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健康まめ知識

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省エネもいいけれど…気をつけたいのは熱中症~熱中症の予防と対策~(2011年7月)

 

     
 
7月のテーマ:
省エネもいいけれど…気をつけたいのは熱中症~熱中症の予防と対策~

全国で30度以上の真夏日を記録した6月29日、各地で熱中症による救急搬送が相次いだ。千葉、長野、愛知、奈良で計4人が死亡。18都県で少なくとも309人が搬送され、14人が重症と診断された。(6/29・毎日新聞ニュースより) 東京電力福島第1原発事故の影響で省エネが叫ばれ、クールビズなど冷房を控える動きもありますが、35度以上の極度の猛暑では「熱中症」にかかってしまう方も増えているようです。最悪の場合、命が奪われることもある怖い「熱中症」とは一体どんな症状なのでしょうか?

 
     

 

熱中症の原因と症状
 

 熱中症とは、外気の高温多湿等が原因となって起こる身体の症状の総称のことをいい、軽い症状から重い症状へと症状が進行します。特に怖いのは熱射病(日射病)で高齢者や乳幼児ほど重症化の傾向があります。10代は運動中、20~50代は仕事中、60代以上は日常生活の中で発症するケースが目立ち、特徴的なのは「高温化した室内や車の中」での発症が目立ちます。

[上から軽度→重度の順]
●熱痙攣・・・・・・・体力のある人が汗を多量にかき、水分を補充するが塩分を摂らず、低ナトリウム血症を起こしている場合に生じる。突然のけいれん、激しい痛みと手足痙縮が起こる。

●熱失神・・・・・皮膚の血管が拡がることにより血流量の減少、血圧の低下、脳へ送られる血液量が減少するために起こる。いきなりバタンと倒れる一過性の意識消失がみられることが多い。

●熱疲労・・・・・・・暑さによって塩分(電解質)と水分が過剰に失われる状態で、血液量が減少する。頭痛やめまい、吐き気や脱力感、失神や虚脱がみられることもある。脱水症状ともいう。

●熱射病(日射病)・・・夏の暑い日差しを浴びて歩き回ったときに体温調節機能が失われ、身体がオーバーヒートして起こる。顔が赤くなって息遣いが荒くなる。発汗もみられなくなり、目まいや頭痛、吐き気などの重い症状があり、ひどいときは意識不明になり死亡することもある。

●意識不明、死亡も?

   
熱中症の予防
    熱中症は乳幼児や高齢者などがかかりやすいとされています。また下痢等をしやすいなどの脱水傾向にある方、発熱のある方、また肥満気味や睡眠不足の場合にかかりやすくなります。体調だけでなく、気温や湿度、日差しの強さなどさまざまな気象条件が重なって影響するので注意が必要です。一人で運動や作業をしている場合には熱中症の症状発見が遅くなり危険です。

  1. 発汗によって失った水分と塩分の補給をこまめに行う。スポーツドリンクなど塩分と糖分を飲みやすく配合した飲み物がよい。
  2. 睡眠を十分に取り、運動や作業前には内臓の負担にならない程度に出来るだけ多くの水分を摂取する。十分に休憩を取りながら作業・運動を行うようこころがける。
  3. 直接の日射を防ぎ、風通しの良い場所にいるようにする。風を身体にあてたり、また水をかぶったり、濡れタオルなどで熱を気化させて体温を下げるなどの工夫も必要。
  4. 外出時は日傘・帽子を持参する。吸湿性の良いゆったりした服装をし、太陽光線を吸収する黒や紺など濃い色や長袖は避ける。
  5. 日中は高温になる室内や車中にいるのを避け、室内は窓を開けて風を入れる。(特に体力的に弱い高齢者や乳幼児は注意が必要)気温30度以上、湿度70-80%、風の弱い時等は、特に熱中症が起こりやすいので、時々室温を測ったり、気温に常に気を配る。携帯型の熱中症計などを持ちあるくのも有効。
   
熱中症の治療
 

 おかしいな?と思ったら、まずは体温を下げる事が必要です。木陰や庇、冷房の効いた室内など、涼しい場所で休み、安静にします。そのような場所がない場合には、うちわなどで扇いでなるべく早く体を冷やすようにします。特に氷やアイスノンなどで対処する場合は、脇の下、首、足の付け根など太い血管のある部分を冷やすようにすると効果的です。

 その他の応急処置としてはスポーツドリンクや塩分(塩、塩飴、梅干し、昆布等)を含んだ水分などを飲ませます。その際、冷えすぎた飲料を大量に摂取すると胃痙攣を起こす場合がありますので注意が必要です。また水だけを大量に摂取すると、血中食塩濃度が薄くなり、さらに水分を欲するようになり、余分な水分を尿として排泄する作用が起こって結果として体液の量を回復出来なくなります。

 目まいや筋肉痛など熱中症の軽い症状があれば、早めに医療機関を受診するようにしましょう。

意識がなく、心停止状態にある場合は、[1]救急車を呼ぶ、[2]心臓マッサージを行う、[3]救急車到着前にもAED(自動対外式除細動器)を探して応急処置を取ります。

熱中症は症状によっては死に至る怖い病気であるを十分に認識し、予防する観点からも、暑い日には気温をチェックし、適切な水分補給と体調管理に努めていきたいものですね。

 

 

「食中毒」に気をつけよう!~食中毒の予防と対策~(2011年6月)

 

     
 
6月のテーマ:
「食中毒」に気をつけよう!

~食中毒の予防と対策~

梅雨時期ということもあり、蒸し暑い日やジメジメと湿気の多い日が続いています。スコールのような雨が急に降ったり、日が落ちると冷え込んだり、お天気が不安定な時期でもあるので、お出かけのときには雨具や上着を忘れないようにしたいものです。今回は、前回に引き続き、高温多湿の季節に増える「食中毒」について、普段から気を付けておきたいポイントをご紹介します。

 
     

 

食中毒の原因と症状
 

 食中毒とは、食中毒の原因物質である細菌やウイルスが付着した食品や、有害・有毒な物質が含まれた食品を食べることによって起こる健康被害のことです。

食中毒にかかると、多くの場合嘔吐や腹痛・下痢など、急性の胃腸障害が起こりますが、ほとんどは軽い症状で済むことが多いと言われています。しかし、中にはO-157やフグ毒のように死に至る食中毒もあります。また、体の抵抗力の弱い子どもや高齢者が食中毒にかかると重症化する傾向があるため、特に注意が必要です。

   
「食中毒三原則」
    食中毒を予防するためには、普段から「つけない、増やさない、やっつける」の食中毒三原則を守ることが大切です。

■ポイント1.細菌を「つけない」
●調理をする際の注意

手洗いの敢行はもちろん、健康管理にも注意し、調理に関係ない人や物、ペットなどを調理場に入れない(置かない)こと。
●調理場を清潔にする

まな板や包丁、食器やふきんは常に清潔なものをつかい、調理台やシンク、天井や床なども衛生的な管理を心がけること。
■ポイント2.細菌を「増やさない」
●食材管理の注意

