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夏太りしていませんか?(2012年9月)

 

     
 
9月のテーマ:
夏太りしていませんか?

一昔前は「夏やせ」に注意しようと言われましたが、猛暑が続く近年、気をつけなければならないのは「夏太り」のようです。日中だけでなく夜になっても汗だくになってしまう毎日。汗をかくと、運動をしたのと同じにエネルギーを消費しているような気になってしまいます。これが実は落とし穴です。体温を下げるための発汗はさほどエネルギーを使いません。汗をかいたことで夏バテを恐れ、脂っこいものばかりを食べ過ぎると、成人病のリスクのある内臓脂肪が増えてしまいます。

 
     

 

夏太りの原因とは
 
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夏太りには、いくつかの典型的な原因があります。一つは先にあげた発汗によるエネルギー消失を過大に意識しての過食。夏バテを予防しようと、土用の丑の日に鰻を食べる習慣が古くからあるように、鰻や焼き肉など、こってりした栄養価の高いものでスタミナをつけようと考えてしまいがちです。発汗で失いがちなビタミンB1を多く含む鰻や豚肉をとることは確かに大切ですが、油分の多い食物のとり過ぎは夏太りに直結します。高カロリーの食べ物が食卓にならぶことの少なかった時代はともかく、現代の夏バテは栄養不足より、冷たいものの飲み過ぎやクーラーによる冷え、ソーメンや冷やし中華などの麺類に偏った食事に原因がある場合が多いのです。

冷たい飲み物のとりすぎは、内蔵の働きを悪くするだけでなく、内蔵そのものを冷やすため、その冷えに対抗しようと身体は内蔵の周りに脂肪をつけて冷えから守ろうとします。夏太りの場合、皮下脂肪よりも内臓脂肪の増加が目立つのもこの身体の働きが関係しているといわれます。また麺類は、あまり噛むことをせずに食べられるので、噛むことによる満腹感が乏しく、ついつい食べ過ぎてしまう傾向にあります、ご存知のように麺類などの炭水化物は、とりすぎれば体脂肪として蓄積されます。しかも、炭水化物に偏った食事では、発汗で失ったビタミンやミネラルの補給が十分にできません。ビタミンやミネラルは脂肪の燃焼に不可欠なため、これが不足するとさらに体脂肪がエネルギーとして利用されずに身体に留まることになります。

発汗で失われるカリウムも夏太りに関係します。カリウムが不足すると身体に「むくみ」が生じやすくなるのです。暑いからといって冷たい飲み物を大量にとり、冷房の効いた部屋であまり動かない生活をしていれば、全身がむくんで短期間で体重の急増をもたらすことになります。

また、もともとしなやかで弾力のある動脈が高い血圧を受け続けると、動脈の壁が傷ついて固くなります。これが動脈硬化で主に細い動脈で起こるため細動脈硬化と呼ばれます。血管の内部に酸化したコレステロールが蓄積されて起こる粥状硬化は比較的太い動脈で起こり、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こします。

   
夏太りを解消するためには、適切な食べ物を腹八分目に
 

先にあげたように、冷たい麺類など炭水化物の過食には注意しましょう。水分補給も夕方以降は、冷たい飲み物を控え、できるだけ温かい飲み物をとるように心がけましょう。午前中は「身体から悪いものを排出する時間帯」といわれ、日が暮れると「身体に蓄える時間帯」になるとされます。水分は午前中に多めにとり、日が沈んだら少なめにすると「むくみ」対策に効果があります。

「むくみ」対策にオススメの食べ物は、きゅうり、冬瓜などのウリ科の野菜や、バナナなどのカリウムの豊富な果物。発汗とともに失いがちなビタミンB群(ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸など)も、脂肪の代謝には欠かせません。水溶性ですので、長時間水につけたり加熱しすぎる調理は避けることが大切です。これらの栄養素を多く含む食品は次のとおりですが、一度にたくさんとっても体外に排出されてしまいますので、できるだけ毎日の食事に上手に取り込むようにしてください。

○ビタミンB1

豚肉・うなぎ・たらこ・ナッツ類

○ビタミンB2

豚レバー・鶏レバー・牛レバー・うなぎ・牛乳

○ビタミンB6

かつお・まぐろ・牛レバー・さんま・バナナ

○ビタミンB12

牛レバー・鶏レバー・カキ・さんま・あさり・にしん

○ナイアシン

たらこ・かつお・レバー類・びんながまぐろ・落花生

○パントテン酸

レバー類・鶏もも肉・にじます・子持ちがれい・納豆

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良い睡眠で夏太りを解消する
 
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暑くて寝苦しい夜が続くと、睡眠不足になりがちです。だからといってクーラーに頼りすぎると、夏風邪をひいたりして体調を崩してしまうことがあります。寝苦しい夏の夜に十分な睡眠をとることは大変難しいものですが、睡眠時間が短いと肥満になりやすいという研究結果も報告されています。良い睡眠をとることは、夏バテや熱中症にならないための体調管理や、夏太り対策としても有効だと考えられます。

良く眠るためには、睡眠中の身体の温度が大切です。皮膚の温度(体表面の温度)が高く、深部体温(身体の内部の温度)が低いほど眠りに入りやすいということがわかっています。子育ての経験者はご存知だと思いますが、眠くなるとあかちゃんの手は温かくなります。これは、体表面から熱を放散して、身体の内部の温度を下げる働きによるものです。

深部体温を下げる方法には、寝る前にぬるま湯につかるのがおすすめです。あまり長時間入ってはいけませんが、手足の表面を温める程度にぬるま湯に入ると、手足の末梢血管が拡張して、表面からの放散熱が増え、深部体温を下げる効果がありあす。また、夕方に軽い運動をして皮膚から熱の放散をすると同じように深部体温を下げることができます。

深部体温を下げると良く眠れるというのは、昼間働いている脳の疲労を回復させるために、脳の温度を下げ休ませるためと考えられます。枕につけた頭の熱が気になってなかなか寝付けないとういう人は、頭を冷やすために枕を通気性の良いものに交換したり、枕用の保冷剤を利用するのも良いでしょう。

   

 

サイレントキラー、高血圧とは何か(2012年8月)

 

     
 
8月のテーマ:
サイレントキラー、高血圧とは何か

高血圧は、突然致命的な症状をもたらすことがあります。しかし、そうなるまでまったく自覚症状がないことも多く、サイレントキラーと言われることがあります。血液には酸素や栄養素など、身体に必要な物質が溶け込んで、血管を経由して体中をくまなく巡って取り込まれていきます。血液は重力によって高いところから低いところには容易に流れますが、どうしても心臓より高い頭などには流れにくいわけです。そこで心臓は圧力をかけて血液を送り出します。この圧力が基準値より高い状態を高血圧と呼びます。

