労物質を早く取り除くためには血流を良くすることが大切なので、5分~10分程度の軽いウォーキングの後、15分~30分ほど時間をかけて全身をゆっくりとストレッチするようにしましょう。

ただし、筋肉を伸ばすことでひどい痛みを感じる場合は、筋線維にダメージを受けている可能性が高いため、氷などで患部を十分に冷やします。気持ちよく伸ばせる状態であれば、そのままストレッチを続けましょう。

筋肉痛
 
アイシングの方法
 

痛みがひどい場合は、炎症をおさえるためにアイシングを行いましょう。アイシングの時間は、冷たさを感じなくなるまで15分~20分程度が目安です。氷を使用すると0度以下には冷えないため、凍傷の心配はありません。アイスノンを使う場合は、タオルなどで巻いて直接皮膚に当てないようにします。

 
 
筋肉痛を避けるには、やはり普段から身体を動かす習慣をつけておくことが大切です。また、バランスの良い食生活も筋肉痛の防止に役立つと言われているので、疲労回復に効果のあるとされるビタミンB郡や、身体の調子を整えるミネラルなどを摂ると良いでしょう。せっかく張り切って運動したのに、筋肉痛で辛い思いをすることのないよう、身体を上手にメンテナンスしてあげてくださいね。

 

 

アウトドアの天敵、「虫刺され」の予防と対策(2010年7月)

 

     
 
7月のテーマ:
アウトドアの天敵、「虫刺され」の予防と対策
 夏を迎え、子供たちにとっては夏休みが待ち遠しい季節になりました。キャンプやバーベキュー、海へ山へとアウトドアレジャーに出かける機会も多い季節です。炎天下で遊びまわるため熱中症や日焼けなどの対策も大切ですが、もうひとつ覚えておきたいのが「虫」対策。刺されるとかゆいだけでなく、ときにはショック症状を起こす場合もあるので、お出かけ前にご一読ください。
 
     

 

虫刺されとは
 

 
虫刺されは、節足動物による虫刺症の俗称で、刺咬(しこう)症とも言います。ハチや蚊、ブヨ、ダニ、ノミなどの虫に刺された部分の皮膚が赤くなり、かゆみや痛みを感じる状態のことを指し、腫れたり大きな水泡ができることもあります。蚊に刺された経験は誰でもあると思いますが、同じ虫に刺されても虫刺されの反応(症状)は人によって異なります。また、体質や虫の種類によってはアレルギー反応を起こして危険な状態におちいることもあり、刺された虫の種類によって対処法が違うため、正しい対処法を知っておくことが大切です。

虫刺され
<虫の種類と虫刺されの症状&対処法>
 

 
虫刺されの中でも最も馴染み深いもので、刺されると一過性のかゆみを伴った紅斑や発赤を起こします。血を吸う際に皮膚を突き刺して唾液を注入するため、この唾液がアレルギー反応を引き起こした結果、血管拡張などによってかゆみが起こるとされています。処置としては市販のかゆみ止めや虫刺されの薬を塗るのが一般的ですが、まずは刺された部分を石鹸でよく洗うだけでも症状の軽減が期待できます。また、かゆくて掻いてしまうと傷がついたり二次感染を起こしてしまうこともあるので、なるべく掻かないように注意し、我慢できないときは冷たいおしぼりなどをあてておくとかゆみが抑えられます。

蚊

 

ハチ
 

 
蚊やダニ・ノミなどに比べ、ハチに刺されると激しい痛みが起こったり、赤く腫れあがるのが大きな特徴です。ハチの種類にもよりますが、刺されたら傷口を水で洗い流して毒を出し、針が残っている場合は消毒した毛抜きなどで抜き取りましょう。ハチによる虫刺されの症状は、ハチの毒による直接作用で起こるものと、毒に対するアレルギー反応の2種類があり、アレルギー反応の症状には特に注意が必要です。これは「アナフィラキシーショック」と呼ばれるもので、過去にハチに刺されたことのある人に現れます。吐き気や発熱、血圧低下、ひどいときには意識消失や呼吸困難などの症状を引き起こすこともあり、スズメバチに刺されて毎年のように死亡者が出ているほど危険なものなので、特に注意が必要です。アナフィラキシーショックは刺されて短時間で起こることが多いので、刺されたあとに少しでも異変があれば急いで医師の診断を受けましょう。また、ハチに刺された場合は抗ヒスタミン剤の入った軟膏が有効とされていますが、過信せず、腫れや痛みがひどい場合も直ちに病院へ行きましょう。このとき、刺したハチの死骸があるとより正しく迅速な診断に役立ちます。

ハチ
ダニ・ノミ
 

 
ダニやノミの虫刺されは、赤く腫れたり、かゆみを伴う赤い斑点が出ることが多く、掻きむしってしまうと血が出たり化膿してしまうおそれがあるので、かかないようにするのが第一です。刺された(噛まれた)時にはまず、市販の痒み止め軟膏を塗って様子をみますが、幼児の場合はひどくなることが多いので、ダニに噛まれた様子があれば、念のため診察を受けると良いでしょう。また、ダニは皮膚に長期間食い込んで吸血を続けることもありますが、見つけた場合は無理にはがすと頭部がもげて体内に残り、化膿してしまうこともあるので、こちらの場合も医師の診察を受けましょう。また、吸血されなくても喘息などのアレルギー反応を引き起こすことがあるので、日頃から駆除に気をつけることが大切です。

ダニ・ノミ
   
虫刺されを防ぐポイント
 

 
まずは、肌の露出を抑えることが一番です。暑くてもなるべく長袖長ズボンの服装で、サンダル履きは避けるなど足元にも注意しましょう。首筋にタオルを巻いておくのも良いでしょう。虫除けスプレーや蚊取り線香などを利用するのもおすすめです。また、ハチは黒い色を好む傾向があると言われているので、襲われた際は黒髪や目を狙ってくることがあります。ただし、基本的に一定の距離以上に近づかなければ襲ってくることは少ないので、ハチが飛んでいる場所や巣の近くに不用意に近づかないことで危険はある程度避けられます。万が一襲われた場合は、振り払ったりせずに、姿勢を低くして頭(黒い部分)を隠し、立ち去るまでじっとしているようにしましょう。

