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「家庭でできる食中毒予防」(2007年8月)

 

「家庭でできる食中毒予防」

 
 
 
 いよいよ暑い夏がやってきました。特に今年の夏は過去最高の暑さと言われています。

夏は気温や湿度が高くなるため食中毒が多発します。食中毒というと、レストランや旅館などの飲食店での食事が原因と思われがちですが、家庭の食事でも発生しており、昨年、全国で発生した食中毒の14%は家庭の食事が原因と言われています。

 食中毒には、O157やサルモネラなどの細菌による食中毒や、食品に洗剤などの物質が混入したりして発生する化学性食中毒、毒きのこなどを食べたときに発生する自然毒中毒などさまざまな種類のものがありますが、その大半をO157に代表される細菌性の食中毒が占めています。細菌がもしまな板についたとしても、肉眼では見えません。しかし、目に見えなくとも簡単な方法をきちんと行えば細菌による食中毒を予防することができるのです。
 

食中毒予防の三原則

「食中毒菌をつけない」

細菌は魚、肉、野菜などの食材にすでに付着していることがあります。また調理器具や手指を介して他の食品を汚染してしまうことがあります。菌をつけないために、台所や食器類は常に清潔に保ち、作業中は調理器具や手指をこまめに洗うことが大切です。

「食中毒菌を増やさない」

細菌は栄養、水分、温度の条件がそろった時、爆発的に増えます。室温で放っておくと、10~20分で2倍に増える菌もありますので冷蔵庫等で保存をしてください。0℃以下でも死なない菌もありますので、冷蔵庫を過信せず早めに使い切ることが大切です。

「食中毒菌をやっつける」

ほとんどの食中毒菌は熱に弱いのですが、きちんと火が通っていないと生き残ります。加熱が必要な食品は中心部の温度が75℃以上になって1分間は加熱しましょう。

あなたも今すぐこの食中毒予防の三原則から成り立っている 次の「わが家の食中毒予防6つのポイント」をきちんと行い、家庭から食中毒をなくしましょう!

わが家の食中毒予防6つのポイント

ポイント1 食品の購入

購入した食品は、肉汁や魚などの水分がもれないようビニール袋などに分け持ち帰りましょう。
生鮮食品などのように冷蔵や冷凍などの温度管理の必要な食品の購入は、買い物の最後にし、購入したら寄り道せず、まっすぐに持ち帰りましょう。

ポイント2 家庭での保存

冷蔵や冷凍の必要な食品は、持ち帰ったら、すぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れましょう。
冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は、-15℃以下に維持することがめやすです。

ポイント3 下準備

手を洗うことは食中毒予防の基本です。調理を始める前や食品を取り扱う前後、こまめに手を洗いましょう。
生の肉や魚を切った後、洗わずにその包丁やまな板で、果物や野菜など生で食べる食品や調理の終わった食品を切ることはやめましょう。洗ってから熱湯をかけたのち使うことが大切です。

ポイント4 調理

加熱して調理する食品は中心部まで十分に加熱しましょう。
生の肉や魚を切った後、洗わずにその包丁やまな板で、果物や野菜など生で食べる食品や調理の終わった食品を切ることはやめましょう。洗ってから熱湯をかけたのち使うことが大切です。

ポイント5 食事

食卓に付く前に手を洗いましょう。
調理前の食品や調理後の食品は、室温に長く放置してはいけません。

ポイント6 残った食品

残った食品は早く冷えるように浅い容器に小分けして保存しましょう。
残った食品を温め直す時も十分に加熱しましょう。

茨城県では、7月1日(日曜日)~8月31日(金曜日)を「食中毒予防月間」と定めて食中毒予防啓発活動を実施しています。

 

 

 

ビールの季節にご用心。ビール腹=メタボリックシンドローム!?(2007年7月)

 

     
 
7月のテーマ:
ビールの季節にご用心。ビール腹=メタボリックシンドローム!?
 梅雨が明けたらいよいよ夏本番、よく冷えた生ビールのおいしい季節です。中年男性に多い、お腹まわりを中心に恰幅のいい体型を「ビール腹」と称したものですが、ここ最近はもっぱら「メタボ」なお腹と呼ばれるようになりました。今回は、成人病をはじめとする様々な病気の危険因子である内臓脂肪の蓄積、いわゆる「メタボリックシンドローム」についてお話します。
 
     

 

メタボリックシンドロームとは?
 
 メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の蓄積によりインスリン抵抗性(インスリンの働きの低下)が起こり、糖代謝異常、脂質代謝異常、高血圧などの動脈硬化の危険因子が一個人に集積している状態を指します。高コレステロールに匹敵する強力な危険因子として、近年世界的に注目されています。
 
 
メタボリックシンドロームの診断基準
 

メタボリックシンドロームの診断は、必須条件である内臓脂肪の蓄積を『ウエスト径』で判定し、成人男性なら85cm以上、女性なら90cm以上を基準値*としています。さらに、血圧や血清脂質、血糖値の3つの基準値のうち、2つ以上を満たすと「メタボリックシンドローム」と診断されます。

各項目の基準値はこちらの表で確認してください↓

「食と健康」脂肪をためない食生活―メタボリックシンドロームにならないために―
https://imc.or.jp/column/syoku0704.html

*ウエスト径:男性85cm以上、女性90cm以上は、内臓脂肪面積100cm2以上に相当するとの判断ですが、正確な内臓脂肪蓄積の診断には腹部CT検査により内臓脂肪量を測定することが望まれます。

メタボリックの改善には、ウエスト径の5%減を目標に!
 
メタボリックシンドロームの治療は、糖尿病や高血圧、高脂血症などの病態を個々に治療するのではなく、共通の基盤である内臓脂肪を減少させることがポイントです。内臓脂肪は皮下脂肪に比べて減少するのが速いため、少しの減量で削減効果が期待できます。

そこで、現在のウエスト径、もしくは体重の5%減を目標に、内臓脂肪の削減に努めましょう

 
ウエスト径を減らすポイント
食事は腹八分、間食はしない
 

バランスのよい食事と、食べ過ぎないこと。総摂取カロリーを減らすよう努めましょう。

料理の味付けは薄味で
 

濃い味付けは塩分の摂り過ぎだけでなく、食欲を増進させて食べすぎを招きます。

繊維質の多い緑黄色野菜をよく食べる
 

内臓脂肪が蓄積している人の食生活には、緑黄色野菜の摂取が少ないという特徴があります。バランスを整えるためにも、野菜を積極的に摂りましょう。

適度な運動をする
 

摂取エネルギーを控えるとともに、適度な運動は内臓脂肪を減少させる有効な手段です。一般の肥満治療と同じく習慣的に継続させることが大切なので、徒歩での移動を心がけるなど、日常生活から変えて行きましょう。

お酒は控えめに
 

ビールのおいしい季節ですが、ビールだけでなくアルコールは総じて脂肪に変わりやすいもの。おつまみも高カロリー、濃い味のものが多くなりがちなので、飲みすぎ・食べすぎには注意しましょう。

タバコも控える
 

内臓脂肪型肥満の人には、喫煙者の割合が多いという特徴もあります。喫煙は動脈硬化性疾患の危険性をいっそう高めるので、禁煙に努めましょう。

   
 
  厚生労働省の平成16年国民健康・栄養調査によると、40~74歳において、男性の2人に1人、女性の5人に1人がメタボリックシンドロームか、その予備群であることが報告されました。また、子供にもその輪は広がっており、約10人に1人が肥満児であるといわれ、子供の肥満の約7割は成人肥満に移行するともいわれています。

肥満や生活習慣病、どんなケースでも、やはり一番はバランスの取れた食事と適度な運動、つまり生活習慣の改善がポイントです。夏場はアイスやジュースなど糖質の摂取が増えたり、食欲がないために栄養バランスが偏りがちな季節。いつもより更に注意して、ビール腹をスリムにしていきましょう。

 

 

 

学校給食の「食と健康」(2007年7月)

 

学校給食の「食と健康」

つくば国際短期大学

准教授 板倉 洋子

 
 
 
 学校給食の歴史は明治22年山形県鶴岡市(学校給食発祥の地として碑が建っている)

で困窮家庭に昼食を無料で供されたことが始まりです。第二次世界大戦時に一時中断しましたが、昭和21年12月11日付け、「学校給食実施の普及奨励について」が文部、厚生、農林三省から次官通達が出され、新しい学校給食制度がスタートしました。

食糧不足の中で連合軍放出の物質・ユニセフ・ララ(アジア救済連盟)の援助物質、脱脂粉乳と缶詰類によって、昭和22年1月からは全国都市部の約3,600校、29万人に対して学校給食が実施されました。茨城県でも水戸、土浦、日立の21校で米軍の軍用缶詰と脱脂粉乳を主材とした補食給食・他の市町村の145校ではミルク給食が実施されました。

(当時では一般に普及していなかったコンビーフ・牛肉の缶詰、脱脂粉乳と家庭から持ち寄った野菜で給食を作り、児童の栄養失調を救っていました。昭和28・9年頃でしたがアルミニウム食器から伝わる温かさとほんのり甘いミルク給食が私は大好きでした)

このように貧困からの救済や栄養補給から始まった学校給食は昭和29年6月「学校給食法」が成立後、給食の実施体制は普及・充実して児童生徒の体位向上や栄養教育の浸透が図られました。

現在、茨城県の学校給食実施率は小学校・中学校ともに100%です。(夜間定時制高等学校、県立・国立特殊教育諸学校も実施されています)学校の食事は今や「生きた教材」として食育の教材となり、栄養教育は生涯にわたって児童生徒が望ましい食習慣と自己管理能力を身に付ける、生活習慣病等の疾患予防を”食育のねらい”と変化している。もちろんしっかりと美味しさ、みんなで食べることの楽しさも追及し、数年前の給食とは献立が変わっています。児童生徒を持つご家庭には予定献立表が配られているのでぜひ毎月ご覧になってください。