新鮮な材料を使って衛生的な調理を心がけ、生鮮食品はなるべく5℃以下で保存し、早めに使うこと。
●調理後の注意

加熱調理した食事でも、室温で放置せず、調理したらすぐに食べるよう心がけること。
■ポイント3.細菌を「やっつける」
●加熱調理の際の注意

加熱が必要な食材は、75℃以上で1分間以上加熱し、必ず中心部まで火が通るようにすること。
●保存の際の注意

細菌の繁殖を防ぐため、室温での食品保存は避け、冷蔵庫で保存する際は0℃以下の状態で行うこと。

   
普段から気をつけたい「食中毒予防」のポイント
  ■キッチン編
調理を始める前、食事の前には必ず手を洗いましょう。(※手の洗い方については次項で詳しく解説します) また、調理の前にキッチンや調理器具をチェックし、清潔な状態であることを毎回確認する習慣をつけましょう。まな板や包丁などは違う食材を調理するごとに洗浄するようにし、特に生ものを調理した後は熱湯消毒を心がけてください。
■買い物編
食材は新鮮なものを選び、買い置きの際は特に、消費期限に十分注意しましょう。 生ものや冷凍食品など、冷蔵・冷凍が必要な食品は買い物の最後にカゴへ入れ、持ち歩きの時間をなるべく少なくしましょう。また、購入後の車内放置には特に注意し、速やかに帰宅して冷蔵(冷凍)庫へ入れるようにしてください。
■お弁当編

常温に中~長時間置いてから食べることの多いお弁当は、特に注意が必要です。職場・学校などで冷蔵庫が使えれば活用し、無い場合も直射日光の当たる場所などには絶対に置かないようにしましょう。
<お弁当づくりのポイント>
・弁当箱は常に清潔なものを使い、水滴が残ったまま食材を詰めないこと。

・弁当箱はできるだけ通気性のよいものを使用するか、保冷材などを活用して細菌が繁殖しづらい状態を保つ工夫をすること。

・レタスやキュウリなど生野菜は避けること。

・熱い食品(ご飯を含む)を詰めるときは、できるだけ急速に冷ましてから詰めること。

   
食中毒を予防する、手洗い方法
 

  1. 時計や指輪を外し、両手を流水でよくぬらす
  2. 液体石けんを手のひらにとり、手の平をよく洗う

    (※固形石けんは細菌の繁殖場所となっている場合があるため、液体石けんのほうが好ましいとされています)

  3. 両手の甲をよく洗う
  4. 指をからませるようにして、指の間をよく洗う
  5. 片方をじゃんけんのグーの形にし、その手の指の背や爪の部分を洗う

    (反対も同様に)

  6. 親指をもう片方の手のひらで包み、親指をくるくると回すように洗う

    (反対も同様に)

  7. 指先、爪の部分をよく洗う

    (爪はなるべく短くしておき、爪の間も洗う習慣をつける)

  8. 手首をもう片方の手の平で包み、手首をくるくると回すように洗う

    (反対も同様に)

  9. 流水でよく洗い流し、ペーパータオルや乾燥した清潔なタオルで拭く

    (※エプロンや共用のタオルなどでは絶対に手を拭かないこと。また、消毒用アルコールなども併用すると更に効果的ですが、必ず清潔に洗い乾燥させた手に使用するようにしましょう)

   
食中毒にかかったときの対処法
  ■早めの受診が第一!
食中毒は、場合によっては死に至ることもあるということを忘れず、決して軽視はせずに早めに医療機関へ行くようにしてください。

また、受診する際、原因と思われる食品やおう吐物、便などをビニール袋などに入れて持参すると、診断の際の重要な手がかりになります。(※二次感染を防ぐため、取り扱いには十分に注意してください!)
■家庭での対処法

食中毒で下痢やおう吐を繰り返すと、水分が不足し、脱水症状を起こす場合があります。

水分補給と適当な塩分、糖分などの補給に気を配りましょう。

(スポーツドリンクなどは手軽に水分・ミネラルが取れるので便利です)

市販の下痢止め薬などは安易に使用せず、まずは医療機関を受診して医師に相談してください。

くどいようですが、「たかが食中毒」と軽視は禁物です。「いつも食べているから大丈夫」「加熱したから大丈夫」と油断せずに、清潔・安全を確認してから食事をするようにするだけで、食中毒のリスクは減らせます。清潔な手、清潔な食器で、安心して食事を楽しめるよう普段から気をつけていきましょう。

 

 

「食中毒」に気をつけよう!~食中毒の主な原因と症状~(2011年5月)

 

     
 
5月のテーマ:
「食中毒」に気をつけよう!

~食中毒の主な原因と症状~

天気の良い日は半袖一枚でも過ごせるほど暖かい日も増え、初夏を感じる季節になりました。今年は冬から春にかけて寒さが長引いたため、気温の上昇が余計に急激に感じられるようです。気温や湿度が上がるにつれて、心配になるのが「食中毒」です。焼肉店で起こった食中毒事件も記憶に新しいですが、外食時はもちろん、普段の食事にも潜む「食中毒」の危険についてお話します。

 
     

 

食中毒とは
 

 食中毒とは、食中毒の原因となる細菌やウイルスが付着した食品や、有害・有毒な物質が含まれた食品を食べることによって起こる健康被害のことです。

主な症状は嘔吐や腹痛・下痢などの胃腸障害ですが、なかにはO-157やフグ毒のように死に至る食中毒もあります。特に、体の抵抗力の弱い子どもや高齢者が食中毒にかかると重症化する傾向があります。また、食中毒は通常、人から人へ感染することはありませんが、腸管出血性大腸菌(O-157など)、ノロウイルス、赤痢菌などは感染力が強く、人から人へ感染することがあります。

   
食中毒のおもな原因物質と症状
    食中毒には様々な原因物質がありますが、微生物(細菌、ウイルスなど)によるもの、化学物質によるもの、自然毒によるもの及びその他に大別されます。

■細菌によるもの
<感染型>
・サルモネラ菌

生肉、生レバー、食肉加工品、生野菜、生ケーキ、うなぎ、スッポンなどに含まれます。 潜伏時間は約5時間から72時間(平均12時間)で、主な症状は、下痢・腹痛・発熱(38℃~40℃) の他、嘔吐・頭痛・脱力感・倦怠感を起こすこともあります。
・腸炎ビブリオ