虫刺されを防ぐ
   
 
蚊やハチのほかにも、毛虫やムカデなど、人を「刺す」虫はたくさんいます。刺されてかゆいだけならまだしも、前述したようにひどい腫れや痛みなど、思わぬ悪化が起こることもあるので、とにかく患部を掻かないよう注意し、異常が見られた場合には早めに皮膚科など専門医を受診しましょう。

 

 

蒸し暑い季節、「あせも」に気をつけよう!(2010年6月)

 

     
 
6月のテーマ:
蒸し暑い季節、「あせも」に気をつけよう!
 梅雨に入り、ますます湿度が高く蒸し暑い季節になりました。地域によっては真夏日を記録したところもあり、早くも夏バテを経験している方もいるのではないでしょうか。さて、蒸し暑い夏にはどうしても「汗」をかくもの。ただでさえ不快指数の高い季節に汗でじっとりするのは気持ちの良いものではありませんが、発汗は体温調節に欠かせない働きです。今回は、この「汗」が原因で起こる「汗疹(あせも)」についてお話します。
 
     

 

あせもとは
 

 
あせもは、汗を多量にかいたあとに現れる皮膚トラブルのひとつで、汗管(汗のでる管)にかき過ぎた汗とほこりなどが詰まり、汗がきちんと出ないために軽い炎症を起こしたもの。主に小児が発祥することが多く、これは子供が大人と比べて汗をかきやすいことと、汗を出す能力(コントロールする機能)が未発達なためと言われています。また、大人でも発熱性疾患や多汗症の人、厨房や工場内など長時間高温になる環境で働いている人が発症することもあり、冬場でも暖房や厚着などで汗を多量にかくと起こることがあります。

あせも
<あせもの種類と特徴>
水晶様(すいしょうよう)汗疹
  皮膚表面の角層で汗管がふさがり、直径1~3mm程度の小さな水疱(すいほう)が多発しますが、かゆみや痛みなどの症状は特にありません。
紅色(こうしょく)汗疹
  表皮有棘層(ひょうひゆうきょくそう)で汗管がふさがることで起こり、赤い丘疹(きゅうしん)が多発し、軽いかゆみやチクチクした軽い痛みを伴うことがあります。
深在性(しんざいせい)汗疹
  真皮内で汗管がふさがってしまうのが原因で起こり、熱帯地方や高温の環境で長時間作業に従事している人のように、繰り返し高温にさらされると現れます。深在性汗疹の発疹がある部位では汗が出なくなります。
 
あせもの治療について
 

 
あせもの初診は、なるべく皮膚科や皮膚泌尿器科にかかりましょう。水晶様汗疹の場合は特別な治療を行わなくても自然に治ることが多く、紅色汗疹はステロイドクリームの外用のみの治療が、深在性汗疹の場合も高温多湿の環境を避けて自然治癒を待つことがほとんどです。

ただし、かゆみのために掻きすぎてしまうと、化膿菌の感染を受けると「あせものより」と呼ばれる汗腺膿瘍を起こしてしまうこともあります。このように汗疹に細菌感染が加わっている場合は、抗菌薬の感受性検査や組織検査を行い、抗生剤の全身投与や膿を切開して取り除く治療が必要になるケースもあります。

あせもの治療
   
あせもは予防が大切
 

 
あせもは、基本的に症状の軽いものは汗をよくふき取った上で少量のベビーパウダーを使うだけで治りますが、治療について知るよりも、まずは予防を意識しましょう。そのためには、何よりも「汗をかき過ぎない」環境づくりが一番です。厚着をし過ぎないように気をつけ、肌にあたる衣類は汗を吸いやすい素材のもので、皮膚との摩擦が起こりにくい柔らかい生地のものを選ぶようにしましょう。

また、皮膚を清潔に保つのも大切なポイントなので、汗をかいたらこまめにふきとるようにし、可能であれば早めにシャワーを浴びて汗を洗い流しましょう。すでにあせもができている場合の入浴は、患部への刺激を抑えるために、ごしごし洗わないようにし、泡立てた石鹸を手につけてやさしく洗い、ぬるめのお湯を使うと良いでしょう。

汗をかきやすく、自分で室内温度の調整などを行えない小児に対しては特に注意が必要です。上記の予防に加え、就寝時には汗をかきやすい首の後ろに水枕をあてるなどの工夫をするとより効果的です。

あせも予防
   
 
あせもが起こる原因は「汗」ですが、汗をかかないよう冷房の効いた部屋でずっと過ごしていると、体温の調節を行う自律神経に支障をきたしてしまうこともありますし、やはり「夏は汗をかく」という前提での対策が自然な考え。汗をかいたまま放っておくのは気分的にも気持ちの良いものではないので、普段から涼しく清潔な衣類を身につけ、汗をかいたら早めにシャワーを浴びて着替えるようにして気持ちよく過ごしましょう!

 

 

梅雨に備えて「カビ」対策をしよう!(2010年5月)

 

     
 
5月のテーマ:
梅雨に備えて「カビ」対策をしよう!
 初夏を迎え、ようやく上着や暖房器具を片付けても安心な気温になりました。暖かいどころか汗ばむほど暑い日もあり、少し早めに衣替えをしてクールビズを始めている企業もあるようです。今年は特に不安定なお天気が続き、爽やかな初夏というよりも降雨で湿気が高く、蒸し暑い初夏の印象ですが、これから梅雨を迎えると更に湿気や不快指数が上がるのは必至。そこで今回は、湿気が引き起こす「カビ」の弊害と、その予防策についてお話します。
 
     

 

「カビ」の正体と害について
 

 
カビは地球上に4~6万種類が存在していると言われ、「胞子」→「発芽」→「菌糸」→「胞子」のサイクルを繰り返しながら繁殖していきます。家庭内で見られるカビは約10~20種類で、畳や押入れなどに繁殖するコウジカビやススカビ、青カビ、浴室や押入れなどに繁殖するクロカワカビなどがあります。カビは温度20~30度・湿度65%以上で発生し、15度以上・湿度75%以上で繁殖しやすくなるため、梅雨時はカビの成長に一番適した環境となり、その数は冬の5~6倍に増えるとも言われています。