 (以前、服部幸生さんが食育講演会の中で健康寿命と平均寿命についてお話をされました。健康寿命と平均寿命の差を比べると欧米では大体5年なのに対して、日本では女性が9.13年、男性が6.77年と長い年月を寝たきりや痴呆症で長生きしなければならない。超高齢化を迎える前の数値に驚き、幼児期・小中学生の時から「食事と健康の関連」を学び良い食習慣を持つことの大切さを痛感しました。)

さて、平成18年4月以来、茨城県で20名の栄養教諭が採用になっています。県内の学校栄養職員は274名ですが内20名が栄養教諭として、赴任した地域全体の食育を推進するため課題を探り、食に関する指導のコーディネータとして、大きなエンジンを駆けてひた向きに頑張っています。

栄養教諭制度が施行された平成17年度は全国の配置がわずか34名でしたが(茨城県は0人)、平成18年度359名(茨城県は10人)、平成19年は974名(茨城県は10人)と配置人数が増えています。

現在学校給食は学習指導要領の学級活動に位置付けられ教育の一環であること、給食が持つ影響力の大きさ(児童生徒・家庭・地域との連携)と栄養教諭が推進した教育の結果と食育を推進する姿勢(学校・家庭・地域の調整役として)がこの配置人数に表れていると思われます。また現在、勤務している学校栄養職員も栄養教諭認定講習会を受講し、資質の向上を図っていることも大きな推進力になりました。

早寝早起き、朝ごはんの標語を基に平成22年までに朝食ゼロにしようとする食育活動と食料自給率の低下に歯止めをかけ、地域と密着した学校給食の運営推進の一つとして給食で使用する食材の30%以上を地場産業で賄うことが学校給食の課題になっています。

日々、食事が持つ意義が進化し、中でも学校・家庭・地域との連携した取り組みが今一段と加速されています。推進を担う栄養教諭・学校栄養職員の資質向上を図るため、第48回目の全国栄養教諭・学校栄養職員研究大会が7月26日・27日水戸市に於いて開催されます。約1,000名が実践発表、シンポジウム、10の分科会等に分かれ、児童生徒に対する食に関する指導のあり方や学校給食の充実方策について研究協議が行われます。

給食が「生きた教材」であるという所以は

(1) 生活習慣予防のねらいを持った給食を食べる。
(2) バランスの取れた食品の組み合わせ方や食事量を食べ続けていくことで学ぶ。
(3) 生涯に亘って健康に良い食品を選択できるよう論理的な組み立てが習慣化する。

このねらいを持った給食は「生きた教材」であるという所以です。

 

 

 

しなやか血管で、動脈硬化を予防しよう!(2007年6月)

 

     
 
6月のテーマ:
しなやか血管で、動脈硬化を予防しよう!
 梅雨入りを向かえ、季節はいよいよ夏の始まりを告げています。猛暑を予感させる毎日の気温に、早くも夏バテ気味という方も多いのではないでしょうか。しかし、本格的な夏を迎える前の今だからこそ、猛暑を乗り切る体力を養っておきたいもの。毎日の健康を保つためにも、私たちの体の隅々にまで栄養や酸素を届けてくれる「血管」の健康を考えてみましょう。
 
     

 

動脈硬化とは?
 
 動脈は内膜・内弾性板・中膜・外膜で構成されており、心臓が押し出した血液が流れるために弾力性と柔軟性を備えたゴムホースのような管になっています。しかし、古くなり硬くなった輪ゴムを伸ばすと切れてしまうように、動脈も弾力性や柔軟性を失うと硬くなってしまいます。

血管の中にはLDLコレステロール(悪玉コレステロール)、HDLコレステロール(善玉コレステロール)、中性脂肪、脂肪酸などさまざまな物質が流れていますが、LDLコレステロールや中性脂肪などの物質は、水垢やサビのように動脈の内部に沈着して血管を狭くします。こうしていわゆる「ドロドロ血液」によって管が狭くなったり、弾力性が失われた状態を動脈硬化といいます。

 
動脈硬化の種類
 
 細い動脈や太い動脈など動脈にも色々な種類がありますが、それぞれの血管に起きやすい動脈硬化にも特徴があります。
 
細動脈硬化
 

脳や腎臓の中などの細い動脈に起きやすい。喫煙(ニコチンの影響)などによって末端の細い動脈が収縮刺激を受け続けることで次第に柔軟性がなくなり、血管が硬くなることで起きる。詰まったり(梗塞)、血管壁全体が破裂して出血したりする。