 
     

 

血圧はなぜ上がるか
 
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血圧は、心臓から排出される血液の量とその血液の流れに逆らう末梢血管の抵抗によって決定づけられています。心拍数は自律神経によってコントロールされますが、同時に血管の拡張と収縮もコントロールされています。交感神経が緊張すると、それに伴い心拍出量(心臓が1分間に送り出す血液量)が増えて末梢の血管は収縮し、血圧が上がることになります。逆に交感神経が弛緩すると、緊張とは逆の動きになり血圧は下がるといった具合に、交感神経は血圧と密接に関連しています。

また、もともとしなやかで弾力のある動脈が高い血圧を受け続けると、動脈の壁が傷ついて固くなります。これが動脈硬化で主に細い動脈で起こるため細動脈硬化と呼ばれます。血管の内部に酸化したコレステロールが蓄積されて起こる粥状硬化は比較的太い動脈で起こり、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こします。

   
血圧の正常値は?
 

血圧の値は心臓が収縮して血液を送り出すときに最も高くなり(最高血圧)、心臓が収縮した後、拡張するときに最も低く(最低血圧)なります。この最高血圧と最低血圧の国際的な基準による正常値が、収縮期(最高血圧)130mmHg未満、または拡張期(最低血圧)85mmHg未満といわれています。

血圧測定を自宅で行うと病院などで計るよりもリラックスしているため、より下がった測定結果がでる傾向にあります。そこで家庭血圧の正常な血圧値は、収縮期(最高血圧)125mmHg未満、または拡張期(最低血圧)80mmHg未満とされています。

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高血圧の二つのタイプ
 

明らかな原因があって高血圧になるタイプを「二次性高血圧」といい、原因を特定できないタイプを「本態性高血圧」といいます。日本人に多いのは「本態性高血圧」で、高血圧の約90%の方がこれにあたります。この「本態性高血圧」の発症にはいくつかの遺伝子が関係し、さらに高血圧の合併症として恐れられる脳卒中は、高血圧で脳卒中遺伝子のある人が発症するとされています。

高血圧は遺伝子の影響と生活習慣が複雑にからんで発症すると考えられ、二つの因子が関与する割合は同程度とされています。従って、高血圧の遺伝子があっても生活習慣を改善すれば、正常値を保つことが可能です。  また、特定の病気のせいで発症する「二次性高血圧」は、その原因となる主な病気として腎臓の異常によって起こる腎性高血圧、腎動脈の狭窄や閉塞で起こる「腎血管性高血圧」があります。

   
血圧はなぜ上がるか
 

血圧は、心臓から排出される血液の量とその血液の流れに逆らう末梢血管の抵抗によって決定づけられています。心拍数は自律神経によってコントロールされますが、同時に血管の拡張と収縮もコントロールしています。交感神経が緊張すると、それに伴い心拍出量(心臓が1分間に送り出す血液量)が増えて末梢の血管は収縮し、血圧が上がることになります。逆に交感神経が弛緩すると、緊張とは逆の動きになり血圧は下がるといった具合に、交感神経は血圧と密接に関連しています。

また、もともとしなやかで弾力のある動脈が高い血圧を受け続けると、動脈の壁が傷ついて固くなります。これが動脈硬化で主に細い動脈で起こるため細動脈硬化と呼ばれますが、血管の内部に酸化したコレステロールが蓄積されて起こる粥状硬化は比較的太い動脈で起こり、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こします。

   
改善したい生活習慣
  遺伝的な要因に、以下のような生活習慣が重なると高血圧のリスクが高まりますので注意しましょう。
 
塩分の過剰摂取
過食と肥満
アルコールの過剰摂取
タバコの喫煙
カルシウム、カリウムの摂取不足
ストレスと運動不足
   
本態性高血圧の二つのタイプ
 

本態性高血圧には、「パンパン型」と「ギュウギュウ型」という異なるタイプがあるといわれています。「パンパン型」は、血管が内側から膨らむことによって起こる高血圧で、一方「ギュウギュウ型」はホルモンの影響で外側からギュウっと圧迫されるために起こるといわれます。先にあげた塩分の過剰摂取が血圧に影響するのは「パンパン型」と呼ばれるタイプです。高血圧の70%がこの形だといわれます。

大切なのは高血圧になったら、まず医療機関で何らかの病気による二次性高血圧でないか、診断してもらうこと。正しい治療はそこから始まります。

   
生活習慣を見直し、まず無理のない生活改善を
 
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 運動不足を解消しようと、いきなり毎朝5キロ走ろうとか、それまでの生活にないものを急に計画するのは、かえって危険です。足や腰に故障を起こして新たな問題を抱えてしまうことにもなりかねません。電車通勤の人は、なるべく階段を利用するといった普段の心がけでできることから始めると良いでしょう。

過食と肥満に関しては、興味深いデータがあります。肥満体質の人は、減量によって確実に減圧できるといわれます。それは1キロ減量すると血圧が4mmHg減圧できるというもの。5キロ減量できれば20mmHg血圧が下がるとされています。あせらずに半年、1年かけるつもりで体重を少しずつ落としましょう。

その他では、まずタバコ。これは無理であろうとなかろうと絶対にやめてください。タバコを一服吸うと血圧が20mmHg上がるとされています。ニコチンが体に入ると血管がギュッと収縮して血圧を押し上げるのです。副流煙によってタバコを吸わない人も同じ害を受けているということになります。

お酒は、ほどほどにしましょう。ほどほどの酒は血圧を下げるといわれていますが、飲み過ぎは逆に上がってしまいます。適量は、ビールなら500cc、日本酒は1合、焼酎なら水割り2杯。ワインならグラス2杯程度です。気にして欲しいのは、お酒のおつまみ。習慣でどうしても塩分の高いものを摂ってしまいがちになります。おすすめなのは食材そのものに減圧効果があるとされる枝豆。市販のものは塩分が多めなので、さっと茹でて塩抜きするぐらいで、塩加減も丁度良くなります。

 

ブームの中高年登山で気を付けたい健康のポイント(2012年7月)

 

     
 
7月のテーマ:
ブームの中高年登山で気を付けたい健康のポイント

3000メートル級の山々の残雪も消え、いよいよ本格的な夏山シーズン。ここ数年、中高年を中心とした登山愛好者は増える傾向にあるようです。夏に、登山デビューを予定している人も多いことでしょう。なぜ山に登るのかと聞かれて「そこに山があるから」と答えたイギリスの偉大な登山家マロリーは、果たしてエベレスト初登頂を成功させたのかという謎を残したまま、帰らぬ人となってしまいました。