カビ

<カビの繁殖条件>

カビは温度・湿度・栄養・酸素の条件がそろうと繁殖をはじめます。特に、「温度15度以上、湿度75%以上」の環境になると繁殖が活発化するため、これからの時期は要注意です。さらに、家の中にはカビの栄養分となる食品や、ホコリ、石けんカスなどが豊富にあるため、大量繁殖の危険があります。

<カビが健康に及ぼす害>

繁殖したカビは空気中に菌糸や胞子をばらまき、これらを体内に吸い込んでしまうと抵抗力の弱い人は内臓にカビが生える内臓真菌症や肺炎にかかったり、アレルギーなど様々な健康被害が起こることもあります。

カビ過敏症や肺炎(夏型過敏性肺炎)

起床時に鼻水、咳、くしゃみ、微熱が出る

健常者は過度の心配は不要ですが、免疫力が落ちている人は要注意。肺炎を放置すれば肺が繊維化して呼吸困難を起こすこともあるので、風邪でもないのに、朝鼻水が出る、くしゃみが出る、咳が出る、熱がある等のアレルギー症状がある時はカビの除去に努め、呼吸器科を受診しましょう。夏型過敏性肺炎の場合はカビや真菌の胞子(トリコスポロン)が原因の場合があり、免疫力に関係なく遺伝的な体質で反応の度合いが違うため、血液検査でトリコスポロンの抗体を測定することをお薦めします。

副鼻腔真菌症

鼻水、鼻づまり、頬の痛み等の症状が出る

カビ(アスペルギルス等)が鼻の奥の副鼻腔に住み着き、起こる症状。通常は初期症状以上に悪化はしませんが、糖尿病等で免疫力の弱い人は症状が悪化することも。鼻水が片側だけ出てなかなか治らないときは耳鼻科を受診しましょう。

アスペルギルス症

咳やタンなどの症状が出る

免疫機能が低下している人がカビを吸い込んで起きる事が多い。健常者でも極度のストレスや寝不足などで抵抗力が落ちると感染してしまう恐れがあり、感染が分かりにくいという問題があります。肺や気管に感染すると点滴治療が必要となります。

 この他アレルギー性の鼻炎や皮膚炎、気管支喘息、水虫やタムシなど、カビが発症の一因となる病気は意外と多く、注意が必要です。

 
「カビ」の発生・繁殖を防ぐには
 

 
前述したように、カビは20~30度・湿度65%以上で発生し、15度以上・湿度75%以上で繁殖しやすくなります。そのため、カビの発生と繁殖を防ぐには室内の温度と湿度の管理がポイントとなります。

換気
風通しをよくする
  雨が降っていない限り窓を開けて空気を通すようにし、換気扇や扇風機で空気を循環させてよどみをなくします。押入には物を詰め込まないようにし、簀の子などを使用して風を通す、湿気取りを使う、ふすまなどを少し開けておくなどの工夫を。また、家具や家電と壁の間にも湿気がこもりやすいため、隙間を広く取る配置を心がけましょう。

窓を開けて換気をするときの注意点
雨の日は窓を開けない(湿気を呼び込むことになります)
窓は2箇所以上開ける(風が家の中を通り、空気の流れがうまれます)
窓は全開にしない(少しだけ開けるほうが空気の流れがよくなり効率的)
除湿機やエアコンを活用する
  エアコンで室温を下げたり、除湿機能を使って湿度を下げることも大変有効です。ただし、フィルターの掃除をこまめにしておかないと、内部に繁殖したカビの胞子を部屋中撒き散らすことになってしますので月に一度はお掃除しましょう。エアコンを運転する前は送風運転を行ってカビ胞子をとばし、スイッチを切る前も送風運転でエアコン内部をよく乾燥させるよう習慣づけましょう。
室内干しに注意する
  洗濯物を室内に干すと、それだけで室内の湿度が10%以上も上がると言われています。梅雨時期は外に干すのは難しいかもしれませんが、乾燥機を利用するなどして室内干しは極力避けましょう。また、室内干しをする際は居間などの換気をしにくい場所は避け、台所や浴室など換気扇のある場所に干すのもひとつのポイントです。
浴室もしっかり防カビ対策
  浴室は、カビが最も繁殖しやすい場所です。入浴後は、栄養分となる石けんカスや垢などを高温のシャワーで洗い流し、その後、冷水に切り替えて水蒸気が壁や天井に付くのを防ぎます。仕上げにタオルなどで室内の水分を軽くふき取り、窓を開けたり換気扇を回したりして湿気を室外へ逃がしましょう。ただし、浴室と隣接する部屋に湿気が行かないよう、浴室のドアを閉めることを忘れずに!
   
 
カビを発生・繁殖させないためには除湿と、こまめな掃除で清潔な環境を保つことが第一です。ただし、すでにカビが発生している場合に掃除機を使うと胞子を撒き散らすことになるのでご注意を!ちなみに、「カビ」として目に見えているのは、成長した菌糸に胞子がついた状態であり、胞子はすでに室内に充満している恐れがあります。わずかでもカビを見つけたら、すぐに対策をはじめましょう!