アテローム(粥状)硬化
 

大動脈や脳動脈、冠動脈などの比較的太い動脈に起きる。動脈の内壁にコレステロールなどのドロドロ(粥状)の物質が沈着して血管が狭くなるために起きる。

メンケルベルグ型(中膜)硬化
  大動脈や下肢の動脈、頚部の動脈に起きやすい。動脈の中膜にカルシウムが溜まって硬くなり、中膜がもろくなることで起き、血管壁がやぶれることもある。
動脈硬化が引き起こす、怖い病気
 
 血管の内部は目に見えないため、動脈硬化は自覚症状がなく進行します。その上、心臓病や脳血管障害など様々な病気を引き起こす要因となる危険な疾患です。
 
動脈硬化が原因となる心疾患
 

狭心症や心筋梗塞など

動脈硬化が原因となる脳血管疾患
 

脳梗塞、脳出血など

動脈硬化の原因と予防
 
 動脈硬化は加齢とともに進行する、いわゆる老化現象のひとつですが、たとえ同じ年齢でも血管の状態には個人差があり、遺伝などの要因のほかに「生活習慣」が大きく影響すると言われています。例えばコレステロールの過剰摂取、肥満、高血圧や高脂血症、運動不足など、動脈硬化の危険因子は実にさまざまです。これらを予防するためには、やはり生活習慣の改善が第一です。以下の項目を参考に、しなやかな血管を保って動脈硬化を予防しましょう。
 
動物性脂肪の摂り過ぎに注意する
血圧を上昇させるため塩分は控えめに
HDLコレステロール(善玉コレステロール)を増やすために

適度な運動を心がける

喫煙は血管を収縮させ、傷つけるため、禁煙に努める
   また、動脈硬化は他の多くの病気と同じく早期発見が鍵です。健康診断で血圧、総コレステロール、中性脂肪、肥満度、HDLコレステロールの値などを検査し、動脈の健康度をこまめにチェックしていきましょう。
 
   知らないうちに進行し、様々な病気を引き起こす原因にもなる動脈硬化。しかもその危険因子は上に挙げたように多くの種類があります。しかし、裏を返せばこれらの危険因子は健康な体づくりの大敵と同じもの。「ヒトは血管とともに老いる」という言葉を胸に刻み、健康な血管を保つよう生活習慣を改善していきましょう。

 

 

高齢者の食事について ~高齢者の心と体の変化を知って、食事を作りましょう~(2007年6月)

 

高齢者の食事について
~高齢者の心と体の変化を知って、食事を作りましょう~

茨城県栄養士会

管理栄養士  矢代あや子

 
 
 
 
日本人の平均寿命は80歳を超え、世界一の長寿国となっています。

健康状態や食事のとりかた、体のいろいろな働きにも個人差が見られます。寝たきりを防ぎ、いつまでも健康で自立した生活が過ごせるようにお年寄りの体の特徴をよく理解して、毎日の食事作りに努めましょう。

■ お年寄りの体の特徴
  1,消化液の分泌が低下する
    唾液の分泌が減ると糖質の消化が不十分となります。さらに、噛む力が低下することで、胃への負担も大きくなります。胃液の分泌が減ると、蛋白質や脂質の消化・吸収能力が低下して、消化不良や下痢の原因となってしまいます。
    食事のポイント
     

(1)

消化吸収の良い食品(脂身の少ない肉、豆腐、魚、乳製品、卵、芋類、葉菜類等)を、バランスよくとるようにする
      (2) 良く噛んでゆっくり食べる
      (3) 暴飲、暴食をさける
         
  2,腸の働きが悪くなる
    大腸の動きが悪くなり、便秘がちになります。その他、食べる量が少なくなる事による食物繊維の不足、運動不足、水分不足なども影響する事があります。
    食事のポイント
     

(1)

欠食をさけ、1日3食をバランスよくとるようにする
      (2) 朝、目覚めにコップ1杯の水を飲んで腸を刺激する
      (3) お茶や牛乳などの水分をたっぷりとる
      (4) 食物繊維の多い食品(押し麦、玄米、ごぼう、筍、かぼちゃ、大豆、納豆、芋、海藻、果物、きのこ、こんにゃく等)を多くとりいれる
         
  3,咀嚼力(噛む力)が低下し、飲み込む力(嚥下)が弱くなる
    自分の歯の数が少なくなったり、入れ歯(義歯)の調整がうまくいかないために、噛む力が弱くなってきます。口の中の筋肉の老化現象や、脳卒中や脳梗塞の後遺症等によって、飲み込みがうまくできなくなります。

硬い食べ物を嫌がり、あまり噛まずにすぐ食べられる食材を好んで選び、食事の内容も偏るために栄養不足になる心配があります。

    食事のポイント
     

(1)