近海の魚介類(赤貝、アオヤギなど)、魚介類調理後の包丁、まな板などに含まれます。

潜伏時間は約10時間~24時間(短い場合で2~3時間)で、主な症状は、激しい腹痛、下痢などの他、発熱・はき気・おう吐を起こす場合もあります。
・カンビロバクター

生肉(鳥肉など)、サラダ(二次汚染)などに含まれます。

潜伏期間は1~7日(平均2~3日)と長いことが特徴で、主な症状は、下痢、腹痛及び発熱の他、倦怠感、頭痛、めまい、筋肉痛等が起こることがあります。

初期症状は、風邪と間違われることもあります。
・エルシニア菌

牛乳、乳製品、食肉などの冷蔵品に含まれます。

潜伏期間は2~5日と長く、摂取した菌の量や感染者の年齢によって、症状は異なりますが、発熱、下痢、おう吐などの症状の他、虫垂炎のような猛烈な腹痛におそわれることもあります。
<毒素型>
・黄色ブドウ球菌

おにぎり、弁当、菓子、煮豆などに含まれます。

潜伏時間は1~5時間(平均3時間)と他の食中毒菌に比べて短いのが特徴で、激しい嘔吐・腹痛の他、下痢を伴うこともあります。発熱は少ないようです。
・ボツリヌス菌

缶詰・びん詰め食品、いずし(魚肉発酵食品)などに含まれます。

潜伏時間は8時間~36時間で、主な症状は吐き気、嘔吐など。症状が進むと視力障害、言語障害、えん下困難(食品を飲み込みづらくなる)などの神経症状が現れ、重症例では呼吸困難により死亡することもあります。
<その他>
・病原性大腸菌(O-157、O-111など)

生レバー、生肉、生サラダ、水などに含まれます

潜伏期間は3~5日で、激しい腹痛と大量の新鮮血を伴う下痢が特徴ですが、健康な成人では軽症または無症状に終わる場合もあります。また、まれに下痢が始まってから数日から2週間以内に貧血や急性腎不全などの症状を呈する溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症することがあります。

ベロ毒素という毒素をつくるので若年齢層の子供などは重症化しやすい傾向があります。

■ウイルスによるもの
<感染型>
・ノロウイルス

生かきなどの食品、水などに含まれます。

潜伏時間は24~48時間で、吐き気やおう吐・腹痛・下痢・発熱(38℃以下)があります。通常はこれらの症状が1~2日続いた後に治癒し、後遺症もありませんが、体力の弱い乳幼児、高齢者で脱水症状がひどい場合には、水分と栄養補給を行い、体力が消耗しないように注意が必要です。

また、感染しても発症しない場合や軽い風邪のような症状で済む場合もあります。
・A型肝炎ウイルス

水、野菜、魚介類などに含まれる。

感染力が強く集団発生することがある食中毒で、急性肝炎、全身倦怠感、発熱、筋肉痛、黄疸、肝腫大、食欲不振などが起こります。

■自然毒によるもの
<植物性自然毒>
・毒キノコ

ツキヨタケ、カキシメジ、クサウラベニタケ、ニガクリタケなど。 摂取後30分~3時間程度で徴候があらわれ、嘔吐、下痢、腹痛などの症状が起こります。 ドクツルタケ・シロタマゴテングタケは猛毒で、徴候は6時間以上(通常10時間程度)であらわれ、嘔吐、腹痛、下痢、肝臓腎臓の機能障害を起こして死亡する例もあるので特に注意が必要です。
・ジャガイモの芽

ジャガイモはソラニンやチャコニン(カコニン)などの有毒なアルカロイド配糖体を含みます。特に皮層や芽に多く含まれ、嘔吐、下痢、呼吸困難などの症状が起こることがあります。
・青梅、アンズなどの種子

体内呼吸を止め、死に至らせる猛毒・青酸(シアン)配糖体を含んでいます。
<動物性自然毒>
・フグ毒

フグの種類や季節によってテトロドトキシンを含む部位や毒の強さは異なりますが、フグ毒はテトロドトキシンと呼ばれ、青酸カリの1,000倍の毒力を持っています。 潜伏期間は1時間以内と短く、くちびるや手の感覚麻痺、運動神経麻痺、呼吸麻痺などが起こり、発症後死に至るまでは8時間以内と言われています。

■化学毒によるもの
・農薬など

洗剤や農薬等が混入した食品を摂取したことによって起こる食中毒です。 嘔吐や腹痛、下痢が起き、ときにはめまいやショック症状を伴うこともあり、死亡する危険性もあります。
・ヒ素・銅・鉛・錫など

金属の器具や容器から溶出したスズや銅を摂取したことによって起こる食中毒や、ヒスタミンを多く蓄積した食品を摂取したことによるアレルギー様の食中毒があります。 嘔吐や腹痛、下痢が起こる他、めまいやショック症状を伴うことがあり、死亡する危険性もあります。

このように、食中毒は場合によっては死に至ることもあるため、軽視は絶対に禁物です。食中毒かな?と思ったら、すぐに医療機関で受診をしてください。その際、原因と思われる食品やおう吐物、便などをビニール袋などに入れて持参すると、診断の際の重要な手がかりになります。(※二次感染を防ぐため、取り扱いには注意してください)

食中毒を防ぐには、細菌(原因物質)を体内に入れないことが大原則です。次回は食中毒の予防と対策についてお話します。

 

 

「地震酔い」 その予防と対処法!(2011年4月)

 

     
 
4月のテーマ:
「地震酔い」 その予防と対処法!

未曾有の大震災発生から半月以上が経過しました。被災者の皆さまには、心よりお見舞い申し上げます。

避難所での生活を余儀なくされている方はもちろん、その他の地域の方も、余震や原発事故への不安、停電や断水、そして様々な品不足など、普段通りの暮らしができない環境に身を置く方が多いのではないでしょうか。しかし、こんな時だからこそ、体調管理にはいつも以上に気を付けたいものです。今回は、被災者の後遺症ともいえる“地震酔い”についてお話しします。

 
     

 

地震酔いとは
 

地震酔いとは 東北地方太平洋地震の発生以降、「実際には地震が起きていないのに揺れているような感じがする」「目まいや吐き気がする」といった症状を訴える人が増えているそうです。大地震を経験した恐怖や、悲惨な光景をテレビや新聞で見たショックなどがトラウマになっているせいとも考えられますが、それ以上に、頻発する余震の影響で「地震酔い」をしている可能性が高いと思われます。
地震酔いは「後揺れ症候群」と呼ばれるもので、車酔いや船酔いなどのいわゆる「乗り物酔い」と同じようなものです。

車酔いや船酔いは視覚情報と平衡感覚とのズレが原因で起こりますが、地震酔いも原理は同じで、地震によって身体が揺れることで三半規管で感じる平衡感覚がズレて、目まいや吐き気などが起こります。
しかし何故「実際には揺れていないのに揺れているように感じる」のでしょうか。これは、人間の脳が持つ「速度蓄積機構」というシステムのせいで、このシステムが、直前に体験した加速度や回転の情報を蓄えているために地震酔いが起こると考えられます。皆さんも、ボートやつり橋など、常に揺れている環境でしばらく過ごした後、大地の上に立っているのに自分の体が揺れているような感覚を味わったことはないでしょうか?地震酔いもこの感覚と同じような現象ですが、地震は特に、人体に与える刺激が強いため揺れている感覚が残りやすいのです。