なぜ山に登るのか、この同じ問いに「健康のため」と答える中高年登山者は多いのではないでしょうか。確かに多くの登山者は山で鋭気を養い、元気と健康を伴って下山してくることでしょう。しかし、一方で山岳遭難者数も増加しています。平成13年以降40歳以上の遭難者数は一貫して増加傾向にあり、全遭難者の8割り前後を占めているといわれます。登山も安全に長続きさせてこそ健康のためと言えます。そのためは日頃の身体作りは大切です。今回は山に行く前に知っておきたいいくつかのポイントを紹介します。

 
     

 

なぜ登山をすると健康になるのか
 
イラスト 長い上り坂を荷物を担いで数時間。目的地までの道のりは、特に中高年の身体に良いとされる有酸素運動の連続です。予定のルートをたどって目的地に到達するまで、水泳やジョギング、自転車といった他の有酸素運動と比べてはるかに長時間運動し続けることになります。

しかも、1000メートルを超える高度に達する登山であれば、マラソンランナーなどの一流選手が取り入れることで話題になる「高地トレーニング」と同じ条件下での運動になります。高地トレーニングは標高1000メートル以上の空気中の酸素の薄い環境で行い、身体が低酸素状態を回復しようとして、呼吸循環の機能を高めようとする働きを利用します。空気の薄い標高では、普通に呼吸していては苦しいので、より多くの酸素を効率よく取り入れられるよう呼吸機能が高まります。同時により多くの血液を全身に送り出せるよう循環機能も高まり、酸素を運ぶ赤血球やヘモグロビンも増産されます。この状態は平地に下りてもしばらくは保たれるため、運動競技で利用されるわけです。登山をすると疲れにくい身体になると感じるのは、この高地トレーニングの効果によるものと考えられます。

また、脳や心に及ぼす効果もあります。足元の岩や斜面に集中しながら無心にリズミカルに運動することで、悩みから開放されて心が健康になったと感じる人も多いことでしょう。美しい山々を望みながら稜線を歩く爽快感、楽しさは他では得難いものです。次の山行を心の支えに仕事を頑張ろうという人もいるに違いありません。

 
まず足元が大切
  こうした登山の優れた面は、事故もなく健康な身体で下山してきて初めて生かされるものです。登山の事故で最も多いのは、下り道での転倒、滑落、転落です。足腰の弱っている人がいきなり山に登れば疲労で下山中に怪我をしやすくなります。日頃運動をしていない人が運動のためとして、いきなり山に行くのは無謀と言う他ありません。まず準備として「足作り」をしましよう。
 

まず登山用の靴を用意します。専門店で足首まできちんと固定できるものを選んでください。山道で浮き石などを踏んだとき、石が動いて捻挫することを防ぎ、また堅い木の根や岩の先端を踏んでいけるので、疲労を軽減することができます。靴を手に入れたら、この靴でウォーキング。足と靴を馴染ませ、タウンシューズより重量のある靴で歩くため、足首などの小さな筋肉を鍛えられます。スクワットなどで大きな股の筋肉を鍛える前に、まず空荷で歩き小さな筋肉を鍛え、同時にストレッチで柔軟性を高めます。平地ではただの捻挫でも、山では遭難に繋がります。くれぐれも買ったばかりの靴でいきなり山に行くのは止めましょう。平地のように靴擦れで痛い思いをするだけでは済みません。

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  また、登山予定日の1ヶ月程前から、軽いジョギングなどを週3回程度行うようにすると山に入ったときに、登りをより楽しめるようになります。何人かのパーティで山に入ったときに一人だけ苦しくて下を向いてばかりいては、楽しさも半減してしまいます。
呼吸を楽に
 

 山道を登り始めて思うのは、登山は息切れのするスポーツだということでしょう。足の運びに呼吸を合わせるようにするとだいぶ楽になりますが、酸素の薄い山での呼吸を、胸郭を広げる胸式呼吸で行おうとすると大きな筋肉のエネルギーが必要になります。そこで、比較的少ないエネルギーで横隔膜を動かして呼吸する腹式呼吸を意識的に行うようにします。よく声楽の人が練習で行うように、息を吐きながら手の平でお腹を押し、息を吸いながらその手をお腹で押し出すように練習すると良いでしょう。仰向けになってお腹の上に重い辞書などを乗せ、それを呼吸と共に上下させるようにするとより効果的な練習ができます。

また、息を吸うときは鼻から。吐くときは少し口をすぼめるか唇の上下に少し力を入れて抵抗をつけながらゆっくり吐くようにします。こうすると吸気のとき山の冷たい空気が鼻の中で加湿・保温されて身体の負担が軽減されます。呼気のときは、肺に空気を残さずゆっくりと息を吐ききることができるので効率よく酸素を取り込むことができます。筋肉内が酸素不足になると乳酸がたまり筋肉疲労を促進します。薄い空気の中で少しでも上手に酸素を吸い身体の疲労を軽減することが、下りでの思わぬ事故を防ぐためにも大切です。

自分のペースをつかむ
  自分のペースで歩きなさいと言われても、どのぐらいの早さが自分のペースなのかわからないという人も多いでしょう。目安になるのは心拍数です。アスリートが健康体を取り戻すためのエアロビック理論で知られるアメリカのマフェトン博士は、180公式という分かりやすい心拍数管理方法を提唱しています。

180から自分の年齢を引いた数を1分間の最大心拍数とし、そこから10を引いた心拍数との間で運動を行えば、最も身体に負担が少なく効率的な有酸素運動ができるというものです。例えば50歳なら180から50を引いた数、130拍を最大心拍数として、それから10を引いた120拍との間となります。日常的に運動習慣のない人は、そこからさらに10を引いた心拍数をターゲットとします。ときどき立ち止まって首か手首で15秒間脈を計り、それを4倍すると良いでしょう。ほとんどの場合、オーバーペースであることに気付くと思います。

 

山のルールとして、細い山道でのすれ違いは、登りの人を優先させて、下りの人は脇に避けて道を譲るという美風があります。このとき下山の人が立ち止まって待っていてくれていると、申し訳ない気持ちが先に立って、それまで良いペースで歩いていたところを無理に頑張って登ってしまい、呼吸を乱してしまうことになりがちです。

そこは正直に「辛いので、お先にどうぞ」と声をかけて、下山者に道を譲るのが大人の対応というものでしょう。

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身体の臭い、気になりませんか?(2012年6月)

 

     
 
6月のテーマ:
身体の臭い、気になりませんか?