食べやすい大きさに切り、軟らかくなるまでよく煮込む
      (2) 片栗粉や市販の増粘剤をつかってとろみをつける

口の中で、食べ物がまとまり、飲み込みやすくなります

      (3) ゼラチンや寒天を使って、ゼリーやムース状に固める
      (4) 飲み込みやすい姿勢を保つ

車椅子で食事を摂るときは、腰が不安定にならないようにクッション等を添えて体勢を整えましょう

         
  4,味覚が低下する
    舌の味覚細胞が減るために、味を感じにくくなります。いつもと同じ味付けなのに「甘い」と感じてついつい醤油などをかけすぎてしまうことがあります。特に塩味の感覚低下が著しく、塩分の取りすぎになってしまいがちです。
    食事のポイント
     

(1)

旬の新鮮な食材を選ぶ
      (2) 味の濃いおかずと薄いおかずを組み合わせて作る
      (3) 香味野菜(生姜・しそ・三つ葉・ミョウガ)柑橘類を使い、味覚に刺激を与える
      (4) 昆布や鰹節、干し椎茸などのだしをきかせる
         
  5,のどの渇きを感じにくくなり、脱水症状をおこしやすい
    加齢により、基礎代謝量が減少し体の中で作られる水分(代謝水)が少なくなります。食事量が減ったり、あまりのどの渇きを感じにくくなり充分な水分の摂取ができなくなってきます。
    食事のポイント
     

(1)

お年寄りの手の届くところにいつも水分を準備しておく
      (2) 食事には汁物や水分の多いおかずを1品とりいれる
      (3) 食事以外にもお茶の時間を設け、お茶や好みの水分を補給する
      (4) 水分がむせる場合は、とろみをつけたりゼリーにして摂取する
         

 

 

 

 

健康のバロメーター「うんち」を知ろう!(2007年5月)

 

     
 
5月のテーマ:
健康のバロメーター「うんち」を知ろう!
 ぽかぽかと春らしい陽気…というより、真夏のように蒸し暑かったり急に冷え込んだりと不安定なお天気が続いていますね。日中の暖かさに、つい薄着で出かけたら夕方冷え込んで風邪をひいてしまった、なんて方もいるのではないでしょうか。気候が不安定だと、体調も崩れがちです。今回は、体内の健康状態を知る一番身近な方法「便」について考えてみましょう。
 
     

 

まずは「うんち」をチェック!
 

 理想的な便の例えとして、よく「バナナのようなうんち」が良いとされます。これは便の色、固さ、量、そして形(状態)を表しています。以下のチェック項目をよく覚えて、今日の排便後に自分の便を観察してみてください。

●便の色
ben 便の色は腸内細菌のバランスによって変化します。ビフィズス菌たっぷりの健康的な腸内活動を表すのは、白みがかった黄色の赤ちゃんの便ですが、成人がこんな便を出すのは無理な話。食事の内容によっても左右されますが、基本は茶色がかった黄色で、黄色に近いほど「いい便」と言えます。

黒っぽい便:悪玉菌が腸内に増えている証拠。胃や十二指腸、小腸などに潰瘍や腫瘍ができて出血している可能性もあります。

灰色の便:脂肪分の摂りすぎ、肝臓、すい臓、胆のうに異常がある可能性があります。

赤い便:大腸の出血や痔、大腸がんの可能性があります。

上記のような色の便が出る場合、それが一時的なものであれば、食べ物の色素や服用している薬の影響であったりして特に問題はありません。しかし、長期にわたってこのような便が出る場合は、体の器官に異常がある疑いがあるので注意が必要です。

●便のにおい

便の悪臭のもとは、腸内の悪玉菌。便はくさいものだと決め付けがちですが、腸内環境のよい人の便は、実はそれほどくさくないものです。悪臭のきつい便が出る人は、悪玉菌が大繁殖して有害物質を発生している可能性があるので、食事や生活習慣を見直しましょう。また、肉類などのたんぱく質を腸内細菌が分解する際にきつい臭いを出す物質を生産するため、肉類中心のいわゆる欧米型の食生活を送っていると便のにおいがきつくなる傾向があります。

●便の固さと形

便の形状は、便に含まれる水分量によって変わります。健康な便は通常70~80%の水分を含むとされ、まさにバナナの実のような固さと形でスムーズに排便されます。これより水分量が少なくなるとコロコロとしたウサギの糞のような形になりますが、これは便秘の人に多いタイプ。逆に形をとどめないほどゆるい水状の便は下痢の状態です。ちなみに「健康な便は水に浮く」という話を聞いたことがあるかもしれませんが、これは食物繊維をたっぷり摂ると繊維質が多く密度の軽い便が出る、という説に基づくようです。しかし繊維質の多い食事を続けても便の比重には変化がなかったという研究結果もあるため、便が沈むからといって特別気にすることはないようです。

●便の量

排便の量は当然食事の量に影響を受けますし、イモ類や豆類など食物繊維の多い食品をたっぷり摂ると便の量も多くなります。一回の便の目安は150g程度とされ、目で見てバナナ1本半~2本分くらいの便が出ていればおおむね理想的な量の排便といえるでしょう。

 
腸内環境を整えて、快便生活を!
 