地震酔いは周期が長い揺れが何度も続く場合に起きやすいと言われますが、今回の地震は揺れた時間が長く、余震の回数も多いため、症状を訴える人が多いようです。また、「余震がまた来るかも知れない」という不安感やストレスが揺れに対する感覚を敏感にさせ、症状を強めている面もあると考えられています。

   
地震酔いの対処法
   乗り物酔いをした場合、車や船から降りてしばらくすれば自然と治るのと同じように、地震酔いもほとんどの人は時間の経過と共に症状は軽くなっていきます。また、余震が今後も続いたとしても、徐々に揺れに身体が慣れて、地震酔いする人は減ってくると考えられています。

吐き気や目まい、不快感など、どうしても耐えられない場合は乗り物酔いの薬を服用すると楽になる場合もありますが、まずは深呼吸してリラックスするようにしてみましょう。
<地震酔いの予防・対処法>

ゆっくり深呼吸して、リラックスする 深呼吸
 

気分の悪さを感じたら、ゆっくりとした呼吸で気持ちを落ち着けましょう。一度大きくゆっくりと息を吐き出すと、自然と呼吸が整います。その後、緊張や不快感が和らぐまで何度か深呼吸を繰り返してみましょう。

身体をリラックスさせる
 

ネクタイやベルト、身体を締め付ける下着などは避け、身体をリラックスさせるようにしましょう。

水分を摂る
  口の渇きを感じる場合は、水やスポーツドリンクなどを飲みましょう。飲み水が不足しているときも、少し口に含むだけでも効果があるので試してみてください。ハーブティーなど、香りにリラックスやリフレッシュ効果のあるドリンクでも良いでしょう。
しっかりと睡眠をとる
 

睡眠不足も地震酔いの要因になります。不安や寒さなどでなかなか寝付けない場合もあるかと思いますが、睡眠不足は様々な体調不良の原因にもなるので、睡眠の確保を心がけてください。

睡眠
ストレスをためない
 

不自由な暮らしや不安のせいでストレスが溜まりやすくなっていますが、身体だけでなく神経を休めることも大切です。軽い運動をする、温かいお茶を飲む、周囲の人と会話するなど、気持ちを楽にできることを見つけてください。

 
 
皮肉な話ですが、今回の大震災がきっかけで、「命の大切さ」や「生きている喜び」に改めて気づいたという声も多く聞かれます。不安な日々が続いていますが、一日も早い復興のためにも、健康第一で前向きに過ごして行きましょう!

 

 

疲れ目、ドライアイ ―「目」のトラブルは現代病!?(2011年3月)

 

     
 
3月のテーマ:
疲れ目、ドライアイ

―「目」のトラブルは現代病!?

暦の上ではすっかり「春」ですが、冷え込む日も多く、本格的な春の日差しが待ち遠しい今日この頃。風邪やインフルエンザへの対策もまだまだ気が抜けませんが、花粉症にも注意が必要な厳しい春になりそうです。花粉症の症状のひとつに「目のかゆみ」がありますが、眼精疲労やドライアイなど、「目」に起こるトラブルは意外と多いもの。今回は“目の健康”についてお話します。

 
     

 

目の乾き・疲れはパソコンや携帯が原因!?
 

 多くの人が、普段あまり意識せずに行っている「まばたき」。通常、人は3秒間に1回まばたきをすると言われています。そして、まばたきをすることで、目の表面が乾き切る前に新たな涙の層が形成され、眼球を乾燥から守っているのです。

しかし、パソコンのディスプレイや携帯電話の画面を“凝視”する機会・時間の多い現代の生活スタイルによって、まばたきの回数が減少する傾向にあるようです。まばたきの回数が減ると涙の蒸発量も増え、当然目が乾きやすくなります。

目の表面に定着した涙の層が乾き始めるまでの時間はおおよそ10秒ですが、5秒間目を開けていられない場合は、ドライアイの可能性がかなり高いと言われています。

   
ドライアイとは
   「ドライアイ」とは、涙液の量的不足または質的異常が原因で、様々な自覚症状とともに種々の角結膜上皮障害をきたす状態を総称したものです。ドライアイの原因にはいくつかのタイプがあり、加齢とともに涙の排出機能不全が起こる、自己免疫疾患で涙腺が破壊される、などが挙げられますが、最も多いのはまばたきの減少や涙液成分の異常で角膜表面が乾燥し、目が“肌荒れ”したような状態になる「蒸散型」と言われています。

「蒸散型」のドライアイは中高年の男性にも多く見られ、「目が乾く」「目が疲れる」などの自覚症状から、老眼と思い込んで放っておいてしまう方も多いようですが、ドライアイの場合は治療による症状の改善が可能なので、心当たりのある方は一度専門医の受診をお勧めします。

   
ドライアイが起こるわけ
   目の表面を覆う「涙」は3層構造になっていて、一番外側から、被膜として水分の蒸発を防ぐ「油層」、栄養分と水分を含む「水層」、角膜表面に直接触れる「ムチン層」で構成されています。油層の主成分は、まつげの生え際にあるマイボーム腺から分泌されますが、なんらかの原因でこの腺が目詰まりすると、油層の形成が不完全になって水層の蒸発が早まることになります。

一方、ムチン層の主成分はタンパク質で、粘性が高く、涙を目の表面に定着させる働きがあります。この成分は結膜のゴブレット細胞から分泌されていますが、炎症などでこの分泌機能が低下すると、涙の「保持力」が落ちてしまいます。また、それ以外でもコンタクトレンズの長期使用などで角膜表面が荒れている場合も、涙が瞳の表面に定着しにくくなります。

さらに、現代人の多くが抱える「ストレス」もドライアイの原因のひとつと言われ、緊張による交感神経優位の状態によって涙が枯れることもあるそうです。
<ドライアイの症状>
 通常は「眼が乾く」という症状をはじめ、「眼がゴロゴロする(異物感がある)」「眼が痛い」「光や風が眼にしみる」などが主体です。しかし、その他にも、「眼が疲れる」「眼がかゆい」「不快感がある」「めやにが出やすい」「すぐ充血する」など、眼精疲労やアレルギー性結膜炎あるいは慢性結膜炎に類似した症状を示すことも少なくありません。さらに悪化してくると、「目を開けていられない」「頭が痛い・重い」「肩がこる」「気分が悪い」などの症状が起こることもある、軽視できない病気なのです。
<ドライアイセルフチェック>