もうすぐジメジメした梅雨の季節がやってきます。この時期、気温や湿度の上昇と共に、通勤や通学時の電車内、職場やエレベーターなどの閉ざされた空間で気になりだすのが、身体から発せられる様々な臭いです。臭いといっても口臭、汗の臭い、頭の臭い、加齢臭など様々な種類があります。中には病気が原因で発生する臭いもありますので、気をつけなければなりません。今回は、様々な臭いの原因と、その対策を紹介します。

 
     

 

身体の臭いはなぜ発生するのか
 

体臭は身体の色々なところから発生しますが、「HLA」という遺伝子が関わっているため個人差もあります。発生する部位も「口」「脇の下」「頭」「生殖器」「足」「耳」など様々です。一般的に体臭と呼ばれるものは「汗」をかくことで発生します。人の皮膚には皮脂を分泌する穴と、汗を分泌する穴があります。さらに汗を出す穴には「エクリン腺」と「アポクリン腺」があります。「エクリン腺」は気化熱によって体温の調節をするためのもので、汗にはもともとは臭いはありませんが、皮脂や垢、雑菌などと混ざると臭いを発生します。「アポクリン腺」のほうは、脇の下や乳輪、外陰部などの部位にあり、汗自体に臭いがあります。

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病気が原因で発生する体臭
 

糖尿病や胃潰瘍、慢性胃炎、蓄膿症、慢性気管支炎などの影響で口臭が発生する場合があります。本人には自覚症状がない場合もありますので、ご注意ください。また、歯周病や虫歯などによる口臭は、治療が必要になります。臭いは病気のサインでもありますので、口臭が気になったり、他の人に指摘されたときは専門医による検診をお勧めします。

頭皮臭・頭髪臭
 

頭皮臭の原因としてまずあげられるのが「フケ」。フケは頭皮の角質細胞が新陳代謝によってはがれ落ちたものに皮脂の分解酸化物が一緒になったもの。本来ほとんど臭いがないのですが、「湿性フケ」になったり、頭皮にピツロスポルムという細菌が繁殖すると皮膚炎を起こしやすくなり、強い臭いが発生します。頭髪の臭いは、髪の毛の性質上周囲の臭い物質を吸収しやすいので、ニンニク料理や焼き肉などで煙を吸着して臭います。タバコの充満する職場などでも髪の毛に不快な臭いがついてしまうことがります。刺激の少ないシャンプーを選んで洗髪しましょう。また、皮膚炎が疑われる場合は、皮膚科の検診をお勧めします。

ワキガ臭
  ワキガは先に述べた「アポクリン腺」から分泌される「脂肪、鉄分、色素、蛍光物質、尿素、アンモニア」が皮膚表面の細菌によって分解されて発生するものです。ワキガ体質とされるのは「アポクリン腺」を多くもった人です。ただし、汗くさい状態とワキガは異なります。この体質の人は一般的に次のような特徴をもっているとされます。

1.耳垢が柔らかい 2.シャツの脇の下が黄ばむ 3.脇の毛が多い 4.親がワキガ体質 5.脇の下によく汗をかく

 

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このワキガによる体臭を予防するには、まず清潔にすること。薬用の殺菌効果のある石けんを使って身体を洗い、シャツなどの下に吸湿性のあるTシャツや脇パッドなどを付け汗を吸収するようにします。また、市販の汗拭きシートなどを使ってこまめに汗を拭き取るようにすると良いでしょう。殺菌効果のある制汗スプレーなども効果的です。食事は、脂肪の多い肉類をさけ、脂肪分の少ない魚や野菜を多く摂るようにしましょう。
加齢臭
 

2000年の12月に女性の体臭成分の研究の過程で高齢者の体臭の原因の一つとして「ノネナール」が発見されました。この臭いは、発見者の土師博士らにより、加齢により体臭も変化するという概念を示す「加齢臭」と名付けられ、この10年で誰もが知る名前となったのです。統計学上、ノネナールの産生量は、閉経後の女性の方が、同世代の男性よりも多いとされます。しかし、加齢臭というと中高年男性というイメージになるのは、食生活やストレス、飲酒や喫煙、運動不足などが悪臭を強くする一因となっているからです。加齢臭の発生をできるだけ予防するためには、健康的な生活習慣を身に付けることが何よりも大切です。次に加齢臭の予防法をご紹介します。

   
食生活は和食を心がける
 

日本人はもともと西欧人に比べて体臭は強くないとされてきました。しかし食生活が欧米化し、乳製品や肉を大量に摂取するようになり、体臭が発生しやすい体質になっていると考えられます。腸が西欧人に比べて長く植物繊維の多い食べ物を消化する能力の高い日本人は、加齢臭の原因を増やさないために、和食を中心とした食生活を意識したほうが良いでしょう。

   
ストレス対策は、軽い運動でリラックス
 

ストレスを感じると活性酸素が発生し、同時に過酸化脂肪が増加します。加齢臭の原因となるノネナールは、過酸化脂肪とパルミトオレイン酸という脂肪酸が結びついてできるため、ストレスは加齢臭を強くする原因となります。日頃自分なりのストレス発散を心がけましょう。運動でストレスを発散させるためには、強度の高い運動は避け、リラックスしてできるジョギングやウォーキング、サイクリングなどがお勧め。

   
飲酒や喫煙と悪臭の関係
 

適度に嗜めばリラックス効果のある飲酒も、仕事上の付き合いなどで量を過ごせばストレスを生み、悪臭のもとになります。アルコールやタバコの喫煙は体内に活性酸素を生み、その過程で加齢臭の原因となる過酸化脂質を作り出します。また、タバコには大量のニコチンとともに活性酸素が入っているので、吸うだけで多くの活性酸素を体内に取り入れてしまうことになります。この大量の活性酸素は体内のビタミンCやビタミンEを破壊し、悪臭を生む原因となります。まず喫煙の習慣を絶ち、アルコールは適度に飲むようにしましょう。

   
女性と加齢臭
 

もともと加齢臭は、女性の体臭成分の研究から発見されたもので男性だけのものではありません。男性と同じように40歳代、人によっては30歳代から発生すると言われています。女性はもともと女性ホルモンが分泌されることでその発生が抑制されています。ところが閉経後は女性ホルモンが減り加齢臭を発生させやすくなります。また、女性ホルモンが減るとそれを補おうとして脂肪がつきやすくなり、栄養を摂りすぎて内臓脂肪が付きすぎると分解された内臓脂肪は遊離脂肪酸に変化します。この遊離脂肪酸が蓄積されると皮脂腺や汗として分泌され、それが酸化し加齢臭の原因となります。内臓脂肪を増やしすぎないように、日頃から軽い運動で適性体重を目指しましょう。

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水泳で体脂肪を燃焼させて健康的な体に(2012年5月)

 

     
 