 

 

正しい生活リズムで「気象病」を予防しよう!(2010年4月)

 

     
 
4月のテーマ:
正しい生活リズムで「気象病」を予防しよう!
 新年度が始まり季節はすっかり「春」ですが、真冬並みに冷え込むことも多く、まだまだ上着が手放せない気候が続いています。そうかと思えば突然真夏のような暑さになる日もあり、この急激な気温の変化のせいで体調を崩す方が増えているようです。昨今の異常気象が農作物に与える影響が問題になっていますが、実は私たちの健康にとっても「寒い春」は大問題。そこで今回は、気候と健康の関係についてお話します
 
     

 

「気象病」とは
 

 気象が短時間のうちに変動するのにともなって起こる病気や、一定の気象条件下で症状が悪化したり、発作が誘発されたりする一連の病気を「気象病」といいます。このような、気象の諸条件から影響をうける病気には、気管支ぜん息(ぜん息発作)やリウマチ・神経痛などがあります。これらの病気の出現は、例えば「急激な冷え込みで膝が痛む」など、ある気象条件下で起こりやすいことはご存知の通り。ことに、気象条件に急激な変化をおこしやすい前線(寒冷前線など)の通過という条件が大きな影響を及ぼすと言われており、これらの病気の発作は、いずれも前線通過の前後に比べて”通過時”に起こりやすいと発表されています。

また、病気の発作が起こらなくても、「身体がだるい」「頭が痛い」などの不調が起こるケースが多く、これらの症状も「気象病」のひとつと言えます。

<原因>

どのような気象変化が人体に影響を与えているのかという、気象病を引き起こすメカニズムの解明については諸説ありますが、代表的な説は次のとおりです。

前線の接近(低気圧の接近)による減圧

減圧によって体内にヒスタミンまたはヒスタミン様物質が動員され、体内の水分が貯留し、平滑筋の収縮、血管の透過性、炎症反応が増強するため、気象病が誘発されるとする説。

自律神経への影響

気象変化が自律神経に影響を与えるため、最初は副交感神経の感受性が亢進(こうしん)、ついで交感神経の感受性が亢進するとする説。

ストレス

気象の変化をストレスとして考え、下垂体前葉、副腎(ふくじん)皮質系が作動するため起こるとの説。

 基本的に身体に最も強い影響力を及ぼすのは「気温」ですが、「湿度」も比較的影響力が大きいとされ、たとえば不快指数の算出においては、気温と湿度の寄与率は10対2の割合と推測されています。また、気温・湿度環境が同じでも、風と日射量の有無・多少でも影響度が異なり、「雨が降ると古傷が痛む」というケースが実際にあるように、降雨やこれをもたらす気圧配置も影響要素であると言えます。

 
「適応」のメカニズムについて
 

 それでは、気象環境の変化という刺激に対して、私たちの身体はどのように対応しているのでしょうか。エアコンや防寒着などの物理的な対応策以前に、私たちには生命活動を維持するために最も適合した体制を自らの内部に形成していくメカニズムが備わっています。この、気象環境の変化に生理的に対応する過程は「適応」や「順応」と呼ばれています。

「馴化(acclimation)」

寒冷馴化や暑熱馴化など単一の気象要素の変化に対する適応

「順応(acclimatization)」

季節順応や高高度(山地など低圧・低酸素・寒冷な環境)順応のように自然の気候変化に対する適応

 このように、本来私たちの身体は気象の変化に対して自然と「適応」する能力が備わっているものですが、気象の変化が急激なあまり対応できない場合に「気象病」が起こると考えられています。

 

「体内時計」を正しく機能させよう
 

 このように、本来私たちの身体は気象の変化に対して自然と「適応」する能力が備わっているものですが、気象の変化が急激なあまり対応できない場合に「気象病」が起こると考えられています。しかし、残念ながら気象環境の変化を緩やかにする、ということは私たちには不可能です。そこで、気象病を予防・軽減させるには、自分自身の「適応力」をしっかりと働かせることが大切になってきます。 もともと私たちの身体の機能は、1年を通しての気候の変化はもちろん、毎日の昼夜サイクル(地球の自転)と歩調が合うようにできており、光の中での「活動」と、闇の中での「休息」のために、すべての機能を調整し、発揮しています。これを「体内時計」と呼び、ほぼ昼夜サイクルの時間(25時間)を刻みながら、身体の多くの機能に、活動と休息のリズムを与えています。 昼夜サイクルと一致した生活をしている限り、体内時計も太陽の光によって毎日きちんと調整され、リズムも乱れることはありませんが、昼夜サイクルを無視した生活(徹夜や夜更かし朝寝坊など)をすると、体内時計の調子が狂い始め、一日ごとの生活リズムも崩れていきます。すると、からだの機能もバラバラとなり、結局、体調(健康)を損ねてしまうのです。そうならないためには、ともかく毎朝、窓のカーテンを開け、太陽の光をしっかり浴びて、体内時計をリセットすることが大切です。

   
 
身体の「適応力」をしっかり働かせるためには、やはり健康が第一です。なんとなく体調がすぐれない、頭や肩が重いなど、身体の不調を感じている方は、まずは体内時計を正しく合わせて身体の機能を高めるよう気をつけてみてください。

 

 

あなたの「いびき」、大丈夫ですか?(2010年3月)

 

     
 
3月のテーマ:
あなたの「いびき」、大丈夫ですか?
 三寒四温を繰り返し、ようやく春めいた日が続くようになってきました。当センターのある茨城県水戸市でも、偕楽園の梅が見ごろを迎え、春の訪れを感じることができます。さて、暖かくなってくると日中の眠気が気になるもの。また、「春眠あかつきを覚えず」と言われるように、過ごしやすい春の夜の睡眠は気持ちよく、ついつい寝過してしまうこともあるものです。今回は、その睡眠に深い関係のある「いびき」についてのお話です。
 
     

 

激しい「いびき」をかく人は、要注意!
 

いびきは「睡眠時に起こる異常な呼吸音」と定義され、発生源は上あごの奥にある粘膜が、睡眠中の呼吸に伴って過剰に振動するために起こります。いびきの原因は、主に「気道の狭窄」によるものなので、長期間いびきが続くと換気低下が起こり、呼吸機能、ひいては血液循環機能に影響が出てきます。眠っている間のことなので本人には自覚がないものですが、大きないびきは周囲の迷惑となるだけではなく、健康面にも影響があるので注意が必要です。

また、「大きないびきをかいている」と指摘された人は、「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」の疑いもあります。5年前にJR西日本の福知山線脱線事故の原因となったことで広く知られるようになった病気ですが、主な症状である「いびき」や「昼間の強い眠気・居眠り」、「熟眠感がない」などに心当たりのある方は、内科や呼吸器科、耳鼻咽喉科などでの受診をおすすめします。

 