 
腸内環境を左右するのは、腸内細菌のバランス。腸内には500から1,000種類にも及ぶ細菌が存在するといわれ、その中でも乳酸菌などの善玉菌が多い弱酸性の腸内環境が健康な状態。しかし、食生活や生活習慣、ストレスなどで腸内細菌のバランスが崩れると、クロストリジウムなどの悪玉菌が増えてしまいます。悪玉菌が優勢になると腸内はアルカリ性に傾き、腸の働きが鈍くなります。それが便秘の原因となり、さらにその留まった便が悪玉菌の餌となり、腸内は悪玉菌の温床へ…と悪循環を始めます。そうなると、悪玉菌が発生する有害物質が腸壁から吸収され、血液にのって全身へ運ばれ、いろいろな病気やトラブルを引き起こす原因となります。便秘が続くと肌荒れや頭痛などの症状が出るのはこのためです。

悪玉菌は発がん性物質を作り出し大腸がんなどを誘発する原因にもなるので、たかが便秘と侮らず、規則正しい生活、食物繊維の多い食事、そしてたっぷりと水分補給を心がけて早めに解消しましょう。また、ビフィズス菌などの乳酸菌は乳酸や酢酸を出して腸に刺激を与え、運動を活発にして排便を促して便秘になるのを防いでくれるので、ヨーグルトなどの乳製品も積極的にとりましょう。

 
 大腸は、さまざまな病気の発信源といわれます。その腸内を正常な状態に保つことが、健康な体づくりの秘訣。その腸内の様子を知ることのできる便は、まさに健康のバロメーターです。最初は少し抵抗があるかもしれませんが、その貴重な「情報源」を水に流す前に、毎回観察する習慣をつけていきましょう。

 

 

ますます重要視される学校給食の役割(2007年5月)

 

ますます重要視される学校給食の役割

社団法人 茨城県栄養士会

 
 
 
 

  「給食の用意ができました」

 
「お当番さん、ごくろうさまでした」

 
「それでは、いただきますをしましょう」

 
「いただきます」

 
4月に入学した小学1年生の学校給食が始まってから1か月余り。

 
ところが、あれあれ、

 
「ぼく、野菜はダメ」

 
「魚に骨があるよ」

 
「豆はきらい、わたし食べない」

 
と子どもたちの声。箸の持ち方もあやしいようです。ごはんや汁の食器を持たなかったり、おかずやごはんを一品ずつ食べ、食べ終わるとまた次のおかずを食べるという食べ方をし、全体をまんべんなく食べることができない子もいます。食事の様子は、まさに、家庭を写す鏡です。

 
学校給食は年間約200回実施されています。1年間の食事数にしてみれば6分の1にすぎないのですが、授業日に毎日実施される日常生活に欠くことにできない食事時間ですから、給食の時間の特性を生かした給食指導を実施することが可能です。学校給食は通常、授業日の昼の時間に繰り返し行われるものですから、この時間に繰り返し給食指導をすれば、児童生徒への望ましい食習慣の育成を図ることができることはもとより、準備・会食・後かたづけなど家庭生活では培われなくなりつつある生活体験の一連の実践活動の場ともなります。

 
毎日の学校給食における実践活動を通して正しい食事のあり方や望ましい食習慣の形成をはかり、将来にわたり健康で生活することができる児童生徒を育てることが学校給食に課せられた大きな役割です。

 

 

 

バランスのとれた食事で、毎日の健康を!(2007年4月)

 

     
 
4月のテーマ:
バランスのとれた食事で、毎日の健康を!
 進学、就職、転勤などなど、この4月から新しい生活が始まったという方も多いのではないでしょうか。新しい生活に乱れてしまったリズムも、そろそろ慣れてきた頃だと思います。そこで、今回は生活のリズムの見直しとあわせて「食生活」のリズム(バランス)について考えてみましょう。
 
     

 

まずは意識的に『一汁三菜』の食卓を
 

バランスのとれた理想的な食事の基本は『一汁三菜』と言われますが、これはご飯(主食)・汁もの・3種類のおかずを表し、昔から日本の食卓に取り入れられていた考え方。この『一汁三菜』の食事はたくさんの食材を使うので、自然と栄養のバランスがよくなります。
image●主食

主食となるのはご飯やパン、麺類などの炭水化物。忙しい朝は手軽なトースト、昼はさっぱり手早く食べられるお蕎麦など、状況や好みに応じて選ぶことができますが、基本はやっぱりご飯です。ご飯は太ると思われがちですが、糖質やたんぱく質、食物繊維を多く含み、パンより腹もちがいいので、一食毎をしっかり食べることで間食を防止できます。また、まぜご飯や丼ものなどにすれば、それだけでおかず1品分と考えることができます。

●汁もの

ご飯といえばお味噌汁ですが、具沢山の豚汁やけんちん汁、野菜たっぷりのミネストローネなど、工夫次第でこちらもおかずの1品とあわせることができます。お鍋でイチから作るとなると意外と手間のかかるスープ類も、お湯を注ぐだけのカップスープや野菜ジュースなどを利用すれば手軽に取り入れられますね。