以下のような症状が現れた場合は、「ドライアイ」の恐れがあります。早めに専門医を受診するようにしましょう。

■目が乾く

■目がショボショボする

■目がゴロゴロする

■光がまぶしい

■目が痛む

■視界がかすむ

■10秒間以上目を開けていられない

■目が重たく感じる

■視力が低下してきた

   
ドライアイ・疲れ目を防ぐ「目の体操」
   目がかゆいからといってこするのは良くありませんが、目の周りのツボ指圧は、目の病気の予防・改善効果が期待できます。自分の指だけで手軽に行えるので、仕事や勉強の合間、起床時などに行ってみてください。
<目の体操(ツボ指圧)>

1. まゆ頭のやや下の骨のくぼみにある天応(てんおう)のツボを、指先や指関節で40~50回、ゆっくり数えながら指圧する。
2. 目頭と鼻の付け根との境にある睛明(せいめい)のツボを、指先や指関節で40~50回、ゆっくり数えながら指圧する。
3. 鼻腔の端から左右にそれぞれ指3本ぶん、ほおの中央部にある四白(しはく)のツボを、指先や指関節で40~50回、ゆっくり数えながら指圧する。

※眼球を指で押さないよう、十分注意しながら行ってください。

 
 
花粉症の方は特に、目のかゆみや異物感、不快感などが起こりやすい季節ですが、その症状ももしかすると「ドライアイ」が原因かもしれません。デスクワークの方など、長時間パソコンの画面を見る習慣のある方も要注意!ドライアイの治療の基本は点眼薬の使用ですが、体質や症状によって最適な点眼薬も違うので、眼科で処方してもらうのが一番です。目を大切にして、快適な「春」を送りましょう。

 

 

新しい年の始まりは、準備運動から!(2011年1月)

 

     
 
1月のテーマ:
新しい年の始まりは、準備運動から!
2011年、新しい年が始まりました。「一年の計は元旦にあり」と言いますが、皆さんも今年の目標はたてましたか?さて、毎日の生活や人生設計に目標は大切ですが、健康づくりにも目標の設定は欠かせません。ただし、目標達成のためにはしっかりした計画づくりと準備がポイント。そこで今回は、準備運動についてお話します。
 
     

 

ウォーミングアップの大切さ
 

ウォーミングアップとは、読んで字のごとく体を温めることで、筋肉を温めて柔軟性をよくする準備運動のことです。身体を動かすことは健康づくりのために欠かせませんが、突然激しい運動をすると、筋肉や心肺機能などに大きなダメージを与えてしまうことがあります。特に、普段運動をしていない人や、気温の低い冬場には「ウォーミングアップ」がとても大切です。

しもやけ
   
ウォーミングアップの目的
 
運動に適した動きの準備
 

ウォーミングアップのストレッチを行うと、体温や筋肉の温度が上昇し、筋肉の柔軟性がよくなります。そして、さまざまな関節の可動域(関節の動く範囲)を高めることができます。柔軟性や関節の可動域を高めることで、運動向きの動作を行いやすくなります。

身体への負担やケガの予防
 

本格的に身体を動かす前に、あらかじめウォーミングアップで身体に軽い負荷をかけておくことで、運動中の事故やケガを予防する効果が期待できます。突然激しい運動をすると、心肺機能や筋肉に大きなダメージを与えてしまうことがあるので、運動前には必ず準備運動を行いましょう。

運動するための心の準備
 

肉体的な準備も大切ですが、運動するための「心の準備」も忘れずに!ウォーミングアップを行うことで血液中のアドレナリン量が増え、「これから運動するぞ」という心の準備が整って、より意欲的に取り組めるようになりますよ。

   
ウォーミングアップのやり方
 

準備運動のやり方や内容は、季節や気温、普段の運動習慣などによって違います。例えば、気温の高い夏場なら軽く身体を動かすだけでも筋肉が温まりますが、気温の低い冬場は筋肉も冷えて硬くなっています。そこで、まずは軽くジョギングをするなどして、少し身体を温めてからストレッチをするといった「準備運動のための準備」も必要になってきます。運動前の状態に応じてアレンジしながら、体を動かして汗ばむ程度を目安に10分~20分の準備運動を行いましょう。

   
万能ウォーミングアップ
 
1. 腕を前後に振る
 

肩を中心に、大きく円を描くように前後に腕を振ります。肩関節から腕を動かすイメージで、リズミカルに10回程度行います。左右対称に行うだけではなく、左腕は前、右腕は後ろといった非対称な動きも取り入れるとより効果的です。

2. 腕を左右に振る
 

出来るだけ腕を遠くに伸ばすイメージで、両腕を外側に開いたり、交差させたりしながら10回程度行います。大きく肩を回すのもよいでしょう。

腕を左右に振る
3. 足を前後に振る
  サッカーボールを蹴るようなイメージで、軽くリズミカルに足を前後に10回程度振って太ももの筋肉を伸ばします。身体の軸がブレないように注意しながら行いましょう。
4. 足を左右に振る
 

今度は、足を左右に10回程度振ります。壁などを使って身体を支え、骨盤がずれないように意識するとうまく振ることができます。

5. 上体ひねり
 

背中を壁などに向けた状態で、左右の手が同じ位置についているか確認して行います。骨盤をできるだけ動かさないで、背中から胸を大きくひねる動作をゆっくりと10回程度繰り返しましょう。ひねった時に左右差がある場合は、柔軟性の低い方をプラス3回程度行ってください。

6. 側屈
 

頭を頭上に組んで、骨盤が動かないように注意しながら上体を大きく左右に10回程度曲げます。体幹の横の部分が伸ばされます。

側屈
 
 
健康維持のためのジョギングやダイエットなど、「今年こそは…!」と意気込んで始めるのはいいことですが、ケガをしては台無しです。特に、運動習慣のない人がいきなり激しい運動を行うと、筋肉痛になるだけでなく、筋肉の腱や靭帯などいろんな部位を痛めるリスクが高くなります。運動前の準備はしっかり行い、楽しく身体を動かしましょう。

 

 

痛い、かゆい…冬場の悩み「しもやけ」対策(2010年12月)

 

     
 
12月のテーマ:
痛い、かゆい…冬場の悩み「しもやけ」対策
 朝晩の冷え込みだけでなく、昼間の空気も冷たくなりすっかり冬模様になりました。指先がかじかんだり、足がしびれたり、身体の先端は特に寒さを感じやすい場所です。今回は、そんな場所に起こりやすい「しもやけ」についてのお話です。ひどくなると赤く腫れあがり、日常生活にも影響をきたすことがあるので、予防策をしっかり頭に入れて、しもやけ対策をしてください。
 
     

 