頭痛
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
 
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、10秒以上の呼吸停止を一晩に30回以上、あるいは睡眠1時間あたり5回以上繰り返す状態のことで、閉塞型と中枢型の2つのタイプに大別されます。SASの大多数は閉塞型で、これは睡眠中に空気の通り道である上気道が塞がることにより呼吸が障害されて起こります。

<主な症状>

睡眠中の呼吸停止 大きないびきをかく
熟眠感がない 何度も目が覚める
夜間ひん尿 起床時に頭痛がする
胸焼け 日中の強い眠気・居眠り
集中力低下・疲労感 勃起不全・ED
抑うつ    

<原因>

睡眠時の無呼吸状態は、多くの場合、空気の通り道である気道が、部分的あるいは完全に閉鎖してしまうことによって起こります(閉塞型睡眠時無呼吸症候群)。肥満体の人や顎が小さい人などに多く、これらの人は、もともと気道が狭い構造になっている上に、睡眠中には咽頭の筋肉や舌が緩むため、さらに気道が狭くなって閉じてしまうことが原因です。

 

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の弊害について
 
SASの症状、および合併症は、以下の2つによって引き起こされます。
睡眠中に無呼吸が起こるたびに脳波上の覚醒反応が起こり、深い睡眠を得ることができない。
無呼吸により、肺における酸素の取り込みと二酸化炭素の排出が一時的に停止してしまうため、血液中の酸素不足や炭酸ガスの排出不全が反復され、各種臓器に悪影響を生じる。
この2つが原因となり、覚醒後に熟睡感がなかったり、日中の動悸や冷汗、激しい眠気・居眠りが多くなります。また、血液中の酸素濃度の低下により、心肥大や心不全、高血圧、不整脈、脳障害を合併する可能性もあり、大変危険な病気であることがわかります。
予防と治療について
 
SASの治療には、口腔内装具(マウスピース)を装着しての睡眠や、鼻閉の改善手術、扁桃腺の摘出・軟口蓋形成術などがあります。ただし、無計画な手術はかえって症状を悪化させることもあるため、これらの治療には正しい原因の把握が重要です。治療の際は、必ず専門医に受診するようにしましょう。

また、家庭においての治療や予防には自己管理が必要です。

頭痛
肥満の予防
  肥満は首のまわりに贅肉がつき、のどの内側も狭くなるためにいびきをかきやすくなります。
側臥位睡眠
  仰臥位(仰向け)の睡眠は重力の影響により上気道が閉塞しやすくなります。側臥位(横向き)に寝ることで口蓋垂(こうがいすい)周囲の気道閉塞が軽減するため、SASの発生を抑える効果が期待できます。
アルコール制限
  アルコールは筋肉の緊張低下を起こすため、気道が狭くなりやすくなります。禁酒とまではいかなくても、節酒を心がけることも大切です。
いびき予防絆創膏
  鼻づまりが原因の場合に有効なことが多い対処法で、鼻孔を広げることを目的とした絆創膏を鼻に張って就寝します。

 

たかが「いびき」とあなどってしまいそうですが、米国の調査ではSASのない人と比較して死亡率が3~5倍も高いことがわかっています。また、うたた寝や眠気による交通事故や業務能力の低下など、日常生活にも支障をきたす恐れがあるので、いびきチェックを行うか、専門医に受診して気道狭窄の有無を調べてみましょう。

 

 

知っていますか?「緊張型頭痛」(2010年2月)

 

     
 
2月のテーマ:
知っていますか?「緊張型頭痛」
 1年中で最も寒さが厳しいと言われる大寒を過ぎ、2月4日の「立春」から、暦のうえでは春となります。とはいえ、三寒四温と言われるように、まだまだ寒い日が続く季節。天気のよい日中は暖かくても、夕方を過ぎると急に冷え込むこともあるので、お出かけの際には防寒対策を忘れないようにしたいものです。さて、寒い日は肩や首のコリが起こりやすいものですが、今回はこの「コリ」と密接な関係のある「緊張型頭痛」についてお話します。
 
     

 

緊張型頭痛とは
 
聞きなれない言葉ですが、「緊張型頭痛」とは、実は頭痛の原因の約半数を占める頭痛。働き盛りの壮年層や高齢層に多くみられ、現代病のひとつと言えるものです。

突然頭がズキズキと痛む片頭痛と違い、いつとはなしに重い痛みが始まり、それがだらだらと続く、やっかいな頭痛です。その痛みは「孫悟空の輪をはめられているよう」とも形容され、頭を締め付けられているような圧迫感のある痛みが、緊張型頭痛の特徴です。心当たりのある方は、原因を知って正しい対策を行ってください。

頭痛

<症状>

ズキズキと脈を打つような痛みはないが、ズンとした重い痛み、圧迫されるような痛みを感じる。
多くの場合、肩や首筋に強い“コリ”を伴う。
めまいや身体のだるさを伴うこともある。(※片頭痛に見られるような、嘔吐、目の前がチカチカする、などの症状は見られない)

<原因>

首筋から頭部にかけての筋肉が何らかの原因で緊張する、つまり、肩こりや首筋の“コリ”が原因で起こる。また、長時間パソコンを使うなどの眼精疲労も原因となり、精神的・肉体的ストレスも大きく関係する。
精神的なストレスが原因の場合
  対人関係などによる精神的ストレスがたまると、神経や筋肉の緊張が高まります。この緊張が脳に影響を及ぼし、痛みを調整する機能がうまく働かなくなり、頭痛が続くようになります。
身体的なストレスが原因の場合
  不自然な姿勢などが原因で生じる筋肉への負担が身体的なストレスになり、これによって頭痛が起こります。このような頭痛は、例えば、1日中コンピュータに向かう人に多くみられます。コンピュータに向かう姿勢、すなわち、上半身をやや前かがみにして両手を持ち上げたまま作業する姿勢は、人間にとっては不自然なもので、この姿勢を続けることで身体的なストレスが強くなり、やがて緊張型頭痛を引き起こしてしまうのです。