5月のテーマ:
水泳で体脂肪を燃焼させて健康的な体に

オリンピック・イヤーの今年は、メダルの期待がかかる水泳選手の華麗な泳ぎを目にすることも多いはず。水泳で鍛えられた逆三角形の体型に憧れて、スイミングスクールに通い始める方もいらっしゃるのではないでしょうか。また、露出の多くなる夏までに体型をスリムにしたいと、これからの時期プール人口は急激に増えるようです。そこで今回は、水泳で健康的に痩せるためのポイントをご紹介しましょう。

 
     

 

  水泳の健康効果
   

水中での運動は、陸上とは違った効果が期待できます。まず、水の浮力を利用することで、局所的な身体の負担を避けることができるということ。健康のためにと、いきなりランニングを始めて膝や足に故障を起こしてしまうことがありますが、水泳はこうした危険が少ないといえます。身体にかかる水圧もマッサージ効果をもたらし、全身の血行を良くしてくれますので、疲労回復や肩こりの改善を実感する人も多いことでしょう。何よりも水泳は脂肪を燃焼するために効果的な有酸素運動とされています。しかし期待に反し、水泳を始めてもちっとも痩せないと挫折してしまう人が多いのも事実です。

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  有酸素運動とは
    運動には、大きく分けて短距離をダッシュするような無酸素運動と、長距離をジョギングするような有酸素運動があります。無酸素運動ではグリコーゲンが主に使われ、有酸素運動ではまず血液中の脂肪が使われ、やがて内臓脂肪や皮下脂肪も消費します。脂肪を落として痩せるためには、この有酸素運動が効果的なのですが、水泳でこの有酸素運動を長く続けるというのが意外と難しいのです。向こう側に泳ぎついたところで息が上がって、心臓もドキドキ。数回往復するともう苦しくなってしばらくは泳ぎ出すこともできない。これは、もう立派な無酸素運動の領域です。これを繰り返すのは、インターバルトレーニングと同じ状態で、とても脂肪の効率的な燃焼は望めません。
     
  心拍数を上げないで泳ぐ
    無酸素運動にならないように泳ぐには、心拍数を上げないで泳ぐ必要があります。しかし、心拍数を上げないようにゆっくり泳ぐのにはかなりの練習が必要です。ゆっくり泳げるようになるまでは、25メートル泳いだら次は心拍数を元に戻すよう、25メートルを歩いて戻ってくるようにしましょう。大抵のプールでは泳ぐコースと歩くコースが隣接されていますから、コースロープをくぐりながら泳ぎと歩きを交互に続けます。これを20分以上続ければ、体脂肪の燃焼が期待できます。
     
  ウオーミングアップが大切
   
イラスト 体脂肪はリパーゼという脂肪分解酵素によって分解されて初めて燃焼されます。このリパーゼが働く適温は、体温が1~2度上がった状態だとされます。そこで脂肪を効率よく燃やすには、プールに入る前に、エアロバイクやマシントレーニングで身体を温めておくというのも良いでしょう。さらに長時間泳いでいると、次第に水が冷たく感じられてきます。そうしたときは一時休んで採暖室で暖まり、体温を汗ばむ程度に上げてから水中に戻るようにします。運動を一時休んでも脂肪は燃え続けますので、冷たい水を我慢して、運動強度を上げるより、脂肪燃焼には効果的です。
     
  力まない、足を使わない泳ぎが「痩せる」コツ
    同じ水泳でも、背泳のように身体の外側に向かって伸びやかに運動するような動きは痩せやすく、クロールで水をかくときに最後のプッシュで力むような泳ぎでは痩せにくいといわれます。また、キックをすると身体の中で最も大きな脚の筋肉を使うことになるので、心拍数が上がり、長く泳ぎ続けることが難しくなります。クロールで泳ぐときは、腕で一回水をかいたら一回キックする2ビートで泳ぐと良いでしょう。
     
  水分補給は忘れずに
   
温水プールでは、自分でも分からないうちに汗をかいています。水分補給をせずに、採暖室とプールを往復しながら泳いでいると、血液の濃度が上がって血管や心臓に負担をかけることになりますので、水分補給は必ず行ってください。 イラスト
     
  水泳を続けるコツ
    水泳は、一人でもできるスポーツなので、どうしても一人で泳いでしまいがち。なんとなくクロールと平泳ぎさえできれば満足していまいますが、続けたいのであれば、大人向けのスイミングスクールに入ることもひとつです。自分で泳いでいる姿を自分で見ることができない水泳は、誰かに客観的なアドバイスをしてもらうことがとても大切です。フォームを矯正して楽に泳げるようになるとその楽しさは倍増します。水泳仲間ができれば、情報を交換したり、刺激し合ったりして充実したスイミングライフを送ることができます。マスターズ水泳大会への参加など、きっと楽しい思い出になることでしょう。

 

お酒と楽しくつきあう 急性アルコール中毒やアルコール依存症にならないために(2012年4月)

 

     
 
4月のテーマ:
お酒と楽しくつきあう

急性アルコール中毒やアルコール依存症にならないために

歓迎会やお花見など、なにかと飲酒の機会の多いシーズンになりました。適度な量の飲酒はストレス解消には効果的ですが、短時間に多量のアルコールを摂取すると、周囲に迷惑をかけるだけでなく、急性アルコール中毒を引き起こすことにもなります。ご存知のように急性アルコール中毒は、酔った状態を超えて意識障害や昏睡、重症の場合は死にいたることさえあります。また、飲酒が習慣化すると、あらゆる疾患の原因にもなるアルコール依存症に陥る可能性も高まります。そこで今回は、急性アルコール中毒や、アルコール依存症にならないために、お酒との付き合い方を考えてみましょう。

 
     

 

  急性アルコール中毒とは
   

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短時間に多量のアルコールを取ることで起きる中毒症状です。血液中のアルコール濃度が、0.4%を超えた場合は1~2時間で約半数が死に至ります。酔ってきたと自覚する(飲酒開始から血中アルコール濃度の上昇)までには時間がかかり、自覚することで飲酒の量を抑制できますが、短時間で大量の酒を飲むと酔っているという自覚なしに危険な量のアルコールを摂取してしまうことになり、急性アルコール中毒が起こります。

     
   
予防方法
飲酒する際には、アルコールの吸収を遅らせる蛋白質や脂肪分を含むつまみを食べる。
一気飲みは控えて、自分のペースで飲むこと。他人にも強要はしない。
飲み始めはできるだけゆっくりと飲む。
 