●おかず

「3菜」といっても、これはもちろん目安の数字。目玉焼きや納豆1パックでも立派な1品になりますし、例えば肉野菜炒めや筑前煮など、1品で色々な食材を摂ることのできるボリュームたっぷりのおかずなら2品分と考えることもできます。おかずの品数を多くすればそれだけ色々な栄養素を摂ることができますが、言い換えれば1品に使う食材を増やせば品数を無理に多くする必要はありません。あまり堅苦しく考えず、冷凍食品やお惣菜なども利用しながら上手に「手抜き」するのも『一汁三菜』の食卓を毎日続けるコツです。

●果物

『朝の果物は金』という言葉を聞いたことがありますか?果物に多く含まれる糖分(果糖)は体に吸収されやすく、睡眠中に失われたエネルギーを効率よく摂取するのにぴったりの食材としてこう呼ばれているのです。逆に『昼は銀、夜は銅』とも言われますが、これは実は間違いとの説も。果物は甘い=糖分が高いから夜中に食べると太るというイメージがあるようですが、カロリー自体は野菜より低いものが多いのです。不足しがちな食物繊維も補うことができるため、朝に限らず1日100g(りんご約1個分)を目標に食べると良いでしょう。

毎食『一汁三菜』の食事は難しいという人は、例えば時間のある夕食だけでも、品数を多めに『量より質』の食卓を心がけましょう

 
理想的な食生活の指針は『食事バランスガイド』にあり
 

image飲食店やスーパーマーケットなどで、いろいろなメニューのイラストがちりばめられた「コマ」のデザインを見かけたことがありますか?これは『食事バランスガイド』と呼ばれるもので、一日に「何を」「どれだけ」食べるとバランスのとれた食生活になるかという目安を表しています。きちんと3食とっていても、栄養素が偏っていてはバランスのとれた食生活とは言えません。まずは1週間、バランスガイドに沿って食生活をチェックしてみましょう。

※詳しくはコチラのページを→

知っていますか『食事バランスガイド

 
朝昼晩、きちんと3食を
   3食のうち、「朝ごはん」が一番大切というのは皆さんよくご存知のことだと思います。確かに、寝ている間に下がった体温を上げ、これから始まる1日の活動のエネルギー源を補給するために朝食はとても大切。朝は忙しく、つい朝ごはんを抜いてしまうという人も多いと思いますが、少し早起きしてでも是非食べて欲しいものです。また、休日など、朝食をお昼ご飯と一緒に「ブランチ」として済ませる人もいますが、やはりなるべく1日3食を守って欲しいところ。遅めの朝食なら量を少なく、また昼食の時間をその分少し遅めにするなどして、毎日3食を心がけましょう。
 
 
 毎食バランスのとれた食事を摂るのは大変という人も、まずは1日1回『一汁三菜』の食事を心がけるところから始めましょう。そうすれば、毎日とは言わなくても週単位でバランスのとれた食生活になっていきます。そしてバランスのとれた食事に加え、食事のときはできるだけ「じっくり味わって」食べることも大切。おいしさを感じる器官は、舌よりも目といわれます。新聞やテレビを見ながらの食事や、見るからに寂しい食卓では食事のおいしさ、楽しさは感じられませんよね。また、目で見て、鼻で嗅いだ食べ物の情報が脳に伝達されると唾液が出て、消化を助けてくれます。1日1食、家族そろって『一汁三菜』の食卓を囲んでみませんか?

 

 

脂肪をためない食生活  ――メタボリックシンドロームにならないために(2007年4月)

 

脂肪をためない食生活
 ――メタボリックシンドロームにならないために

社団法人 茨城県栄養士会

 
 
 
 

1.メタボリックシンドロームとは?

メタボリックシンドローム

腹囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上を「要注意」と規定。これに下の2項目以上が該当する場合、「メタボリックシンドローム」と診断されます。

腹囲

男性:85cm以上

女性:90cm以上

+

1.血圧

収縮期血圧:130mmHg以上

かつ(または)

拡張期血圧:85mmhg以上

2.血清脂質

中性脂肪値:150mg/dl以上

かつ(または)

HDLコレステロール値:40mg/dl未満

3.血糖

空腹時血糖値:110mg/dl以上

 脂肪が体内に過剰に蓄積された状態が肥満です。

メタボリックシンドロームのベースとなるもので、特に内臓のまわりに肥満がたまる内臓脂肪型肥満(りんご型肥満)が問題なのです。

2.あなたは大丈夫?