いずれの場合も、頭のまわりに幾重にもある筋肉が収縮して、頭痛・頭重感を引き起こします。

<特徴>

疲れが出やすい午後以降に痛みが強くなりやすい。
片頭痛に比べ、年齢が高くなってから起こりやすい。
痛みの続く時間が比較的長い。
頭の両側に起こりやすい。

 

緊張型頭痛を予防するには
 
緊張型頭痛の一番の原因は「コリ」ですが、そのコリを引き起こしているのは「ストレス」。

そのメカニズムは、

ストレスによって首筋や肩がこる

頭痛が起こる
振動を避けるため首を動かさなくなる
血行不良になり、首の筋力も弱まる
首筋・肩の疲労が起こりやすくなる
更に頭痛の原因になる

というもの。悪循環に陥りやすい特徴があるため、肩や首筋の“コリ”と、コリの原因となる“ストレスをうまく解消して、この悪循環を断ち切ることが治療と予防のカギとなります。

頭痛
日常生活でストレスをためないよう、趣味や運動などで上手な「息抜き」を心がけ、仕事や車の運転で長時間同じ姿勢をとらなければならない場合は、適度に休憩を入れたり、時々姿勢を変えるようしましょう。
眼精疲労や歯の噛み合わせ、メガネによる圧迫、高さの合っていない枕なども原因となることがあるので、心あたりのあるものは改善しましょう。
緊張型頭痛の治療と薬
 
緊張型頭痛の治療法としては

(1)ストレスをコントロールする

(2)正しい姿勢を心がける

(3)薬を用いる

以上の3つが挙げられます。普段から(1)(2)の治療法を実行し、必要であれば(3)の薬物療法を併用しましょう。精神的なストレスによる頭痛に対しては、軽い抗うつ薬や抗不安薬が有効です。また、身体的なストレスによる頭痛に対しては、筋肉をほぐし、血液の循環をよくする、筋弛緩薬や循環改善薬を一時的に使用します。

そして、薬物療法を用いる際は医師の診断を受け、適切な処方を受けた治療薬を服用するよう注意してください。これは同じ「頭痛」でも、緊張型頭痛に対する治療には基本的に血液の循環をよくする薬を使用し、片頭痛に対しては逆に、血管を収縮する薬を使用しなければならないためです。個人の判断で薬を使用すると、症状に対して正しい薬を選べない恐れもあるので十分な注意が必要なのです。

頭痛には、くも膜下出血や脳腫瘍などの病気が原因となり症状として頭痛が起こる「症候性頭痛」と、頭痛それ自体が病気である「慢性頭痛(機能性頭痛)」があります。慢性頭痛には、今回お話した筋肉のこりが原因の「緊張型頭痛」の他、頭の血管の過度の拡張が原因となる「片頭痛」や「群発頭痛」がありますが、どれも医師の治療が必要な“病気”です。「我慢すれば収まる」と無理をせず、早めに診断と治療を受けましょう。

 

 

「味覚障害」を予防して、おいしく食べよう!(2010年1月)

 

     
 
1月のテーマ:
「味覚障害」を予防して、おいしく食べよう!
 新年明けましておめでとうございます。昨年猛威を振るった新型インフルエンザもようやく落ち着きをみせてきましたが、まだまだ油断は禁物です。新しい年の始まりを祝うと共に、改めて気を引き締め、家族みんなが健康で過ごせるよう生活面を見直しましょう。さて、お正月といえばおせち料理や親戚が集まっての外食やご馳走など、食べる楽しみも多い時期。今回は、そんな「食べる楽しみ」を守る、味覚障害の予防についてお話します。
 
     

 

味覚障害とは
 
 味覚障害とは、読んで字のごとく「味」を感じる味覚に障害が起こる病気。最も多い症状は「味覚の低下」や「味覚の消失・脱失」で、食べ物の味がわからなくなってしまうというものです。この症状は味覚障害患者の約7割に現れており、続いて多いのが『何も食べていないのに苦い味がする』などと訴える「自発性異常味覚」で、この症状は味覚の低下と一緒に現れる場合もあります。この他、本来の味と違った味を感じる「錯味(さくみ)症」や「異味(いみ)症」、何をたべてもおいしく感じられない「悪味(あくみ)症」などがあります。思い当たる症状がある場合は、一度、内科や耳鼻科で受診をしてください。

また、自覚症状がない方も、以下のチェックシートで自己診断をしてみましょう。当てはまる項目が多いほど味覚障害になっている恐れがあるので注意してください。

<味覚障害チェックシート>

最近、食べ物の味がしなくなった気がする
以前に比べて食べ物を「おいしい」と感じなくなった
「甘い」「酸っぱい」「辛い」「苦い」のうち、感じない味がある
口の中に何も入っていないのに味がする
色々な臭いを感じなくなった
舌がピリピリと痛むことがある

 

味覚障害の原因
 
 そもそもなぜ「味覚障害」が起こるのでしょうか?その主な原因は、血液中の亜鉛不足にあると言われています。また、薬の副作用や、肝障害・腎障害・消化器障害・糖尿病などの病気、食品添加物の影響などによっても起こることがあり、原因の分からない「特発性味覚障害」もあります。

このように、「味覚障害」の起こる原因はさまざまですが、共通するのは身体の組織や細胞医必要な亜鉛の欠乏と考えられます。亜鉛が不足することによって舌の奥にある「味蓄(みらい)」という部分の味細胞の生まれ変わりが遅くなり、味細胞の構造や機能に影響を与えるということが最近の研究結果で明らかとなってきたのです。

<味覚障害の主な原因>

血中の亜鉛不足…
  偏った食生活などが原因で、味覚機能を維持するために必要な血液中の亜鉛の量が正常値より少ない状態。
二次的な亜鉛不足…
  薬や食品添加物の影響/一部の薬や食品添加物が、消化管内で亜鉛と結合して体内への亜鉛の取り込みを低下させたり、体内からの亜鉛の排泄を促進させたりする。

全身の病気の影響/糖尿病や肝障害・腎障害は体内での亜鉛の利用を妨げる。消化器障害は体内への亜鉛の取り込みを低下させる。

特発性の味覚障害…
  血液中の亜鉛の量は正常で原因は不明だが、亜鉛を内服すると症状が改善する。

 