対処法
迷わずに救急車を呼びましょう。解毒剤の様な物があるわけではありませんので、対外にアルコールを排出する以外に治療方法はありません。救急車が到着するまでは、呼吸の確保と体温の維持には注意してください。また、吐瀉物で窒息する危険があるので応急処置として吐かせることはしないようにしましょう。嘔吐物がのどに詰まって窒息する危険があるので、必ず体と頭を横向きにして寝かせて目を離さないでください。

もし、心肺機能が停止したら心肺蘇生法(人工呼吸、心臓マッサージ)を施してください。状況によってはAEDを使うなど、生命の維持に努めてください。また、体温が低下しないよう毛布を掛けるなど保温に気を配りましょう。

     
  アルコール依存症とは
   
飲酒すると、周囲にからむようになった。
飲まないと眠れなくなった。
休日は、朝から飲まないといられない。
断酒すると手がふるえるようになった。
γ-GTPの数値が上がった。
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このようなことに心当たりがありませんか? ある方は要注意です。アルコール依存症は慢性アルコール中毒とも言われ、日本国内には300万人近くもいると言われています。急性アルコール中毒とは逆に、体質的にアルコールを受け入れやすい人がなりやすいようです。アルコールに含まれる有害物質であるアセトアルデシドの分解が早い人と遅い人がおり、飲酒癖のある人は分解のスピードが比較的早く、これは遺伝的とも言われます。こうした体質を持つ人は連日飲んでも社会生活に支障がないと思い込み、いつの間にかアルコール依存症に陥りがちです。また、仕事や家族関係でストレスをかかえている人や、中高年の男性も依存症に陥りやすいと言われています。女性は体格や女性ホルモンなどの要因から、習慣的飲酒が短期間でも依存症になることがあると言われています。それだけに誰もが陥りやすい疾患なのです。
     
   
予防方法
ほどほどの飲酒を心がける
休肝日は、週に連続して2日以上確保すること
不幸な気持ち等を変えるために、積極的にお酒の酔いを利用しない
断酒
 
治療方法
アルコール依存症は病気です。個人の性格や嗜好の問題ではなく、自らの意思で飲酒行動をコントロールできなくなり、強迫的に飲酒行為を繰り返す精神疾患、と自覚してください。現在のところ治療方法は『断酒のみ』です。一時的な禁酒や減量ではすぐに元の状態に戻ってしまいます。

一方で依存症は「家族病」とも言われています。本人はもとより、家族全体がこの病理現象を理解し、認めることが、この病気から回復する上で必要とされます。

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その第一歩は病気に対する本人の自覚と治療の意志をもたせ、専門医への受診をすることです。その際、もっとも困るのは「自分は依存症なんかじゃない」と否定する気持ちです。プライドが高い人ほどそうした気持ちを抱きやすく、「自分はちがう」と反発しがちです。アルコール依存症はあらゆる疾患に直結する病気であることに気づいて、謙虚な気持ちで病気と向かい合ってください。

依存性薬物であるアルコールを断つことは並大抵の努力ではなく、一生涯これを続けることは想像以上の困難を伴います。このため、断酒をサポートする様々な試みがなされており、アルコール依存症患者とその家族によって作られた自助グループ『断酒会』などが組織化されています。断酒を続けることを互いにサポートし合い、酒害をはじめ、アルコール依存に対する正しい理解・知識を広く啓蒙する活動なども行っています。

吉田兼好も「酒は百薬の長とはいへど、よろずの病は酒よりこそ起これ」と鎌倉時代から適量飲酒の大切さと大量飲酒の危険を詠んでいます。危険な飲酒を避け、適正な飲酒量を心がけることで、多くの人がいつまでも健康にアルコールを楽しむことができることのでしょう。

     

 

春はスタートの季節 健康診断でセルフチェックを!(2012年3月)

 

     
 
3月のテーマ:
春はスタートの季節 健康診断でセルフチェックを!

年を通して健康について考えてきた「健康豆知識」ですが、読者のみなさまも春を迎え、入学や就職など家族が新たなスタートを迎える方も多いことでしょう。昨年は東日本大震災や福島第一原発の事故もあり、生活や食の安心や安全について深く考えることの多い年でした。平穏で健やかな生活は健康な心身からもたらされます。日頃から食生活に気をつけたり、運動を欠かさないことに加えて、専門の機関で健康診断を受けることは現代社会に生きる私達には大切なことといえます。

 
     

 

定期健診の大切さ
 

定期的な健康診断は病気の早期発見や生活習慣病の予防にはかかせません。働いている人ならば会社で受ける場合がほとんどですが、アルバイト等のフリーターや主婦、無職の方も定期的な健診が必要です。健診の種類は非常に多くあり、病院や施設ごとに料金も違います。もっとも一般的なのが「労働安全衛生法」に基づく検査項目です。(会社で受ける健診がこれにあたります)

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(1)既往歴及び業務歴の調査(2)自覚症状及び他覚症状の有無の検査(3)身長、体重、腹囲、視力、聴力の検査(4)胸部エックス線検査(5)血圧の測定(6)尿中の糖及び蛋白の有無の検査(7)貧血検査(8)肝機能検査(GOT,GPT,γ-GTP)(9)血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)(10)血糖検査(11)心電図検査・・・を通常行います。健康診断は広い意味での健康をチェックするもので、個別のがんや生活習慣病を対象にしたものではありませんが、定期的に受けておくことで病気を早期発見することが出来るため、健康に生活していく上ではかかせないものです。

   
検診や人間ドックの薦め
 

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検診とは健康診断とは違い、「がん」やメタボリックシンドロームなど個別の病気をチェックするために行われる検査です。特に「がん」は日本人の死因の第1位であり、全国で年間30万人の方が「がん」で亡くなっています。「がん」を経験した方の体験記には「もっと早く検診を受けておくべきだった」「早期発見していれば大病にならなかった」ということが書かれています。乳がんや子宮がんなどはある一定(35歳以上など)の年齢以上の対象者には自治体が補助金を出している場合もあります。最寄りの自治体に確認をしてみてください。

また全身やがん、生活習慣病などをトータルに検診することを「人間ドック」といいます。最近は一般の検査に加え、脳も含めた全身のがんをチェックすることを目的としたPET検診や脳梗塞やくも膜下出血など重篤な脳疾患を検査する脳ドックなど早期発見に重点を置いた設備を備えて検診を行う病院も最近は数多く登場しています。

   
ホームドクターのすすめ
 

ホームドクター(かかりつけ医)とは病気になったり怪我をしたときにまず最初に相談する医師や医院のことです。ホームドクターへの定期的な受診や健康診断などにより、家族全員の健康状態や生活習慣、病歴を把握することができ、日常生活における健康管理上のアドバイスを得ることが可能です。また早期発見、早期治療が可能で、重い病気になったとき、どこの医療機関にかかったらいいかわからない時も、適切な医療機関や専門医を紹介してもらうことができます。日頃から家庭の近所に信頼できるホームドクターを探しておくことも、もしもの時に安心して満足のいく治療を受けることができる秘訣です。

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風邪、肌荒れ…“乾燥注意報”にご用心!(2011年2月)

 

     
 
2月のテーマ:
風邪、肌荒れ…“乾燥注意報”にご用心!