しもやけとは
 

 「しもやけ」は、主に冬におこる皮膚のトラブルで、手や指先、鼻、耳、足や足先に、かゆみや痛み等の炎症がおこるものです。最近では建物の気密性が高まったり、暖房設備が整ってきるので、昔に比べると少なくなっていますが、まだまだ冬になるとしもやけになってしまう人も多いようです。同じ環境下でもしもやけになる人とならない人がいるのは体質の違いですが、一般的に冷え性の人や貧血もちの人は血液循環が悪く、しもやけになりやすいと言われています。

しもやけ
   
しもやけの原因
 

 しもやけになりやすい人は、体質や遺伝も関係していると言われますが、一番の原因は気温が下がって血の流れが悪くなることにあります。手の指先や足のつま先など、血管が細い場所は特に、血流が悪くなりやすいため炎症が起こりしもやけになりやすいのです。温まるとしもやけがかゆくなるのは、血流の悪くなったしもやけの部分に急に血液が流れるためだと考えられています。

また、気温だけでなく湿度も関係すると言われ、昼と夜の気温差が激しく、さらに湿気が多い環境下で起こりやすいと言われています。さらに栄養不足、特にビタミンEの不足が大きく影響するようです。

   
しもやけの症状
 

 先にも紹介したように、しもやけは皮膚のトラブルで、患部にかゆみや痛み等の炎症が起こります。その重度にも個人差がありますが、最初はかゆみや軽度の腫れから始まり、ひどくなるにつれて腫れが赤く広範囲になり、さらに悪化すると腫れた皮膚が硬くなり、かさぶたやあかぎれ、ただれなどができてしまうこともあります。こうなると痛みやかゆみも耐え切れない程になってしまうので、早めの対策と治療を心がけましょう。

   
しもやけを防ぐには
 
手袋や靴下、帽子、耳あてなどで防寒対策をする
 

しもやけになりやすい指先や耳などは、なるべく冷たい空気に触れないようカバーしてあげましょう。

帽子と手袋
窮屈な靴や衣服は避ける
 

足元は元々血液の流れにくいものなので、窮屈な靴は更に血行を悪くしてしまいます。

濡れた手足はよく拭く
 

皮膚が濡れていると、表面温度が下がってしもやけになりやすくなります。ブーツは特にむれやすく、手袋をした指先もむれたり汗をかいていることがあるので注意しましょう。

水仕事にはゴム手袋を
 

食器洗いなどの水仕事は、長時間水に触れているので皮膚が乾燥する暇がなく、しもやけになったりしもやけを悪化させる原因となります。また、洗剤やお湯を使うと皮膚の油分がなくなり荒れやすくなるので、面倒でもゴム手袋をつけるようにしましょう。

お風呂でマッサージする
 

しもやけの最大の原因は血行不良なので、血液の流れを良くするためのマッサージも効果的です。入浴時や入浴後に、ふくらはぎから足先、二の腕から指先にかけて、なでるようにマッサージしてあげましょう。

お風呂でマッサージ
食事・栄養管理に注意する
 

身体を冷やすジュースや生野菜などの摂り過ぎに気をつけ、身体を温めてくれる鍋物や煮物などの温野菜、ビタミンEを多く含むバナナやアボカドなどの食品を積極的に摂りましょう。

 
 
しもやけの辛さは、なった人にしか分からないものです。自分で予防できない子どもや赤ちゃんには、ご家族が気をつけてあげましょう。特に赤ちゃんは汗をかきやすく、その汗が冷えてしもやけになりやすいものです。こまめに汗をふき、下着や靴下を取り替えてあげるようにしてください。大人も子どもも、身体の冷えを防ぐこと、そして栄養管理と体調管理が一番の予防策です。

 

 

冷え込む季節は「重ね着」を上手に活用!(2010年11月)

 

     
 
11月のテーマ:
冷え込む季節は「重ね着」を上手に活用!
 記録的な猛暑から一転、朝晩の冷え込みが厳しい季節になりました。真冬並みの寒さになる日もあるかと思えば、天気の良い日中は暖かかったり、お出かけの際の服装に悩んでしまうことも多いのではないでしょうか。急激な気温の変化は、風邪や体調を崩す原因となります。そこで今回は、重ね着を上手に使った体温調整についてアドバイスします。
 
     

 

重ね着のポイント
 
「空気の層」を意識しよう
 

 
体にぴったりとした衣服のほうが保温効果があると感じてしまいがちですが、実は体を締め付ける窮屈な衣服は、血行が悪くなり、冷え性の原因となるなど逆効果になってしまうことが多いのです。理想的な肌着や洋服は、「サイズにゆとりがあり、体と衣類の間に空気の層ができるもの」です。とはいえ、着膨れしてしまうのは動きづらく見た目も格好悪くなってしまいます。伸縮性に優れ、体の動きに合わせてほどよくフィットするものを選び、上手に重ね着をして暖かく過ごしましょう。

あせも
3つの「首」を温める
 

 
衣服で効果的に体を温めるポイントは、“3つの首”の保温、すなわち、首、手首、足首の保温です。首は、頭を支えているために筋肉が緊張していて血液の流れが悪くなりやすいものですが、マフラーやハイネックの肌着・洋服で首周りを温めると全身の血流が良くなります。手首、足首も同様で、いずれの部位も皮膚が薄いため、そこを温めると皮膚下を流れる血液も同時に温まり、その血が流れることで体全体が温まると考えられています。

あせも
「煙突効果」を上手に使う
 
  重ね着をすることで空気の層が作られると、体温で温まった空気は下から上へとあがっていき、襟元から出て行きます。これが「煙突効果」です。衣服の重ね着で温かく過ごす秘訣は、襟元から出て行こうとする、この温かい空気を出さないようにすること。しかし、襟元を安易にふさぐと湿気がこもってしまい、ムレることになります。これを解消するには、保温性と通気性を兼ねたシルクのスカーフやマフラーが最適です。スカーフは室内でも利用しやすいファッションアイテムなので、熱は出さずに適度に湿気を保ってくれるシルクを上手に活用してみましょう。
   
下半身の保温について
 
冷え対策のポイントは、下半身を温めること
 

 衣服での寒さ対策といえばコートやジャンパーの利用ですが、上半身だけ温めるのは効果的な重ね着とはいえません。冷え対策のポイントは、下半身を温めることなのです。実は、冷えを感じる時は上半身よりも、お腹や下半身のほうが冷えているのです。体の中の血液は、重力のために約70パーセントが下半身に集中しているため、寒さ対策や冷え性の改善には、下半身を温めることが重要です。上半身に厚手のコートをはおるより、まずは下半身に気を配り、靴下やタイツ、腹巻などを使って温めるようにしましょう。