味覚障害を予防するために
 
 味覚機能は年齢と共に徐々に低下し、70歳くらいになると一気に低下すると言われています。しかし、味覚障害になるのは高齢者に限ったことではありません。将来的に味覚障害にならないためにも、次のことに気をつけて味細胞が正しく味を感じられるようにしておくことが大切です。

<味覚障害を防ぐためのポイント>

亜鉛を含む食品を食べる。
  厚生労働省では、亜鉛の1日の摂取量の目安を成人男性11~12mg、成人女性9~10mgと発表しています(アメリカやカナダなどの先進国では男性15mg、女性12mgとされている)。しかし、普段の日本人の食事では6~9mgしかとれていないと言われており、目標の半分しか摂取できていないのが現状です。緑茶や抹茶、牡蠣など、亜鉛が含まれている食品を意識的にとるように心掛けましょう。ちなみに、牡蠣は特に亜鉛が豊富で、100g中に40~70mgの亜鉛を含むので、大粒の牡蠣を1つ食べれば1日の目標値を軽くクリアすることができます。
栄養バランスのとれた規則正しい食生活を心がける。
  亜鉛は体内で合成されないため食品からとらなくてはいけませんが、現代は土壌中のミネラルが少なくなった土地が多く、そこで育った作物中のミネラルも減ってきています。ただでさえとりづらくなった亜鉛を効率的に摂取するため、インスタント食品やファストフードなどの手軽な食品を食べるのを控え、栄養バランスのとれた食事を心掛けましょう。

また、加工食品のとりすぎにも注意が必要です。ほとんどの食品にはポリリン酸ナトリウムなどの食品添加物が含まれており、これらは体内から亜鉛を排出してしまうのです。そしてパンや漬物、しょうゆなどの変色・変質を防止するために含まれるフィチン酸という天然物質も、亜鉛を吸収しづらくする作用があるので注意してください。

喫煙・飲酒を控える
  舌に直接刺激を与える喫煙が良くないのはご存知のとおりですが、アルコールも味覚障害の原因のひとつです。これは、アルコールを分解するためにたくさんの亜鉛が使われるためです。また、亜鉛が不足するとアルコールを分解する酵素のはたらきが鈍くなるので、お酒をよく飲む人ほど亜鉛をとるようにしましょう。

 

   その他、「唾液が出るように、よく咀嚼(そしゃく)して食事をする」「朝晩と食後に歯を磨き、口の中を清潔に保つ」なども、普段の生活の中で気をつけて欲しいポイント。いつまでも食事をおいしく食べるため、味覚障害にならないよう普段から気をつけていきましょう。

 

 

身近な危険「やけど」の予防と応急手当について(2009年12月)

 

     
 
12月のテーマ:
身近な危険「やけど」の予防と応急手当について
 早いもので、今年も残すところあと1ヶ月になりました。大掃除など新年を迎える準備に追われ、何かと慌しいこの時期は、注意力も散漫になってしまいがちです。最近でも、電子レンジで加熱するタイプの湯たんぽが破裂する事故が話題となりましたが、やけどは冬場の家庭で起こりやすい事故のひとつ。今回は、やけどの危険を取り除く「予防」と、やけどしてしまった場合の「応急処置」についてお話します。
 
     

 

やけど(火傷・熱傷)とは
 
 やけどとは皮膚に高温が作用したために起こる傷害のこと。皮膚症状が中心ですが、やけどを受けた面積が広ければさまざまな全身症状があらわれることもあり、炎によるものは、熱湯によるものと比べて重症となることが多いとされています。

やけどの範囲が狭く、軽度のものであれば皮膚症状(赤くなったり・はれたり・痛み)のみで数日で治りますが、範囲が広く深いものでは皮膚症状のほかに、血圧の低下やショック状態などのさまざまな全身症状が現れます。やけどの程度は熱の温度と皮膚に作用する時間によって決まり、受傷の深さによってⅠ度からⅢ度までに区分されています。

ちなみに、生命の危険度(重症度)は受傷面積とその深さによって決まり、

成人では受傷面積が体表面積の40%以上で生命の危機、20%以上でショックをおこす危険がある。
乳幼児や老人では30%以上で生命の危機、10%以上でショックをおこす恐れがある。

とされています。体表面積の1%の目安は人の手のひら1つ分ですが、乳幼児の体表面積の10%は大人の手のひらの2つ分に相当するため、特に注意が必要です。

 

やけどを予防するには
   まず第一に、熱を発するものに触れないよう気をつけることが大切です。小さな子供のいる家庭では特に、やかんやポット、使用中のアイロンなどの置き場所には十分注意をしましょう。最近はストーブなどの暖房器具の全体が熱くなることは少なくなりましたが、吹き出し口の近くは高温になることもあるので、うっかり触れないようゲージを設置するなどの対策をしておきましょう。また、ストーブなどの温風や、ホットカーペットの熱を長時間同じ箇所に当て続けていると「低温やけど」の原因にもなります。

その他、炊飯器の蒸気や鍋の蓋など見落としがちな熱源や、熱いお風呂など、意外な場所にもやけどの危険は潜んでいます。

 
やけどの応急処置
 
 やけどを負ってしまった場合は、とにかく早めに冷やすことが大切です。高温のものに触れたときは直接流水で5分以上(直接流水をあてられないときは氷嚢などを使う)、目安としては痛みを感じなくなるまで冷やします。衣服の上から熱湯をかぶってしまった場合は、服や下着、靴下、オムツなど直接皮膚に触れているものは脱がせずに、衣服の上からシャワーなどの流水で冷やすようにしましょう。慌てて脱がせると水泡がつぶれたり、場合によっては皮膚がむけてしまう危険があります。

赤みやヒリヒリ感が数時間で治まる軽度のやけどは問題ありませんが、範囲や広いやけどや深度の深いやけどは、感染を起こしたり跡が残ってしまったりする恐れがあります。やけどは受傷直後の応急処置がもっとも重要で、初期治療が遅れるとキズは深くなり、治療期間も長くかかることになるので、あきらかに軽度のやけど以外は早急に医師の診断を受けましょう。軽度のやけどに見えても、数時間後に水泡ができた場合は、破れて感染を起こす恐れがあるため念のため受診してください。また、口や鼻の周りのやけどは、表面からは見えなくても熱いものを吸い込んで内部にやけどを負っていることもあるので注意が必要です。