新しい年が始まって1ヶ月が経ちました。年始に立てた”一年の計”は実行できていますか?健康維持のためには正しい生活リズムや食生活、毎日の運動が大切と分かっていても続けるのはなかなか難しいものです。特に今年の冬は寒く、外へ出るのもためらってしまうほどですが、室内でのエクササイズなど、工夫して身体を動かすよう心がけていきましょう。さて、この”寒さ”に大きく関係するのが、空気の”乾燥”です。今回はこの”乾燥”についてお話します。

 
     

 

乾燥注意報とは
 

 テレビのニュースや天気予報などで、最近よく耳にする「乾燥注意報」。地域によっては、消防隊が火の用心のお知らせに回っている光景をよく目にするという方も多いのではないでしょうか。この乾燥注意報は、” 空気の乾燥による火災発生”の注意を促すものとして気象庁が発表するもので、首都・東京においては今年に入って連日この乾燥注意報が発表され続け、歴代の連続記録に迫る勢いだそうです。

乾燥注意報の基準となるものは「実効湿度」と「最小湿度」です。実効湿度とは、その日の空気の乾き具合を示すのではなく、数日前からの空気の状態を考慮して計算したもので、日本の家屋に多く使われている” 木材の乾燥具合”を示しています。 また、最小湿度は文字通り1日の中で最も低い湿度のことで、数字が低ければ低いほど空気が乾燥していることになります。どれくらいになると注意報が発表されるのかは地域によって多少の違いがありますが、平均的に” 実効湿度が50パーセントから60パーセント以下”になると火災の危険性が高まるので、各地とも50パーセントから65パーセントで、ほぼ一律に発表されます。

しかし、もう一つの基準である最小湿度は地域によってばらつきがあり、南の沖縄では50パーセント、札幌では30パーセントが基準となっています。東京ではさらに低く、最小湿度が25パーセントにならないと発表されません。これは空気中に含まれる水蒸気の量に関係しています。(ちなみに東北地方は実効湿度と最小湿度だけでなく、風速も考慮にいれて乾燥注意報が発表されます)

   
冬はなぜ空気が乾燥するのか
   ではなぜ冬場は空気が乾燥するのでしょうか。それは”飽和水蒸気量”に関係します。小学校の理科で習うものですが、改めて解説すると、飽和水蒸気量とは空気中に溶け込める最大の水蒸気量のことで、空気中にふくまれる水蒸気の量は「その空気1m3中に含まれている水蒸気の質量」で表されます。この飽和水蒸気量は気温が下がると低下するため、気温の低い冬場は空気が乾燥するのです。例えば、気温30℃では飽和水蒸気量は30g/m3ですが、気温0℃では、5g/m3までしか溶け込めません。そのため、気温が低いほど空気は乾燥していくのです。

また、太平洋側は冬になると季節風(北西の風)が吹きますが、この風は大陸性高気圧より噴出し、日本海を渡るとき大量に水蒸気を吸収し日本の山に当たり日本海側に雪を降らせます。雪を降らせた後の風は水分が少なく乾燥しているので、その風が太平洋側に吹きますのでその地域はさらに乾燥することになります。

ちなみに、冬に白い息が良く見られるのは、呼気に含まれる水蒸気が空気中に溶け込めずに空中で結露して見えるからです。

   
冬場に乾燥肌が多い理由
 

 このように、冬場は空気が乾燥するためどうしても肌の水分が失われてしまい、乾燥肌になる人が増えます。また、冬は運動量が低下しがちで、皮脂も汗も分泌量が少なくなるため、肌を保湿から守る“天然の保湿クリーム”が少なくなるのも乾燥肌を引き起こす原因のひとつです。

さらに、冬は気温が低くて血流が悪くなったり新陳代謝が低下するため、肌のターンオーバー(肌が生まれ変わる周期)も遅れがちになります。肌の表面に粉が吹いたようになったり、フケが増えたりするのは、古い角質が肌の表面にカラカラに乾いたまま残ってしまうためだと考えられます。

また、冬に使う暖房器具も肌を乾燥させてしまう大きな原因です。特にエアコンによる暖房や、燃焼をしない電気暖房器具を使っている場合の室内の湿度は驚くほど少なくなっているのです。乾燥した室内にいると肌表面の角質層から蒸発する水分量が増えるため、当然お肌も乾燥していきます。他にも、寒い日は熱いお風呂に入りたくなるものですが、熱いお湯につかると皮脂の油分が奪われてしまい、これもお肌の乾燥を招くのです。

   
手軽にできる乾燥対策
   空気が乾燥する冬は、お肌の乾燥だけでなく、ウイルスが繁殖しやすくなるため風邪やインフルエンザにも注意が必要です。乾燥を抑えるためには”加湿”が一番。家庭や職場などで気軽にできる乾燥対策をご紹介します。

加湿器を活用する
 

この季節は家電量販店などにも加湿器コーナーが設置され、様々なタイプの加湿器が並びます。パソコンにつないで使うUSB電源のものや、自動車のシガーソケットにつないで車内で使えるもの、ペットボトルに水を入れて使えるもの、アロマ機能のついたものなどもあるので、使う場所に合わせて選んでみましょう。

濡れタオルを干す
 

洗濯物の部屋干しも、室内の湿度をあげてくれる手軽な加湿方法です。職場で行う場合や、においや見た目が気になるという場合は、塗らしたフェイスタオルを下げておくだけでも十分加湿効果があります。その場合、たたんで干したり置いておくのではなく、広げた状態でハンガーなどに下げておきましょう。空気にあたる表面積が増えることで空気中に水分が含まれやすくなります。

お風呂場のドアをあけておく
  入浴したあとのお風呂場は、湯気がたちこめて湿度がとても高くなっています。普段はカビ対策のためにドアを閉めて浴室乾燥機を回すというご家庭も、冬場はドアを全開にして、湿気を家中に逃がしてみてはいかがでしょうか。脱衣所などお風呂から近い場所で扇風機やサーキュレーターを回せば、一部にだけ湿気がこもりすぎる心配もなくなります。
観葉植物を置く
 

植物は” 蒸散効果”で葉から水蒸気を放出してくれるだけでなく、鉢の土からも水分が蒸発するので、室内の加湿にはもってこいです。これらは加湿器のようにただ水分を出すのではなく、乾燥しているときには多く、十分なときには少なく蒸発するので、うまく部屋の湿度を調節することができます。

 
 
冬場は空気が乾燥するということを体感的に分かっているという方も、乾燥の原因を改めて知ることで、“冬場は空気が乾燥する”ことをより実感していただけたのではないでしょうか?風邪を予防するためにも、美容のためにも、上手に加湿して乾燥を防ぎましょう。もちろん、火の用心もお忘れなく!