<下半身を保温するポイント>
「腰」を温める
 

 
寒さを敏感にキャッチする腰を温めると、脳が「あまり寒くないかな」と判断し、手足の血管を拡張して多くの血液を手足まで送ります。血流が良くなると熱も同時に伝わることになり、手足も温かくなります。女性は生理中、腹部に血液が集まって手足が冷たくなってしまいますが、腰を温めると手足が温まり、生理痛の予防にもなります。カイロを使ったり、腰まで覆う発熱素材のスパッツなどを上手に利用しましょう。

「お腹」を温める
 

 お腹は内臓に近く、お腹を冷やすということは、内臓を冷やすことと同じです。腸などが機能低下すると便秘や下痢の症状が出てきてしまいますし、また、女性の場合は生理痛、不妊症や生理不順などにもつながってしまいます。最近ではオシャレな腹巻も多く出回っているので、お腹周りの保温に活用しましょう。

「足」を温める
 

 足は、体の中でも血液の巡りがとても悪く、冷えやすい場所です。足先は、保温性のある靴下やタイツ、足首やふくらはぎを足首ウォーマーやレッグウォーマーなどで温めましょう。膝は痛みの出やすい箇所でもあるので、冷える前に保温性のあるタイツやサポーターなどで予防すると良いでしょう。また、ひざの裏は皮下脂肪が少なく、血管が皮膚の表面近くを通るため血液が冷やされやすい場所なので、ひざの裏を蒸しタオルなどで温めると足全体が温まります。

   
重ね着を上手に活用するテクニック
 

 重ね着の利点は、「暑ければ脱げる」ところです。そのため、気温差に合わせての脱ぎ着が難しい「肌着の重ね着」はNG。しかも、暖房などで汗をかいたまま濡れた肌着を身に着けていると、かえって体が冷えてしまいます。肌着、シャツ、セーター、コートと重ね着の基本を守って空気の層をつくり、室内や車内の温度に合わせて脱ぎ着しやすいファッションで過ごしましょう。

 
おススメの重ね着
 

 お腹を冷えから守るための腹巻や通気性のよい素材のタイツ、スパッツをズボンやスカートの下に身につけましょう。天然素材や発熱素材のものを身につけると良いです。また、熱伝導率が低く保温性が高い化学繊維は、吸湿性が低いので汗を吸わず中でムレてしまいます。このムレが冷えの元になってしまうので、シルク・綿・ウールなどの天然素材のものを選ぶようにしましょう。
<上手な重ね着のポイント>

1.暑いと感じたときや汗をかいたときに、脱ぎ着で調節できることを考える

2.「空気の移動をさせない」ことをイメージしながら重ね着の素材に気をつける

3.天然素材のものを利用して、同じ素材が重ならない工夫をする
<着膨れしないポイント>

1.吸湿発熱繊維のインナーを上下で着る

(※肌に直接触れるものはピッタリサイズのインナーで体温を逃がさないこと)

2.首、手、手首、足首に冷気が直接触れない様に、マフラー、帽子、手袋、靴下を使用する

3.コートやジャケットは、生地の織りが密でしっかりとしているもの、厚地の裏地が付いている物を選ぶ

   
 
最近では「ウォームビズ」という言葉もすっかり定着し、室内の暖房だけにたよる防寒対策は時代遅れになりました。保温性に優れた素材を使った衣類、中でも肌着の開発は目覚しく、近年では抗菌効果、ドライ効果、薄さ・軽さなど、様々な機能を併せ持つアイテムが次々と発売されています。これらの機能性下着も上手にとりいれ、オシャレに重ね着を楽しんでみてはいかがですか?

 

 

「タバコ」がもたらす害を考える(2010年10月)

 

     
 
10月のテーマ:
「タバコ」がもたらす害を考える
 今月から増税により値上がりする「タバコ」。値上げ率は1箱100円以上で過去最高と言われ、愛煙家からも「これを機に禁煙・減煙する」という声も聞かれます。その一方で「値上がり前にまとめ買いする」という動きも多く、今回の値上げが喫煙率の低下に繋がるかどうかは未知数。タバコが健康に良くないことは周知の事実ですが、今回は改めてタバコが及ぼす健康被害についてお話します。
 
     

 

なぜ喫煙は「身体に良くない」のか
 

 
喫煙による健康被害は、タバコの煙に含まれる有害物質によって引き起こされます。タバコの煙に含まれる4000種におよぶ化学物質のなかで、3大物質はタール、一酸化炭素(CO)、ニコチンです。例えばタールは発がん性が確認されている物質を含み、一酸化炭素はヘモグロビンによる組織への酸素運搬機能を妨げ、組織の酸素欠乏をもたらします。ニコチンは喫煙により約8秒で脳に達し快楽を伴う精神効果があり、タバコ依存の原因と考えられています。また、この他にも、ホルムアルデヒドやシアン化水素など、実に「200種以上」の有害性が確認されている物質が、タバコの煙の中には含まれているのです。

これらの有害物質は、主流煙(喫煙者がフィルターを通して吸う煙)よりも、副流煙(タバコの火のついた部分から立ち上る煙)のほうに高濃度で含まれており、喫煙者はもちろん、喫煙者の周囲にいる人の健康も脅かすといわれています。

あせも
 
喫煙がもたらす健康被害
 

 
喫煙は「百害あって一利なし」と言われますが、実際にどのような害があるのでしょうか。代表的なものを以下に挙げていきます。

<様々な病気の発病リスクを高める>
心血管疾患
 

 
喫煙は心筋梗塞、脳卒中、突然死、末梢血管障害といった「心血管疾患」の発生率を高めます。心血管疾患は生死に直接関わる重大なものが多く、喫煙習慣によって増加した死因には、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)、心筋変性、大動脈瘤、動脈硬化(下肢の動脈の慢性閉塞症等)、脳血栓、その他の脳血管障害があります。このことからも、喫煙習慣によって死亡リスクが増大することが分かります。

メタボリックシンドローム
 

 
近年注目されている「メタボ」ですが、その発生因子には過食や運動不足の他に喫煙習慣も含まれます。これは喫煙が脂質代謝や糖代謝に影響を与えるためで、これによってメタボリックシンドロームの発症リスクが高まるのです。また、メタボリックシンドロームでかつ喫煙している人は、脳梗塞や虚血性心疾患にかかるリスクが著しく高まり、さらに深刻な健康被害が懸念されます。

あせも
がん
 

 
「喫煙」イコール「肺がん」というイメージがありますが、実は肺以外の部位のがん発生にもタバコは影響します。喫煙習慣のある人とない人で発生率を比較すると、肺がん4.5倍、喉頭がん32.5倍、口腔・咽頭のがん3.0倍、膀胱がん1.6倍、食道がん2.2倍、胃がん1.4倍、膵がん1.6倍、肝がん3.1倍という調査結果も発表されており、そのリスクの大きさを表しています。