 

   熱い味噌汁やコーヒーをうっかりこぼしてしまったり、調理中や調理直後の熱い鍋やフライパンなどに触れてしまったり、ちょっとした不注意で起こるのがやけどの事故。普段から注意するとともに、大掃除の機会にもう一度家庭内に危険がないかどうか見渡してみてください。

 

 

冬場に増える腰の痛みは、正しい「姿勢」で予防しよう(2009年11月)

 

     
 
11月のテーマ:
冬場に増える腰の痛みは、正しい「姿勢」で予防しよう
 寒さが厳しい季節になってきました。身体が冷えると、血行が悪くなり筋肉が収縮してしまうため、関節などの痛みが出やすくなります。日本人の多くが抱える腰の痛みにも寒さや冷えは大敵。筋肉が収縮して固くなっている状態で急激な負荷が加わるといわゆるぎっくり腰になりやすいので、冬場は特に注意が必要です。ぎっくり腰に限らず、腰痛は脊柱(せきちゅう)のS字カーブが崩れることで生じます。脊柱を支える腹筋や背筋をしっかり鍛えると共に、普段の生活から「姿勢」を正しく保つことが大切です。
 
     

 

腰痛の原因と症状
   ひと口に「腰痛」と言ってもさまざまな症状があり、その種類には以下のようなものがあります。

椎間板(ついかんばん)ヘルニア

年齢による骨や筋肉の変化、スポーツなどによる負荷がきっかけで、椎間板の中身がとびだして神経根(しんけいこん)や脊髄(せきずい)を圧迫し、腰の痛みや足のしびれを引き起こします。手術が必要なこともありますが、軽度の場合は姿勢や動作に気をつければ自然に治ることもあります。

 
ぎっくり腰

中腰で重いものを持ったりしたときなど、急に腰が痛くなり動けなくなった状態を、一般的に「ぎっくり腰」といいます。また、軽い腰痛や、原因がはっきりしない腰痛などを総称して、いわゆる「腰痛症」といいます。

 
腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)

比較的高齢者に多い疾患で、脊柱管内が狭くなり、神経を刺激して起こります。初期は腰から足に痛みやしびれが発生して歩きづらくなるものの少し休むとまた歩けるという間歇跛行(かんけつはこう)という症状が出て、しだいに一度に歩ける距離も短くなってきます。

 
筋・筋膜性腰痛

スポーツの後や長時間同じ姿勢でいたときなどに、腰背筋に負担がかかることで起こる症状です。

 
腰椎分離(ようついぶんり)・すべり症

激しいスポーツなどで腰椎の一部の骨が断裂したものが腰椎分離症で、分離した腰椎が前方にズレたものが腰椎すべり症です。

 
変形性腰椎症(へんけいせいようついしょう)

椎間板内の水分が減少することでクッションの役割が低下し、椎体が刺激を受けて骨棘(とげ状の骨)が出てきます。これが神経を刺激し痛みやしびれを引き起こすケースです。40代半ば以上の人に多くみられる症状です。

 
骨粗しょう症(こつそしょうしょう)

骨の密度が減少し、もろくなって起こる「骨粗しょう症」によって腰が痛むケースで、ある程度以上の負担がかかると圧迫骨折を起こすこともあります。高齢の女性に多くみられます。

 
ぎっくり腰や腰痛を予防するには
 
 腰痛には、姿勢や生活習慣、運動やケガなどによる骨の変形や筋肉疲労、内臓疾患、精神的なものなどさまざまな要因があり、専門医の治療が必要な場合もありますが、骨や筋肉などの整形外科的要因から生ずる腰痛は、以下のように普段の姿勢や動作に注意すれば予防・もしくは症状を緩和できます。
物を持ち上げるときは前かがみで持ち上げず、しゃがんで腰を伸ばし、下半身の力を使って持ち上げる。
高い所から物をとるときは、背伸びせずに踏み台を使う。
長時間立ち仕事をする場合は、片足を台にのせ、前屈姿勢になるのを防いで腰への負担を減らす。
長時間運転する際は、シートを立て、腰をまっすぐな姿勢に保つ。また、1時間ごとに車外で軽い運動をするのも効果的です。
長時間デスクワークをする際は、足を組み、時どき左右の足を交互に組みかえるようにして腰が前に傾くのを防ぐ。
高いヒールの靴は腰を前に傾けてしまい悪影響があるため、ヒール高は3cm以内に。
きつい下着を着けていると血行が悪くなるため、身体に跡の残るようなサイズのものは使用しない。
ベッドや布団は柔らかすぎると腰とお尻が沈み、また、硬すぎると腰椎の前彎がなくなり腰に負担がかかるため、脊柱のS字カーブが維持される硬さのものを使用する。
   
腰痛になったときは
 
 腰に痛みを感じたら、マッサージなどを行うよりもまずは休ませましょう。軽度の腰痛なら、腰を支える腰サポーターの使用も有効です。また、痛みがひどい場合は自己判断せず、速やかに医師の診察を受けるようにしましょう。

腰を休ませるには、腰に負担のかかる姿勢や動きを避けることが大切です。

腰をくの字にして、横向きに寝る
お腹の下に座布団を入れてうつぶせに寝る
足の下に座布団を入れてあおむけに寝る

などの姿勢で安静にしましょう。

ぎっくり腰など急に生じた腰痛は、冷やすことで痛みを和らげることができますが、痛みが増すような場合は中止してください。また、長時間の冷やし過ぎは回復を遅らせるおそれがあるので注意が必要です。

   腰痛はそれだけでも辛いものですが、深刻な病気を示唆する危険信号の場合もあります。長期間痛みが続く、腰だけでなく足にも痺れが出る、排泄が困難になるなどの症状が出た場合は、早めに医師の診断を受けるようにしてください。