 

 

寒い冬には気をつけたいヒートショック現象(2012年2月)

 

     
 
2月のテーマ:
寒い冬には気をつけたいヒートショック現象

 昨年、東北地方の温泉で2人の男性の突然死が報じられました。原因は入浴中のヒートショック現象による溺死と言われています。一般家庭の浴槽内で起こる溺死者の数は年間約4000人で、うち高齢者は89%(厚生労働省調べ)。
 さらに、原因を浴室やトイレなど家庭内でのヒートショック現象による心臓・脳疾患発作まで広げると、死亡者は全国で年間1万4000人以上(東京救急協会の推計)という数字があります。例年になく寒波の襲来があり、寒さが厳しい上に震災後の無理な節電により風邪をひくなど体調を崩す方も増えてます。

 
     

 

ヒートショック現象とは
 

 「ヒートショック現象」とは、急激な温度変化によって身体が受ける影響のこと。温かい部屋から寒い部屋へ移動すると「ブルっ」と身震いすることがあるように、人は急激な温度の変化にさらされると体内の血管を急激に伸縮させて血圧や脈拍の変動を起こします。これは体温を一定に保つために、人間の身体が反応すること。しかしこの働きが脳卒中や心筋梗塞などに繋がってしまう可能性が高いといわれています。

特に入浴が好きな日本人はヒートショック現象に見舞われることが多いといわれており、お風呂で長時間温まった後、お風呂場から脱衣所に移動した途端、急激に冷たい空気にさらされることがあります。また、この逆も同じ様に 寒い脱衣所からお風呂場へ移動し、冷えた身体を一気に熱いお湯につけることで身体がヒートショック現象を引き起こしてしまい、入浴中に亡くなる、という前出のニュースのようなケースが増えているそうです。特に75歳以上の高齢者には注意が必要と警報を鳴らしています。

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ヒートショック現象を防ぐには
 
入浴時の注意  
 

 脱衣室をあらかじめ暖房で温めておいたり、浴室の浴槽のフタをとって湯気で室内を満たすなど工夫をしましょう。シャワー等で熱めのお湯を出して浴槽にかけても保温効果が上がります。

また一番最初の入浴は浴室内が寒いのと湯の温度が高めなため、からだに負担がかかりがちです。高齢者のいるご家庭は家族が入った後の二番湯を使っていただくようにすると、浴室も温まっているため安心して入浴が出来ます。お風呂の湯温は38~40度が適温であまり長湯をしないこと。半身浴をしたり、水分を摂るなど身体に負担のかからない入浴法を取り入れることも大切です。いきなり湯につかることを避け、リラックスして入浴できるような心掛けをしてください。

トイレでの突然死を防ぐには  
 

 浴室だけでなく、トイレでの脳卒中や心筋梗塞を起こす割合は、突然死の約5%を占めておりあなどれません。トイレでいきむ事や寒い室内でいきなり立ち上がった時など、血圧や心拍の急激な変化等が脳卒中や心筋梗塞を引き起こすと言われています。対策としてトイレや便座などを温かく保温すること、日頃から食生活などに気を配り、便通をよくしておくことも大切です。

   
 
日本家屋は木造住宅が多いため、浴室やトイレ以外にも廊下等温かい室内との温度差が大きな場所があることもヒートショック現象が多いことの一因と言われています。健康に問題がなく、今までまったく元気だった方にも起こる危険性のあるヒートショック現象。節電も求められる今年の冬ですが、命を守るためにも対策を取ることを忘れないようにしましょう。

 

風邪をひかない体を作る(2012年1月)

 

     
 
1月のテーマ:
風邪をひかない体を作る

寒さが厳しくなると風邪をひきやすくなります。風邪は万病のもと。新年を明るく健康に過ごすために、風邪やインフルエンザにかからないようにすることがポイントです。
イラスト風邪にかからないためには、日常生活の中でかぜの原因となるウイルスの感染から身を守ること、そして抵抗力・免疫力をつけておくことが大切になります。風邪をひきやすい人とひきにくい人の違いは何でしょうか?それには生活環境や規則正しい生活、そして食生活が大きく関わっています。

 
     

 

規則正しい生活を心掛ける
 

休みだからといってダラダラと遅くまで起きている生活は身体を疲れさせ、抵抗力を弱めます。睡眠をしっかりとり、規則正しい生活を心掛けましょう。日頃から適度な運動をし、汗をかくことで新陳代謝も良くなります。軽い体操やウォーキングを続けることは自身の抵抗力を高め、風邪をひきにくい健康な体を作ります。太陽の日差しを浴びることも有効ですので、天気の良い日はなるべく外に出て身体を動かしましょう。

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風邪を予防する環境づくり
 

寒い冬は締め切った部屋でストーブやエアコンをつけるために室内の換気が十分出来ず、空気も乾燥しがちです。空気が乾燥すると鼻やのどの粘膜も乾燥してウィルスに感染しやすくなります。加湿器を使用したり、濡れたタオルを室内にかけて保湿に務めるようにすること、室内では、温度20~25℃、湿度60~80%を保つように心がけましょう。

ホコリやカビも抵抗力を弱めます。適度に換気をして空気を入れ替え、掃除をまめにしてホコリをためないようにしましょう。また、外から帰ったらうがいや手洗いを忘れずにすること。石鹸を使って指の間や腕もしっかり洗うようにしてください。なるべく人ごみに近寄らないようにする、やむをえない時はマスクを携帯するなど予防に努める心掛けも大切です。

   
風邪を予防する食事
 

バランスの取れた栄養価の高い食生活は風邪の予防の基本です。ビタミンA,Cを多く含む食品を摂りましょう。ビタミンAは風邪のウィルスが侵入してくる粘膜を強くする働きがあり、免疫力を強化します。ビタミンCはコラーゲンを生成、不足すると身体の抵抗力が弱まるため風邪をひきやすくなります。また、寒い冬は鍋やシチューなどの食品を取って身体を内側から温めるよう努めましょう。食べる時間を一定に保ち、規則正しい食生活をすることで太りにくい身体を作り、抵抗力を高めます。忙しい人はサプリメントや健康食品で足りない栄養を補いましょう。サプリメントには免疫力をアップしたり、体内環境を整える働きがあります。