◇ エネルギーとりすぎていませんか

「脂っこいもの」「甘い物」好き、外食はコンビニ食、ファーストフード、過度の飲酒はエネルギー過剰の原因となります。

◇ 不規則な食生活していませんか

「朝食抜き」など欠食が多いと、活動力低下や代謝が悪くなり、エネルギーを消費しにくくなります。

「夜遅くの食事」は栄養が吸収されやすく体脂肪の蓄積につながります。

3.食事のポイント

<一日三食、規則正しく、よくかんで>

◇ 一食ごとに主食、主菜、副菜でバランスよく

  • 主菜は魚、肉、玉子、大豆製品
  • 副菜は野菜中心、一日350g以上を植物繊維をたっぷりと・・・芋類、豆類、きのこ、海草もかかさずに

◇ 脂肪は質も考えて、一日大さじ1~2杯、植物油を中心に

  • 動物性脂肪(肉の脂身、バター、外食のカツなど)は体内でコレステロールをを蓄積します。

◇ 甘い菓子、飲料、アルコールは控えましょう

  • 中性脂肪の材料やインシュリンの作用にも影響があります。できることから、さあ実行、そして続けましょう。
 

 

 

イライラ、憂鬱… 女性の悩み・更年期障害(2007年3月)

 

     
 
3月のテーマ:
イライラ、憂鬱… 女性の悩み・更年期障害
 まだまだ冷え込む晩もありますが、日中の陽射しは暖かく、随分と春めいてきました。花粉の悩みを除けば、なんとなく気持ちもウキウキする季節です。しかし、季節に関係なくイライラしてしまいがちなのが女性の更年期。今回は更年期障害についてお話します。
 
     

 

更年期障害とは
 

Images人間の身体構造と生理機能において人生における大きな転換期となるのが、子供から成人になる思春期と、成熟期から老年期へと向かう更年期。更年期とは、生殖期(性成熟期)と非生殖期の間の移行期を指し、女性の卵巣機能が衰退し始めて消失する時期にあたります。卵巣機能の消失とはつまり閉経のことで、閉経前後における女性ホルモン(エストロゲン)の減少が主な原因となって起こる様々な症状を、一般的に更年期障害と呼びます。

エストロゲンは40歳頃から減少し始めると言われ、閉経後も数年間は分泌されます。更年期障害には大きく分けて2つの発現時期があり、エストロゲンの低下に伴い急速に発現する早発症状と、閉経後数年から10年以上してから発現する遅発症状とがあります。ちなみに、日本人の自然閉経の平均年齢は51歳で、45歳から56歳が閉経の正常範囲とされています。

 
更年期障害の主な症状
 

更年期障害の代表的な症状にあげられるのが、のぼせ(hot flash)、ほてりで、エストロゲンの欠乏により脳の自律神経調節中枢の機能が変化するために起こると考えられています。突然熱感が起こって体から顔や手足へと広がり、発汗や動悸を伴うことが多くあります。また、エストロゲンの低下による中枢神経の機能変化、閉経による女性としての喪失感などによって不眠やうつ症状といった精神的な症状が起こることもあります。

エストロゲンの低下は他にも様々な症状を引き起こし、膀胱および周辺の筋肉低下による頻尿や失禁をはじめ、骨粗しょう症や高脂血症、動脈硬化などの病気を引き起こすことも。また、閉経後(老人性)膣炎による粘膜の萎縮や分泌物の減少によって、膣前庭の灼熱感、掻痒感、乾燥感および性交痛が出現し、性欲も減退します。

●早発症状

のぼせ、ほてり、発汗異常、動悸、めまい、うつ状態、イライラ感、不眠、頭痛、手足のしびれ、蟻走感(皮膚を蟻が這っているような感覚)など

●遅発症状

性交痛、閉経後(老人性)膣炎、尿道炎、失禁、皮膚萎縮、肥満、腰痛、肩こり、骨粗しょう症、骨量減少症、動脈硬化など

 
更年期障害の診断と治療
   更年期障害の診断は、上に挙げたような自覚症状に加え、血中のエストラジオール濃度、LH(黄体化ホルモン)やFSH(卵胞刺激ホルモン)の上昇を測定することで行い、主な治療はエストロゲンを補充する女性ホルモン補充治療です。また、精神症状に対しては精神安定剤や漢方療法が用いられることもあります。

一般的に、更年期障害は「身体がほてる」「イライラする」など、“我慢すれば過ごせる”ものとして捉えられがちですが、女性ホルモンの減少によって起こる骨粗しょう症や動脈硬化などの深刻な病気との関連が注目されるようになり、治療に関しても見直されてきました。

 
 
 女性にとっての更年期は、ホルモンなどによる身体的な変化に加え、心理的、精神的にも大きな変動のある時期です。女性としての喪失感や、子供の成長によって母親としての存在意義が薄れることへの孤独感、夫や自身の定年や老後に対する不安など、様々な環境の変化によってうつ状態が助長されることも。しかし、体力や性的能力の衰えに対して知性や情緒の面では円熟する時期でもあります。「我慢すれば過ぎる」「恥ずかしい」と悩むよりも、診断と適切な治療を受けて心身ともに快適に過ごせるようにしていきましょう。