がん以外の肺疾患
 

 
喫煙は肺がん以外の肺疾患にも影響し、がん以外の肺疾患で最も多いのは、慢性気管支炎と肺気腫を含む慢性閉塞性肺疾患(COPD )です。

あせも
消化器疾患
 

 
喫煙は食道や胃、膵臓、肝臓等の消化器にも悪影響を及ぼします。喫煙が原因となる疾患、あるいは影響を与える消化器疾患には、胃潰瘍をはじめ、十二指腸潰瘍、膵炎、肝炎、歯周病(歯槽膿漏等)があります。

   
なぜ禁煙できないのか
 

 
では、このような健康被害があるのに、なぜタバコを吸う人がいるのでしょうか。その理由は、タバコに含まれるニコチンにあると考えられます。タバコの主成分であるニコチンは、自律神経のうち、副交感神経を刺激する薬物です。タバコを吸うと、ニコチンは煙に乗って肺に取り込まれ、血流にのって脳に達します。こうして脳の副交感神経系が刺激されると、血圧はやや下がり、呼吸は少し遅くなり、消化器系の活動が促進されます。同時に、休息の時のほっとした気分やくつろいだ気分がもたらされることから「タバコを吸うと落ち着く」「イライラするとタバコが吸いたくなる」といった状態になり、いわゆるタバコ(ニコチン)依存症になると考えられます。

ちなみに、ニコチン中毒と依存症を混同して認識しているケースが見られますが、「中毒」の場合は、タバコの誤飲などによってニコチンの持つ強い毒性が身体に害を及ぼすことを指し、「タバコがやめられない」「吸わないと我慢できない」などの状態は「ニコチン中毒」ではなく「依存症」となります。

あせも
   
 
このような健康被害だけでなく、例えば女性には特に気になる美容面では、喫煙によって「小じわが増える」「顔色が悪くなる」などの影響があると言われる他、経済的にも少なからぬ影響があるのは当然です。最近では禁煙・分煙の区域やお店が増えるなど、社会的にも禁煙を推奨する動きになっているのも、タバコの持つ害を考えれば納得のはず。愛煙者の方は、この機会に禁煙・減煙を考えてみてはいかがでしょうか。

 

 

セルフチェックで乳がんに備えよう(2010年9月)

 

     
 
9月のテーマ:
セルフチェックで乳がんに備えよう
 記録的な猛暑を記録した、今年の夏。熱中症で亡くなられた方もあり、改めて“身近に潜む危険”について考えさせられました。事故や罹患を未然に防ぐことは最も重要ですが、防げなかった場合は早期発見・早期対処が身を守る鍵となります。今回は、特に早期発見が重要とされる乳がんについてお話します。
 
     

 

乳がんとは
 

 
乳がんとは、その名のとおり乳房にできる癌のこと。女性がかかる癌の中で最も発症数が多く、統計によるとなんと日本人女性の18人に1人がかかると言われているほど“身近な”病気なのです。乳がんは、乳房のなかの母乳をつくるところ(小葉組織)や母乳を乳首まで運ぶ管(乳管組織)から発生する悪性腫瘍で、乳がんの約90%は乳管から発生する「乳管がん」です。

ちなみに、乳がんは女性特有の病気と思われがちですが、男性にも乳腺があるため、ごくまれに男性も乳がんを発症することがあります。ただし、男性の発症率は女性の200

300分の1程度と低く、やはり乳がんは女性特有の病気と言えるでしょう。また、年齢別にみた女性の乳がんの罹患率は30歳代から増加し始めて50歳前後にピークを迎え、その後は次第に減少します。30歳代未満の若い女性でも発症する可能性があり、乳がんにかかる人の数は乳がんで死亡する人の数の3倍以上という調査データも報告されています。

乳がんとは
 
乳がんになる原因とは
 

 
乳がんの発生と進行には、女性ホルモン(エストロゲン)が関係あると考えられています。近年の乳がん患者増加の背景には、食生活の欧米化にともなう体格の向上によって初潮から閉経までの期間、つまり女性ホルモンの影響を受ける期間が長くなったことが深く関係していると言われています。また、体外からのホルモンとして、経口避妊薬の使用や閉経後のホルモン補充療法などが一般的なものになったことが乳がんのリスクを高めているとも考えられます。

<乳がんのリスク要因がより高いと考えられる人>
 

・月経 初潮年齢が早い、または閉経年齢が遅い

・出産 初産が遅い、または出産歴がない

・授乳 授乳の経験がない

・体重 閉経後の急激な肥満になった場合

(※ただし、閉経前については肥満者のほうがリスクが低いというデータもあります)

・その他 避妊薬ピルやホルモン剤を常用している、飲酒習慣がある、一親等の乳がん家族歴があるなど

   
乳がんの症状
 

 
乳がんのできやすい部位は乳房の外側の上方が一番多く、ついで内側の上方、外側の下方、乳首付近、内側の下の順になります。乳がんの症状は「しこり」と思われがちですが、乳房のしこりがすべて乳がんというわけではなく、また、初期のころは「しこり」のような自覚症状がなく、痩せてくるなどの全身症状もありません。このように発見が遅れる傾向があるため、乳がん検診を受けて早期に乳がんを発見することが大切なのです。

乳がんは自分で発見できる数少ない癌です。早期発見は乳がんから身を守るための最も有効な手段なので、月1回(生理が終わった1週間後、閉経後の人は毎月10日など日にちを決めて)セルフチェックを習慣づけましょう。

<乳がんのセルフチェックの方法>
 

 
上半身裸になり、両腕を下げて鏡の前に立ち、左右の乳房や乳首の形を覚える。

両腕を上げ、正面、側面、斜めを鏡に映して「乳房のどこかにくぼみやひきつれがないか」「乳首がへこんだり、湿疹のようなただれができていないか」をチェックする。

あおむけに寝て、乳房が垂れずに胸の上に平均に広がるよう、肩の下に座布団などを敷く。

左右の乳房それぞれの、内側半分を調べる。調べる方の乳房がある側の腕を頭の後方に上げ、逆の手の指の腹で軽く圧迫しながらまんべんなく触れる。

※指先でつまむようにして触ると、異常がなくてもしこりのように感じるため、必ず指の腹で行うこと。

左右の乳房それぞれの、外側半分を調べる。調べる方の乳房がある側の腕を自然な位置に下げ、同じように逆の手の指の腹で軽く圧迫しながらまんべんなく触れる。

最後にわきの下に手を入れ、しこりがないか確かめる。

左右の乳首を軽くつまみ、母乳を絞り出すようにして、血液のような異常な液が出ないか調べる。

乳がんのセルフチェック
   
 
毎月のセルフチェックを習慣づけることで、自分の乳房の普段の状態が分かるようになり、異常を早く見つけられるようになります。そして少しでも異常があったらすぐに専門医の診察を受けるのはもちろん、乳がん検診や定期健診も必ず受けるよう心がけてください。どんな病気にも言えることですが、「私は大丈夫」という油断は禁物です!